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206 冗談は止して
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ルキアスからはザネクの動きが少々ギクシャクして見えた。シャルウィに腕を絡められてからずっとそんな調子なのだから、スキンシップに弱いのだ。リュミアや兄のガノスにされるがままなのも根が同じなのかも知れない。
翻ってルキアス自身は然程ドキドキしていない。何故だろう? と、思いを巡らせれば、とある人物が思い出された。
(メイナーダさんに迫られるほどの迫力を感じないからだ……)
幸か不幸か強烈な女の色香に惑わされそうになった経験で耐性が出来ていたのだ。だが「惑わされそう」で済んだのはメイナーダが最後で一歩引いてくれたからに他ならない。どこまでも強引に迫られていたら完全に惑っていただろう。いや、今以てメイナーダに最後まで迫られたら拒めないに違いない。
「それはそうと、あんた達が空を飛んでたのが天職じゃなかったら何なの?」
沈思していたルキアスの耳朶をシャルウィの声が叩いた。シャルウィは天職じゃないと言った話を憶えていたらしい。
「あれは『傘』だよ。あ……」
ルキアスは無意識に答えた後で言って良かったのか気になった。しかし考えてみれば特に秘密と言うことはない。何せ『傘』は殆どの人が知る生活魔法なのだ。
しかしシャルウィには続きがあるように聞こえたようだ。
「あ?」
「あはは……?」
「何それ?」
「ごめんごめん、あれは『傘』だよ」
ルキアスが改めて答えればシャルウィが胡散臭げに見る。
「冗談は止して。『傘』で飛べる訳ないでしょ」
「冗談じゃないんだけど……」
「ほんと、冗談じゃないわ」
「そう言う意味じゃなくてね……」
「まあ、信じられないのは無理もない。俺だってある程度過程を見てなけりゃ信じられないかもな」
「ザネクまで……」
「百聞は一見にしかずだ。こんな所でうだうだ言ってないで見てみりゃいい」
「むぅ……」
シャルウィは不満げにしながらもザネクの言葉を受け入れた。待つのは第四階層に着くまでの時間だけなのだから。
そして第四階層の湿地の傍。
「『傘』」
ルキアスがいつものように下を向けて『傘』を開いた。
「え……」
「どうだ? 不審な部分はあったか?」
困惑顔のシャルウィにザネクが尋ねた。
「無かった……わ」
シャルウィは認めたくないが認めざるを得ないと言った風情で言葉を返した。
翻ってルキアス自身は然程ドキドキしていない。何故だろう? と、思いを巡らせれば、とある人物が思い出された。
(メイナーダさんに迫られるほどの迫力を感じないからだ……)
幸か不幸か強烈な女の色香に惑わされそうになった経験で耐性が出来ていたのだ。だが「惑わされそう」で済んだのはメイナーダが最後で一歩引いてくれたからに他ならない。どこまでも強引に迫られていたら完全に惑っていただろう。いや、今以てメイナーダに最後まで迫られたら拒めないに違いない。
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ルキアスが改めて答えればシャルウィが胡散臭げに見る。
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「冗談じゃないんだけど……」
「ほんと、冗談じゃないわ」
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「むぅ……」
シャルウィは不満げにしながらもザネクの言葉を受け入れた。待つのは第四階層に着くまでの時間だけなのだから。
そして第四階層の湿地の傍。
「『傘』」
ルキアスがいつものように下を向けて『傘』を開いた。
「え……」
「どうだ? 不審な部分はあったか?」
困惑顔のシャルウィにザネクが尋ねた。
「無かった……わ」
シャルウィは認めたくないが認めざるを得ないと言った風情で言葉を返した。
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