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205 早速行きましょう
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「それじゃ、早速行きましょう」
「ちょっと待て」
笑顔のシャルウィが再びルキアスとザネクの腕を取って歩き出そうとするのに、ザネクが待ったを掛ける。この辺り、絆され掛けたようにしながらも冷静だ。
「まだ一緒に行くとは言ってない」
「そんな! 信じてくれたんじゃなかったの?」
「それとこれとは話が別だ。ちょっと二人で相談するから、待ってな」
「……判ったわよ。相談するフリして逃げないでよ?」
「んなのする訳ねーだろ」
ザネクは嫌そうに返事しながらルキアスを手招きし、二人で少し離れた場所に移動する。そして顔を突き合わせて声を潜めた。
「どうする?」
「一度くらいは付き合ってやらなきゃ収まらない流れだよね……」
「まあな。このまま見捨てても後味が悪くなりそうだしな」
「だけど、神薬が出るとも思えないよね」
「それだぜ。どのくらい付き合う?」
「期間だよね? ぼく達が宝箱の中身に確証を持てるまで……、一週間……、いや二週間?」
「まだ一つも見付けてないのを探すんだから、そのくらいは見た方が良さそうだな」
「じゃあ、二週間?」
「だな」
方針は決まった。と、その時。
「ねえ! まだなの!?」
何分も経っていないのにシャルウィは痺れを切らしたようだ。ルキアスとザネクは苦笑するばかり。
「今終わったところだ!」
ザネクはシャルウィの許まで戻った後に結果を告げる。
「二週間だ。見付からなくてもそれ以上は付き合えない」
「どうして?」
「俺たちが次の階層に行くからだ」
「見付かってからだっていいじゃない!」
「一生見付からないかも知れない代物なんだ。そんなのに付き合っていてもキリが無いからな」
「え!? 信じてくれたんじゃなかったの!?」
「可能性は信じるさ。可能性はな。昔誰かが見付けたんだろうってのもな」
「だけどぼく達が見付けられる気はしないんだよ」
「どうして?」
「確率の問題だからだ。万が一に見付かればいい方じゃないか?」
「そう……」
シャルウィは思い悩むが、短い時間で結論を出したようだ。
「判ったわ。二週間で我慢するわ。その代わり、一日も休みは無いからね! 覚悟なさい!」
「おう……」
頼む立場でありながら居丈高なシャルウィに、ルキアスとザネクは苦笑で応えた。
「じゃあ、今度こそ行くわよ!」
シャルウィはまたもルキアスとザネクの腕を取って歩き出す。
(結局こうなるんだ……。腕引っ張らなくても逃げないのに……)
ルキアスはそんな感想を持ったが、ザネクの様子を窺うと、彼はどこか照れくさそうな雰囲気を醸し出していた。
「ちょっと待て」
笑顔のシャルウィが再びルキアスとザネクの腕を取って歩き出そうとするのに、ザネクが待ったを掛ける。この辺り、絆され掛けたようにしながらも冷静だ。
「まだ一緒に行くとは言ってない」
「そんな! 信じてくれたんじゃなかったの?」
「それとこれとは話が別だ。ちょっと二人で相談するから、待ってな」
「……判ったわよ。相談するフリして逃げないでよ?」
「んなのする訳ねーだろ」
ザネクは嫌そうに返事しながらルキアスを手招きし、二人で少し離れた場所に移動する。そして顔を突き合わせて声を潜めた。
「どうする?」
「一度くらいは付き合ってやらなきゃ収まらない流れだよね……」
「まあな。このまま見捨てても後味が悪くなりそうだしな」
「だけど、神薬が出るとも思えないよね」
「それだぜ。どのくらい付き合う?」
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「じゃあ、二週間?」
「だな」
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何分も経っていないのにシャルウィは痺れを切らしたようだ。ルキアスとザネクは苦笑するばかり。
「今終わったところだ!」
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「二週間だ。見付からなくてもそれ以上は付き合えない」
「どうして?」
「俺たちが次の階層に行くからだ」
「見付かってからだっていいじゃない!」
「一生見付からないかも知れない代物なんだ。そんなのに付き合っていてもキリが無いからな」
「え!? 信じてくれたんじゃなかったの!?」
「可能性は信じるさ。可能性はな。昔誰かが見付けたんだろうってのもな」
「だけどぼく達が見付けられる気はしないんだよ」
「どうして?」
「確率の問題だからだ。万が一に見付かればいい方じゃないか?」
「そう……」
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「判ったわ。二週間で我慢するわ。その代わり、一日も休みは無いからね! 覚悟なさい!」
「おう……」
頼む立場でありながら居丈高なシャルウィに、ルキアスとザネクは苦笑で応えた。
「じゃあ、今度こそ行くわよ!」
シャルウィはまたもルキアスとザネクの腕を取って歩き出す。
(結局こうなるんだ……。腕引っ張らなくても逃げないのに……)
ルキアスはそんな感想を持ったが、ザネクの様子を窺うと、彼はどこか照れくさそうな雰囲気を醸し出していた。
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