生活魔法は万能です

浜柔

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204 神薬

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「損させて悪かったわね。そうよ、あんなヤツらに話してるのを見られたくなかっただけよ」

 シャルウィは半ばしゃくり上げながら言った。ますます情緒不安定だ。
 これにはルキアスも焦る。しかしこんな時にどう言えば良いのかなど知らない。

「あ、いや、そうじゃなくってね。あ……、その……、えーと……」

 頭を掻いてザネクを見るが、ザネクも苦笑を返すくらいしかできない。
 愚図り始めたシャルウィとは暫く会話が成立しそうにないので暫くそっとしておこうとザネクは考える。

「しかし神薬なぁ……。厳しいだろうな……」
「無さそう?」
「出るなら第一階層や第二階層で伝説の武器や防具が見付かっても良さそうなもんだろ?」
「あ! 確かにそうだね……」
「でも第三階層のアレを考えれば運さえあればってところだろうな」
「じゃあ、第一階層や第二階層でぼくは運が無かっただけかな?」
「いや、どっちかってーと、それだけ低確率ってことだろ」
「やっぱりそうだよね」

 ルキアスは頷いた。

「それはそうと、神薬って何だかネタバレされたみたいでもにょもにょするよ」
「それな」

 ザネクはルキアスの言葉に笑った。第四階層の宝箱から何が出るのかを知りたくて探していた部分もあったのに中身を知らされてしまったのだ。神薬が出るなら主な品物はその系統のもっと安っぽいもの。恐らく魔法薬だと容易に予想できてしまう。

「ちょっと……、何訳の判らない話してるのよ。判るように話なさいよ」

 シャルウィは泣きながらも二人の話を聞いていたが、話の内容もザネクが笑う理由も判らない。

「それとも女の子が泣いてるのを肴に世間話でもしてるの? 信じないならもういいわよ。早くどっか行きなさいよ」
「うっわ、不細工」

 シャルウィの泣き顔は割と残念な部類であった。しかし今はそれを言及する時ではない。

「ちょっと、ザネク!」
「おっと悪い悪い」

 ザネクはルキアスに小突かれて軌道修正を図る。

「神薬だろ? 信じるさ。ただ手に入る可能性は殆ど無いと思うぜ? もし手に入っても一回分に足りないかも知れない」

 第三階層でアダマントを手に入れたことを考えれば第四階層の宝箱から神薬が出る可能性はある。だが第三階層までにルキアスが手にした宝箱は三桁に達するが、神薬のように高価な物としては第三階層で剣一本分にもならないアダマントを手に入れたのみなのだ。この低確率は第四階層でも続くと思われるため、宝箱から神薬が出るのに期待するのは些か無謀だろう。
 それでも二人の経験上、可能性は否定できない。そしてそれはシャルウィにも伝わったようだ。

「……ほんとに信じてくれるの?」
「ああ。だが今言ったように期待はできないぞ?」
「うん。でも信じてくれて嬉しいわ」

 シャルウィの浮かべる屈託のない笑顔。それを見た途端、何故かザネクが顔を真っ赤にした。
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