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190 反省する男
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翌日からザネクは探索中、常に『傘』を張るようになった。そのためか、使う武器も剣ばかりだ。
「弓は使わないの?」
「昨日で懲りた。持ち替える時に隙がでかすぎたからな」
ザネクは反省する男だった。ただそれが剣を持って探索する理由の全てではなく、剣の方が『傘』の出番が多いからでもある。
とは言えその『傘』はルキアスのとは違って魔物に対して障碍らしい障碍にはならない。ぶつかった時にびっくりするのか、精々一瞬動きが鈍るだけだ。
ルキアスでは何の差違も見出せない一瞬。それでもザネクには意味があったらしい。仕留めたガーゴイルの魔石を抜きながら言う。
「こんなことならもっと早く『傘』を始めるんだったぜ」
この言葉にルキアスはびっくりだ。横目で見た範囲ではザネクの動きに全く違いを感じなかった。
「そんなに違いって有った?」
「目に見えるようなものじゃないがな。間が空くんだ」
「うん。判んない」
ルキアスは情けなさそう両手を挙げてアピールする。
その姿が妙にツボに填ったらしく、ザネクは声を上げた笑った。
「それはそうと、またルキアスの『傘』に登らせてくれないか?」
「うん。でもまた何で?」
「そりゃ、ルキアスの『傘』が目標だからさ。その強度を肌で感じた方が自分の今の位置が判るってもんだ」
「そう言うものなの?」
ルキアスにはその感覚がちょっと判らない。目標にできる誰かが居ないためだ。無論色々な方面でルキアスより遥かに能力の高い人は数多い。しかし方向性が違えば目標になりえない。例えば剣。剣を振らないルキアスにはザネクを手本にする意味を見出せない。そして銃に関しては先人となる知り合いの探索者が居ない。居たのは旅の途中で出会って別れた老いた猟師と甘薯農家の主だけだ。
ともあれ、ルキアスはザネクの要望通りに『傘』を差した。地面から僅かに浮いた位置で上を向けた特大サイズだ。
ザネクは割れても対処できる態勢を取りつつ『傘』に登る。
ところが数秒もしない内に怪訝な顔をして『傘』を思いっきり踏み付けた。
「「えっ!」」
二人の声が重なった。が、その意味は異なる。ルキアスはザネクの突飛な行動に対してだったが、ザネクは『傘』の異様な強度に驚いたのだ。
前回は乗って直ぐに軋み始め、短い時間で砕けた。ところが今回はどうだ。踏み付けてもビクともしない。
「これ、川だって渡れるんじゃないのか?」
「どうだろう?」
ルキアスは考えてみるが、橋のように長くするのは無理そうだと答えた。
「弓は使わないの?」
「昨日で懲りた。持ち替える時に隙がでかすぎたからな」
ザネクは反省する男だった。ただそれが剣を持って探索する理由の全てではなく、剣の方が『傘』の出番が多いからでもある。
とは言えその『傘』はルキアスのとは違って魔物に対して障碍らしい障碍にはならない。ぶつかった時にびっくりするのか、精々一瞬動きが鈍るだけだ。
ルキアスでは何の差違も見出せない一瞬。それでもザネクには意味があったらしい。仕留めたガーゴイルの魔石を抜きながら言う。
「こんなことならもっと早く『傘』を始めるんだったぜ」
この言葉にルキアスはびっくりだ。横目で見た範囲ではザネクの動きに全く違いを感じなかった。
「そんなに違いって有った?」
「目に見えるようなものじゃないがな。間が空くんだ」
「うん。判んない」
ルキアスは情けなさそう両手を挙げてアピールする。
その姿が妙にツボに填ったらしく、ザネクは声を上げた笑った。
「それはそうと、またルキアスの『傘』に登らせてくれないか?」
「うん。でもまた何で?」
「そりゃ、ルキアスの『傘』が目標だからさ。その強度を肌で感じた方が自分の今の位置が判るってもんだ」
「そう言うものなの?」
ルキアスにはその感覚がちょっと判らない。目標にできる誰かが居ないためだ。無論色々な方面でルキアスより遥かに能力の高い人は数多い。しかし方向性が違えば目標になりえない。例えば剣。剣を振らないルキアスにはザネクを手本にする意味を見出せない。そして銃に関しては先人となる知り合いの探索者が居ない。居たのは旅の途中で出会って別れた老いた猟師と甘薯農家の主だけだ。
ともあれ、ルキアスはザネクの要望通りに『傘』を差した。地面から僅かに浮いた位置で上を向けた特大サイズだ。
ザネクは割れても対処できる態勢を取りつつ『傘』に登る。
ところが数秒もしない内に怪訝な顔をして『傘』を思いっきり踏み付けた。
「「えっ!」」
二人の声が重なった。が、その意味は異なる。ルキアスはザネクの突飛な行動に対してだったが、ザネクは『傘』の異様な強度に驚いたのだ。
前回は乗って直ぐに軋み始め、短い時間で砕けた。ところが今回はどうだ。踏み付けてもビクともしない。
「これ、川だって渡れるんじゃないのか?」
「どうだろう?」
ルキアスは考えてみるが、橋のように長くするのは無理そうだと答えた。
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