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187 崖
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翌日。今日は昨日とは別の岩山だ。リベンジを果たした以上、同じ岩山に登る必要は無い。
ルキアスはどこかちぐはぐになった前日の反省を踏まえ、ザネクの動きに合わせるのに腐心する。これまではルキアスが遠距離、ザネクが近接と、役割が完全に分かれていたので動きを合わせるまでもなく、成り行き任せで大丈夫だった。
ところが今はザネクが飛び道具を手にして対応範囲が一部競合するため、調整が必要だ。これを基本的には前衛のザネクに任せる訳には行かない。後に目が付いていれば話は別だが、ザネクにそんな人外要素は全く無い。必然的に大半の時間でザネクを視界に収めている後衛のルキアスが行うことになる。ここはもうできるできないではなく、やらなくてはならないのだ。
そうしてザネクを今まで以上に観察する中、ルキアスは彼が弓と剣を持ち替える際に大きな隙が出来ることに気付いた。弓を『収納』して剣を抜くまでの間はどうしても無防備だ。十分な間合いが有るなら取るに足らない時間だが、弓の間合いから剣の間合いに切り替わる距離では些か余裕が心許ない。この階層の動きの遅いガーゴイルだからどうにでもできているが、もっと速い魔物だったらと想像すると冷や汗が出る。
(でも今指摘するのもな……)
憶え立ての某かを使ってみたくなる気持ちはルキアスにも十二分に判るし、弓を試すなら魔物が弱いこの階層に違いない。それにザネクには付き合って貰っている意識が強いので、苦言のようなものはし難い。
結局、今はルキアス自身がザネクの横に並ぶように移動して、ザネクに出来る隙を埋めるしかないと結論付けた。
ところで今登っている岩山は登り口の反対側は切り立った崖だ。登り始めた時には判らなかったが、道なりに進むと山の裏側へと通じていて目の当たりにした。その切り立った崖に沿った広くはない道の半ばを歩いている。
(どうしてこんな所を登らなきゃいけないんだろう……?)
別に意味は無く、たまたま選んだ岩山がそうだっただけだ。ルキアスはチラッと崖の下を見る。
「ひえっ!」
思わず変な声が出た。
「どうした?」
「足を滑らせたら怖いなって」
「そんな事考えてると、余計に足を滑らすぞ?」
「や、止めて! もっと怖くなるよ!」
「あっはっは!」
ザネクはカラカラと笑うがルキアスは生きた心地がしない。
「もう降りない? 別にここじゃなくたっていいよね?」
「まあ、そうだな。でもこんな場所の上には宝箱が有りそうじゃないか?」
「あ……」
言われてみればそんな気がしないでもないルキアスだ。
「どうする? やっぱり降りるか?」
「……もうちょっと行ってみる?」
ルキアスは宝箱の誘惑に負けた。
「じゃあ、登ろうぜ」
ザネクは躊躇うことなく先を進む。ルキアスもそれに続く。しかしここで引き返すべきだったかも知れない。
頂上がもう間近に見え始めた時、頂上付近からガーゴイルが現れた。狭い場所でもあり、ザネクが射線に近い位置になるのでルキアスは手が出せない。
そんな中、まだ距離があるからと、ザネクが矢を放つが外れた。直ぐに剣に持ち替えようとする。ところが、ガーゴイルは真っ逆さまに落ちる勢いでいつもを数倍する速さだ。ギャアと鳴き声を傍で聞いた時には既に遅く、持ち替えの隙を突かれる形でザネクが外に向けて弾き飛ばされた。
崖の外に浮くザネク。ルキアスは咄嗟に手を伸ばして捉まえ、崖まで引き戻すが、その反動で逆にルキアスが宙を舞った。
ルキアスはどこかちぐはぐになった前日の反省を踏まえ、ザネクの動きに合わせるのに腐心する。これまではルキアスが遠距離、ザネクが近接と、役割が完全に分かれていたので動きを合わせるまでもなく、成り行き任せで大丈夫だった。
ところが今はザネクが飛び道具を手にして対応範囲が一部競合するため、調整が必要だ。これを基本的には前衛のザネクに任せる訳には行かない。後に目が付いていれば話は別だが、ザネクにそんな人外要素は全く無い。必然的に大半の時間でザネクを視界に収めている後衛のルキアスが行うことになる。ここはもうできるできないではなく、やらなくてはならないのだ。
そうしてザネクを今まで以上に観察する中、ルキアスは彼が弓と剣を持ち替える際に大きな隙が出来ることに気付いた。弓を『収納』して剣を抜くまでの間はどうしても無防備だ。十分な間合いが有るなら取るに足らない時間だが、弓の間合いから剣の間合いに切り替わる距離では些か余裕が心許ない。この階層の動きの遅いガーゴイルだからどうにでもできているが、もっと速い魔物だったらと想像すると冷や汗が出る。
(でも今指摘するのもな……)
憶え立ての某かを使ってみたくなる気持ちはルキアスにも十二分に判るし、弓を試すなら魔物が弱いこの階層に違いない。それにザネクには付き合って貰っている意識が強いので、苦言のようなものはし難い。
結局、今はルキアス自身がザネクの横に並ぶように移動して、ザネクに出来る隙を埋めるしかないと結論付けた。
ところで今登っている岩山は登り口の反対側は切り立った崖だ。登り始めた時には判らなかったが、道なりに進むと山の裏側へと通じていて目の当たりにした。その切り立った崖に沿った広くはない道の半ばを歩いている。
(どうしてこんな所を登らなきゃいけないんだろう……?)
別に意味は無く、たまたま選んだ岩山がそうだっただけだ。ルキアスはチラッと崖の下を見る。
「ひえっ!」
思わず変な声が出た。
「どうした?」
「足を滑らせたら怖いなって」
「そんな事考えてると、余計に足を滑らすぞ?」
「や、止めて! もっと怖くなるよ!」
「あっはっは!」
ザネクはカラカラと笑うがルキアスは生きた心地がしない。
「もう降りない? 別にここじゃなくたっていいよね?」
「まあ、そうだな。でもこんな場所の上には宝箱が有りそうじゃないか?」
「あ……」
言われてみればそんな気がしないでもないルキアスだ。
「どうする? やっぱり降りるか?」
「……もうちょっと行ってみる?」
ルキアスは宝箱の誘惑に負けた。
「じゃあ、登ろうぜ」
ザネクは躊躇うことなく先を進む。ルキアスもそれに続く。しかしここで引き返すべきだったかも知れない。
頂上がもう間近に見え始めた時、頂上付近からガーゴイルが現れた。狭い場所でもあり、ザネクが射線に近い位置になるのでルキアスは手が出せない。
そんな中、まだ距離があるからと、ザネクが矢を放つが外れた。直ぐに剣に持ち替えようとする。ところが、ガーゴイルは真っ逆さまに落ちる勢いでいつもを数倍する速さだ。ギャアと鳴き声を傍で聞いた時には既に遅く、持ち替えの隙を突かれる形でザネクが外に向けて弾き飛ばされた。
崖の外に浮くザネク。ルキアスは咄嗟に手を伸ばして捉まえ、崖まで引き戻すが、その反動で逆にルキアスが宙を舞った。
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