生活魔法は万能です

浜柔

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185 再び第三階層

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 ルキアスとザネクは二人で早速翌日から第三階層に向かった。
 その階層を繋ぐ螺旋回廊を歩く暇な時間を使ってルキアスはザネクに尋ねてみる。

「ザネクってこの二ヶ月間は何をしていたの?」

 ザネクもダンジョンの探索をしていたのなら、朝晩にダンジョンへと通う道すがらにそこそこ会っても良さそうなものだ。にも拘わらず意外なまでに会わなかった。

「弓の練習だ」

 ザネクは答えを躊躇わなかった。別に隠し立てするものでもないので当たり前なのだが、ルキアスははぐらかされる覚悟をしていたのだ。

「お陰で左腕はパンパンだし、左手の親指の付け根は潰れるかと思ったし、右手の指なんか千切れ飛ぶかと思ったぜ」

 ルキアスが以前に一度だけ「運び屋さん」に弦を引かせて貰った時に感じた通りの答えだ。

「それってもう平気なの? ダンジョン探索も難しいんじゃ……」
「ああ。もうピークは過ぎたからな。後はもう慣らすだけだ。それよりルキアスはどうしてたんだ?」
「うん。それは……」

 ルキアスはここ二ヵ月間の話をした。
 お互いがそれぞれ頑張ったのを確認し合った時間であった。




 第三階層に入ったら示し合わせるまでもなく前回のリベンジに向かう。前回と同じ岩山だ。
 そして前回ガーゴイルを見付けた地点。射撃の練習ばかりで魔物を見分ける練習をしていないルキアスにはやはりガーゴイルがどこに居るのか判らない。が、今回も見極めたザネクの指示に従って迎撃準備を整える。
 ガーゴイルが動く。またもルキアスの目はここでガーゴイルを捉えた。
 まだ距離があるため、ルキアスは照準器を使って狙いを定める。ライフルには頭より上に上げたら危険と言った不安は無いので落ち着いたものだ。引き金に指を添え、ぐっと力を籠め……ようとした時、視界を何かが横切ってガーゴイルが視界から消えた。

(え!? どこ!?)

 ルキアスは内心で動揺しつつガーゴイルを探す。

「うっし!」

 声に釣られて振り向けば、ザネクが弓を片手にガッツポーズを決めている。横切ったのはザネクが放った矢だったのだ。なるほどザネクとガーゴイルが居た地点とを結ぶ延長線上に矢の刺さったガーゴイルが転がっている。
 しかしルキアスは喜んでばかりもいられなかった。ガーゴイルの石の身体にあっさり矢が刺さるのも疑問だが、そんな話ではない。危うく弾丸を無駄撃ちするところだったのだ。原因は遠距離をどう分担するかなど、まるで決めていなかったことである。
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