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181 慣れ
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オークは出て欲しくない時に出るものだ。いや、そんな筈もなく、ルキアスにとってそんな印象なだけだ。彼は二桁に近いコボルトから逃げている最中に遭遇した。
ルキアスが再び独りで活動を始めて一〇日ばかりが経つ。ほぼゴブリンとコボルトのみを相手にしていたが、弾丸の費用と生活費を賄えるまでになった。昨日の獲物など四〇頭近い。何もせずとも向こうから寄って来るので探す手間が要らず、小さい魔物なので魔石の回収に然程時間が掛からない。そして魔石だけと割り切れば『収納』の容量を気にする必要も無い。ゴブリンやコボルトの魔石なら一万個だって『収納』可能だ。
それで調子に乗った……訳ではないが、慣れは出ていた。最初に二頭のコボルトを軽い気持ちで相手にしていた。ところが間合いを取るために移動した先に別のコボルトがまた一頭、また二頭と増えた。さすがに二桁を超えては多すぎるので逃げに徹した。
コボルトやゴブリンは逃げていれば割と簡単に諦めてどこかへ行く。ただ逃げた先で別の個体に遭遇することもあって、必ずしも追って来る数が減るとは限らない。入れ替わりで追い掛けられれば思いの外遠くまで逃げる羽目になる。
今回もそうしてかなり遠くまで逃げ、もう逃げるのも限界だと反撃のタイミングを図っていたその先に二頭のオークが居たのだ。
(こんな時に!)
ルキアスは即座に方向転換。ほぼ直角に曲がって逃げを打つ。だがオークにも気付かれて追い掛けられる。その様子を『鏡』で見て、内心で舌打ちする。実際にやってしまえば息が乱れて悪い方にしか転ばない。
(銃を後に向けて撃てればいいのに!)
銃口を後ろに向けて引き金を引くのは可能だ。しかし無理な体勢になるので力を入れ辛く、反動を抑え切れないのがやらずとも判る。もしやってしまえば指を痛めてしまうだろう。
(でも横なら!)
左へと進路を変え、オークを左に見るように位置取りする。走りながら撃つのはまだ無理だ。発射が可能か不可能かだけで言えば可能だが、照準もへったくれもあったものではないのでまぐれ当たりに期待するしかない射撃になる。それでは意味が無い。だから一旦足を止め、軽く身体を捻って引き金を引いたらまた即座に走り出す。
何かが地面に落ちる音が聞こえた。『鏡』を向ければオークが倒れている。
「やっ……」
ルキアスは「やった!」と叫びそうになって堪えた。まだオークは一頭残っている。しかし一頭だけならやりようはある。
足を止めて振り返り、照準器で照準を定めて引き金を引く。この時にはもうほんの数歩先まで接近していたオークの眉間を弾丸は貫いた。いくら腰だめでの射撃を練習しているからと言って、優先されるのは死なないこと、怪我をしないことなのだ。事の軽重を違えたりはしないルキアスだった。
オークを倒したことで大きな脅威は去った。残るはコボルトの五頭。何頭かは途中でどこかへ行ったらしい。
ルキアスは尚も逃げつつ弾倉に弾丸を籠める。そしてボルトを動かし弾丸を装填。引き金を引く。
全てを倒すまでにそう時間は掛からなかった。
ルキアスが再び独りで活動を始めて一〇日ばかりが経つ。ほぼゴブリンとコボルトのみを相手にしていたが、弾丸の費用と生活費を賄えるまでになった。昨日の獲物など四〇頭近い。何もせずとも向こうから寄って来るので探す手間が要らず、小さい魔物なので魔石の回収に然程時間が掛からない。そして魔石だけと割り切れば『収納』の容量を気にする必要も無い。ゴブリンやコボルトの魔石なら一万個だって『収納』可能だ。
それで調子に乗った……訳ではないが、慣れは出ていた。最初に二頭のコボルトを軽い気持ちで相手にしていた。ところが間合いを取るために移動した先に別のコボルトがまた一頭、また二頭と増えた。さすがに二桁を超えては多すぎるので逃げに徹した。
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今回もそうしてかなり遠くまで逃げ、もう逃げるのも限界だと反撃のタイミングを図っていたその先に二頭のオークが居たのだ。
(こんな時に!)
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(銃を後に向けて撃てればいいのに!)
銃口を後ろに向けて引き金を引くのは可能だ。しかし無理な体勢になるので力を入れ辛く、反動を抑え切れないのがやらずとも判る。もしやってしまえば指を痛めてしまうだろう。
(でも横なら!)
左へと進路を変え、オークを左に見るように位置取りする。走りながら撃つのはまだ無理だ。発射が可能か不可能かだけで言えば可能だが、照準もへったくれもあったものではないのでまぐれ当たりに期待するしかない射撃になる。それでは意味が無い。だから一旦足を止め、軽く身体を捻って引き金を引いたらまた即座に走り出す。
何かが地面に落ちる音が聞こえた。『鏡』を向ければオークが倒れている。
「やっ……」
ルキアスは「やった!」と叫びそうになって堪えた。まだオークは一頭残っている。しかし一頭だけならやりようはある。
足を止めて振り返り、照準器で照準を定めて引き金を引く。この時にはもうほんの数歩先まで接近していたオークの眉間を弾丸は貫いた。いくら腰だめでの射撃を練習しているからと言って、優先されるのは死なないこと、怪我をしないことなのだ。事の軽重を違えたりはしないルキアスだった。
オークを倒したことで大きな脅威は去った。残るはコボルトの五頭。何頭かは途中でどこかへ行ったらしい。
ルキアスは尚も逃げつつ弾倉に弾丸を籠める。そしてボルトを動かし弾丸を装填。引き金を引く。
全てを倒すまでにそう時間は掛からなかった。
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