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浜柔

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174 タケノコ

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 昼になり、昼食だ。ルキアスは掘ったタケノコを早速食べようと考えた。

「食べ方って、どうするんだろう?」
「さあ?」

 何とはなしに尋ねてみたものの、ザネクが知っている筈もなかった。

「外側の皮は煮ても焼いても食べられそうにないから、剥いてみるね」

 ルキアスはタケノコ皮を剥く。すると紫掛かった茶色の下から薄い黄緑の部分が現れた。触ってみれば弾力のある柔らかさだ。

「んー、取り敢えず焼いてみよう」

 フライパンを『収納』から取り出して載せ、『加熱』する。煮炊きする時と同じで一〇〇度よりちょっと高いくらいの温度だ。初めて焼くので時折箸を刺して焼け具合を確かめながら焼くこと二〇分ばかり。タケノコが焼き上がった。

「かなり時間が掛かったな」

 ザネクは待ちくたびれた様子だ。

「だけど芋より早かったよ」
「そうなのか?」
「うん。芋は丸のまま焼いたら一時間くらい掛かっちゃうから。それより食べてみようよ」
「おう」

 ルキアスはタケノコを半分に割って一方をザネクに渡した。

「中ってこんなんなんだね……」

 ひだのようになっていて、初めての目には少々不気味に映る。
 だけど食べられない程の見た目ではない。一口囓る。

「あ、結構美味しい!」
「味が足りないが、悪くはないな……」

 味が足りないのにはルキアスも同意だ。何せ味付けしていない。だから残りには塩を振る。たったそれだけだったが、そこそこ美味しく食べた。
 ところがこれに気をよくして翌日にも丸焼きにして食べた時にはエグさで悶絶する羽目に陥ってしまう。ロマにアク抜きをして醤油で煮れば美味しいのだと聞くまで残りをどうしたものかと悩むのだが、今のルキアスにそんな未来を知る是も無い。
 だからいそいそと掘ったタケノコを『収納』に仕舞い込む。

(食料ゲット!)

 ともあれ、食後はいよいよ銃の試し撃ちだ。竹を切り倒して束ねて的を作る。ついでに今後の何かの加工材料に二、三本倒して適当な長さに切り分けて『収納』に入れた。
 ルキアスの買った銃はボルトアクションの五連発ライフルだ。自作の銃と似たような方式だが、ボルトの動かし方と固定位置が異なる。銃の幅は蒸気タンクを持たない分だけすっきりして薄い。自作の銃では思いっきり指を広げて保持していたが、軽く曲げての保持になる。
 ボルトを起こして引き、押し込んで倒す。これで装填完了。そして発射準備も完了だ。狙いを定めて引き金を引けば、破裂音と共に弾丸が飛び出して明後日の方向に飛んで行った。
 想像以上に反動が強くて銃口が跳ね上がってしまったのだ。
 だが失敗は繰り返さない。保持の仕方を少し工夫して銃口が跳ね上がりを抑え、次を発射する。更に続けて三発。命中精度は自作の銃より高いようだ。
 五発を撃ち尽くしたのでストリッパー・クリップで予め用意していた弾丸を弾倉に入れる。そしてまた五発を撃つ。
 ところがその一発ごとに五〇ダールが消えると頭に過ぎり、次第に引き金が重く感じたルキアスだった。

(やっぱり普段使いは自作の銃にしよう)

 コストが気になって狩りもままならないと考えたのだ。
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