生活魔法は万能です

浜柔

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167 斯くして

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 ダンジョンの出口へ向かう螺旋回廊は血塗れの様相ながら、倒されただろう魔物は全て片付けられていた。

「朝を待たなくても良かった感じだね」
「あんだけ群れてたのにな。ガノス兄ちゃん達凄ぇな」
「いや、そこまでとんでもない数でもなかったぞ?」

 ガノスは小首を傾げた。

「あー、それはメイが一発『どーん』てやったからだ。そのせいでオークが団体で逃げてったしな」
「なるほどー」

 ロマの話にルキアスは頷いた。だが直ぐに違和感がもたげる。

「あれ? でも、団体で逃げたって……、もしかしてぼく達をオークが襲って来たのも、ロマさんとメイナーダさんがぼくを捜しに来たのも……」
「ル、ルキアスちゃん!? こ、細かい事は気にしなくていいのよ!? みんな無事だったんだからねぇ?」

 挙動不審気味なメイナーダに凄みのある笑みで迫られ、ルキアスはコクコクと頷いた。
 斯くして真実は闇に葬られるのであった。

 ダンジョンを出たルキアス達が最初に向かったのは買取所だ。セス、バンテ、チルベの三人も伴っている。
 これはロマの意見に従ってのことで、ロマがそう主張した理由は直ぐに判明した。セス達三人がオークの魔石を買取所に提示すると、担当者があからさまに疑いの目を向けたのだ。日頃ホーンラビットやカピバラを二〇頭も持ち込めば良い方の探索者がいきなりオークの魔石を一〇〇個近く持ち込めば疑わしくもなるだろう。ロマが理由を説明したことで担当者も納得したが、もし彼らだけだったら拘束等をされたかも知れない。ロマはそれを予見していたのである。

 買取所を出て直ぐにセス、バンテ、チルベの三人が別れて帰って行った。
 そして彼らの姿が見えなくなるのを待っていたように、エリリースが他の五人に向けて頭を下げた。

「皆様申し訳ございません。わたくしは浅はかでしたわ。ダンジョンを甘く見すぎていました。今のわたくしはダンジョンに挑むには力不足。もっと精進してからでなければならないと痛感いたしましたわ」
「あ、うん……」

 ルキアスは相槌以上の言葉を持たなかった。できれば「ダンジョンには二度と行かない」と言って欲しいのに、エリリースにそんな気は無さそうなので返答に困るのだ。他の四人もどうやら似たような心情らしい。
 そしてエリリースがリュミアに連れられて帰宅の途に就いたところで完全に解散となった。
 ルキアスも無料宿泊所へと帰る。

(今日は勿論だけど、明日も休もうかな……)

 疲れが取れるかも怪しく、オークの大群が発生した直後で何が起きるか判らないとの不安もある。それにルキアスとザネクもロマからセス達と同じ条件に相当する金額を渡されたので懐に余裕が出来ている。一日くらい休んでも罰は当たらないだろう。
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