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164 黒焦げ
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ルキアスは見えているものに対する脳内の処理が追い付かず、呆然とエリリースを見詰めてしまう。が、処理が追い付くに順って顔に血が上って真っ赤に染まる。
対するエリリースも顔を真っ赤にして身体を少しでも隠そうと焦りまくる。しかし下手に動けば動くほどに見えてはいけないものがルキアスから見えたりもする。
「いつまでこっちを見てますの!?」
「ご、ごめん!」
エリリースに怒られ、ルキアスは慌てて後ろを向くのだが……。
「何だ!? 何が起きた!?」
悲鳴を聞いた四人が駆け寄って来る。ルキアスは慌ててロマとザネクの前に大きく手を振りながら立ち塞がった。
「ダメ! ダメ! 見ちゃダメ!」
幸いにもロマとザネクが走って来たのは同じ方角だ。そしてそちらからでは無事な毛布のカーテンに遮られてエリリースの姿は見えない。
しかし「見るな」と言われれば見たくなるのも人情。それに悲鳴を聞いて駆け付けたのだから、原因が気にもなる。二人は「いや、悲鳴がな」とルキアスを押し退けるようにして毛布の向こうを覗こうとする。と、その時。
「がっ!」
「わっ!」
二人は風で飛ばされた水の礫で目潰しされた。ルキアスが何事かと水の礫が飛んできただろう方向を振り向けばリュミアの姿。だが次の瞬間には水の礫が視界一杯に広がり、目に激突して悶絶する羽目に陥った。
「あらあらルキアスちゃんたら少し目を離した間においたしちゃったのね?」
「してませんよ!」
ルキアスは目をしぱしぱさせながら反論したものの、メイナーダを振り向けば目を三日月にして笑っている。
(からかわれた!)
そう察したルキアスが渋い顔をすれば、メイナーダはコロコロと声を上げて笑う。
「ひとまず男性陣はオークの魔石の回収でもしててちょうだい。怖いお姉さんが睨んでるから、ね?」
ウインクしながらのメイナーダの言葉がどこまで本気のものか計りかねはするものの、男達はまた目潰しを食らっては堪らないと、その指示に従った。
改めて見ればオークの群れは黒焦げだ。それが数百頭は転がっている。少し離れてひしゃげたオークもちらほらと見える。
「これ全部……?」
「一撃でこれってどんな火力だ?」
「ほら、そこ見てみろよ。ホーンラビットも混じってたようだぞ。この程度の大きさじゃ、魔石まで粉々だ」
ロマに言われてルキアスが目を向ければ、ホーンラビットの脚の形の炭が転がり、魔石の欠片らしき物が散らばっている。
「まあ、オークの魔石だけ拾えばいいと思えば手間が省けるがな」
ロマは半笑いでそう言うが、オークだけでも手間を考えれば気が遠くなりそうなルキアスである。
対するエリリースも顔を真っ赤にして身体を少しでも隠そうと焦りまくる。しかし下手に動けば動くほどに見えてはいけないものがルキアスから見えたりもする。
「いつまでこっちを見てますの!?」
「ご、ごめん!」
エリリースに怒られ、ルキアスは慌てて後ろを向くのだが……。
「何だ!? 何が起きた!?」
悲鳴を聞いた四人が駆け寄って来る。ルキアスは慌ててロマとザネクの前に大きく手を振りながら立ち塞がった。
「ダメ! ダメ! 見ちゃダメ!」
幸いにもロマとザネクが走って来たのは同じ方角だ。そしてそちらからでは無事な毛布のカーテンに遮られてエリリースの姿は見えない。
しかし「見るな」と言われれば見たくなるのも人情。それに悲鳴を聞いて駆け付けたのだから、原因が気にもなる。二人は「いや、悲鳴がな」とルキアスを押し退けるようにして毛布の向こうを覗こうとする。と、その時。
「がっ!」
「わっ!」
二人は風で飛ばされた水の礫で目潰しされた。ルキアスが何事かと水の礫が飛んできただろう方向を振り向けばリュミアの姿。だが次の瞬間には水の礫が視界一杯に広がり、目に激突して悶絶する羽目に陥った。
「あらあらルキアスちゃんたら少し目を離した間においたしちゃったのね?」
「してませんよ!」
ルキアスは目をしぱしぱさせながら反論したものの、メイナーダを振り向けば目を三日月にして笑っている。
(からかわれた!)
そう察したルキアスが渋い顔をすれば、メイナーダはコロコロと声を上げて笑う。
「ひとまず男性陣はオークの魔石の回収でもしててちょうだい。怖いお姉さんが睨んでるから、ね?」
ウインクしながらのメイナーダの言葉がどこまで本気のものか計りかねはするものの、男達はまた目潰しを食らっては堪らないと、その指示に従った。
改めて見ればオークの群れは黒焦げだ。それが数百頭は転がっている。少し離れてひしゃげたオークもちらほらと見える。
「これ全部……?」
「一撃でこれってどんな火力だ?」
「ほら、そこ見てみろよ。ホーンラビットも混じってたようだぞ。この程度の大きさじゃ、魔石まで粉々だ」
ロマに言われてルキアスが目を向ければ、ホーンラビットの脚の形の炭が転がり、魔石の欠片らしき物が散らばっている。
「まあ、オークの魔石だけ拾えばいいと思えば手間が省けるがな」
ロマは半笑いでそう言うが、オークだけでも手間を考えれば気が遠くなりそうなルキアスである。
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