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137 進歩
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弾丸はホーンラビットに掠った。ビクッとなったホーンラビットは進路を変え、ルキアスの左方へと姿を眩ませる。
また仕留められなかった。だが掠っただけでも前の二発に比べて前進だ。威力を減らした分だけ反動が少なく、ブレも少なくなっている。検証する暇が有ればするところだが、今はそんな場合ではない。
「『傘』!」
右方からテント脇を駆け抜け襲い来るホーンラビットを斜め上へと弾く位置取りに『傘』を差しながら後へ転がり避ける。その勢いで頭上へと振った左手で銃口を下に向けて注水。頭側から聞こえる音を右へと転がりながら避け、すかさず立ち上がって『加熱』、装弾。そしてまた逃げる。
ルキアスから見てホーンラビットは片側に集まった。そして三羽ともルキアスを追い掛けて来る。
これならザネクは安心だ。ルキアス自身は全く安心できないが。
次弾の発射準備が整った。ルキアスは足を止めて振り返り、狙いを定める。あまり悠長にしても居られないが、慌ててはまた外れるだけだ。
先頭を走るホーンラビットを照準に捉え、引き金を引く。
「『傘』!」
間髪容れずに後続のホーンラビットへの牽制に『傘』を差し、右へ跳ぶ。ゴンと鈍い音がして『傘』が砕けるが、衝突コースにあったホーンラビットの進路がずれ、ルキアスは避け切ることに成功する。
直ぐに次弾を用意する。ルキアスはこの緊張感の中、今まで繰り返した発射までの準備が急速に洗練され、発射可能になるまでの時間は更に短縮されている。
左右に分かれ、ルキアスを挟み撃ちにする位置取りをした二羽のホーンラビットが同時に襲い掛かって来る。
「『傘』!」
ルキアスは一方を『傘』で牽制し、もう一方へと銃口を向ける。そしてホーンラビットが『傘』にぶつかってゴンと鈍い音が響くのを合図にしたように引き金を引く。
弾丸はホーンラビットの腹部を貫いた。
(よし!)
腹部を負傷したホーンラビットがのたうち回る。恐らく致命傷だ。だからこれを横目に放置して、ルキアスは次弾を用意する。
耳を澄ませて気配を探る。聞こえる音は一つ。近付いて来る。
「『傘』! あれ?」
ルキアスは牽制に『傘』を差す。が、違和感があった。前の『傘』が消えてない感覚だ。その疑問に気を取られ、注意がホーンラビットから逸れてしまう。
これは時として致命的な油断。だが、また響いたゴンと言う『傘』にホーンラビットがぶつかる音に助けられる。音で逸れた気を元に戻したのだ。ルキアスはホーンラビットを狙うべく銃をそちらへ向ける。ホーンラビットは既に移動した後だった。
ところが奇妙なものを見た。
(『傘』が残ってる!?)
『傘』はホーンラビットを往なす形で展開しているが、これまで一撃で破壊されていた。それが残っているのだ。
しかし驚いてばかりもいられない。ホーンラビットはまだ健在だ。耳を澄ませて音を探りつつ目も凝らす。
そうする間に腹部を射抜いたホーンラビットが動かなくなった。
(後、二羽!)
ガサリと音がした。テントを挟んだ反対側だ。
ルキアスは慌てて右斜め前へ走る。テントが射線に入っていたら銃撃ができない。万が一にもザネクに中てる訳には行かない。
ホーンラビットもルキアスの動きに合わせてテントから離れる方向へと進路を変える。
「『か……」
ルキアスは反射的に『傘』を展開しようとして止めた。代わりに引き金を引く。
弾丸はホーンラビットの眉間を捉えた。
(後、一羽!)
だが耳を澄ませても音はしない。
(逃げた? いや、でも……)
ルキアスはテントの周りを回りながら残る一羽の行方を探す。
そうしてテントを半周した所で、倒れているホーンラビットを発見した。撃った直後に『傘』を展開しなければならず、着弾確認をしていなかった一発が中っていたのだ。
「やっ! た!」
ルキアスはザネクを守り切った感慨に浸る。
だがそれも新たに草の擦れる音が響くまでの短い時間しか許されなかった。
(またホーンラビット!?)
音は五つ。
(こうなったらとことんやってやる!)
ルキアスは銃の発射準備を整えた。
また仕留められなかった。だが掠っただけでも前の二発に比べて前進だ。威力を減らした分だけ反動が少なく、ブレも少なくなっている。検証する暇が有ればするところだが、今はそんな場合ではない。
「『傘』!」
右方からテント脇を駆け抜け襲い来るホーンラビットを斜め上へと弾く位置取りに『傘』を差しながら後へ転がり避ける。その勢いで頭上へと振った左手で銃口を下に向けて注水。頭側から聞こえる音を右へと転がりながら避け、すかさず立ち上がって『加熱』、装弾。そしてまた逃げる。
ルキアスから見てホーンラビットは片側に集まった。そして三羽ともルキアスを追い掛けて来る。
これならザネクは安心だ。ルキアス自身は全く安心できないが。
次弾の発射準備が整った。ルキアスは足を止めて振り返り、狙いを定める。あまり悠長にしても居られないが、慌ててはまた外れるだけだ。
先頭を走るホーンラビットを照準に捉え、引き金を引く。
「『傘』!」
間髪容れずに後続のホーンラビットへの牽制に『傘』を差し、右へ跳ぶ。ゴンと鈍い音がして『傘』が砕けるが、衝突コースにあったホーンラビットの進路がずれ、ルキアスは避け切ることに成功する。
直ぐに次弾を用意する。ルキアスはこの緊張感の中、今まで繰り返した発射までの準備が急速に洗練され、発射可能になるまでの時間は更に短縮されている。
左右に分かれ、ルキアスを挟み撃ちにする位置取りをした二羽のホーンラビットが同時に襲い掛かって来る。
「『傘』!」
ルキアスは一方を『傘』で牽制し、もう一方へと銃口を向ける。そしてホーンラビットが『傘』にぶつかってゴンと鈍い音が響くのを合図にしたように引き金を引く。
弾丸はホーンラビットの腹部を貫いた。
(よし!)
腹部を負傷したホーンラビットがのたうち回る。恐らく致命傷だ。だからこれを横目に放置して、ルキアスは次弾を用意する。
耳を澄ませて気配を探る。聞こえる音は一つ。近付いて来る。
「『傘』! あれ?」
ルキアスは牽制に『傘』を差す。が、違和感があった。前の『傘』が消えてない感覚だ。その疑問に気を取られ、注意がホーンラビットから逸れてしまう。
これは時として致命的な油断。だが、また響いたゴンと言う『傘』にホーンラビットがぶつかる音に助けられる。音で逸れた気を元に戻したのだ。ルキアスはホーンラビットを狙うべく銃をそちらへ向ける。ホーンラビットは既に移動した後だった。
ところが奇妙なものを見た。
(『傘』が残ってる!?)
『傘』はホーンラビットを往なす形で展開しているが、これまで一撃で破壊されていた。それが残っているのだ。
しかし驚いてばかりもいられない。ホーンラビットはまだ健在だ。耳を澄ませて音を探りつつ目も凝らす。
そうする間に腹部を射抜いたホーンラビットが動かなくなった。
(後、二羽!)
ガサリと音がした。テントを挟んだ反対側だ。
ルキアスは慌てて右斜め前へ走る。テントが射線に入っていたら銃撃ができない。万が一にもザネクに中てる訳には行かない。
ホーンラビットもルキアスの動きに合わせてテントから離れる方向へと進路を変える。
「『か……」
ルキアスは反射的に『傘』を展開しようとして止めた。代わりに引き金を引く。
弾丸はホーンラビットの眉間を捉えた。
(後、一羽!)
だが耳を澄ませても音はしない。
(逃げた? いや、でも……)
ルキアスはテントの周りを回りながら残る一羽の行方を探す。
そうしてテントを半周した所で、倒れているホーンラビットを発見した。撃った直後に『傘』を展開しなければならず、着弾確認をしていなかった一発が中っていたのだ。
「やっ! た!」
ルキアスはザネクを守り切った感慨に浸る。
だがそれも新たに草の擦れる音が響くまでの短い時間しか許されなかった。
(またホーンラビット!?)
音は五つ。
(こうなったらとことんやってやる!)
ルキアスは銃の発射準備を整えた。
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