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128 迎撃
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迎撃とは言っても、振り返って殴り掛かれば済むものではない。もしもルキアスがそれをしたなら反撃を受けて天に召されてしまう。ルキアスが行うのは射撃だ。
ところが走りながらでは手にする銃が揺れて目測できず、『湧水』や『加熱』の狙いが定まらない。蒸気タンクに蒸気を溜めるには立ち止まる必要がある。
「ザネク! 一〇秒だけオークの足止めお願い!」
「おう! 任せとけ!」
ルキアスはザネクが立ち止まるのに合わせて立ち止まり、蒸気タンクに『湧水』で水を入れ、栓棒を押し込み、弾丸を籠めてから『加熱』を始める。『加熱』し始めさえすれば多少動いても維持は可能だ。
この間にもオークが迫り、剣と棍棒が打ち合う鈍い音が響く。
ルキアスはその音に重なるようなタイミングで声を上げた。
「いいよ! 逃げて!」
「おう!」
ルキアスが先に逃げ、ザネクが自身の逃げ出す切っ掛けを作るために剣をオークへと叩き付ける。正面切ったその剣は棍棒に跳ね返されるが、これこそザネクの意図だ。弾かれる勢いそのままに遁走する。
オークは元々数秒遅れで追い掛けて来ていたこともあり、ザネクが剣を交えたのは最初の一合と、逃げ出す切っ掛け作りの一合の都合二合のみに終わった。ザネクが無傷ならオークもまた無傷のままだ。
それから一分ばかり逃げたところでルキアスの準備が整った。
「ザネク、撃てるよ!」
「おう!」
二人は立ち止まって振り返る。先頭のオークはザネクに任せ、ルキアスは次のオークを狙う。確実に仕留めなければまたやり直しだ。だから確実にオークを貫けるよう、今回はいつもより少し温度を高くしている。そして十分に引き付ける。
先頭のオークが棍棒を振り上げ振り下ろす。その棍棒をザネクが剣で弾く。
ここで漸くルキアスは引き金を引いた。バァンと音を立てて発射された弾丸は狙い違わず間近に迫っていたオークの眉間を貫いた。
ところがオークはまだ走り続ける。
「『傘』!」
ルキアスは咄嗟に『傘』を展開しながら横に跳ぶ。何かあったらとにかく『傘』のルキアスである。
『傘』はオークの体当たりで脆くも砕けるが、これを切っ掛けにしたようにオークの身体が傾ぎ、前のめりで倒れ臥した。
「やっ、た!」
まだ倒せないと思っていたオークを倒せたのだから感慨も一入だ。
「おう、ルキアス。上手くやったな」
ザネクである。その普段と変わらない声音にルキアスは「ありがとう」と言いつつも訝しげに振り向けば、ザネクは二頭のオークを倒し終えていた。
「あれ? オーク……」
「倒したぞ」
「うん。見れば判るけど……、もしかしてザネクってオーク二頭相手でも勝てた?」
「まあな。だが今日の俺はルキアスのサポートだ。ルキアスが逃げると言えば逃げるぜ」
「ぐはっ! そうだったのか……」
当然とばかりのザネクの言葉に、ルキアスは無駄に逃げていたと知った。
(有り難いんだけど! 有り難いんだけど!)
何となく釈然とせず、心の中で叫ぶルキアス。それでも一応は一つの目標を達成したのであった。
ところが走りながらでは手にする銃が揺れて目測できず、『湧水』や『加熱』の狙いが定まらない。蒸気タンクに蒸気を溜めるには立ち止まる必要がある。
「ザネク! 一〇秒だけオークの足止めお願い!」
「おう! 任せとけ!」
ルキアスはザネクが立ち止まるのに合わせて立ち止まり、蒸気タンクに『湧水』で水を入れ、栓棒を押し込み、弾丸を籠めてから『加熱』を始める。『加熱』し始めさえすれば多少動いても維持は可能だ。
この間にもオークが迫り、剣と棍棒が打ち合う鈍い音が響く。
ルキアスはその音に重なるようなタイミングで声を上げた。
「いいよ! 逃げて!」
「おう!」
ルキアスが先に逃げ、ザネクが自身の逃げ出す切っ掛けを作るために剣をオークへと叩き付ける。正面切ったその剣は棍棒に跳ね返されるが、これこそザネクの意図だ。弾かれる勢いそのままに遁走する。
オークは元々数秒遅れで追い掛けて来ていたこともあり、ザネクが剣を交えたのは最初の一合と、逃げ出す切っ掛け作りの一合の都合二合のみに終わった。ザネクが無傷ならオークもまた無傷のままだ。
それから一分ばかり逃げたところでルキアスの準備が整った。
「ザネク、撃てるよ!」
「おう!」
二人は立ち止まって振り返る。先頭のオークはザネクに任せ、ルキアスは次のオークを狙う。確実に仕留めなければまたやり直しだ。だから確実にオークを貫けるよう、今回はいつもより少し温度を高くしている。そして十分に引き付ける。
先頭のオークが棍棒を振り上げ振り下ろす。その棍棒をザネクが剣で弾く。
ここで漸くルキアスは引き金を引いた。バァンと音を立てて発射された弾丸は狙い違わず間近に迫っていたオークの眉間を貫いた。
ところがオークはまだ走り続ける。
「『傘』!」
ルキアスは咄嗟に『傘』を展開しながら横に跳ぶ。何かあったらとにかく『傘』のルキアスである。
『傘』はオークの体当たりで脆くも砕けるが、これを切っ掛けにしたようにオークの身体が傾ぎ、前のめりで倒れ臥した。
「やっ、た!」
まだ倒せないと思っていたオークを倒せたのだから感慨も一入だ。
「おう、ルキアス。上手くやったな」
ザネクである。その普段と変わらない声音にルキアスは「ありがとう」と言いつつも訝しげに振り向けば、ザネクは二頭のオークを倒し終えていた。
「あれ? オーク……」
「倒したぞ」
「うん。見れば判るけど……、もしかしてザネクってオーク二頭相手でも勝てた?」
「まあな。だが今日の俺はルキアスのサポートだ。ルキアスが逃げると言えば逃げるぜ」
「ぐはっ! そうだったのか……」
当然とばかりのザネクの言葉に、ルキアスは無駄に逃げていたと知った。
(有り難いんだけど! 有り難いんだけど!)
何となく釈然とせず、心の中で叫ぶルキアス。それでも一応は一つの目標を達成したのであった。
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