生活魔法は万能です

浜柔

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113 疎か

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 ホーンラビットを倒したルキアスはザネク達の許まで戻る。

「こんな感じですけど、どうでした?」
「ルキアスくん、それなんだけど……ね……」

 リュミアは言い淀んだ。
 ルキアスはリュミアの様子で何となく察する。

「やっぱりぼくはパーティーには向きませんか」

 予想はできた事だった。皆から離れて独りで狩りをする時点でパーティーとして機能していない。だから胸が痛むとしてもチクッとするだけだ。自分でも気付かない内に何かを期待してしまったのに気付けたのは良いことなのだ。
 リュミアは黙ったまま目を伏せた。
 ルキアスも一度目を伏せ、また前を向く。

「それじゃ、ここまでにしましょう。皆さん先に帰ってください。ぼくはまだ狩りをしないといけないので残ります」

 ルキアスに平静を保てているか自信は無かった。駄目出しをされては一緒に居るのは辛い。だから独りで残りたい。それに狩りをしなければならないのも本当だから残る必要がある。

「そ……」
「俺は残るぞ!」

 ザネクの言葉はリュミアの「それじゃ帰りましょう」の答えに被さって覆い隠した。

「ザネ……ク? さっきも言ったけれど、ルキアスくんの邪魔にしかならないわ……よ?」
「だからってずっとそのままにはできないだろ? なあ、ルキアス。ルキアスは一生この第一階層だけで狩りをするのか?」
「ううん。もっと下の階層に行くつもりだよ」
「だったらこっそり近付いて狩りをするだけじゃなくて、不意打ちに対処する練習もしなきゃな」
「どうして?」
「どうしてじゃねぇよ。ホーンラビットなら不意打ちを食らっても刺され所が悪くなけりゃ命までは取られない。だがいきなり下の階層に行って、もっと強い魔物に不意打ちされたら命が危ない」
「あ、そっか……」

 ルキアスはホーンラビットがアクティブにならないのをいいことに、警戒が疎かになっていたのを反省した。

「でもどうやって? ぼくがカピバラを倒すの?」
「んな必要はない。俺に襲い掛かって来る奴らを俺が倒す前にルキアスが倒せばいいだけだ」
「なるほど!」

 ルキアスは目から鱗が落ちる思いだ。しかしそれはルキアスに都合が良すぎるようにも感じられた。

「でもザネクはそれでいいの? ぼくと一緒だったらザネクの負担になるんじゃ?」
「いんや。ルキアスと一緒だからってやる事は変わらないから、負担が増えるなんてこともないぜ」

 これは誰かと組むことで減る負担が減らないと言うことでもあるが、それを察するにはルキアスに経験が皆無だ。

「そうなんだ……」
「ああ。だから心配すんな」
「うん。ありがとう!」
「よせやい。礼を言われるほどのことじゃないぜ」

 ルキアスが朗らかに礼を言えば、ザネクは照れてそっぽを向きながら鼻の下を人差し指で擦った。
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