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104 右手
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どよめきが起きた。いつの間にかルキアス達を囲んで人垣となっていた野次馬達の声だ。「俺もああやって『よしよし』ってされてみてぇ」「あんな美人に言い寄られるなんて羨ましい」「俺なら二つ返事で付いて行くのによ」「止せ止せコブ付きだぜ?」「構うもんか。何ならそっちから手懐けりゃいい」「お、無理みたいだぜ? あっかんべーだとさ」「こりゃ参ったな」。
ルキアスにも野次馬の声は丸聞こえだ。
「それより凄く恥ずかしいんですけど」
「ああ。どっか店に入ろうぜ」
ロマもルキアスと同じ気持ちのようだ。しかしルキアスにはその提案に素直には頷けない。
「でもぼくはお金持ってなくて……」
「今回は俺の奢りにしといてやるよ」
「まあ! 聞いた? ユア。このおじちゃんの奢りですって」
「ん!」
「お前に奢るとは言ってねぇ!」
反論するロマだったが、ユアにじっと見詰められて揺らぐ。
「……今回だけだぞ」
あっさり陥落した。ロマも子供には弱いらしい。
「それじゃ案内してちょうだい。行きましょ、ルキアスちゃん」
メイナーダはロマに案内を頼むと、ルキアスの腕に腕を絡めた。途端、お尻をポカポカと叩かれる。そちらに目をやればユアが小さな拳で叩いていた。むくれ顔だ。
「きゃーっ! もう、ユアったら焼き餅なのーっ!?」
メイナーダは直ぐに膝を着いてユアを抱き締めた。それでもユアはまだむくれ顔だ。
ルキアスもこんなユアを放置していられいない。
「ユア、手を繋いで行こうか?」
「ん!」
ルキアスが右手を差し出すと、ユアはその手に右手を伸ばした。ルキアスはその小さな手を指先で包むように握る。それだけでユアの機嫌は戻ったらしい。むくれ顔から無表情に戻っている。
メイナーダが苦笑しつつ、立ち上がってユアの左手に右手を繋ぐ。ルキアスも立ち上がった。
「ねえ、ルキアスちゃん。向き逆よ」
「あ……」
右手と右手を繋いだのでは歩くに歩けない。左手にしなければならない。かと言って、いきなり手を放す訳にも行かない。
「ユア、こっちの手を握ってくれるかな?」
「ん」
ルキアスが屈んで左手を差し出して言うと、ユアは素直に頷いて手を握り直した。
そしてロマに案内されて店へと向かう。ルキアスはユアがにっこにこなので、これも悪くないと何となく考えた。
ルキアス達が歩く姿に仰天する目があった。エリリースだ。彼女はルキアスが講習に参加しなくなった後、希望して講習のある午後に個人レッスンも受けるようになっていた。その帰り道にそれを見てしまった。
「ルキアス?」
「あの子は彼の隠し子かし……ら?」
「隠し子!?」
リュミアの軽口に、エリリースは思考停止したかのように硬直した。しかしルキアスの姿が遠ざかると発作的に追い掛ける。
「お、追い掛けますわ」
「ちょっ……と?」
エリリースが一人でさっさと行ってしまうものだから、リュミアも仕方なく彼女を追い掛けた。
ルキアスにも野次馬の声は丸聞こえだ。
「それより凄く恥ずかしいんですけど」
「ああ。どっか店に入ろうぜ」
ロマもルキアスと同じ気持ちのようだ。しかしルキアスにはその提案に素直には頷けない。
「でもぼくはお金持ってなくて……」
「今回は俺の奢りにしといてやるよ」
「まあ! 聞いた? ユア。このおじちゃんの奢りですって」
「ん!」
「お前に奢るとは言ってねぇ!」
反論するロマだったが、ユアにじっと見詰められて揺らぐ。
「……今回だけだぞ」
あっさり陥落した。ロマも子供には弱いらしい。
「それじゃ案内してちょうだい。行きましょ、ルキアスちゃん」
メイナーダはロマに案内を頼むと、ルキアスの腕に腕を絡めた。途端、お尻をポカポカと叩かれる。そちらに目をやればユアが小さな拳で叩いていた。むくれ顔だ。
「きゃーっ! もう、ユアったら焼き餅なのーっ!?」
メイナーダは直ぐに膝を着いてユアを抱き締めた。それでもユアはまだむくれ顔だ。
ルキアスもこんなユアを放置していられいない。
「ユア、手を繋いで行こうか?」
「ん!」
ルキアスが右手を差し出すと、ユアはその手に右手を伸ばした。ルキアスはその小さな手を指先で包むように握る。それだけでユアの機嫌は戻ったらしい。むくれ顔から無表情に戻っている。
メイナーダが苦笑しつつ、立ち上がってユアの左手に右手を繋ぐ。ルキアスも立ち上がった。
「ねえ、ルキアスちゃん。向き逆よ」
「あ……」
右手と右手を繋いだのでは歩くに歩けない。左手にしなければならない。かと言って、いきなり手を放す訳にも行かない。
「ユア、こっちの手を握ってくれるかな?」
「ん」
ルキアスが屈んで左手を差し出して言うと、ユアは素直に頷いて手を握り直した。
そしてロマに案内されて店へと向かう。ルキアスはユアがにっこにこなので、これも悪くないと何となく考えた。
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「あの子は彼の隠し子かし……ら?」
「隠し子!?」
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「お、追い掛けますわ」
「ちょっ……と?」
エリリースが一人でさっさと行ってしまうものだから、リュミアも仕方なく彼女を追い掛けた。
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