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86 実験
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生活術の講習は焚き火を使った料理。食材らしい食材を持っていないルキアスは辞退しようとしたが、チャーラが自分の分の食材をルキアスに任せると言い出した。「あんた作る人、あたし食べる人でいいだろ?」なんて言うが、ノクルがジト目で見ていたことからすれば、単に料理が苦手なだけだろう。
しかしそのお陰でルキアスはホーンラビットの捌き方や、幾つかの初めての野菜を料理して食べる経験を得た。それらの野菜は故郷にも無くはなかったが、食べる機会に恵まれなかったのだ。
加えてメニューの中には揚げ物もあり、油の温度を測るための生活魔法『温度計』を教わった。水が凍る温度が零度、沸騰する温度が一〇〇度として表した数値になる。魔法を使わなくても水に溶いた小麦粉を垂らせば大体の温度が判るらしいが、『温度計』の方が確実だ。使えるなら使った方が良いと言う。
そんなこんなでルキアスにとって予想外に収穫の多い講習であった。
講習が終わればまた銃作りの続き。
昨日までで鉄を使う部分はほぼ出来ている。殆ど手付かずは木製部分だ。蒸気タンクを包み込む断熱カバー、銃床、引き金を引く時に握るグリップなどである。
断熱カバーは不意の火傷を防ぐための物だが、恐らくここを左手で掴んで構えることになる。ただかなり太くなると予想される。手で掴める限界に近くなるようでは、断熱カバーからグリップを伸ばして左手で掴むようにした方が良いかも知れない。
引き金を引く側のグリップは銃床と一体にするか、銃床から別途下に突き出させるかが悩みどころだ。片手で使う場面があるなら一体になっていた方が使いやすいだろうが、通常は両手で使う。
とは言え、今は講習の都合でダンジョンに来ている。木製部品を削るだけならダンジョンタワーの地下二階でもできるので、ルキアスはダンジョンでしかできないことを優先させる。
(実験しよう!)
まずは蒸気を発生させるだけ。タンク内に『湧水』で十分の一ほど入れて『加熱』する。直ぐに噴出口から湯気が噴き出して来る。
しかし蒸気が尽きるまでには思ったより長く掛かった。熱湯が残ったままではいざ発射と言う時に蒸気と一緒に噴き出してしまう。蒸気だけでも危険が伴うのに熱湯ともなれば論外だろう。
(もっと少なくていいのかな……)
一旦タンクの中のお湯を捨て、改めて水を極少量入れて実験を再開する。今度は瞬く間に蒸発し切った。
次は噴出口に栓棒を挿し、栓棒はストッパーで固定しないままの実験。蒸気の圧力で栓棒が抜けるのを確かめる。
その次は栓棒をストッパーで固定し、温度を上げながら噴き出す蒸気の勢いを確かめる。習いたての『温度計』で温度を計りつつ、一〇〇度から最初は一〇度ずつ、途中から一度ずつ温度を上げて行く。
三二〇度まで上げた。タンクは耐えた。ただこれ以上温度を上げるのは怖い。ルキアスは『加熱』で限界まで温度を上げれば木に着火することもできるが、その限界に近いと感覚に訴え掛けられたのだ。木が燃えるようではタンクを木で覆えなくなってしまう。
(三〇〇度が限界かな……)
安全を考えればもっと低い温度が望ましい。しかしそれでは威力不足になる可能性が否めない。
また、実験の途中で蒸気をもっとスムーズに流す必要性も感じられた。
しかしそのお陰でルキアスはホーンラビットの捌き方や、幾つかの初めての野菜を料理して食べる経験を得た。それらの野菜は故郷にも無くはなかったが、食べる機会に恵まれなかったのだ。
加えてメニューの中には揚げ物もあり、油の温度を測るための生活魔法『温度計』を教わった。水が凍る温度が零度、沸騰する温度が一〇〇度として表した数値になる。魔法を使わなくても水に溶いた小麦粉を垂らせば大体の温度が判るらしいが、『温度計』の方が確実だ。使えるなら使った方が良いと言う。
そんなこんなでルキアスにとって予想外に収穫の多い講習であった。
講習が終わればまた銃作りの続き。
昨日までで鉄を使う部分はほぼ出来ている。殆ど手付かずは木製部分だ。蒸気タンクを包み込む断熱カバー、銃床、引き金を引く時に握るグリップなどである。
断熱カバーは不意の火傷を防ぐための物だが、恐らくここを左手で掴んで構えることになる。ただかなり太くなると予想される。手で掴める限界に近くなるようでは、断熱カバーからグリップを伸ばして左手で掴むようにした方が良いかも知れない。
引き金を引く側のグリップは銃床と一体にするか、銃床から別途下に突き出させるかが悩みどころだ。片手で使う場面があるなら一体になっていた方が使いやすいだろうが、通常は両手で使う。
とは言え、今は講習の都合でダンジョンに来ている。木製部品を削るだけならダンジョンタワーの地下二階でもできるので、ルキアスはダンジョンでしかできないことを優先させる。
(実験しよう!)
まずは蒸気を発生させるだけ。タンク内に『湧水』で十分の一ほど入れて『加熱』する。直ぐに噴出口から湯気が噴き出して来る。
しかし蒸気が尽きるまでには思ったより長く掛かった。熱湯が残ったままではいざ発射と言う時に蒸気と一緒に噴き出してしまう。蒸気だけでも危険が伴うのに熱湯ともなれば論外だろう。
(もっと少なくていいのかな……)
一旦タンクの中のお湯を捨て、改めて水を極少量入れて実験を再開する。今度は瞬く間に蒸発し切った。
次は噴出口に栓棒を挿し、栓棒はストッパーで固定しないままの実験。蒸気の圧力で栓棒が抜けるのを確かめる。
その次は栓棒をストッパーで固定し、温度を上げながら噴き出す蒸気の勢いを確かめる。習いたての『温度計』で温度を計りつつ、一〇〇度から最初は一〇度ずつ、途中から一度ずつ温度を上げて行く。
三二〇度まで上げた。タンクは耐えた。ただこれ以上温度を上げるのは怖い。ルキアスは『加熱』で限界まで温度を上げれば木に着火することもできるが、その限界に近いと感覚に訴え掛けられたのだ。木が燃えるようではタンクを木で覆えなくなってしまう。
(三〇〇度が限界かな……)
安全を考えればもっと低い温度が望ましい。しかしそれでは威力不足になる可能性が否めない。
また、実験の途中で蒸気をもっとスムーズに流す必要性も感じられた。
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