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79 神再び
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「うわっ!」
「きゃっ!」
ルキアスは魔物に意識を集中させていたものだから、跳び上がるようにして悲鳴を上げた。すると何故か相手まで悲鳴を上げる。
喋り方は年寄り臭いのに、悲鳴だけは可愛かった。
「突然叫ぶでないわ! 驚いたではないか!」
(驚いたのはぼくの方だよ……)
理不尽な非難に内心で反論しつつ振り返ると、ボブウェーブで茶髪の少女が立っている。ブラウン瞳にひらひらのミニスカート。ルキアスの記憶が刺激された。
(忘れてた!)
神を名乗った少女ヨーコ・クグラだ。ルキアスにとってある意味で会いたくない筆頭である。
「何とか言ったらどうなのじゃ! まったくちんたらしおって!」
「ぼくはこれでも必死なんだよ!」
少しばかりカチンと来たルキアスは反論を試みる。しかし……。
「何を申すか、このへっぽこが! おぬし程度で必死なら誰も苦労はせんわい!」
「ぼくにどうしろって言うんだよ!」
「ダンジョンの最下層まで来いと言うたであろうが!」
「言ってないよ! 『ダンジョンに来い』とは言われたけど! 今思い出したけど!」
「にゃにおーっ! 忘れていたと申すか! 我も言い忘れておったわ!」
ヨーコは「わっはっは」と豪快に笑った。
「自慢しないでよ……」
「しかし今言うたからな。しかと来るのじゃぞ?」
ルキアスの抗議はヨーコに拾われなかった。
「来いって言われても無理だよ! 魔物を倒せないから!」
「ふむ。確かに今のおぬしには難しいかのう」
「だったら『世界の真理』って言うのも無しにしてくれないかな?」
「それは無理じゃ!」
「どうして!?」
「おぬししか誘いに乗った者がおらんからじゃ!」
ルキアスはヨーコと会った時の事を回想して酷く納得した。しかしそんな理由で拘られても困る。
「だけど無理なものは無理なんだよ……。銃だってまだ出来てないし、鉄だって足りないかも知れないんだから……」
「鉄があれば良いのか? 鉄くらいならこの林にも転がっておるぞ。ほらあそこにも」
ヨーコが指差した先、半ば地面に埋もれるように折れた剣の先が転がっていた。土に塗れて注意しなければ見えないものだった。
しかしルキアスはその剣の先を手に取っても尚項垂れる。
「やっぱり無理だよ。ぼくは『天職無し』だよ? 神様なら無理難題の代わりにせめて何か天職をくれてもいいんじゃない?」
「それこそ無理じゃ! そもそも生まれる時に公平にランダムで付与されておるものじゃ。それを後からどうこうしては不公平すぎるからの」
踏ん反り返って応えるヨーコに、ルキアスは嫌な顔をした。ヨーコに断言する根拠があるのかも疑わしいし、ヨーコの言葉が本当だとしても天職に当たり外れがある以上、公平には思えない。
「じゃが一つだけ良いことを教えてやろう。おぬしがさっき殺そうとしておった魔物、カピバラじゃがな。あやつを倒すのはホーンラビットを倒せるようになってからにするのじゃ。あやつを倒した瞬間、ホーンラビットがアクティブになるからの」
「え? どう言うこと!?」
「健闘を祈っておるぞ」
ルキアスの質問には答えず、ヨーコは何処かへと消えた。
それでもルキアスはヨーコの忠告を受け入れて、まだ近くでぼーっとしているカピバラには手を出さずに引き上げた。
「きゃっ!」
ルキアスは魔物に意識を集中させていたものだから、跳び上がるようにして悲鳴を上げた。すると何故か相手まで悲鳴を上げる。
喋り方は年寄り臭いのに、悲鳴だけは可愛かった。
「突然叫ぶでないわ! 驚いたではないか!」
(驚いたのはぼくの方だよ……)
理不尽な非難に内心で反論しつつ振り返ると、ボブウェーブで茶髪の少女が立っている。ブラウン瞳にひらひらのミニスカート。ルキアスの記憶が刺激された。
(忘れてた!)
神を名乗った少女ヨーコ・クグラだ。ルキアスにとってある意味で会いたくない筆頭である。
「何とか言ったらどうなのじゃ! まったくちんたらしおって!」
「ぼくはこれでも必死なんだよ!」
少しばかりカチンと来たルキアスは反論を試みる。しかし……。
「何を申すか、このへっぽこが! おぬし程度で必死なら誰も苦労はせんわい!」
「ぼくにどうしろって言うんだよ!」
「ダンジョンの最下層まで来いと言うたであろうが!」
「言ってないよ! 『ダンジョンに来い』とは言われたけど! 今思い出したけど!」
「にゃにおーっ! 忘れていたと申すか! 我も言い忘れておったわ!」
ヨーコは「わっはっは」と豪快に笑った。
「自慢しないでよ……」
「しかし今言うたからな。しかと来るのじゃぞ?」
ルキアスの抗議はヨーコに拾われなかった。
「来いって言われても無理だよ! 魔物を倒せないから!」
「ふむ。確かに今のおぬしには難しいかのう」
「だったら『世界の真理』って言うのも無しにしてくれないかな?」
「それは無理じゃ!」
「どうして!?」
「おぬししか誘いに乗った者がおらんからじゃ!」
ルキアスはヨーコと会った時の事を回想して酷く納得した。しかしそんな理由で拘られても困る。
「だけど無理なものは無理なんだよ……。銃だってまだ出来てないし、鉄だって足りないかも知れないんだから……」
「鉄があれば良いのか? 鉄くらいならこの林にも転がっておるぞ。ほらあそこにも」
ヨーコが指差した先、半ば地面に埋もれるように折れた剣の先が転がっていた。土に塗れて注意しなければ見えないものだった。
しかしルキアスはその剣の先を手に取っても尚項垂れる。
「やっぱり無理だよ。ぼくは『天職無し』だよ? 神様なら無理難題の代わりにせめて何か天職をくれてもいいんじゃない?」
「それこそ無理じゃ! そもそも生まれる時に公平にランダムで付与されておるものじゃ。それを後からどうこうしては不公平すぎるからの」
踏ん反り返って応えるヨーコに、ルキアスは嫌な顔をした。ヨーコに断言する根拠があるのかも疑わしいし、ヨーコの言葉が本当だとしても天職に当たり外れがある以上、公平には思えない。
「じゃが一つだけ良いことを教えてやろう。おぬしがさっき殺そうとしておった魔物、カピバラじゃがな。あやつを倒すのはホーンラビットを倒せるようになってからにするのじゃ。あやつを倒した瞬間、ホーンラビットがアクティブになるからの」
「え? どう言うこと!?」
「健闘を祈っておるぞ」
ルキアスの質問には答えず、ヨーコは何処かへと消えた。
それでもルキアスはヨーコの忠告を受け入れて、まだ近くでぼーっとしているカピバラには手を出さずに引き上げた。
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