78 / 627
78 材木
しおりを挟む
ルキアスは体術の講習で前回り受け身に打ち込んだ午後、ダンジョンへ材木の伐採に向かった。生活術の講習で行った場所だ。講習の間全く魔物に遭遇しなかったので、丸腰のまま一人で行っても大丈夫だと踏んでいる。
その予想通り、講習に使った場所まで全く魔物に遭遇せずに行き着いた。
(あれ? 焚き火の跡が無い?)
地面に焦げ跡が全く無い。その上組み上げられていた竈まで半ば崩れて石がどこかに消えている。竈だっただろう石組みまで完全に無くなっていれば場所が特定できなかったところだ。
しかし気になってもそれを追及するのはルキアスの今日の目的から大きく外れる。
ルキアスは手頃な木を探して林に踏み込んだ。ブナが中心だが、ローズウッド、タモ、クスノキなど様々な木が生えている。どことなく取り留めのない、あるいは節操のない生え方だ。
(ダンジョンだからかな……、並ぶ筈のない木が並んで生えてたりするのは……)
ルキアスは生え方についてはあまり気にしないことにした。探しているのは材木なのだ。
材木は銃が壊れないように硬い方が良い。しかし硬すぎると加工が大変だ。加工できる範囲でできるだけ硬いものを選ぶ。
(クリかな……)
幹が枝分かれした細い方に目星を付ける。量はそれほど必要ない。木を丸々一本だと多すぎる。かと言って若い木を切るのは忍びない。両手で掴んで指が届くかどうかの太さの幹か枝が良い。
斧の刃に柄を付けて、細い幹へと振り下ろす。カーン、コーン、カーンと小気味良い音が響く。
やがてバキバキと音を立てて幹は落ちた。
しかしまだまだこれからだ。余分な枝を切り落とす。枝や葉が付いたままではルキアスの『収納』でも限界を超える。
オークとクスノキの材木も同様にして手に入れた。
(疲れた……)
『収納』はどうにか限界を超えなかったものの、体力の方は限界が来てしまったルキアスである。早々に引き上げる決断をする。
ところがその時、目の前に巨大なネズミらしき魔物が立ち塞がった。
ルキアスは身構える。しかし魔物は鼻をヒクヒクさせるだけで襲って来る様子が無い。気も緩む。
(だけどこの魔物くらいなら今のぼくにも倒せるんじゃ……)
ルキアスは手にする斧をじっと見た。これを使えば倒せそうだ。
(いつかは倒さなきゃいけないんだから)
予定に無かった魔物との戦いを今からしようと言うのだ。暫し気を静めるように深呼吸する。
突然声が響いたのはその時だった。
「遅い! いつまで待たせる気じゃ! おぬし今まで何をしておった!?」
その予想通り、講習に使った場所まで全く魔物に遭遇せずに行き着いた。
(あれ? 焚き火の跡が無い?)
地面に焦げ跡が全く無い。その上組み上げられていた竈まで半ば崩れて石がどこかに消えている。竈だっただろう石組みまで完全に無くなっていれば場所が特定できなかったところだ。
しかし気になってもそれを追及するのはルキアスの今日の目的から大きく外れる。
ルキアスは手頃な木を探して林に踏み込んだ。ブナが中心だが、ローズウッド、タモ、クスノキなど様々な木が生えている。どことなく取り留めのない、あるいは節操のない生え方だ。
(ダンジョンだからかな……、並ぶ筈のない木が並んで生えてたりするのは……)
ルキアスは生え方についてはあまり気にしないことにした。探しているのは材木なのだ。
材木は銃が壊れないように硬い方が良い。しかし硬すぎると加工が大変だ。加工できる範囲でできるだけ硬いものを選ぶ。
(クリかな……)
幹が枝分かれした細い方に目星を付ける。量はそれほど必要ない。木を丸々一本だと多すぎる。かと言って若い木を切るのは忍びない。両手で掴んで指が届くかどうかの太さの幹か枝が良い。
斧の刃に柄を付けて、細い幹へと振り下ろす。カーン、コーン、カーンと小気味良い音が響く。
やがてバキバキと音を立てて幹は落ちた。
しかしまだまだこれからだ。余分な枝を切り落とす。枝や葉が付いたままではルキアスの『収納』でも限界を超える。
オークとクスノキの材木も同様にして手に入れた。
(疲れた……)
『収納』はどうにか限界を超えなかったものの、体力の方は限界が来てしまったルキアスである。早々に引き上げる決断をする。
ところがその時、目の前に巨大なネズミらしき魔物が立ち塞がった。
ルキアスは身構える。しかし魔物は鼻をヒクヒクさせるだけで襲って来る様子が無い。気も緩む。
(だけどこの魔物くらいなら今のぼくにも倒せるんじゃ……)
ルキアスは手にする斧をじっと見た。これを使えば倒せそうだ。
(いつかは倒さなきゃいけないんだから)
予定に無かった魔物との戦いを今からしようと言うのだ。暫し気を静めるように深呼吸する。
突然声が響いたのはその時だった。
「遅い! いつまで待たせる気じゃ! おぬし今まで何をしておった!?」
29
お気に入りに追加
823
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる