生活魔法は万能です

浜柔

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78 材木

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 ルキアスは体術の講習で前回り受け身に打ち込んだ午後、ダンジョンへ材木の伐採に向かった。生活術の講習で行った場所だ。講習の間全く魔物に遭遇しなかったので、丸腰のまま一人で行っても大丈夫だと踏んでいる。
 その予想通り、講習に使った場所まで全く魔物に遭遇せずに行き着いた。

(あれ? 焚き火の跡が無い?)

 地面に焦げ跡が全く無い。その上組み上げられていた竈まで半ば崩れて石がどこかに消えている。竈だっただろう石組みまで完全に無くなっていれば場所が特定できなかったところだ。
 しかし気になってもそれを追及するのはルキアスの今日の目的から大きく外れる。
 ルキアスは手頃な木を探して林に踏み込んだ。ブナが中心だが、ローズウッド、タモ、クスノキなど様々な木が生えている。どことなく取り留めのない、あるいは節操のない生え方だ。

(ダンジョンだからかな……、並ぶ筈のない木が並んで生えてたりするのは……)

 ルキアスは生え方についてはあまり気にしないことにした。探しているのは材木なのだ。
 材木は銃が壊れないように硬い方が良い。しかし硬すぎると加工が大変だ。加工できる範囲でできるだけ硬いものを選ぶ。

(クリかな……)

 幹が枝分かれした細い方に目星を付ける。量はそれほど必要ない。木を丸々一本だと多すぎる。かと言って若い木を切るのは忍びない。両手で掴んで指が届くかどうかの太さの幹か枝が良い。
 斧の刃に柄を付けて、細い幹へと振り下ろす。カーン、コーン、カーンと小気味良い音が響く。
 やがてバキバキと音を立てて幹は落ちた。
 しかしまだまだこれからだ。余分な枝を切り落とす。枝や葉が付いたままではルキアスの『収納』でも限界を超える。
 オークとクスノキの材木も同様にして手に入れた。

(疲れた……)

 『収納』はどうにか限界を超えなかったものの、体力の方は限界が来てしまったルキアスである。早々に引き上げる決断をする。
 ところがその時、目の前に巨大なネズミらしき魔物が立ち塞がった。
 ルキアスは身構える。しかし魔物は鼻をヒクヒクさせるだけで襲って来る様子が無い。気も緩む。

(だけどこの魔物くらいなら今のぼくにも倒せるんじゃ……)

 ルキアスは手にする斧をじっと見た。これを使えば倒せそうだ。

(いつかは倒さなきゃいけないんだから)

 予定に無かった魔物との戦いを今からしようと言うのだ。暫し気を静めるように深呼吸する。
 突然声が響いたのはその時だった。

「遅い! いつまで待たせる気じゃ! おぬし今まで何をしておった!?」
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