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62 オーク
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「オークだ!」
ガノスが鋭く叫び、剣を構える。リュミアも短剣を、ザネクも剣を構えた。手持ちの武器が無いルキアスは腰が引けているだけだ。そんなルキアスにガノスは一瞬だけ厳しい視線を向けた。
三頭のオークが棍棒を振り回して迫る。リュミアが魔法を放つ。
「『水刃』」
その声をルキアスが認識した次の瞬間にはオークの一頭の頭が胴体から転がり落ちていた。
ガノスは小さく息を吐いて踏み込む。鎧袖一触とばかりにオークの別の一頭の頭が胴体から転がり落ちる。
ザネクもまた残る一頭のオークへと剣を振るう。
「ていっ! ぐあっ!」
しかしオークの棍棒に弾き飛ばされた。勢い余って転倒する。オークの追撃の棍棒が迫る。だがザネクはまだ体勢を立て直せない。
ルキアスは思わず目を瞑りそうになった。しかしその寸前でオークの棍棒が宙を薙ぎ、オークの頭が胴体から転がり落ちた。
「情けないぞ、我が弟よ」
ガノスは剣の汚れを布で拭って鞘に収めながら言った。
「急だったからだ……」
ザネクはふて腐れたように言った。しかしこれは自分が上手く立ち回れなかったことに苛立ってのもののようだ。
「まあ、今回はそう言うことにしておいてやるが、精進しろよ」
「判ってるよ!」
「しかしさっきのヤツはどこに行った?」
ガノスが見回してみてもオークを引き連れて出て来た男は影も形もない。
「階段に一目散だった……わ」
「見付けたらお仕置きしてやらないとな……」
ガノスは鼻で強く息を吐いた。
「あの……、今みたいな事ってよくあるんですか?」
ルキアスだ。右往左往すらできないまま激しく鳴る心臓の音と戦っていただけだったが、どうにか音が撤退してくれつつある。
「それなりにな。だがオークは第二階層の魔物だから珍しいぞ」
「そうなんですか?」
「魔物がこの入口から出て来るには階段を登らなきゃならないからだ。第二階層は天井が高くてその分階段も長い。普通は登り切る前に人間の方が力尽きて魔物に殺されてしまう」
「それじゃ、今の人って……」
「ああ。階段を駆け上って来たんだろうな。それだけ体力があるなら、オークぐらいどうにか倒せそうなものなんだが」
ルキアスは頷きを返した。しかし異論が無い訳ではない。
(倒すより逃げる方が簡単なんじゃ……)
今のルキアスにはオークを倒せる自分の姿がまるで想像できなかった。
「さて、オークも片付けなきゃならんが、先にもう少し説明しておくぞ。
ダンジョンに入る時には探索者カードを必ず携帯していろ。『収納』に入れていて構わない。
そうすればもしダンジョンの中で死んでも、探索者カードが役所の受付に転送されて死んだのが判る」
「それだけですか?」
「他にも何かあるらしいとは言われているが、基本はそれだけだ。
でも馬鹿にはできないぞ? 死んだと判っているなら救助隊が必要ないからな」
ダンジョン内部は広大であり、人の捜索は砂場で一粒の砂を探すようなものなのである。
ルキアスは頷く他なかった。
ガノスが鋭く叫び、剣を構える。リュミアも短剣を、ザネクも剣を構えた。手持ちの武器が無いルキアスは腰が引けているだけだ。そんなルキアスにガノスは一瞬だけ厳しい視線を向けた。
三頭のオークが棍棒を振り回して迫る。リュミアが魔法を放つ。
「『水刃』」
その声をルキアスが認識した次の瞬間にはオークの一頭の頭が胴体から転がり落ちていた。
ガノスは小さく息を吐いて踏み込む。鎧袖一触とばかりにオークの別の一頭の頭が胴体から転がり落ちる。
ザネクもまた残る一頭のオークへと剣を振るう。
「ていっ! ぐあっ!」
しかしオークの棍棒に弾き飛ばされた。勢い余って転倒する。オークの追撃の棍棒が迫る。だがザネクはまだ体勢を立て直せない。
ルキアスは思わず目を瞑りそうになった。しかしその寸前でオークの棍棒が宙を薙ぎ、オークの頭が胴体から転がり落ちた。
「情けないぞ、我が弟よ」
ガノスは剣の汚れを布で拭って鞘に収めながら言った。
「急だったからだ……」
ザネクはふて腐れたように言った。しかしこれは自分が上手く立ち回れなかったことに苛立ってのもののようだ。
「まあ、今回はそう言うことにしておいてやるが、精進しろよ」
「判ってるよ!」
「しかしさっきのヤツはどこに行った?」
ガノスが見回してみてもオークを引き連れて出て来た男は影も形もない。
「階段に一目散だった……わ」
「見付けたらお仕置きしてやらないとな……」
ガノスは鼻で強く息を吐いた。
「あの……、今みたいな事ってよくあるんですか?」
ルキアスだ。右往左往すらできないまま激しく鳴る心臓の音と戦っていただけだったが、どうにか音が撤退してくれつつある。
「それなりにな。だがオークは第二階層の魔物だから珍しいぞ」
「そうなんですか?」
「魔物がこの入口から出て来るには階段を登らなきゃならないからだ。第二階層は天井が高くてその分階段も長い。普通は登り切る前に人間の方が力尽きて魔物に殺されてしまう」
「それじゃ、今の人って……」
「ああ。階段を駆け上って来たんだろうな。それだけ体力があるなら、オークぐらいどうにか倒せそうなものなんだが」
ルキアスは頷きを返した。しかし異論が無い訳ではない。
(倒すより逃げる方が簡単なんじゃ……)
今のルキアスにはオークを倒せる自分の姿がまるで想像できなかった。
「さて、オークも片付けなきゃならんが、先にもう少し説明しておくぞ。
ダンジョンに入る時には探索者カードを必ず携帯していろ。『収納』に入れていて構わない。
そうすればもしダンジョンの中で死んでも、探索者カードが役所の受付に転送されて死んだのが判る」
「それだけですか?」
「他にも何かあるらしいとは言われているが、基本はそれだけだ。
でも馬鹿にはできないぞ? 死んだと判っているなら救助隊が必要ないからな」
ダンジョン内部は広大であり、人の捜索は砂場で一粒の砂を探すようなものなのである。
ルキアスは頷く他なかった。
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