生活魔法は万能です

浜柔

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60 初心者講習

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「ほんとに勘弁してくれ……」

 ザネクは項垂れる。ルキアスの手前、あまり格好の悪いところは見せたくない。だが昔の、幼い頃の事を持ち出されては年上には敵いやしない。
 それが判らないでもないルキアスはザネクをそっとしておくことにした。

「それでその、初心者講習とはどんな事をするのでしょう?」
「おう、そうだったな。簡単に言えばダンジョン周りの案内と簡単な決め事の説明、それに初心者向けお得情報だ」
「それは助かります」
「そうだろう。そうだろう。それじゃ早速案内から始めるぞ。準備はいいか?」
「はい」
「ああ」

 ルキアスとザネクは立ち上がった。

「それじゃ早速このダンジョンタワーの説明からだ。
 このタワーはダンジョンの上に建てられている。魔物がダンジョンから溢れても外に出さないための防壁でもある訳だ。
 どう防ぐのかは後で説明するぞ。先にタワーの大まかな概要だ。
 まず、一階の入口を入った所に在るのは市役所の窓口だ。二階から上は行政機関が入っている。市の軍隊もな。
 探索者に割り当てられているのは地下一階と地下二階だ。地上とは入口から別になっている。
 間違って一階に入るんじゃないぞ。怖いおばさんに睨まれるからな」

(そんな人には会わなかったけど……)

 ルキアスは首を傾げた。しかしこれはルキアスとザネクがあまりに初めて丸出しの子供だったことで見逃されただけである。

「じゃあ、後は歩きながら話すぞ。まずはあそこがもう知っての通りの受付だ。探索者関係の手続きはあそこでする。二人も登録の手続きをしただろう?」

 ルキアスとザネクは頷いた。
 ガノスはそれに頷きを返すと、手を煽ってその方向へと踵を返す。リュミアはその横を歩き、ルキアスとザネクは二人の跡を追う。
 目隠しをするかのような間仕切りを左に右にまた左に通り過ぎて奥へと進む。巨大な柱が立っているだけのだだっ広い場所の向こうから喧騒が聞こえて来る。その喧騒の許まで歩いて行けば、町並みがそこに存在した。

「見ての通り、地下一階には探索者向けの店が在る。大抵の物は揃うが、無い物も当然ある。
 ここに無い物が欲しければ外に出るしかないが、ここで一つ注意。外には探索者然とした格好のまま出るんじゃないぞ。警官に職務質問されて強制的にここに連れて来られるからな」
「探索者然とした格好と言うのは?」

 ルキアスは質問した。

「まあ、今の俺みたいな格好だ。具体的にはこの剣のような武器、この胸当てや脛当てのような防具を着けたままってことになる。
 リュミアみたいな格好はギリで大丈夫だが、これはリュミアが美人だからであって、誰でもって訳じゃないぞ」

 リュミアは口角を上げる。

「ケッ……」

 ザネクが「惚気やがって」と小さく毒突いた。ルキアスは苦笑いするしかない。
 するとガノスが微かに頬を染めて咳払いした。
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