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19 トリムと言う町
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ホームレス男もルキアスにほど近いその場に座り込む。
「あんちゃん、この町の寂れ具合を見てびっくりしたろ?」
ルキアスは頷いた。タードより大きな町なのに、との気持ちが強い。
「理由は有るんですか?」
「無論だ。この町はな、昔、光る石の産地として大きくなったんだ。この町の東の山がその鉱山だ」
ルキアスは東を見てみるが、山はこの広場からは建物に隠されて見えなかった。
しかしここで山は本題ではない。
「光る石……、初めて聞きましたけど?」
「だろうな。初めこそ珍しいってんで装飾品に使われたが、暫くしてそれを着けていた奴の全身に出来物が浮き出るようになって、挙げ句の果てに死んじまった。それからは『光る石は呪われてる』ってんで鉱山も閉鎖されてご覧の有り様って訳だ」
「それってほんとに呪いなんじゃ……」
身に着けるだけで全身から出来物が噴き出すなど、ルキアスには呪いに思えて仕方がない。
しかし真実は呪いとは違う。科学的な事象であり、その知識が無ければ呪いに見えてしまうだけなのだ。
そしてホームレス男にも科学的な知識に欠けている。
「俺は呪いに見える何かだと思ってるけどな。まあ、臆測だ」
「その何かって?」
「それが判らんから臆測なんだよ」
「あ、確かに……」
「それにだ。呪いって言うなら、今この町で噂になってる幽霊の方がもっと呪いっぽくないか?」
「幽霊が初耳ですけど……、そう言えばおじさんはさっき幽霊がどうとか……」
「いやあ、さっきは驚いたね。誰も通らない筈の場所でほんわか光が動いてたんだもんよ」
「そんな。誰も通らないってこと、あり得なくないですか?」
「それがそうでもない。今言った幽霊の噂で夜は誰も彷徨かないんだ」
「噂くらいで……」
「もしも見たら朝には恐怖に歪んだ顔で冷たくなってるなんて話を聞いても、そう思うか?」
「それは……」
(確かに命が掛かってたらそうかも)
ルキアスはひとまず納得したが、実感は湧かなかった。
「ま、みんながみんな朝冷たくなってるなら目撃者が居る筈もねぇのにな」
「ああ! そうですね」
死人に口無し。目撃者が居ないなら、幽霊の噂も憶測から出た妄想の産物と言うことになる。
それに今はもう夜なのだ。この際怖い話は脇に置いておきたいルキアスである。
そんな気持ちが通じた訳でもないだろうが、男の方も「まあ噂だよ」と、幽霊の話を切り上げた。
「ところであんちゃんも何か聞きたい事が有るって言ってたよな? 何が聞きたいんだ?」
「あ、それは次の町までの距離です。歩いて何時間かかるか。できればその次の町までの距離も」
「なるほど、なるほどっ。あんちゃんは旅の途中だったな。次の町までは歩いて六時間くらいだ。その次までなら十一時間ってところだろうな」
「あ、ありがとうございます。参考にさせて貰います」
「ああ、いいってことよ」
(次の次の町までは十一時間か……。
頑張れば行けるけど、また日が暮れそう。
だけど次の町まで六時間じゃちょっと近すぎる。
これはどうにかして町じゃない場所でも野宿できるようにした方がいいよね。
方法は思いつかないけど)
ルキアスは暫し思索に耽った。
「あんちゃん、この町の寂れ具合を見てびっくりしたろ?」
ルキアスは頷いた。タードより大きな町なのに、との気持ちが強い。
「理由は有るんですか?」
「無論だ。この町はな、昔、光る石の産地として大きくなったんだ。この町の東の山がその鉱山だ」
ルキアスは東を見てみるが、山はこの広場からは建物に隠されて見えなかった。
しかしここで山は本題ではない。
「光る石……、初めて聞きましたけど?」
「だろうな。初めこそ珍しいってんで装飾品に使われたが、暫くしてそれを着けていた奴の全身に出来物が浮き出るようになって、挙げ句の果てに死んじまった。それからは『光る石は呪われてる』ってんで鉱山も閉鎖されてご覧の有り様って訳だ」
「それってほんとに呪いなんじゃ……」
身に着けるだけで全身から出来物が噴き出すなど、ルキアスには呪いに思えて仕方がない。
しかし真実は呪いとは違う。科学的な事象であり、その知識が無ければ呪いに見えてしまうだけなのだ。
そしてホームレス男にも科学的な知識に欠けている。
「俺は呪いに見える何かだと思ってるけどな。まあ、臆測だ」
「その何かって?」
「それが判らんから臆測なんだよ」
「あ、確かに……」
「それにだ。呪いって言うなら、今この町で噂になってる幽霊の方がもっと呪いっぽくないか?」
「幽霊が初耳ですけど……、そう言えばおじさんはさっき幽霊がどうとか……」
「いやあ、さっきは驚いたね。誰も通らない筈の場所でほんわか光が動いてたんだもんよ」
「そんな。誰も通らないってこと、あり得なくないですか?」
「それがそうでもない。今言った幽霊の噂で夜は誰も彷徨かないんだ」
「噂くらいで……」
「もしも見たら朝には恐怖に歪んだ顔で冷たくなってるなんて話を聞いても、そう思うか?」
「それは……」
(確かに命が掛かってたらそうかも)
ルキアスはひとまず納得したが、実感は湧かなかった。
「ま、みんながみんな朝冷たくなってるなら目撃者が居る筈もねぇのにな」
「ああ! そうですね」
死人に口無し。目撃者が居ないなら、幽霊の噂も憶測から出た妄想の産物と言うことになる。
それに今はもう夜なのだ。この際怖い話は脇に置いておきたいルキアスである。
そんな気持ちが通じた訳でもないだろうが、男の方も「まあ噂だよ」と、幽霊の話を切り上げた。
「ところであんちゃんも何か聞きたい事が有るって言ってたよな? 何が聞きたいんだ?」
「あ、それは次の町までの距離です。歩いて何時間かかるか。できればその次の町までの距離も」
「なるほど、なるほどっ。あんちゃんは旅の途中だったな。次の町までは歩いて六時間くらいだ。その次までなら十一時間ってところだろうな」
「あ、ありがとうございます。参考にさせて貰います」
「ああ、いいってことよ」
(次の次の町までは十一時間か……。
頑張れば行けるけど、また日が暮れそう。
だけど次の町まで六時間じゃちょっと近すぎる。
これはどうにかして町じゃない場所でも野宿できるようにした方がいいよね。
方法は思いつかないけど)
ルキアスは暫し思索に耽った。
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