9 / 21
第9話 三白眼の視界
しおりを挟む
朝起きて、洗面台に向かって顔を洗う。
顔をタオルで拭いて、正面の鏡に目をやった瞬間……私は悲鳴を上げそうになった。
この鏡に映っている『今にも人を殺しそうな目つきの少女』は誰だ?
答えは簡単。
他でもない私自身――結城アキラという一人の人間である。
自分の顔を見て悲鳴を上げそうになるだなんて、恥ずかしいにもほどがある。洗面所に他の少女の姿はなく、変なところを見られなくて一安心だ。というか、今回のような事態がたびたび発生するため、意図的に早起きしているのである。
私が住んでいる女子寮――通称・少女九龍城は奇妙な場所で、そもそも住人の数がハッキリとしていない。とはいえ、やたらと多いことには変わりなく、洗面所は学生組で毎朝のように混み合うのだ。
隣人とのトラブルを避けること……これが私の人生訓である。
なにしろ、目つきが悪いせいで数々の誤解を招いてきた。
落とし物を拾ってあげただけなのに、親や先生から「お前が盗んだのか!」と怒られたことは数知れない。反省しているつもりなのに「なんだその目は!」と叩かれたり、遊びに混ぜてもらっても「文句があるなら言いなさいよ!」と爪弾きだ。
あげく、近寄っただけで「カツアゲされる!」だの「ガン飛ばしてんじゃねーよ!」だの……私はすっかり不良少女扱いである。身長までスクスクと伸びてしまい、今では一七〇センチを超えてしまった。私に見下ろされると、大抵ヤンキー女は逃げる。
私が少女九龍城を選んだのは、地元から遠く離れる必要があったからだ。地元はひどいド田舎で、すでに『結城アキラ=不良娘』というイメージが出来上がっている。どこか、遠くの土地で再スタートを切らなければいけないのだ。
そして、少女九龍城での再スタートだが……地元よりはマシという程度だろう。
変わった性格の住人が多く、私のことを見ても逃げ出さない人間が少なからずいる。とはいえ、その中で友達と呼べる人間はほとんどいない。やはり、私と関わらないようにしている子が大部分だ。
私は贅沢なのだろうか。
妙な誤解が起こらないだけでも、ありがたいと思うべきなのだろうか。
私が鏡を見ながら思い悩んでいると、
「うわっ! 目つき、わるっ!」
洗面所に入ってくるなり、住人の竹原さんが私のことを指さして叫んだ。
それから、彼女はハッとした表情で口元を押さえると、
「い、いまのはナシ! ナシだからね、結城さん!」
何もしないで洗面所からそそくさと出て行ってしまった。たぶん、西園寺さんあたりに泣きつくのだろう。ここ最近、あの二人は急に仲良しになった。なんというか、相思相愛という感じである。
「……うらやましい」
私は呟く。
だが、先ほど目の当たりにした光景が脳内に焼き付く。
竹原さんの背中に、半透明の女性が張り付いていた。
果たして、目つきの悪さと何か関係があるのか――私には幽霊が見えるのである。
×
少女九龍城では幽霊が頻繁に目撃されている。しかし、それはあくまで『一般人に見える幽霊』の範疇である。私の三白眼には『霊感のある人にしか見えない幽霊』が確実に映り込んでいるのだ。
この場所に来るまで、私は自分に霊感があることを知らなかった。神様というのは意地悪なやつで、周囲の人間から誤解されなくなった代わりに、今度は私の目に幽霊が映るように仕組んだのだ。
たとえば、朝の食堂――ここにも複数の幽霊が確認できる。
まず、卵焼きを食べている管理人さんだが、彼女の背後には優しい顔をしたおばあさんが立っている。いわゆる守護霊というやつだろう。管理人さんが煙草を吸うと、とても嫌そうな顔をする。
その次に、一人で朝食を食べている木下さん。彼女の背後には『首輪と枷を付けた女性』が立っている。全裸なので目のやり場に困る。ニコニコとしているので悪霊ではなさそうだけれど、あまり関わりたくはない。
そして、先ほどの竹原さん――彼女の背中には半透明の女性が取り憑いている。竹原さんがおやつを摘み食いしたり、遅刻するたびにバレバレの嘘をつくのは……もしかしたら、背中の低級霊が原因かもしれない。あと、ああいうのは酷い肩こりを引き起こす。
「ひいぃっ! ご、ご、ご、ごめんなさひっ!」
「見てる! こっち、見てる! 見られてる!」
私の視線に気づいたのか、木下さんはテーブルの下に、竹原さんは西園寺さんの影に逃げ込んだ。まるでマシンガンの重厚を向けられたような反応である。
私は幽霊を見ることが出来る……が、あまりにも眼光が鋭いせいで、凝視すると視線に気づかれてしまうのだ。そして、当然のように怖がられる。こんなことをしていては、少女九龍城での安息を幽霊に破られてしまう。
――いや、すでに破られているのだ。
食堂のドアを押し開けて、一人の少女がフラフラとした足取りでやってくる。
「お、はようございま……ックション! ハックション!」
豪快にくしゃみをした彼女こそ、私が友達と呼べる唯一の相手――虎谷スバルさんだ。
彼女の背後には黒いモヤが蠢いている。
私の大切な友達に、悪霊の魔の手が迫っているのだ。
×
真っ赤な顔をして、虎谷さんがテーブルに突っ伏してしまう。すると、彼女の小さな体は黒いモヤに隠れてしまった。
まるで、無数の羽虫が寄り集まったような、見ていて気分の悪くなるような物体だ。おそらく、あれが俗に悪霊と呼ばれているやつだろう。竹原さんの背中に張り付いているものとは、比べものにならない威圧感を覚える。
管理人さんがおかゆを持ってきてくれる。
けれど、虎谷さんは食が進まないようで、一緒に差し出されたポカリスエットを一口だけ飲んだ。周りの少女たちが心配そうな顔をすると、彼女は精一杯に笑顔を作って、自分は大丈夫だからと強がった。それが見ていて逆に苦しかった。
「……おはよ、アキラちゃん」
虎谷さんが私に向かって、小さく手を振ってくれる。
私はオロオロとしながら、どうにか小声で「……おはよう」と返した。
虎谷さんが悪霊に取り憑かれたのは、今から一週間ほど前のことである。今まで病気知らずだった彼女が、唐突に風邪を引いてしまったのだ。住人たちの間で一大ニュースになったのだから、それがどれだけ珍しいことなのか分かる。
最初、黒いモヤは綿飴くらいの大きさだった。虎谷さんのように元気な人ならば、簡単に跳ね飛ばしてくれるだろうと私は思っていた。でも、黒いモヤは日に日に大きさを増していき、今では虎谷さんの体を覆わんばかりである。
他の幽霊たちと違って、人間の形をしていないのも不気味である。得体が知れないのだ。せめて、姿形だけでも見極められたなら、その怖さも半減してくれるだろう。
いや、と首を横に振る。
悪霊の姿形が分かったところで意味なんてない。
私は幽霊を見ることが出来ても、幽霊を追い払ったことなんて一度もないのだ。
幽霊と会話をしたことも、触ってみたこともない。
そうやって手をこまねいている間に、虎谷さんの体調は急速に悪化してしまった。
「……スバル、自分の部屋で寝てな。おぶってあげるから」
「うん……」
虎谷さんを背負って、管理人さんが食堂を出て行く。
胸がチクリと痛む。
極めてバカみたいな話だが、私は管理人さんに対して嫉妬しているのだ。虎谷さんのことは私が背負ってあげたかった。そんなことで嫉妬するくらいなら、最初から悪霊を退治するべきなのだ。
だが、今の私には何も出来ない。
今まで何をすることなく、ただ少女九龍城まで逃げてきた私に……一体何が出来るというのだろうか?
×
せめて出来ることはないだろうか……そう考えて、私は虎谷さんの看病を買って出ることにした。あまりにも遅すぎる決断だが、管理人さんは私に仕事を任せてくれた。彼女もまた、私を避けようとしない人間の一人である。
学校から少女九龍城に戻ると、私はお湯で濡らしたタオルを作り、それを抱えて虎谷さんの部屋に向かった。管理人さんが「あいつ、お風呂に入りたがってたな……」と言っていた。一週間も風邪が長引いているのだ。
ノックをしても返事がない。
ドアを押し開けて、私は虎谷さんの部屋に入る。
彼女の部屋はぬいぐるみの城だ。ベッドから床まで、動物のぬいぐるみが溢れている。さながら、動物園から大脱走してきたような有様だ。犬猫からテディベア、本物サイズのワニ、壁に立てかけてあるカエルの着ぐるみ、天井から吊り下がっているプテラノドン……。
そして、ベッドで眠っている虎谷さん。
真っ黒なモヤが天井を漂っている。悪霊はそこから根を下ろして、まるで天蓋付きベッドのように虎谷さんの体を包み込んでいた。いつも彼女と一緒にいるぬいぐるみたちも、悪霊に怯えてしまっているように見えた。
「……虎谷さん、起きてる?」
私が声を掛けると、彼女はまぶたを開いて視線を送った。
「汗が気持ち悪い……」
「拭いてあげる。体、起こすよ?」
背中に手を差し込んで、彼女の体をどうにか起きあがらせる。
パジャマを脱がせると、私は暖かい濡れタオルで虎谷さんの背中を拭いた。弱気になってしまった彼女の背中は、いつも見ているより小さく見える。強くこすったら砕けてしまいそうに感じられて、私は彼女の輪郭をなぞるように拭いてあげた。
「んっ……気持ちいい。ありがと、アキラちゃん」
真っ赤な顔をして、虎谷さんがニコッと微笑んでくれる。
だけど、天井からは悪霊が見下ろしていて、黒いモヤが周囲を漂っている。彼女の笑顔は強がりで、今もなお体力を失い続けているのだ。寝汗を拭いてあげた程度では、根本的な解決にはならない。
感謝してもらう必要だってない。だって、これは私自身の気休めにしていることなのだ。管理人さんに嫉妬して、彼女の仕事を奪い取っただけなのである。初めて出来た友達が危機に瀕している――それなのに私はとんだ役立たずだ。
「……ごめんね、虎谷さん。私、何も出来なくて」
「体、拭いてくれてるじゃん……」
「そういうことじゃないの」
タオルを握る手に思わず力がこもってしまう。
「私、虎谷さんが友達になってくれて嬉しかった。だって、虎谷さんが初めて出来た友達だもの。目つきが悪いせいで、背が高いせいで、誰も私の友達になってくれなかった。私自身だって、友達を作る努力をしてこなかった。虎谷さんは大切な友達なの。それなのに、私……」
「……いいんだよ、それで」
虎谷さんが私の手をキュッと握りしめた。
まるで赤ちゃんと握手をするような、とても弱々しい力だった。
「アキラちゃんは私のことを……初めてのお友達にしてくれたでしょ? それで十分だよ。特別なことをしてもらわなくても、私はそれだけで嬉しいんだ」
「ごめん、虎谷さん。ごめんね……」
これでは看病されているのがどっちなのか分からない。
虎谷さんにパジャマを着せて、柔らかな羽毛布団をかけ直してあげる。
すると、彼女はもう寝息を立て始めていた。今の虎谷さんにとっては、言葉を交わすことすら大きな負担なのだ。
黒いモヤがブヨブヨと蠢いて、壁を伝いながら私と虎谷さんに迫ってくる。
恐怖に耐えきれなくて、私はベッドから転がり落ちてしまう。
悪霊は虎谷さんの体を舐めるように、羽毛布団の上をひたひたと這い回っていた。虎谷さんは荒い呼吸を繰り返している。黒いモヤに包まれた彼女は、直接的に死を予感させた。いや、予感など悠長なものではない……確信だ。
一瞬、悪霊と目が合った気がした。
私は視線を逸らすと、虎谷さんの部屋から一目散に逃げ出した。
×
廊下の突き当たりまで走ったところで息が切れた。
日が落ちて、廊下は真っ暗になっている。ただ一つ、手の届かないような高い位置にある小窓から、青白い月明かりが斜めに差し込んでいた。
手に握りしめていたタオルを壁に投げつける。膝を突き、床に拳をたたきつけた。
「私のせいだ!」
思わず声が漏れる。
「虎谷さんが苦しんでいるのは私のせいだ! 私が何も出来ないから! 私が何も出来ないから、虎谷さんは苦しんでるんだ! どうしよう、虎谷さんが死んじゃうかもしれない! 虎谷さんが死んだら私のせいだ! 私は大切な友達を見殺しにするんだ!」
でも、怖い。私には何もすることが出来ない。
ただ単に目を背けるだけだ……。
「――お困りかや?」
不意に背後から声が掛かる。
振り返ってみると、そこには赤襦袢を着た少女が立っていた。確か倉橋椿さんという名前だったか……月明かりをスポットライトのように浴びながら、いつものように細身の煙草を吸っている。
彼女は煙草を一口吸って、ふーっと大きく息を吐いた。
「わっちはお主のことを詳しく知らぬ。だが、一つだけアドバイスさせてもらおう」
煙草の白い煙が、月明かりの中で透明に拡散する。
「ツラいことからは、ついつい目を背けてしまいがちじゃ。けれど、目を背けていては何も見ることが出来ない。何が出来るかどうかじゃなく、まずは真っ直ぐ見据えてみることから初めて見たらどうじゃ?」
「…………」
「存外、見えてしまえばどうにかなるかもしれぬ。見えてもいない問題にサジを投げるのは早計過ぎはせぬか?」
わっち、格好いいことを言った。
自分の言葉に浸っている倉橋さん。
でも、彼女の言うとおりなのかもしれない。
私はあらゆることから目を背けてきた。問題を直視することなく、最初から諦めてしまっていた。今まで逃げてしまったことだって、しっかりと正面を見据えていたならば、何か変わっていたのかもしれないのに……。
嘆いている場合ではない。自分を責めている場合ではない。逃げている場合ではない。
私のいるべき場所は虎谷さんの隣だったはずだ。
幽霊が見えるだけの私には、彼女を救うことが出来ないかもしれない。
けれど、それでも。
初めて出来た友達なのだから、私は彼女の隣にいてあげたいのだ。
起きあがり、私はすぐさま駆け出した。
「倉橋さん、ありがとう!」
「どうってことない」
小さく手を振る倉橋さん。
彼女に見送られて、私は逃げ帰ってきた廊下を戻っていく。
廊下には光が差し込まず、まるで悪霊の魔の手が部屋の外まで伸びているかのようだ。やつの体内に飛び込むような気分だ。虎谷さんはその中に、たった一人で取り残されている。役立たずの私かもしれないけれど、そばにいることくらいなら出来るはずだ。
走り続けで心臓が高鳴る。
息を整える暇もなく、私は虎谷さんの部屋のドアを開け放った。
部屋の中は……真っ黒だった。
黒いモヤはベッドの周りだけでなく、もはや部屋中に広がっていたのだ。ぬいぐるみたちもモヤに覆われてしまい、どんな動物だったのかも判別できない。足を踏み入れていると、足下によどんでいるモヤがぐにゃりと歪んだ。
虎谷さんの体もモヤに包まれて、どうにか顔だけが見えている状態である。頬が赤く、額には汗をかき、肩を上下させながら呼吸している。
「……虎谷さん!」
私は彼女の名前を呼ぶ。
だけど、反応したのは悪霊の方だった。
黒いモヤの中に真っ赤な瞳が現れる。それらは二つ、三つと数を増やしていき、天井、壁、床……四方八方から私のことを睨み付けた。檻の中に放り込まれて、無数のケモノに囲まれているかのようだ。私たちはもはや悪霊の餌に過ぎないのだろう。
膝が震える。
でも、私は逃げなかった。
そして、真っ直ぐに悪霊の姿を見据えた。
「虎谷さんから離れて」
足下の黒いモヤが、私の体をよじ登ってくるのが分かる。体にペンキを塗られているかのように気味が悪い。触れられた先から体温が奪われていく。それが刺すような痛みに変わっていく。顔を背けたくなる。
けれど、徐々に悪霊の輪郭が見えてきた。
黒いモヤの中に隠れて、虎谷さんの体に覆い被さっている。
人間の形だ。目つきはギョロリとしているけれど……なんだ、私よりも背が低い。体つきはとても貧相で、まるでミイラのように痩せている。虎谷さんにしがみつく姿は、なんだかとても弱々しかった。突き飛ばしたら、そのままパキリと折れてしまいそうである。黒いモヤがかかっていたから、あいつの本体を見据えることが出来なかった。
悪霊と目が合う。
「虎谷さんから離れてよ」
ベッドから転げ落ちるのは悪霊の番だった。
潮の満ち引きのごとく、黒いモヤがスーッと引っ込んでいく。足下だけでなく、壁や天井に張り付いていたモヤも逃げ出していった。
悪霊は私のことを恨めしげに睨み付けてきたが、諦めたように視線を逸らして、そのまま姿を消してしまった。砂糖が水に溶けてしまうように儚い消え方だった。正体が見極められてしまえば、実にあっけない幕切れである。
ぬいぐるみたちも姿を取り戻す。
彼らの姿を見たことで、ようやく悪霊が去ったことを実感することが出来た。
「……アキラ、ちゃん?」
「虎谷さん!」
名前を呼ばれて、私は虎谷さんの元に駆け寄る。
彼女は汗まみれになりながらも、強がりではない本物の笑顔を私に見せてくれた。
「なんか、すごい楽な気持ちになった。アキラちゃんが体を拭いてくれたからかな?」
途端、涙があふれた。
私は特別なことなんてしていない。ただ、やっと、初めて自分と向き合うことが出来た。友達のために頑張ることが出来た。ただのそれだけだ。
頬を寄せて、虎谷さんの体を力一杯に抱きしめる。
「……アキラちゃん。私、風邪引いてるし、汗かいてるし、」
「お願いだから、今はこうさせて……」
すると、虎谷さんも私の体に手を回してくれた。
「なんか恥ずかしいけど、アキラちゃんがしたいなら、いつまでもしてくれていいよ? だって、私、アキラちゃんの初めての友達だもんね」
そうして、私は力一杯に抱き合っていた。
管理人さんが夕食を運んできて、ギョッとした顔をして「お邪魔しました……」と言って出て行くまで、ずっと抱き合っていたのである。
×
その後の話。
翌朝になると、虎谷さんはすっかり元気を取り戻してくれた。まるで、一週間も風邪を引いていたのが嘘のようである。貧弱そうに見えたが、あの悪霊は相当厄介なやつだったのだ。追い払えて良かった。
私と虎谷さんの友達関係も続いている。ここ最近は彼女と一緒にいることで、虎谷さんの友達とも話せるようになってきた。とはいえ、やっぱり一番の友達は虎谷さんだ。
それから、幽霊と向き合えるようにもなってきた。悪そうな幽霊を見つけると、なるべく睨み付けて追い払うようにしている。
ちなみに、竹原さんに取り憑いていた低級霊も追い払ってみたけれど、彼女の小ずるい性格は改善されなかった。でも、肩こりは治ったらしい。
(おしまい)
顔をタオルで拭いて、正面の鏡に目をやった瞬間……私は悲鳴を上げそうになった。
この鏡に映っている『今にも人を殺しそうな目つきの少女』は誰だ?
答えは簡単。
他でもない私自身――結城アキラという一人の人間である。
自分の顔を見て悲鳴を上げそうになるだなんて、恥ずかしいにもほどがある。洗面所に他の少女の姿はなく、変なところを見られなくて一安心だ。というか、今回のような事態がたびたび発生するため、意図的に早起きしているのである。
私が住んでいる女子寮――通称・少女九龍城は奇妙な場所で、そもそも住人の数がハッキリとしていない。とはいえ、やたらと多いことには変わりなく、洗面所は学生組で毎朝のように混み合うのだ。
隣人とのトラブルを避けること……これが私の人生訓である。
なにしろ、目つきが悪いせいで数々の誤解を招いてきた。
落とし物を拾ってあげただけなのに、親や先生から「お前が盗んだのか!」と怒られたことは数知れない。反省しているつもりなのに「なんだその目は!」と叩かれたり、遊びに混ぜてもらっても「文句があるなら言いなさいよ!」と爪弾きだ。
あげく、近寄っただけで「カツアゲされる!」だの「ガン飛ばしてんじゃねーよ!」だの……私はすっかり不良少女扱いである。身長までスクスクと伸びてしまい、今では一七〇センチを超えてしまった。私に見下ろされると、大抵ヤンキー女は逃げる。
私が少女九龍城を選んだのは、地元から遠く離れる必要があったからだ。地元はひどいド田舎で、すでに『結城アキラ=不良娘』というイメージが出来上がっている。どこか、遠くの土地で再スタートを切らなければいけないのだ。
そして、少女九龍城での再スタートだが……地元よりはマシという程度だろう。
変わった性格の住人が多く、私のことを見ても逃げ出さない人間が少なからずいる。とはいえ、その中で友達と呼べる人間はほとんどいない。やはり、私と関わらないようにしている子が大部分だ。
私は贅沢なのだろうか。
妙な誤解が起こらないだけでも、ありがたいと思うべきなのだろうか。
私が鏡を見ながら思い悩んでいると、
「うわっ! 目つき、わるっ!」
洗面所に入ってくるなり、住人の竹原さんが私のことを指さして叫んだ。
それから、彼女はハッとした表情で口元を押さえると、
「い、いまのはナシ! ナシだからね、結城さん!」
何もしないで洗面所からそそくさと出て行ってしまった。たぶん、西園寺さんあたりに泣きつくのだろう。ここ最近、あの二人は急に仲良しになった。なんというか、相思相愛という感じである。
「……うらやましい」
私は呟く。
だが、先ほど目の当たりにした光景が脳内に焼き付く。
竹原さんの背中に、半透明の女性が張り付いていた。
果たして、目つきの悪さと何か関係があるのか――私には幽霊が見えるのである。
×
少女九龍城では幽霊が頻繁に目撃されている。しかし、それはあくまで『一般人に見える幽霊』の範疇である。私の三白眼には『霊感のある人にしか見えない幽霊』が確実に映り込んでいるのだ。
この場所に来るまで、私は自分に霊感があることを知らなかった。神様というのは意地悪なやつで、周囲の人間から誤解されなくなった代わりに、今度は私の目に幽霊が映るように仕組んだのだ。
たとえば、朝の食堂――ここにも複数の幽霊が確認できる。
まず、卵焼きを食べている管理人さんだが、彼女の背後には優しい顔をしたおばあさんが立っている。いわゆる守護霊というやつだろう。管理人さんが煙草を吸うと、とても嫌そうな顔をする。
その次に、一人で朝食を食べている木下さん。彼女の背後には『首輪と枷を付けた女性』が立っている。全裸なので目のやり場に困る。ニコニコとしているので悪霊ではなさそうだけれど、あまり関わりたくはない。
そして、先ほどの竹原さん――彼女の背中には半透明の女性が取り憑いている。竹原さんがおやつを摘み食いしたり、遅刻するたびにバレバレの嘘をつくのは……もしかしたら、背中の低級霊が原因かもしれない。あと、ああいうのは酷い肩こりを引き起こす。
「ひいぃっ! ご、ご、ご、ごめんなさひっ!」
「見てる! こっち、見てる! 見られてる!」
私の視線に気づいたのか、木下さんはテーブルの下に、竹原さんは西園寺さんの影に逃げ込んだ。まるでマシンガンの重厚を向けられたような反応である。
私は幽霊を見ることが出来る……が、あまりにも眼光が鋭いせいで、凝視すると視線に気づかれてしまうのだ。そして、当然のように怖がられる。こんなことをしていては、少女九龍城での安息を幽霊に破られてしまう。
――いや、すでに破られているのだ。
食堂のドアを押し開けて、一人の少女がフラフラとした足取りでやってくる。
「お、はようございま……ックション! ハックション!」
豪快にくしゃみをした彼女こそ、私が友達と呼べる唯一の相手――虎谷スバルさんだ。
彼女の背後には黒いモヤが蠢いている。
私の大切な友達に、悪霊の魔の手が迫っているのだ。
×
真っ赤な顔をして、虎谷さんがテーブルに突っ伏してしまう。すると、彼女の小さな体は黒いモヤに隠れてしまった。
まるで、無数の羽虫が寄り集まったような、見ていて気分の悪くなるような物体だ。おそらく、あれが俗に悪霊と呼ばれているやつだろう。竹原さんの背中に張り付いているものとは、比べものにならない威圧感を覚える。
管理人さんがおかゆを持ってきてくれる。
けれど、虎谷さんは食が進まないようで、一緒に差し出されたポカリスエットを一口だけ飲んだ。周りの少女たちが心配そうな顔をすると、彼女は精一杯に笑顔を作って、自分は大丈夫だからと強がった。それが見ていて逆に苦しかった。
「……おはよ、アキラちゃん」
虎谷さんが私に向かって、小さく手を振ってくれる。
私はオロオロとしながら、どうにか小声で「……おはよう」と返した。
虎谷さんが悪霊に取り憑かれたのは、今から一週間ほど前のことである。今まで病気知らずだった彼女が、唐突に風邪を引いてしまったのだ。住人たちの間で一大ニュースになったのだから、それがどれだけ珍しいことなのか分かる。
最初、黒いモヤは綿飴くらいの大きさだった。虎谷さんのように元気な人ならば、簡単に跳ね飛ばしてくれるだろうと私は思っていた。でも、黒いモヤは日に日に大きさを増していき、今では虎谷さんの体を覆わんばかりである。
他の幽霊たちと違って、人間の形をしていないのも不気味である。得体が知れないのだ。せめて、姿形だけでも見極められたなら、その怖さも半減してくれるだろう。
いや、と首を横に振る。
悪霊の姿形が分かったところで意味なんてない。
私は幽霊を見ることが出来ても、幽霊を追い払ったことなんて一度もないのだ。
幽霊と会話をしたことも、触ってみたこともない。
そうやって手をこまねいている間に、虎谷さんの体調は急速に悪化してしまった。
「……スバル、自分の部屋で寝てな。おぶってあげるから」
「うん……」
虎谷さんを背負って、管理人さんが食堂を出て行く。
胸がチクリと痛む。
極めてバカみたいな話だが、私は管理人さんに対して嫉妬しているのだ。虎谷さんのことは私が背負ってあげたかった。そんなことで嫉妬するくらいなら、最初から悪霊を退治するべきなのだ。
だが、今の私には何も出来ない。
今まで何をすることなく、ただ少女九龍城まで逃げてきた私に……一体何が出来るというのだろうか?
×
せめて出来ることはないだろうか……そう考えて、私は虎谷さんの看病を買って出ることにした。あまりにも遅すぎる決断だが、管理人さんは私に仕事を任せてくれた。彼女もまた、私を避けようとしない人間の一人である。
学校から少女九龍城に戻ると、私はお湯で濡らしたタオルを作り、それを抱えて虎谷さんの部屋に向かった。管理人さんが「あいつ、お風呂に入りたがってたな……」と言っていた。一週間も風邪が長引いているのだ。
ノックをしても返事がない。
ドアを押し開けて、私は虎谷さんの部屋に入る。
彼女の部屋はぬいぐるみの城だ。ベッドから床まで、動物のぬいぐるみが溢れている。さながら、動物園から大脱走してきたような有様だ。犬猫からテディベア、本物サイズのワニ、壁に立てかけてあるカエルの着ぐるみ、天井から吊り下がっているプテラノドン……。
そして、ベッドで眠っている虎谷さん。
真っ黒なモヤが天井を漂っている。悪霊はそこから根を下ろして、まるで天蓋付きベッドのように虎谷さんの体を包み込んでいた。いつも彼女と一緒にいるぬいぐるみたちも、悪霊に怯えてしまっているように見えた。
「……虎谷さん、起きてる?」
私が声を掛けると、彼女はまぶたを開いて視線を送った。
「汗が気持ち悪い……」
「拭いてあげる。体、起こすよ?」
背中に手を差し込んで、彼女の体をどうにか起きあがらせる。
パジャマを脱がせると、私は暖かい濡れタオルで虎谷さんの背中を拭いた。弱気になってしまった彼女の背中は、いつも見ているより小さく見える。強くこすったら砕けてしまいそうに感じられて、私は彼女の輪郭をなぞるように拭いてあげた。
「んっ……気持ちいい。ありがと、アキラちゃん」
真っ赤な顔をして、虎谷さんがニコッと微笑んでくれる。
だけど、天井からは悪霊が見下ろしていて、黒いモヤが周囲を漂っている。彼女の笑顔は強がりで、今もなお体力を失い続けているのだ。寝汗を拭いてあげた程度では、根本的な解決にはならない。
感謝してもらう必要だってない。だって、これは私自身の気休めにしていることなのだ。管理人さんに嫉妬して、彼女の仕事を奪い取っただけなのである。初めて出来た友達が危機に瀕している――それなのに私はとんだ役立たずだ。
「……ごめんね、虎谷さん。私、何も出来なくて」
「体、拭いてくれてるじゃん……」
「そういうことじゃないの」
タオルを握る手に思わず力がこもってしまう。
「私、虎谷さんが友達になってくれて嬉しかった。だって、虎谷さんが初めて出来た友達だもの。目つきが悪いせいで、背が高いせいで、誰も私の友達になってくれなかった。私自身だって、友達を作る努力をしてこなかった。虎谷さんは大切な友達なの。それなのに、私……」
「……いいんだよ、それで」
虎谷さんが私の手をキュッと握りしめた。
まるで赤ちゃんと握手をするような、とても弱々しい力だった。
「アキラちゃんは私のことを……初めてのお友達にしてくれたでしょ? それで十分だよ。特別なことをしてもらわなくても、私はそれだけで嬉しいんだ」
「ごめん、虎谷さん。ごめんね……」
これでは看病されているのがどっちなのか分からない。
虎谷さんにパジャマを着せて、柔らかな羽毛布団をかけ直してあげる。
すると、彼女はもう寝息を立て始めていた。今の虎谷さんにとっては、言葉を交わすことすら大きな負担なのだ。
黒いモヤがブヨブヨと蠢いて、壁を伝いながら私と虎谷さんに迫ってくる。
恐怖に耐えきれなくて、私はベッドから転がり落ちてしまう。
悪霊は虎谷さんの体を舐めるように、羽毛布団の上をひたひたと這い回っていた。虎谷さんは荒い呼吸を繰り返している。黒いモヤに包まれた彼女は、直接的に死を予感させた。いや、予感など悠長なものではない……確信だ。
一瞬、悪霊と目が合った気がした。
私は視線を逸らすと、虎谷さんの部屋から一目散に逃げ出した。
×
廊下の突き当たりまで走ったところで息が切れた。
日が落ちて、廊下は真っ暗になっている。ただ一つ、手の届かないような高い位置にある小窓から、青白い月明かりが斜めに差し込んでいた。
手に握りしめていたタオルを壁に投げつける。膝を突き、床に拳をたたきつけた。
「私のせいだ!」
思わず声が漏れる。
「虎谷さんが苦しんでいるのは私のせいだ! 私が何も出来ないから! 私が何も出来ないから、虎谷さんは苦しんでるんだ! どうしよう、虎谷さんが死んじゃうかもしれない! 虎谷さんが死んだら私のせいだ! 私は大切な友達を見殺しにするんだ!」
でも、怖い。私には何もすることが出来ない。
ただ単に目を背けるだけだ……。
「――お困りかや?」
不意に背後から声が掛かる。
振り返ってみると、そこには赤襦袢を着た少女が立っていた。確か倉橋椿さんという名前だったか……月明かりをスポットライトのように浴びながら、いつものように細身の煙草を吸っている。
彼女は煙草を一口吸って、ふーっと大きく息を吐いた。
「わっちはお主のことを詳しく知らぬ。だが、一つだけアドバイスさせてもらおう」
煙草の白い煙が、月明かりの中で透明に拡散する。
「ツラいことからは、ついつい目を背けてしまいがちじゃ。けれど、目を背けていては何も見ることが出来ない。何が出来るかどうかじゃなく、まずは真っ直ぐ見据えてみることから初めて見たらどうじゃ?」
「…………」
「存外、見えてしまえばどうにかなるかもしれぬ。見えてもいない問題にサジを投げるのは早計過ぎはせぬか?」
わっち、格好いいことを言った。
自分の言葉に浸っている倉橋さん。
でも、彼女の言うとおりなのかもしれない。
私はあらゆることから目を背けてきた。問題を直視することなく、最初から諦めてしまっていた。今まで逃げてしまったことだって、しっかりと正面を見据えていたならば、何か変わっていたのかもしれないのに……。
嘆いている場合ではない。自分を責めている場合ではない。逃げている場合ではない。
私のいるべき場所は虎谷さんの隣だったはずだ。
幽霊が見えるだけの私には、彼女を救うことが出来ないかもしれない。
けれど、それでも。
初めて出来た友達なのだから、私は彼女の隣にいてあげたいのだ。
起きあがり、私はすぐさま駆け出した。
「倉橋さん、ありがとう!」
「どうってことない」
小さく手を振る倉橋さん。
彼女に見送られて、私は逃げ帰ってきた廊下を戻っていく。
廊下には光が差し込まず、まるで悪霊の魔の手が部屋の外まで伸びているかのようだ。やつの体内に飛び込むような気分だ。虎谷さんはその中に、たった一人で取り残されている。役立たずの私かもしれないけれど、そばにいることくらいなら出来るはずだ。
走り続けで心臓が高鳴る。
息を整える暇もなく、私は虎谷さんの部屋のドアを開け放った。
部屋の中は……真っ黒だった。
黒いモヤはベッドの周りだけでなく、もはや部屋中に広がっていたのだ。ぬいぐるみたちもモヤに覆われてしまい、どんな動物だったのかも判別できない。足を踏み入れていると、足下によどんでいるモヤがぐにゃりと歪んだ。
虎谷さんの体もモヤに包まれて、どうにか顔だけが見えている状態である。頬が赤く、額には汗をかき、肩を上下させながら呼吸している。
「……虎谷さん!」
私は彼女の名前を呼ぶ。
だけど、反応したのは悪霊の方だった。
黒いモヤの中に真っ赤な瞳が現れる。それらは二つ、三つと数を増やしていき、天井、壁、床……四方八方から私のことを睨み付けた。檻の中に放り込まれて、無数のケモノに囲まれているかのようだ。私たちはもはや悪霊の餌に過ぎないのだろう。
膝が震える。
でも、私は逃げなかった。
そして、真っ直ぐに悪霊の姿を見据えた。
「虎谷さんから離れて」
足下の黒いモヤが、私の体をよじ登ってくるのが分かる。体にペンキを塗られているかのように気味が悪い。触れられた先から体温が奪われていく。それが刺すような痛みに変わっていく。顔を背けたくなる。
けれど、徐々に悪霊の輪郭が見えてきた。
黒いモヤの中に隠れて、虎谷さんの体に覆い被さっている。
人間の形だ。目つきはギョロリとしているけれど……なんだ、私よりも背が低い。体つきはとても貧相で、まるでミイラのように痩せている。虎谷さんにしがみつく姿は、なんだかとても弱々しかった。突き飛ばしたら、そのままパキリと折れてしまいそうである。黒いモヤがかかっていたから、あいつの本体を見据えることが出来なかった。
悪霊と目が合う。
「虎谷さんから離れてよ」
ベッドから転げ落ちるのは悪霊の番だった。
潮の満ち引きのごとく、黒いモヤがスーッと引っ込んでいく。足下だけでなく、壁や天井に張り付いていたモヤも逃げ出していった。
悪霊は私のことを恨めしげに睨み付けてきたが、諦めたように視線を逸らして、そのまま姿を消してしまった。砂糖が水に溶けてしまうように儚い消え方だった。正体が見極められてしまえば、実にあっけない幕切れである。
ぬいぐるみたちも姿を取り戻す。
彼らの姿を見たことで、ようやく悪霊が去ったことを実感することが出来た。
「……アキラ、ちゃん?」
「虎谷さん!」
名前を呼ばれて、私は虎谷さんの元に駆け寄る。
彼女は汗まみれになりながらも、強がりではない本物の笑顔を私に見せてくれた。
「なんか、すごい楽な気持ちになった。アキラちゃんが体を拭いてくれたからかな?」
途端、涙があふれた。
私は特別なことなんてしていない。ただ、やっと、初めて自分と向き合うことが出来た。友達のために頑張ることが出来た。ただのそれだけだ。
頬を寄せて、虎谷さんの体を力一杯に抱きしめる。
「……アキラちゃん。私、風邪引いてるし、汗かいてるし、」
「お願いだから、今はこうさせて……」
すると、虎谷さんも私の体に手を回してくれた。
「なんか恥ずかしいけど、アキラちゃんがしたいなら、いつまでもしてくれていいよ? だって、私、アキラちゃんの初めての友達だもんね」
そうして、私は力一杯に抱き合っていた。
管理人さんが夕食を運んできて、ギョッとした顔をして「お邪魔しました……」と言って出て行くまで、ずっと抱き合っていたのである。
×
その後の話。
翌朝になると、虎谷さんはすっかり元気を取り戻してくれた。まるで、一週間も風邪を引いていたのが嘘のようである。貧弱そうに見えたが、あの悪霊は相当厄介なやつだったのだ。追い払えて良かった。
私と虎谷さんの友達関係も続いている。ここ最近は彼女と一緒にいることで、虎谷さんの友達とも話せるようになってきた。とはいえ、やっぱり一番の友達は虎谷さんだ。
それから、幽霊と向き合えるようにもなってきた。悪そうな幽霊を見つけると、なるべく睨み付けて追い払うようにしている。
ちなみに、竹原さんに取り憑いていた低級霊も追い払ってみたけれど、彼女の小ずるい性格は改善されなかった。でも、肩こりは治ったらしい。
(おしまい)
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
好きになっちゃったね。
青宮あんず
大衆娯楽
ドラッグストアで働く女の子と、よくおむつを買いに来るオシャレなお姉さんの百合小説。
一ノ瀬水葉
おねしょ癖がある。
おむつを買うのが恥ずかしかったが、京華の対応が優しくて買いやすかったので京華がレジにいる時にしか買わなくなった。
ピアスがたくさんついていたり、目付きが悪く近寄りがたそうだが実際は優しく小心者。かなりネガティブ。
羽月京華
おむつが好き。特に履いてる可愛い人を見るのが。
おむつを買う人が眺めたくてドラッグストアで働き始めた。
見た目は優しげで純粋そうだが中身は変態。
私が百合を書くのはこれで最初で最後になります。
自分のpixivから少しですが加筆して再掲。
春の残骸
葛原そしお
ミステリー
赤星杏奈。彼女と出会ったのは、私──西塚小夜子──が中学生の時だった。彼女は学年一の秀才、優等生で、誰よりも美しかった。最後に彼女を見たのは十年前、高校一年生の時。それ以来、彼女と会うことはなく、彼女のことを思い出すこともなくなっていった。
しかし偶然地元に帰省した際、彼女の近況を知ることとなる。精神を病み、実家に引きこもっているとのこと。そこで私は見る影もなくなった現在の彼女と再会し、悲惨な状況に身を置く彼女を引き取ることに決める。
共同生活を始めて一ヶ月、落ち着いてきたころ、私は奇妙な夢を見た。それは過去の、中学二年の始業式の夢で、当時の彼女が現れた。私は思わず彼女に告白してしまった。それはただの夢だと思っていたが、本来知らないはずの彼女のアドレスや、身に覚えのない記憶が私の中にあった。
あの夢は私が忘れていた記憶なのか。あるいは夢の中の行動が過去を変え、現実を改変するのか。そしてなぜこんな夢を見るのか、現象が起きたのか。そしてこの現象に、私の死が関わっているらしい。
私はその謎を解くことに興味はない。ただ彼女を、杏奈を救うために、この現象を利用することに決めた。
女領主とその女中~Femme fatale~
あべかわきなこ
恋愛
田舎町ボルドウの女領主ロアとその女中マリアは、悪魔と修道女、使い魔と主人、強いて言うなら恋人同士、という関係性。
ふたりは教会からの依頼をこなし、悪魔祓いとして奮闘するのだが……?
吸血主従百合ダークファンタジー。
※本作は「女領主とその女中」https://www.alphapolis.co.jp/novel/181074507/37176101
「女領主とその女中~Vacances!~」https://www.alphapolis.co.jp/novel/181074507/400177787
の続編になります。
女の子なんてなりたくない?
我破破
恋愛
これは、「男」を取り戻す為の戦いだ―――
突如として「金の玉」を奪われ、女体化させられた桜田憧太は、「金の玉」を取り戻す為の戦いに巻き込まれてしまう。
魔法少女となった桜田憧太は大好きなあの娘に思いを告げる為、「男」を取り戻そうと奮闘するが……?
ついにコミカライズ版も出ました。待望の新作を見届けよ‼
https://www.alphapolis.co.jp/manga/216382439/225307113
【完結】【R18百合】会社のゆるふわ後輩女子に抱かれました
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
レズビアンの月岡美波が起きると、会社の後輩女子の桜庭ハルナと共にベッドで寝ていた。
一体何があったのか? 桜庭ハルナはどういうつもりなのか? 月岡美波はどんな選択をするのか?
おすすめシチュエーション
・後輩に振り回される先輩
・先輩が大好きな後輩
続きは「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」にて掲載しています。
だいぶ毛色が変わるのでシーズン2として別作品で登録することにしました。
読んでやってくれると幸いです。
「会社のシゴデキ先輩女子と付き合っています」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/759377035/615873195
※タイトル画像はAI生成です
身長48メートルの巨大少女ですけど普通のJKさせてもらっても良いんですか!?
穂鈴 えい
キャラ文芸
身長48mの女子高生春山月乃は、入学式の日に身長43mで身長コンプレックスの美少女白石小鈴と出会った。
みんなから巨女扱いされてきた小鈴は、自分よりも背の高い月乃が小柄扱いしてくれるおかげで次第に心を開いていき、やがて恋に落ちていく。月乃も同じ巨大娘として気楽に仲良くできる小鈴のことが大好きだった。
そんな2人の距離がお互いに近づいていくのだが、月乃に憧れている普通サイズの少女絵美莉に月乃が懐かれてしまい、小鈴にとって気が気ではない日が続いていくことに……。
月乃にとっても、小鈴が憧れているモデルのSAKIことお姫ちゃん先輩(身長51m)という恋のライバル(?)がいて日々不安に苛まれてしまうことに……。
巨大娘専用の校舎は全てのものが大きいから、巨大な月乃や小鈴でもサイズを意識せずに生活できる。
……はずなのだが、いじめがきっかけで苦手意識を持ってしまった普通サイズの人間が、虫と同等くらいの生物にしか見えなくなった2年生の詩葉先輩(48m)や、巨大化してしまって大好きなピアノが弾けなくなったストレスで街で暴れる身長50mの女子中学生琴音との出会いによって定期的に巨大さを意識させられてしまうことに。
はたして、身長48mの月乃は巨大娘たちに翻弄されずに普通の女子高生として学校生活を送ることができるのか……。
巨大娘要素以外は基本的には日常系百合作品です。(稀に街を壊したりしちゃいますが)
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる