失恋

涼雅

文字の大きさ
上 下
4 / 4

既視感

しおりを挟む
「本当にごめん…!」

目の前の男はそう言いながら頭を下げる

目の前の男、そう原くんだ。

あれ、デジャヴ…。

昨日との光景が重なるが、俺はまた何の話だと原くんに問いかける

「その、あいつらが余計なこと言ってただろ…?」

あー、結局あいつら、原くんに聞いたのか

昨日の本当に何も無かった勘違い話を。

「まあ、面倒臭いこと極まりなかったけど、とりあえずは解決したんだろ」

「あー、うん…勘違いだったって話して、そう。

 とりあえずは、ね。」

とてつもなく歯切れが悪い。

きょろきょろと視線が忙しない原くんは、何か不味いことにでも巻き込まれ中なのだろうか

「その言い方だと面倒事は続行中か?」

面倒事に首を突っ込まない。

そう強く誓っているのに、何故か口から出た言葉は自らそれに飛び込むものだった

え、と疑問符を漏らす原くんの顔は赤い

昨日、別れ際の色と重なるが、それが何を意味するかは分からない

「いや、あいつらのことを面倒事だと言うのはちょっとあれだったかもしれないけれど。

 何か困ってるなら、頼れば?」

…不器用かよ

自分で言いながらもこれは無いわ。

お人好しな原くんだから、その面倒事も請け負ってしまっているのでは、と思っての言葉だけど

誰かに頼っている所を見たことないからと言ってみたものの、面倒事押し付けたの俺じゃないか?

「そう、言ってくれて嬉しい…ありがとう」

ぱっと笑顔を浮かべて原くんはそう言った

因果応報感が否めないが、原くんを困らせてしまっているのなら責任を取るべき、だろう。多分。

「何か困ってることあるなら手伝うけど。

 …俺に出来ることなら。」

手伝うと言ってしまった手前、前言撤回できることも無いため、保険を張るように頼りない言葉を付け足した。

「大丈夫だよ、大丈夫。ありがとね」

変わらず、困ったように笑う表情に納得はいかないけれど、本人がそう言っているなら無理強いする必要も無い。

「どうにも出来なくなる前に言ってくれ」

そう言い残して教室を後にした

何が出来るわけじゃないのに何故かそう口走っていた

結局、面倒事はなにも解決していないらしい。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

攻められない攻めと、受けたい受けの話

雨宮里玖
BL
恋人になったばかりの高月とのデート中に、高月の高校時代の友人である唯香に遭遇する。唯香は遠慮なく二人のデートを邪魔して高月にやたらと甘えるので、宮咲はヤキモキして——。 高月(19)大学一年生。宮咲の恋人。 宮咲(18)大学一年生。高月の恋人。 唯香(19)高月の友人。性格悪。 智江(18)高月、唯香の友人。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】

佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。 異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。 幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。 その事実を1番隣でいつも見ていた。 一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。 25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。 これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。 何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは… 完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

処理中です...