9 / 18
それだけ。
しおりを挟む
「もう行くね
…その、まじでごめん。それと、ありがと。助かった」
これ以上2人の邪魔をするのは申し訳なくて、朝ごはんを食べたあと早々に出ていくことにした
「いーや?全然大丈夫やって。むしろ、もっと頼ってや?」
深優くんがいつもの笑顔で見送ってくれる
「どこに泊まるか決まったらちゃんと連絡くださいね!
また、しんどくなったら、聞きますから。言ってください?」
華琉もこれからのことを心配してくれた
「ん、ありがと。じゃ、また」
控えめに手を振って、玄関のドアを閉めた
はー、これからどーすっかなぁ~
とりま連絡してみるか
「えーっと…こうじは、旅行行ってんのか」
優空さんは、どーかな
『優空さん、家行ってもいいですか?』
いつもとは違ったシンプルな文面。
可愛らしいスタンプも何もなし。
『普段の俺』からの連絡とは違った雰囲気に、彼は気がついてくれたのだろう
『いいよ、早くおいで』
家に行くことを許可してくれた
深優くんの家から優空さんの家まではそこそこ近い
言ってしまえば、優空さんの家の場所は俺の仲のいい友人達との家の中間地点にある様な。
誰の家からも近い場所に優空さんの家はある。
便利なとこ住んでんなぁ
これからのことをしばしば考えていればすぐに着いてしまう
「凪津でーす」
インターホンを押したあと、控えめにそう言うと静かに開くドア
「いらっしゃい」
朝早くからだったが、幸い起きていた彼は眠たそうにしながらも家に招き入れてくれた
まあ、連絡して返信きた時点で起きてるの確定だけどさ
この人、いつでもどこでも眠る人だから(失礼)
「………いまなんか…失礼なこと考えてた?」
え、優空さんエスパーかよすげぇ
「考えてないっすよ」
すっとぼける俺。
ならいいけど。と、あまり気にしていないような優空さんはソファにでかでかと座った
贅沢なことに優空さんの家には大きなソファが2つある
向かい合うようにしてもう1つのソファに座った
「…いきなりすみません」
とりあえず突然の訪問を謝罪する
「いいよいいよ
なんかあったんでしょ?
昨日華琉くんから連絡来たし、凪津くん、なんか元気ないし」
うわ、全てお見通しかよ。大学時代の繋がりってすげぇ
「まぁ…そうっすね」
「それで?なんで俺の家?明輝と同棲してるんでしょ?」
『明輝』
2文字の何の変哲もない言葉なのに、今の俺を動揺させるには十分すぎる名前だ
「………ごめん」
地雷に気がついたのか優空さんが謝る
「いや、大丈夫です
まあなんか、色々あって…単刀直入に言うんですけど…」
唐突すぎる訪問に続けて、泊めてください、なんて言えるはずもなく、気まずくなって口を噤んでしまう
なかなか次の言葉を発さない俺に、優空さんが自前の心地よい低音で続きを促す
「うん、なぁに?」
「…しばらく、泊めてください」
色んな人に迷惑かけてばっかりだ
そう思うと彼の顔を見れない
お願いをしたのに顔を伏せてしまう
「ん、いいよ」
暫く吟味していたような彼は普段と変わらない声で了承してくれた
「その代わり。
何があったのか教えて?」
気になっちゃうし、と少しおどけた様子でそういう彼に「確かにそうですね」と苦笑いを返した
「色々あって、とか言ったけど…まあ…明輝に浮気、されてたみたいで……あは…」
何があったのか、改めて聞かれたら色々なんてなくて。
ただ、浮気されてただけ。
原因も、そうなった経緯も、あの女も、明輝の気持ちもわかんない
なんか、そう思うとどーでもよくなって乾いた笑いが漏れた
「……そっか…ん、わかった。ありがと」
淡白な反応。
そう言ってしまえば好感を持たれないであろう彼の反応は、いまの俺には丁度良かった
追及をしてこないあたり、余計な気を張らなくて済むし、安心する。
「…まあ、なんか…お疲れ様」
そう言ってぽんぽんと頭を撫でてくれる
それが合図かのように視界がぶわぁとぼやけていく
あれ、おかしい。あんだけ泣いたのにまだ出てるの?
「泣きたい時に泣いていいよ
耐える必要なんてないんだから」
低く、芯の通った声が鼓膜を震わす
赤子をあやすような優しさにぽつりと頬を伝った
それはまだ冷たいまま。
…その、まじでごめん。それと、ありがと。助かった」
これ以上2人の邪魔をするのは申し訳なくて、朝ごはんを食べたあと早々に出ていくことにした
「いーや?全然大丈夫やって。むしろ、もっと頼ってや?」
深優くんがいつもの笑顔で見送ってくれる
「どこに泊まるか決まったらちゃんと連絡くださいね!
また、しんどくなったら、聞きますから。言ってください?」
華琉もこれからのことを心配してくれた
「ん、ありがと。じゃ、また」
控えめに手を振って、玄関のドアを閉めた
はー、これからどーすっかなぁ~
とりま連絡してみるか
「えーっと…こうじは、旅行行ってんのか」
優空さんは、どーかな
『優空さん、家行ってもいいですか?』
いつもとは違ったシンプルな文面。
可愛らしいスタンプも何もなし。
『普段の俺』からの連絡とは違った雰囲気に、彼は気がついてくれたのだろう
『いいよ、早くおいで』
家に行くことを許可してくれた
深優くんの家から優空さんの家まではそこそこ近い
言ってしまえば、優空さんの家の場所は俺の仲のいい友人達との家の中間地点にある様な。
誰の家からも近い場所に優空さんの家はある。
便利なとこ住んでんなぁ
これからのことをしばしば考えていればすぐに着いてしまう
「凪津でーす」
インターホンを押したあと、控えめにそう言うと静かに開くドア
「いらっしゃい」
朝早くからだったが、幸い起きていた彼は眠たそうにしながらも家に招き入れてくれた
まあ、連絡して返信きた時点で起きてるの確定だけどさ
この人、いつでもどこでも眠る人だから(失礼)
「………いまなんか…失礼なこと考えてた?」
え、優空さんエスパーかよすげぇ
「考えてないっすよ」
すっとぼける俺。
ならいいけど。と、あまり気にしていないような優空さんはソファにでかでかと座った
贅沢なことに優空さんの家には大きなソファが2つある
向かい合うようにしてもう1つのソファに座った
「…いきなりすみません」
とりあえず突然の訪問を謝罪する
「いいよいいよ
なんかあったんでしょ?
昨日華琉くんから連絡来たし、凪津くん、なんか元気ないし」
うわ、全てお見通しかよ。大学時代の繋がりってすげぇ
「まぁ…そうっすね」
「それで?なんで俺の家?明輝と同棲してるんでしょ?」
『明輝』
2文字の何の変哲もない言葉なのに、今の俺を動揺させるには十分すぎる名前だ
「………ごめん」
地雷に気がついたのか優空さんが謝る
「いや、大丈夫です
まあなんか、色々あって…単刀直入に言うんですけど…」
唐突すぎる訪問に続けて、泊めてください、なんて言えるはずもなく、気まずくなって口を噤んでしまう
なかなか次の言葉を発さない俺に、優空さんが自前の心地よい低音で続きを促す
「うん、なぁに?」
「…しばらく、泊めてください」
色んな人に迷惑かけてばっかりだ
そう思うと彼の顔を見れない
お願いをしたのに顔を伏せてしまう
「ん、いいよ」
暫く吟味していたような彼は普段と変わらない声で了承してくれた
「その代わり。
何があったのか教えて?」
気になっちゃうし、と少しおどけた様子でそういう彼に「確かにそうですね」と苦笑いを返した
「色々あって、とか言ったけど…まあ…明輝に浮気、されてたみたいで……あは…」
何があったのか、改めて聞かれたら色々なんてなくて。
ただ、浮気されてただけ。
原因も、そうなった経緯も、あの女も、明輝の気持ちもわかんない
なんか、そう思うとどーでもよくなって乾いた笑いが漏れた
「……そっか…ん、わかった。ありがと」
淡白な反応。
そう言ってしまえば好感を持たれないであろう彼の反応は、いまの俺には丁度良かった
追及をしてこないあたり、余計な気を張らなくて済むし、安心する。
「…まあ、なんか…お疲れ様」
そう言ってぽんぽんと頭を撫でてくれる
それが合図かのように視界がぶわぁとぼやけていく
あれ、おかしい。あんだけ泣いたのにまだ出てるの?
「泣きたい時に泣いていいよ
耐える必要なんてないんだから」
低く、芯の通った声が鼓膜を震わす
赤子をあやすような優しさにぽつりと頬を伝った
それはまだ冷たいまま。
99
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説

上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。

林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。


離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。

紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる