誓いのような、そんな囁き

涼雅

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おはなし。

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「いた、凪津なつさん…」

「………ごめん」

ぎゅっと拳を握りしめて、俯いた

2人に合わせる顔がない。

それでもちゃんと受け止めてくれるこいつらは優しすぎる

「心配したんやで?ほら、はよ帰ろーや」

な?と優しく手を取ってくれる深優ふゆくん

「こってり話聞き出すからな!」

ふん!と意気込む華琉はるはちゃんと俺の事気遣ってくれてる

「……ごめんね、」

何度目かも分からない謝罪を零すと華琉に頭をくしゃくしゃに撫でられる

「そこは、ありがと。やろ?」

したり顔でそう言う彼と、それを微笑んで見守ってくれる深優くんに挟まれながら、2人の家へお邪魔することになった

余計な感情を挟まないように、できるだけ淡々と一通り話し終えると華琉はふぅ、と息をついた

「浮気…ね」

他人から言われるとやはり、重い。

「明輝はそんなことしーひんと思ってたんやけど」

ほんまに明輝やったん?という深優くんからの問いかけに声を荒らげてしまった

「絶対明輝だった!顔見たしちょっと話した!」

話した、って言っても言葉を互いに漏らしてた、みたいな。

「そっか…」

気まずそうに表情を沈める華琉はうーん…と思考を回している

「あ…てか、華琉、ごめん…黙って深優くんの家に泊まろうとして、その……」

2人って、付き合ってるじゃん?

と言うと華琉は「なんや、そんなこと」と微笑んだ

「別に平気ですよ

 凪津くんがどーにかなっちゃう方が心配に決まっとるやろ??

 今、言うのはアレやけど深優くんなら後で連絡してくれるし…すんません」

「華琉が謝るのは違うでしょ?

 ん、でもありがと」

きっと、華琉が謝ったのは浮気をされた人相手に「俺の恋人は浮気しないから」ということと、同等な言葉を口にしてしまったから。

気にしすぎ。

確かに、深優くんの家に来た直後に言われたら泣き叫んでたかもしれないけど、もう落ち着いてるからさ、大丈夫だよ

「で、これからどーするかやんなぁ…」

深優くんがうーんと唸る

他人のことなのに、自分のことのように悩んでくれることが嬉しい

良い友人を持ったと胸を張って言える

良い友人にはこれ以上心配かけられないから、家を出る前決意したことを伝えよう

「俺は、さっさと別れようと思ってる」

そう言えば2人は「えっ、」と困惑の意を示した

「え、そんな、別れるん?」

「いやまあ、別れるって結論に至るのは分かるけど、やけどな…?」

何故か慌てる2人は何か知っているような雰囲気があるけれど、あえて触れないでおく。

別れるって、決めたから

「だって、浮気されてたなんて、思わねぇじゃん…?

 裏切られたのと、同じじゃん」

テーブルの下で、気づかれないように思いっ切り拳を握りしめた

「せやな……」

「深優くん!」

俺の言い分に納得する深優くんに華琉が何故か声を荒らげた

そんな華琉に深優くんは静かに向き合うと少し悲しそうに言葉を紡げた

「だってそうやろ、凪津さんがそうしたいんやったら、しゃーないやん…」

諭すような声音にすん、と少し悲しそうに黙り込んだ華琉

「……明日には、出ていくからさ。」

いたたまれなくなって「邪魔してごめんね」と言えば「当てはあるのか」と問われる

「あるから大丈夫大丈夫」

「…そう言って嘘ついたんは誰でしたっけ???」

……痛いところを突かないでくれ

「それは悪かったって…でも今度はほんと。

 心配しなくたって、俺は大丈夫だから」

2人に1から全て垂れ流した俺は、強がりではない言葉を言えるほどに回復した

それからはご飯をご馳走になって、お風呂に入って…布団を敷いて3人で雑魚寝した

なかなか会えない2人が、折角お泊まりしているところに飛び込み、引っ掻き回し、相談をもちかけ、ご飯と寝床を頂戴した俺。

わぁお、なにしてんだ

改めて考えるとやばすぎ、俺。

自分で引くわ

とか何とか思いつつも何も言わないでおいた

言ったら2人に「しつこいわぁ~」とか「気にしやんでええねん」とか言われるから

ただ、ありがと、と寝る前に呟いた
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