純喫茶 浪漫へようこそ

暁月

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別れたい彼女と付き合いたい彼女

お友達兼彼女のご来店

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電話を手にした浮気相手さんは、お店の入り口付近で電話をしていた。
小声のためテーブル席の彼氏さんには聞こえないと思うが、カウンター側にいるあたしには電話の主の声だけ聞こえる状態だった。

「ん~・・・デートって言うのかな・・・。まだ彼女じゃないしなぁ」

おぉ、やはり浮気相手さんは彼女になりたい気持ちが強いようだ。
・・・靴下のことは気づいてるのかな?

「いや・・・そうなんだけどさ。今日ね、実は呼び出されて、「もう会うのやめよう」って言われちゃって・・・。そんな不安にさせるような彼女なんてやめちゃいなよって言ってはいるんだけど・・・。
貢がせるだけ貢がせるような人、ロクな人いないよって言っても、そんな風に見えないしって・・・」

あら、あれだけ強気に見えてもやっぱり彼が彼女をかばったのがちょっとショックだったんだ。

「ハハ・・・だよね。加奈子みたいな人もいるよって、名前は出してないけど言っちゃった・・・ごめんね」

ん?さっき具体的に言ってた“見た目清楚系だけど~”ってお友達が電話の相手なのかな?

「確かにそれは心強いかも(笑)。でもいいの?そんな事お願いして・・・。今いるのは、前に加奈子に教えてもらったサンドイッチの美味しいお店だよ」

おぉ?なんか電話のお友達さんもこの店に来る感じ?とりあえずお冷でも用意しておこうかな。

私がお冷を用意していると、電話を終えた浮気相手さんが「この後連れがもう一人来ます」って教えてくれた。
聞き耳立ててたなんて思われたらまずいので、あくまで知らないふりをして「かしこまりました」と答える。
あたしのポーカーフェイスもなかなかレベルが上がってきたなぁと自画自賛してしまった。



 ーそれから数分後ー


(カランカラーン)

「いらっしゃいませ」
「あの、連れが来ているはずなんですけど・・・」
「お連れ様ですね、では・・・」
「あ、加奈子~。こっちこっち~」

あれ?この加奈子さんって方、どこかで見たことあるぞ?
このお店を浮気相手さんに教えたって言ってたから、元々来てたお客さんなのかな?

「あ、絵美・・・え?・・・達、也・・・?」
「・・・加奈、子・・・?」
「加奈子、結構早かったね。ちょうど今達也さんにも話してて・・・」
「ねぇ、絵美。あんたの彼氏候補の人って・・・」
「加奈子!」
「・・・え?」

んんん?何だコレ?どうなってるんだ???
とりあえず浮気相手さんが、彼氏が友達の名前を呼んだことでビックリしている。

「あー・・・。久しぶり・・・でもないか。達也・・・」
「え、加奈子・・・。何これ、どーゆーこと?」
「いや・・・、その・・・」

はっ!!いかんいかん!!
ついあたしまでビックリしちゃったけど、今皆さんが立ち上がって話してるのは通路です。
他のお客様が来たら邪魔になってしまう!
とりあえず席に誘導しなければっ!!

「お客様、恐れ入りますが、こちらは通路になりますので席にお戻りください」
「加奈子って、絵美ちゃんと友達だったの・・・?」
「あの、達也・・・、だから、その・・・」

お前ら聞けよっ!!こちとらちゃんと仕事しないと時給に響くんだよっ!!!
・・・意外と田中さんって見てないと思ってるとこ見てたりして評価も厳しいんだからっ!

「お客様。お席に、お席に、お戻りください」

丁寧に、でも二宮さんバリの威圧感をイメージしてお客様に伝えてみた。

「「「・・・はい・・・」」」

うん、ちゃんと伝わったみたいだね。良かった良かった。
それから彼女さんの注文もしっかり取って、あたしは滞りなく接客する。

まだ他のお客様のいない店内は、店内に流れるジャズと三人の会話のみが聴こえる状態で、ホールで仕事をしていると、聞こうとしなくても会話は聞こえてしまうのだ。

あたしはテーブル席のメニューを拭いたり、紙ナプキンを補充したりしている。
決して会話が気になって仕方がないからこの仕事をしているわけじゃない。

・・・ちょっと・・・いや、かなり気になるので会話の聞きやすい仕事をあえてしています。すみません。
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