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【番外編&after story】

諦めかけた願い事7

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澄み切った青空とぽかぽか陽気が心地良いある日のこと。
今日も今日とて皆が集まり、我が家の庭ではあるパーティーが行われていた・・・――――――


「皆、グラスは持ったかな?」
「「「「あいっ」」」」
「大丈夫なのよ!」
「うん、僕とミナトで子供達の分は確認したよ」
「大人の方も大丈夫みたいだよ☆」
「了解です!ではでは・・・・・・レヴィンさんとマデリーヌさんのお引越しとその他諸々をお祝いして、かんぱーい!!」
「「かんぱい(なの)!」」
「「ぱーい」」
「「あだーっ」」


葬儀から約1ヶ月経った今日、あたし達はレヴィンさんとマデリーヌさんの引っ越し祝い兼、反皇族派の処理が終わった慰労会を兼ねたパーティーをしている。

場所は、あたし達家族の住むガルドニアの森の家の庭。
葬儀後、離宮で暮らし続けるのも他の町や村で暮らし始めるのも難しかったレヴィンさんは、なんと我が家の隣に家を建ててマデリーヌさんと一緒に暮らすことになったのだ。

エル自らがその提案をしたとき、ものすごく驚いたけど同時にすごく嬉しくもあった。

出会った頃は他人を一切信じず、関わろうともしなかったエル。
今も、基本的に家族と精霊王様だけ出入りさせている我が家の敷地内に、家族以外の仲間を住まわせるというのは、心から信頼しているという証拠に他ならない。

もちろん皆はすごく驚いてたけど、エルの気が変わらないうちにとすぐに各々が行動を開始した。

家を建てる際は、今回もエルの両親であるルーシェントさんとフィリーさんにお手伝いいただき、まずは数日で家が完成。必要な家具や日用品などの買い物はフィリーさんが付き添い、マデリーヌさんとレヴィンさんが自分達で選んで、ミナトちゃん達やカルステッドさん達が搬入や掃除などをお手伝いした。
レオンやサクラにはまだお手伝いが難しいと判断し、あたしが用意したお菓子や飲み物などを皆に差し入れる係をお願いした。

そして、庭の敷地を拡張するにあたり土壌を整えてくれたノルンさんは「以前から作りたいと思っていたの」と言って、予定よりも広めに土壌を整備したと思ったら、なんと大人10人くらい余裕で一緒に入れる脱衣所付きの露天風呂を作ってくれた。

これには皆が大喜びし、作業が終わった後は露天風呂で汗を流すのが恒例と化し、現在は鍛錬後に汗を流す公衆浴場みたいになっている。
知らないうちにレヴィンさんがルールや掃除当番を作り、露天風呂をしっかり管理していたのを知ったときはビックリした。さすがは国を統治していた元国王様である。


そんな家の建設や引越し作業をしていた頃、王城ではユーリやモニカ達が日々自首しに来る人々の処分に追われていた。

さすがに精霊王様を敵に回すような人間はいなかったが、下っ端も含めると一日で百人近くととにかく人数が多く、事情聴取して判決するのも一苦労。全員を処罰してしまうと国政にも影響が出るため、変装してたまにお手伝いしていたレヴィンさんの助言のもと、主犯以外は“向こう3年間誠意をもって国に尽くすべし。それを以て判断する”という、いわゆる執行猶予を設けることでようやく事なきを得たと聞いた。

実はこの慰労会、処理報告のためにマデリーヌさんがユーリとモニカを連れてきた時に、二人のやつれ具合があまりにも酷すぎたのでエルに相談して計画したパーティーでもある。

王城もお仕事も、一時だけは全部忘れてリフレッシュして欲しかったのだ。
ただ、あたしが妊娠中のため凝った料理は作れず、料理は王都にあるリンダの両親のお店や飲食店で買ったり、フィリーさんやアレク兄様、エルが作ってくれたモノを持ち寄り、あたしは簡単なデザートだけ用意した。

激務となった二人の政務を手助けし、「今日はご家族の皆様で、存分にリフレッシュして来て下さい」と送り出してくれたのは、元々レヴィンさんの執事であったエドモンドさんだ。
見た目は優しいおじいちゃんなのに、さすがは元国王様の執事とあって超有能。
1日にこなさなければいけない仕事量を正確に分析し、今日みたいな休日の確保もしてくれた。
レヴィンさんが生きていることを知っている数少ない人で、時々変装して王城にやってくるレヴィンさんがバレないよう全面的に協力してくれているし、エドモンドさんには本当に感謝しかないね。
お土産にプリンでも渡してもらおう。


「父上、新居はどうですか?」
「お家のこともご自身でされていると聞きましたの。大変ではございませんか?」
「そうだね。慣れないことばかりだけど、生活するためには身に付けなければいけないことだし、幸い時間はたっぷりあるからね。わからないことがあっても、サーヤ達か遊びに来た精霊王様達が教えて下さるから楽しく学ばせてもらっているよ」

レヴィンさんやマデリーヌさんは、新生活を始めてから生活のために必要なことを一から学ぶことになった。
今までと違い側近や侍従の方が一切いない生活は、新鮮だったかもしれないけど簡単ではなかっただろう。

「ふふっ、レヴィたん、なかなかすじが良いのよ♪」
「そうだね。マデリーヌよりレヴィおじさんの方が、安心して掃除や洗濯を任せられるよね」
「マデリーヌ、またグラス割ったんでしょ?そろそろ買い足さないとグラスが全部なくなっちゃうんじゃない?」
「もうもうっ、私だって一生懸命やってるのよん!洗ってるとグラスが滑るんだもの!落ちて当然だわん!!」

こんな感じで、ミナトちゃん達が遊びに行っては家事を手伝っているみたいで、生活に概ね問題はないらしい。
ただ、掃除や洗濯はそつなくこなしたレヴィンさんも料理だけはうまくいかないようなので、ご飯だけはこうして皆で食べたり我が家で一緒に食べたり、時々エルが簡単な料理を教えに行ったりしている。
やっぱりご近所さんがいるといないでは大分違い、以前よりも食卓は賑やかになったように思う。

レヴィンさん達とルーシェントさん達も引っ越し作業ですっかり打ち解け、立場など関係なく今も談笑していた。

「そうそう、エリュシオンから聞いたよ。会食でゼリウム入りの食事を出されたんだってね。大変だったろう?あの毒は即効性が高く、血液を通してすぐに死に至る人が多いから・・・」
「そうですね。毒にはある程度耐性を持っているつもりでしたが、考えが甘かったようです」
「いえ、オレの方こそ国王を継いだ後国を良くすることばかりに目を向けてしまい、対策を怠っておりました。父上を救って下さったマデリーヌ殿には、感謝してもしきれないです」
「いや、アレゼリウムはメラニウムでも余程の薬草マニアしか知らない代物だから仕方あるまい。ルーシェ、余計な話はいいから、さっさとあの薬を二人に渡せ」
「はいはい。フィリーってば本当にせっかちなんだから。まぁそこが良い・・・痛っ!わかった、わかったから足を踏まないで!!」

ルーシェントさんはそう言って、ユーリとモニカに数種類の薬瓶が入った箱を渡した。

「とりあえず、この紫の薬は僕の知りうるすべての毒に効く解毒薬で、透明な薬は薬物利用の証拠を一切残さず数時間後に相手を死に至らしめる遅効性の毒薬、黄色の薬は摂取量により麻痺の程度が異なる自白剤。後、この緑の薬は数時間だけ仮死状態になれる薬で・・・―――――」

待って待って。最初の解毒薬はわかるけど、その後がおかしい。
なんでそんな危険な薬物を二人に?
・・・ってか、説明してるルーシェントさん、ものすごく生き生きしてません??

「親父が知らない毒など、この世にあるのか?」
「それよりもルーシェ、なぜ切断された腕をも回復できるあの回復薬を持ってこなかったのだ?」
「いやいや、あの薬は人間の身体には劇薬だから無理だよ、フィリー。それにエリュシオン、この世にはまだまだ未知のモノがたくさんあるから、僕が知らない毒だってきっとあるはずさ」
「「「・・・・・・」」」

思えばエルが作る薬って、ベルナートさんに渡してる激マズ回復薬とかあの狐神父に飲ませた薬とか、結構えげつないモノが多かったけど、ルーシェントさんの影響だったんだね。さすがは親子・・・
以前の精霊王様達からのプレゼントといい、今回のプレゼントといい、ガルドニアって今どこの国よりも危険なモノが揃ってる最強の国なんじゃないだろうか・・・?

「あ!そういえば、あの噂ってどうなったの?しばらく大騒ぎだったんでしょ??」

微妙な空気になりかけたところで、それとなくセイルが別の話題を振ってくれた。
ありがとうセイル!でも、あの噂って何だっけ?

「ふふっ、私達精霊王が死んだ人間を食べると言われた噂よね。今も信じている人間っているのかしら?」
「あ!葬儀の時、おチビちゃんの発言で誤解されてたアレだね。ふふっ、あの時は笑いを堪えるのが大変だったよ」
「ふんっ、このような美味い食事を好むノルン達精霊王が、人間のような不味い生き物を食すわけなかろう」
「え・・・先代様って人間を食べたことあ・・・むぐっ」
「本気で信じている者もいたようだが、なにせ幼子の言葉だ。その辺もすでにユーリ達が対処済みだろう」

先代様の言葉に思わず反応したところで、エルにサンドイッチを放り込まれ「これ以上余計なことを喋るな」と睨まれる。
危うく食事がしづらくなる話を振るトコロだった、ごめんね・・・と、あたしは心の中でエルに謝罪した。

「ふふっ、別の意味でレヴィンを食べちゃったのは本当だけれどねん♡」
「ちょっ、マデリーヌ??!!」
「ぶほっ!!」
「!!・・・ヒック、ふにゃぁ~~~~」

エルのおかげでせっかく話題を逸らしたのに、今度はマデリーヌさんが別の話をぶっこんできたことで頬張ってたサンドイッチを吹き出してしまい、抱っこしてたリリアもビックリして泣き出してしまった。

「もう、リアがビックリして泣いちゃったじゃないか。おいで、リア。ボクが顔を拭いてあげる☆」
「サーヤ、リリアはセイルに任せてお前は水を飲め。・・・おい変態、もう食事が終わっているようだからお前はハウスだ。さっさと家に帰れ」
「あぁっ、私、このパーティの主役なのに容赦なく蔑んだ視線で犬扱いまでするなんて・・・最高のご褒美だわん♡」
「こらこら、マデリーヌ。ここには子供達もいるから・・・って、あ!そういえば子供達は・・・」
「大丈夫ですわ、レヴィン様。レオンやサクラ、ミナト様達とあちらで楽しくお話しながら食事に夢中ですの」
「そうか、良かった・・・」

ホッと胸を撫でおろすレヴィンさんを見ながら、今後もこの人はいろんな意味で苦労するんだろうなぁと思いました。



一方、その頃の子供達は・・・――――――――



「レオ、くー、あたらちいおままごと、どんなのでしゅか?」
「んとね、じけんがおこったあと、はんにんがだれか、あてるの!」
「じっちゃんの、なにかけるのよ!」
「じっちゃん、でしゅか?」
「セレスたん、じっちゃんはとーっても頭が良くて、いろんな事件を解決してきた英雄ヒーローなのよ」
「ひーろー!!」
「そうそう。その孫もとても優秀で、事件の謎を解いて解決するんだって。セレスも、レヴィおじさんの孫だから、名推理できるんじゃない?」
「!!やるでしゅ!おじじの、なにかけるでしゅ!!」
「じゃあ、食事が終わったらセレスを推理担当にして、あっちで遊ぼうか。俺が配役とか考えてあげる♪」
「セレスとやら。我が名推理にピッタリのポーズを教えてやるぞ。ありがたく思え」
「あいっ」


こんな会話をしているなんて知らない大人達は、食事の後庭で遊び始めた子供達を見守りながら、お酒を飲み交わしたりして楽しい時間を過ごしていた。


・・・けれどその数分後、サクラが苦しそうな演技をして地面に倒れ、それを囲むようにミナトちゃん達が立っている中、「はんにんは、このなかにいましゅ!ぜったいに、みつけましゅ!おじじの、なにかけて!!」とセレスくんがビシッと中二病的ポーズをキメた瞬間、エルが「お前はまた変な遊びを子供達に教えおって!!」とあたしを怒り、リリアを抱っこしたセイルは大爆笑。
すぐに子供達の遊びは強制終了させられ、パーティーも間もなく解散したのだった。

ポーズはあたしが教えたんじゃないのに・・・
解せぬ。




-----------------------------------
番外編はこれで一区切り。
次回は500話達成記念小説を更新予定です。
ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございます!
※レオンやサクラの話、リリアとセイルの話、今妊娠中の子供を出産した後の話など、どのように続けていくか構想中のため、決まったら活動報告などで一度お知らせします。
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