【本編完結済】【R18】異世界でセカンドライフ~俺様エルフに拾われました~

暁月

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【番外編&after story】

魔王様の子育て奮闘記 ~家を増築しよう2~ inエリュシオンside

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翌朝、宣言通りセイルは家に戻ってきた。


強力な助っ人を連れて・・・―――――――――


「やぁ。皆元気だったかい?」
「久しぶりだな、エリュシオン。少しやつれたのではないか?」
「親父・・・母さん」

セイルが連れて来たのは、エルフの里にいる俺の両親だった。

「あ、じぃーじ!」
「ばぁーばもいゆの!」
「レオン、サクラ。また少し大きくなったね」
「うむ、元気そうで何よりだ」
「セイル・・・なぜ俺の両親を?」
「え?だって、エリュシオンって子供の頃、魔力暴走させて家壊しまくってたんでしょ?そのたびに建て直ししてたって聞いたから、この二人ならすぐに家を建てられるかなって」
「なっ?!家を建てるだと?そんなことすぐには・・・――――」
「大丈夫だよ♪家を建てる材料は僕がストックしてるし、組み立てるだけならたぶん1日もあればできると思うよ」
「は?1日って・・・」
「生活に必要なベッドやシーツ、タオル類は私も伝手があるからな。人数さえわかれば明日には用意できるだろう」
「??!!」
「あ、ちなみに敷地を拡張する許可は、ライムント経由でこの国の王にもう許可貰ってるよ☆この森自体が“死の森”でほとんど近寄る人達もいないから、好きなように使って良いってさ♪話の分かる王で良かったね☆」
「・・・・・・」

俺の知らない所でいろいろ話が進んでいる。
家が大きければ良いのにと思ったのは事実だが、家まで作る時間が俺にはなかった。

何もかも俺がやれば良いと思っていたが、こうして力を貸してくれる仲間を頼ることも、時には必要なのかもしれないな。

「俺だけの力ではどうにもできなかったから助かった。・・・ありがとう」
「「!!!!」」
「「ありあとなの!じぃーじ、ばぁーば!」」
「・・・フィリー、僕、夢でも見てるのかな?あのエリュシオンが、素直に“ありがとう”って・・・ッグズ」
「あぁ・・・これもきっと、サーヤのおかげだろう」
「”ありがとう”って言葉だけで、実の両親にここまで感動されるエリュシオンって・・・」
「・・・」


余計な話はさておき、大人達で少しでも作業を早く済ませるために比較的体調の良かったサーヤに子供達をまかせつつ、ミナト達に護衛と何かあった場合の伝達もお願いした。
最初は俺達の作業に興味津々だったレオンやサクラも、「今日は久しぶりに双子やリリア達と一緒にいられるんだね♡」とサーヤがにこやかに言ったことで、あっさりとサーヤに飛びついた。
母親というのは、やはり子にとってとても大きい存在らしい。

セイルがいろいろ手を回し、アレクがすでにカルステッドに伝達魔法で連絡していたらしく、庭に出るとノルンを抱えた先代様にフランやライムント、カルステッド達がすでに待ち構えていた。

「こんな姿でごめんなさいね。魔力はだいぶ回復したのだけれど・・・」
「我らは用が済み次第帰るぞ。ノルンにはまだ休養が必要だからな」
「・・・」

至る所に赤い華を咲かせているノルンを見ると、ナニが原因で回復しきっていないのか明確にわかり、周囲もそれに気付いている様子。
だが、この雰囲気は自分もよく知ってる空気だという既視感があった。


・・・なるほど。俺とサーヤも周囲からこういう目で見られているのか。


今まで俺は、“サーヤ以外に欲しいものはない”と思っていたが、こうして家族が増え、仲間が増え、物の見方が少し変わるだけで不意に気付かされることがたくさんあり、それが今は少しだけ楽しくも感じる。


ノルンが先代様に抱えられた状態で、自身の魔法と地の精霊達の手伝いで拡張した敷地の土壌を整えると、「我らが手伝えるのはここまでだ」と言って早々にノルンを連れて先代様は帰っていった。
他の者はそれを気にすることなく、親父の指示の元作業を開始して家をどんどん組み立てていく。
カルステッドやフランの力仕事と、俺や親父、セイルやライムントの魔法により、昼前から始まった家作りは陽が沈む頃に概ね終わらせることができた。

「とりあえず、今日の作業はこれで終わりだよ!明日は細部をチェックしてやすり掛けとか主に手作業中心になるから、今夜は晩ご飯をしっかり食べてから早く寝て、皆明日に備えてね!」
「了解しましたぞ!」
「わかった」
「うむ。私もできる事があれば手伝おう」
「我も細かい作業は嫌いではないから、やってやらんでもないぞ」
「ふふっ☆ライムントってば、素直に“楽しかったから明日も参加する”って言えば良いのに♪」

ちょうど今日の作業を終えた頃、庭で母さん達と夕食の準備をしていたリンダが声をかけてきた。

「皆さ~ん、夕食の準備ができましたよ~~~」

買い出しの為別行動をしていた母さんとリンダ、マデリーヌは、必要なモノを買い終えてから夕食の準備をしたり家の事を手伝ったりしていたようだ。
真新しい大きめのテーブルに、キッシュやスープ、ジューシーな肉料理にサラダ、デザートの果物とたくさんの料理が置かれており、少し離れた場所には寝室から起きてきたサーヤと子供達やミナト達もいた。
これだけ集まると、何かしらのパーティをしている気分になるな。

「サーヤ、起きてきて大丈夫なのか?」
「うん。さすがに一緒にご飯は食べれないけどね。それにしても、1日であんな大きな家ができちゃうなんてすごい!!窓から子供達と見てたら楽しくなっちゃって、具合の悪さなんてどっか行っちゃったよ♪」
「そうか。お前が元気ならそれで良い」
「ふふっ、さっきティリアさんに診てもらったけど、あたしもお腹の赤ちゃんも全く問題ないから安心してね☆」
「あぁ」


“家を作る”という1つの作業のために、こうして集まって分担しながら協力して作業をする・・・
少し前ならば、“サーヤを助けるため”とか“俺やセイルを助けるため”といった戦闘を交えることが多かったのに、この集まりはなんと平和なことか。


だが、それも悪くない・・・・・・―――――――――


「ふふっ」
「む?どうした、サーヤ」
「エルが、あたしや家族以外のことで笑顔を見せてくれるのが嬉しくて♡」
「笑顔?俺が・・・?」
「うん、心から幸せそうにしてるエルの貴重な笑顔!今まではほとんどあたしが独り占めできてたからちょっと複雑だけど、それだけエルが皆に心を許してるんだと思うと同じくらい嬉しい!!」
「・・・――――――――!!」

サーヤの言葉がスッと自分に入ってくる。

そうか・・・俺は、ここにいる奴らを“自分にとっても大切な仲間”だと認めているのか・・・
誰一人信じられず一人で生きていた俺を、ここまで変えるとは・・・
本当にサーヤには驚かされてばかりだな。

「エル?・・・ひゃっ、ちょっ、あっちに皆いるのに・・・」
「手の甲に口付けるくらい、他の奴らもするだろう?」
「や、そうかもしれないけど・・・んっ、ぁ」

散々俺に抱かれているサーヤは、この口付けにも敏感に反応し意味などわかっていないだろう。
別に伝わらずともかまわぬ。俺がただしたいと思っただけだからな・・・――――――

「ぱぱ。ままばっかり、ちゅー、ずゆいのよ」
「ボクたちも、ぱぱと、ちゅーしたいの!ままだけずゆい!」
「「!!」」
「あたしも、サーヤままやエルぱぱとちゅーしたいの。家族じゃなくても大好きな人なら、お口じゃなくてほっぺたなら良いって、エルぱぱ言ってたよね?」
「おにーさんとおねーさんは大好きだけど、僕は遠慮しておくよ」
「俺も!大好きだから、サーヤとちゅーしたい!!」
「むぅ・・・べるは、くーいがいと、ちゅーしちゃ、めっなの!」
「「????!!!!」」

気が付けばそばに双子やミナト達、リリアを抱っこしたセイルまでもが来ていた。
・・・ん?ちょっと待て。今サクラは何て言った??

「あ~あ。ベルナートってば、サクラに口止めしないからバレちゃったね~♪」
「ちょっ、セイル?!」
「!!・・・ふにゃぁ」
「ちょっとベルナート、いきなり大きな声出さないでよね。リリアがビックリして泣いちゃったじゃない」
「ぃや、えっと、ごめん・・・ってか、そうじゃなくて・・・」
「駄犬・・・ちょっとツラかせ・・・」
「ひぃぃぃぃぃっ!!!!」
「ヒック、ふぎゃぁあぁぁ」
「ちょっと、ベルナート・・・」
「~~~~~~~~~~っ、もうもうっ!エリュシオンもセイルも怖すぎっ!!泣きたいのは俺の方なんだからぁぁ――――――っ!!」



この後、駄犬を追いかけ回して軽く調きょ・・・いや、躾をし、さすがに疲れたのか夜はいつもよりも早く眠りに就いた。


ちなみに翌日、手作業で一番時間がかかるだろうと予測していた木のやすり掛けは、サーヤが「前の世界で見た職人さんを紹介する番組で、高速回転する球状のやすりってのがあったよ。風魔法で高速回転する球体とか作れたらできそうだよね♪」と半分意味不明な発言をするも、セイルがその言葉で何かコツを掴んだらしく風魔法でやすり掛けが成功。
その後、俺やリハビリを兼ねたアレク、魔法の特訓だと言って参加したクラリスやサクラの働きで、陽が沈む前にあらかたやすり掛けが終わった。

やすり掛けの後は、家全体をミナトが水魔法で洗浄し、母さんの指示であらかじめ採寸して買っておいたベッドや最低限の家具とシーツやカーテン、タオルなどを設置することで、とりあえず寝泊まりだけはできるようになった。

その後はカルステッド達が王都の宿屋をチェックアウトしたり、こまごまとした日用品や台所に必要なモノを少しずつ買い足していくことで、家を建て始めて5日目にはしっかりと生活できる家になっていた。



・・・分担して協力し合ったとはいえ、いくら何でも早すぎやしないだろうか?
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