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【番外編&after story】

魔王様の子育て奮闘記 ~家を増築しよう~ inエリュシオンside

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「サーヤ、大丈夫か?」
「ごめ・・・ちょっと無理かも・・・」
「「ままっ、ままぁ――――!」」
「まーっ!!」
「レオン、サクラ、リリアまで・・・サーヤはつわりで具合悪いだけで命に別状はないんだよ☆」

サーヤの容態が少し落ち着いたのを見計らってフェイフォンの城から森の家に帰ると、すでに待ち構えていたティリアが寝室へと誘導しサーヤの診察をしてくれた。

妊娠2ヶ月で、ちょうどつわりが重くなり始める時期らしく、安定期に入るまでは無理をさせない方が良いだろうということで、俺達は安定期までこのフェイフォンの森の家で生活することにし、それに反対する者などは誰もいなかった。



・・・だが、それから程なく少しずつ問題が起こり始めた・・・――――――



つわりの重いサーヤはもちろんのこと、完全に回復していないアレクも基本的に動けないこの状況で、料理を作れるのはティリアと俺、簡単なモノならばリンダも作れるが、客室が少ないという理由でカルステッドやリンダ達は王都の宿屋で寝泊まりしているため、常に家に居るわけではない。

近隣の村や町で食事を買ったり食べに行ったりもしたが、サーヤの飯に慣れ過ぎた双子や精霊王達はすぐにサーヤの食事を求め始めた。

「旦那様、どうしましょう・・・私が作れるのは主に医療食や子供用の離乳食なので、皆さんが満足できるご飯やお菓子を大量に作るのはとても・・・」
「いや、それだけで充分だ。ティリアは主に子供達とサーヤ、アレクの身体や食事のことを考えてくれ。家のことは俺がなんとかする」
「かしこまりました。掃除や洗濯は、クラリスに任せても問題ないと思います。レオンやサクラ、ミナト様達がとても協力的だと言っていたので・・・」
「わかった」

(ガシャ――――ン)

「ふにゃぁ~」
「あ、リリア!!」
「リリア、大丈夫か??」

元気で好奇心な双子達に負けず劣らず、ハイハイやつかまり立ちでいろいろ動き回るリリアは最近特に目が離せない状態だ。この家は森の家と違って子供用の防護柵をまだすべての場所で用意できていないから、今みたいにリリアが物を落とすなんてことも多い。

セイルは今サーヤのそばにいるから、リリアをセイルに預けたら間違いなく二人はリリアを優先するだろう。
かと言って、その都度カルステッド達を呼び寄せるのは効率が悪すぎる。

とりあえず、ティリアにはリリアを最優先でお願いして後は自分が何とかしようとするも、ご飯を作って片付けたと思ったらおやつの時間、おやつが終わったと思えば昼寝をしている間に晩ご飯の支度・・・という忙しない日々が続き、さすがに俺もどうしたものかと頭を悩ませた。

そして、そんな生活が1週間くらい続いた頃、更なる問題が起こった。





「ぱぱ、きょうのおやつ、なぁに?」
「くーね、しおいの、たべたいの」
「む?もうそんな時間だったか?」

昨夜は夜泣きするリリアをあやしていたためか、昼食の片付けを終えてリビングのソファで休憩していたらそのまま眠ってしまったらしい。
外でミナト達と遊んでいたレオンとサクラが、おやつを求めて俺の元へやってきた

おやつはサーヤが作り置きしているものを魔法袋マジックバックから出して子供達に与えていたため、いつものようにそこから出そうとごそごそと探してみるも、魔法袋マジックバックの中には俺用のプリン以外の甘味が残っていない。

そういえば、そろそろなくなるからサーヤに相談しようか、カルステッド達に買い物を頼むかしようと思っていたことを思い出す。まだ大丈夫だろうと後回しにしていたが、最近俺が寝室に行く頃にはすでにサーヤが眠っている事が多く、まともに会話ができていない状態だったことを思い出した。

カルステッド達にも今日は連絡していないから、あいつらも今頃はクエストかバイトかで金を稼ぎに出歩いているはず。

「はぁ、俺としたことが・・・」
「ぱぱ、おやつー」
「くーね、おなか、ぺこぺこなのよー」

おねだりする双子に身体を揺さぶられながら現状をどうしようか考えていたら、リリアを抱っこしたセイルが声をかけてきた。

「ふふっ、敵と戦ってるわけじゃないのに、エリュシオンがそんなにぐったりしてるなんて珍しいね☆どうしたの?」
「セイルか。実は・・・―――――――」


普段ならサーヤにも愚痴をこぼすことなんてほとんどないのに、今の俺は相当まいっていたんだろう。

サーヤが寝込んでからここまで家や子供達の世話に追われると思っていなかった事や、現在子供達用のお菓子が底をついている事、クラリスやティリアも家事やサーヤの診察やアレクのリハビリ、リリアやまだ小さいシャルロットとレミリオの世話などで手いっぱいになっている事など、俺はすべてセイルに話していた。

「ん~、なるほどねぇ・・・よし、わかった☆ボクに任せておいて♪」
「任せてって・・・何か良い案があるのか?」
「うん☆家のことはサーヤもかなり心配してて、このままで大丈夫かなって二人で話してたんだよね♪」
「サーヤを動かすのは反対だぞ。今のあいつは食事も小分けにしてやっと食べれるくらいで、ティリアから妊娠悪阻の一歩手前だと言われてるからな」

精霊王であるフランの”祝福”を貰って流産の心配がないとはいえ、今回サーヤのつわりはかなり重いようだ。
ティリアの話によると、人によってはつわりで何も食べられず、食べてもすぐに吐いてしまい体重も激減する場合は入院することもあるのだとか。

幸いサーヤはそこまでではないもの、食べれるのは果物とスープを少量程度で、小分けにして食べれるときに食べさせている状態だ。
何かあってもすぐ対処できるよう、俺かセイル、マデリーヌの誰かがそばについているが、俺が家のことで手いっぱいでマデリーヌも基本的にレヴィンの元にいるから、今サーヤと一緒にいる時間が一番長いのは現状セイルだった。

「もちろんそれはわかってるよ☆だから、強力な助っ人を呼ぼうかと思うんだ♪」
「強力な助っ人?だが、この家はこれ以上・・・」
「大丈夫大丈夫☆じゃ、ボクはちょっと出かけてくるね♪明日の朝には戻って来れると思うから、双子のおやつはエリュシオンが大事にとっておいたプリンでも食べさせてあげなね☆」
「なっ?!」
「「ぷり~~ん♪」」
「あきゃっ、あんあー!」


セイルはそう言って、リリアを俺に押し付けてから転移魔法ですぐにいなくなった。

明日の朝には戻るって・・・サーヤと話していた助っ人とはいったい誰のことだ?
というか、なぜセイルが魔法袋に俺のプリンだけは残っていると知っているのだ?!


俺は仕方なく、プリンをレオンとサクラにあげてからリリアのおやつをもらいにティリアの元へ向かった。
研究の合間に食べようと思って残しておいた二十数個のプリンは、食欲旺盛な双子と、セイルがいなくなってから現れたミナトとカイトにも食べさせたので残りわずかとなり、「俺も食べたい!」と駄々をこねる駄犬には、フランから新しく教わった締め技を食らわせてやった。

そのおかげで、少しだけ気持ちが楽になった気がする。
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