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14章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お城はやっぱり危険なトコロ~
再会よりも、驚きの事実
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◇
大きなダイニングルームの前に到着しエルに降ろしてもらうと、タイミングを見計らった護衛の人がドアが開けてくれた。広々としたダイニングには大きなテーブルがいくつも連なって並んでおり、給仕のメイドさん達がたくさんの料理を次から次へとテーブルへ運んでいる姿が目に入る。
そして、この部屋に先にいたあの人があたし達の来訪に気付くと、すぐさま入り口に向かって駆け寄ってきた。
「・・・っ、エリュシオン様!!エリュシオンさ・・・―――――――ぐふっ」
「やかましいぞ、カルステッド。そんなに叫ばずとも聞こえる」
「・・・っぐ、狙い処は良いですが、威力がいつもより弱い・・・まだ完全には回復されていないようですね」
途中までは、大型犬が久しぶりに飼い主に巡り会えた感動的再会のシーンに見えたのに、実際は思ってたのと全然違った。
嬉しそうに抱きつく勢いで駆け寄ってきた忠犬・・・いや、カルステッドさんに、こともあろうかエルは腹パンをしてカルステッドさんもかわすことなく素直に喰らっていた。
二人の雰囲気を見る限り、これが普通なんだろう。
「隊長ってホントにエリュシオン様が大好きですよね~。忠誠心の高い大型犬みたい♪」
「(コクリ、もぐもぐ)」
「なっ、リンダっ、アルマまで!仮にも上司である俺のことを犬って・・・」
「忠誠心は高くとも、そこまで従順ではないがな」
「ちょっ!エリュシオン様ぁ?!」
リンダ達もあたしと同じことを思っていたようだ。
エルとリンダは楽しそうにカルステッドさんを弄りつつ、アルマさんは手に持った料理をひたすらもぐもぐと食べている。ここにアレク兄様がいないのはちょっと寂しいけど、今はこうして無事に再会できたことが素直に嬉しい。
「サーヤ、久しぶり!・・・って程でもないか」
「ううん、久しぶり。リンダ・・・アルマさんも、カルステッドさんも皆無事で良かった」
「サーヤ・・・大まかな話は聞いた。よく頑張ったな」
「うんうん。サーヤのおかげで皆を無事救出できたんだもんね。お疲れ様!」
「(コクリ)」
「そんなっ・・・あたしはライムントさんの加護をもらうだけで、頑張ったのは・・・」
「だが、それはサーヤにしかできなかった事だし、今回は危険な状況だったのだろう?それでも予定通り、サーヤがライムント殿の加護を得たおかげで他の方々が行動できた・・・それだけで十分じゃないか」
「・・・―――――っ」
カルステッドさんの言葉が嬉しくて、頭をぽんぽんと撫でてくれる手が温かくて、以前何度も同じように親身になってくれたあの人をふと思い出したりもして、また泣きそうになった。
なんかあたし、今日はやけに涙腺が緩くない?
「へ?あの、サーヤ・・・?」
「・・・ッグズ、ごめ、なさ・・・っ、違っ・・・」
「あ~あ、隊長、サーヤを泣かせちゃった~」
「や、ちょっ!リンダ?!」
冗談を交えたこういう会話も懐かしいなと噛みしめていたら、服をくいくいっと引っぱる我が家の天使達がとんでもない事を言ってきた。
「まま、いちゃいの?」
「カルおじ、せいばいすゆ?」
「??!!」
「待って待って!レオン、サクラ、大丈夫だから!カルステッドさんは何も悪くないからね!!」
必死に双子を説得するあたしとカルステッドさんをよそに、リンダは楽しそうに話を続ける。
「ふふっ、レオンやサクラに冗談はまだ早かったみたいね♪あ、そうだ!聞いてよサーヤ。泣かされたと言えば、隊長もこの前フラン様に泣かされてたんだよ☆」
「え?フランさんに?」
「そうそう!フラン様と無事に合流できた時、“もう大丈夫だから後はまかせて”って優しい言葉をかけられて明らかに泣いてるっぽかったのに、隊長ってば「泣いてないわよっ!!」ってココットさんの時の口調に戻っちゃって面白いの何のって・・・――――――」
「ちょっ、リンダ!!それは・・・!!」
「・・・え?ココットさんの時??」
リンダがハッとした顔をしながら口を塞ぎ、周囲に微妙な空気が流れる中、あたしは頭の中でリンダの言葉を思い返していた。
「サーヤ、あの・・・」
「・・・嘘・・・ココットさんが、カルステッドさん・・・??」
エルはどことなく気まずそうな顔をしてるけど否定はしていない。
聞き間違いじゃないかもう一度確認してみようと思ったら、あたしの服を掴んだままの双子が予想外の事を言ってきた。
「まま、ココ、カルおじなの」
「ココ、ないないちてないのよ」
「へ?!レオン、サクラ、あなた達、知って・・・?」
「はぁ・・・むしろ知らなかったのは、サーヤ、お前だけだ」
「え・・・・・・えぇぇぇぇぇぇ??!!」
なん、だと・・・?
カルステッドさんがココットさんで?しかも、知らなかったのはあたしだけ??
ってか、何でカルステッドさんはココットさんだったの???
「おめぇら・・・感動の再会を水差すようでわりぃが、話続きは飯を食いながらにしねぇか?」
気が付けばすっかり食事の準備が終わって、新国王となった第二王子もこちらの様子を見守りながら待っている。
まだちょっと混乱してたけどこれ以上待たせるのは申し訳ないので、あたし達はとりあえず用意された席へと移動することにした。
モジャさんとペチャさんは、城に着いてからずっと厨房の一角を借りてリーズ料理の研究をしていたらしい。
最初は城の料理人さん達も、”家畜の食べ物を料理に使うなんて”と良い顔をしていなかったけど、だんだん美味しそうな匂いに釣られて試食する人が増え、そのうち皆であーでもないこーでもないと話し合う位になったんだとか。
試行錯誤の結果に生まれたのが、今ここに用意された3種類のパルミアらしい。
まずはエビや貝などの魚介を中心としたシーフード系、お肉と野菜たっぷりのスタミナ系、たっぷりチーズの上に小さく刻まれた色鮮やかな野菜とお肉で花を描いたような女性や子供向けと言った、以前に比べて見るからに美味しそうなパエリアばかりだった。
他にも、城の料理人さん達が腕を振るった魔鳥の丸焼きやサラダ、デザートのケーキやクッキーなどたくさんの料理が並んでいて、皆楽しそうに食事をし始めている。
「「ん~、おいちぃの~♪」」
「さすが双子、反応までまったく一緒だな。オレ様のパルミアはうめぇか?」
「モジャ、やればできゆの」
「モジャ、なかなかやるな、なの」
「おめぇら・・・そーゆートコロは相変わらずだなぁ、おい」
「へへ、うちの子達可愛いですよねぇ」
「そうじゃねぇっ!褒めてねぇよ!!・・・ったく、親子揃って仕方ねぇ奴らだな。ほら、おめぇもさっさとオレ様の進化したパルミアを食いやがれ!」
「ふふっ、ありがとうございます。じゃあ早速・・・―――――――っぐ、ぅぷっ」
(ガシャン、パリ――――ン)
モジャさんから受け取ったパルミアの匂いを嗅いだ瞬間、胃がぐるぐるして込み上げるモノがあり、思わずお皿をを落としてしまったため楽しい雰囲気が一転し周囲がザワザワし始める。
口を開きたくても、気持ち悪くて思うように喋れない。
あれ?この感じ、もしかして・・・―――――――――――?
「大丈夫だ、サーヤ。わかっている」
「・・・」
口を押えながらエルの方を見ると、何も言っていないのに状況を察してくれたらしくあたしにハンカチを渡してから再び抱き上げ、少しテーブルから離れて料理の匂いがあまりしないよう配慮してくれる。
やだもう!うちの旦那様、最高過ぎかよっ!!
貰ったハンカチで口元を抑えつつそんな事を考えながら、気持ち悪くて吐きそうだけど別の事を考える余裕はあるなと少しだけ安堵した。
「セイル、椅子を一つあの辺に置いてくれるか」
「おっけー☆」
「旦那、あの・・・」
「問題ない。恐らくつわりだ」
「は?」
「つわりって・・・えぇぇぇぇ?!」
ペチャさんの声が思いの外大きく響いてさらに周囲がざわざわし始める中、真っ先に動いたのはこの二人だった。
「もじゃ・・・まま、いじめた」
「もじゃ、せいばいなの・・・」
口やほっぺたいっぱいにソースを付けながら殺気ダダ洩れ状態のレオンとサクラは、今にもモジャさんに攻撃しようとしている。
どうしよう。声を出して止めたくても、あたしはまだ話せる状態じゃない。
待って待って!違うから!!
誰か双子を止めてぇぇぇぇぇ!!!
「は?!ちょっ、待て待て待てっ!オレ様じゃねぇ!!おめぇらの母ちゃんは妊娠してんだよっ!!」
「にん・・・?」
「もんど、むよーなのよ、もじゃ」
「だぁぁぁぁもうっ、ちげぇって言ってんだろうがっ!!おめぇらに弟か妹ができたってことだよっ!!!」
「「!!!」」
さすがに言葉を理解したのか、レオンとサクラの動きがピタッと止まり、視線は一気にあたしの方へと向いた。
「まま・・・ホントなの?」
「くーたち、また、おにーさん、おねーさんなの?」
「(コクリ)」
「あぁ。お前達に新しい家族がまた増えるぞ」
「「!!!!・・・――――――ままっ、ぱぱぁっ!!」」
レオンやサクラが涙を浮かべながら嬉しそうにあたしの元へ走って来る。
待って待って、せめて口の周りを拭かないとエルの服が悲惨な事に・・・と思ってたら、ミナトちゃんやカイトくんがレオンやサクラの口周りを綺麗に拭ってくれている。
もうすっかりお兄さんとお姉さんな天使達が我が家の天使達を・・・あぁもう皆マジ天使!超癒される!!
そして、ベルナートさんは双子と一緒になって泣いている・・・なぜに?
ちなみに、少し離れたカルステッドさん達とフランさん、ライムントさんのいるテーブルでは、「隊長!今日はお祝いですよね!お酒飲んでいいですか?」「いいね。今日は私も一緒に飲もうかな」「では、我も」などと宴会が始まり、近くにいた新国王や側近の人達が巻き込まれどんちゃん騒ぎが始まってしまった。
皆、自由だなぁ・・・
皆が食事をしている間、あたしは体調が落ち着くまで客室で休ませてもらうことにした。
わざわざ今のあたしでも飲食できそうな果実水や、一口サイズにカットされた果物が用意してくれている辺り、さすがはプロのメイドさんである。
「容体が落ち着いたら家に戻るぞ。セイルが先に戻ってティリアに準備させているはずだ」
「うん・・・ごめんね、全然食事楽しめなかったでしょ?」
「構わぬ。お前の懐妊の方が嬉しいし大事だ」
「へへ、ありがとう」
皆と食事ができなくて寂しいなと思っていたら、食事を終えたというミナトちゃんやカイトくん、ベルナートさん、フランさん、ライムントさんがレオンやサクラを連れてやってきて、いきなり、”誰があたしに祝福をあげるか”という争奪戦が始まって、一気に賑やかになった。
まともに勝負すると部屋を壊しかねないので、厳正なるじゃんけんという勝負方法を教えてみたら、結果はなんとフランさんの一人勝ち。
さすがに戦闘ではこの中で最強とあって、勘が鋭いらしい。
・・・そういうモノなのかな?
フランさんは、「男の子だったら、私がしっかり鍛えて立派な剣士にしてあげよう」と言って、あたしに”祝福”を与えてくれた。
フランさんの手にかかると、立派になり過ぎて人間離れした最強剣士になりそうだなと思ったのはきっとあたしだけじゃないはず・・・
大きなダイニングルームの前に到着しエルに降ろしてもらうと、タイミングを見計らった護衛の人がドアが開けてくれた。広々としたダイニングには大きなテーブルがいくつも連なって並んでおり、給仕のメイドさん達がたくさんの料理を次から次へとテーブルへ運んでいる姿が目に入る。
そして、この部屋に先にいたあの人があたし達の来訪に気付くと、すぐさま入り口に向かって駆け寄ってきた。
「・・・っ、エリュシオン様!!エリュシオンさ・・・―――――――ぐふっ」
「やかましいぞ、カルステッド。そんなに叫ばずとも聞こえる」
「・・・っぐ、狙い処は良いですが、威力がいつもより弱い・・・まだ完全には回復されていないようですね」
途中までは、大型犬が久しぶりに飼い主に巡り会えた感動的再会のシーンに見えたのに、実際は思ってたのと全然違った。
嬉しそうに抱きつく勢いで駆け寄ってきた忠犬・・・いや、カルステッドさんに、こともあろうかエルは腹パンをしてカルステッドさんもかわすことなく素直に喰らっていた。
二人の雰囲気を見る限り、これが普通なんだろう。
「隊長ってホントにエリュシオン様が大好きですよね~。忠誠心の高い大型犬みたい♪」
「(コクリ、もぐもぐ)」
「なっ、リンダっ、アルマまで!仮にも上司である俺のことを犬って・・・」
「忠誠心は高くとも、そこまで従順ではないがな」
「ちょっ!エリュシオン様ぁ?!」
リンダ達もあたしと同じことを思っていたようだ。
エルとリンダは楽しそうにカルステッドさんを弄りつつ、アルマさんは手に持った料理をひたすらもぐもぐと食べている。ここにアレク兄様がいないのはちょっと寂しいけど、今はこうして無事に再会できたことが素直に嬉しい。
「サーヤ、久しぶり!・・・って程でもないか」
「ううん、久しぶり。リンダ・・・アルマさんも、カルステッドさんも皆無事で良かった」
「サーヤ・・・大まかな話は聞いた。よく頑張ったな」
「うんうん。サーヤのおかげで皆を無事救出できたんだもんね。お疲れ様!」
「(コクリ)」
「そんなっ・・・あたしはライムントさんの加護をもらうだけで、頑張ったのは・・・」
「だが、それはサーヤにしかできなかった事だし、今回は危険な状況だったのだろう?それでも予定通り、サーヤがライムント殿の加護を得たおかげで他の方々が行動できた・・・それだけで十分じゃないか」
「・・・―――――っ」
カルステッドさんの言葉が嬉しくて、頭をぽんぽんと撫でてくれる手が温かくて、以前何度も同じように親身になってくれたあの人をふと思い出したりもして、また泣きそうになった。
なんかあたし、今日はやけに涙腺が緩くない?
「へ?あの、サーヤ・・・?」
「・・・ッグズ、ごめ、なさ・・・っ、違っ・・・」
「あ~あ、隊長、サーヤを泣かせちゃった~」
「や、ちょっ!リンダ?!」
冗談を交えたこういう会話も懐かしいなと噛みしめていたら、服をくいくいっと引っぱる我が家の天使達がとんでもない事を言ってきた。
「まま、いちゃいの?」
「カルおじ、せいばいすゆ?」
「??!!」
「待って待って!レオン、サクラ、大丈夫だから!カルステッドさんは何も悪くないからね!!」
必死に双子を説得するあたしとカルステッドさんをよそに、リンダは楽しそうに話を続ける。
「ふふっ、レオンやサクラに冗談はまだ早かったみたいね♪あ、そうだ!聞いてよサーヤ。泣かされたと言えば、隊長もこの前フラン様に泣かされてたんだよ☆」
「え?フランさんに?」
「そうそう!フラン様と無事に合流できた時、“もう大丈夫だから後はまかせて”って優しい言葉をかけられて明らかに泣いてるっぽかったのに、隊長ってば「泣いてないわよっ!!」ってココットさんの時の口調に戻っちゃって面白いの何のって・・・――――――」
「ちょっ、リンダ!!それは・・・!!」
「・・・え?ココットさんの時??」
リンダがハッとした顔をしながら口を塞ぎ、周囲に微妙な空気が流れる中、あたしは頭の中でリンダの言葉を思い返していた。
「サーヤ、あの・・・」
「・・・嘘・・・ココットさんが、カルステッドさん・・・??」
エルはどことなく気まずそうな顔をしてるけど否定はしていない。
聞き間違いじゃないかもう一度確認してみようと思ったら、あたしの服を掴んだままの双子が予想外の事を言ってきた。
「まま、ココ、カルおじなの」
「ココ、ないないちてないのよ」
「へ?!レオン、サクラ、あなた達、知って・・・?」
「はぁ・・・むしろ知らなかったのは、サーヤ、お前だけだ」
「え・・・・・・えぇぇぇぇぇぇ??!!」
なん、だと・・・?
カルステッドさんがココットさんで?しかも、知らなかったのはあたしだけ??
ってか、何でカルステッドさんはココットさんだったの???
「おめぇら・・・感動の再会を水差すようでわりぃが、話続きは飯を食いながらにしねぇか?」
気が付けばすっかり食事の準備が終わって、新国王となった第二王子もこちらの様子を見守りながら待っている。
まだちょっと混乱してたけどこれ以上待たせるのは申し訳ないので、あたし達はとりあえず用意された席へと移動することにした。
モジャさんとペチャさんは、城に着いてからずっと厨房の一角を借りてリーズ料理の研究をしていたらしい。
最初は城の料理人さん達も、”家畜の食べ物を料理に使うなんて”と良い顔をしていなかったけど、だんだん美味しそうな匂いに釣られて試食する人が増え、そのうち皆であーでもないこーでもないと話し合う位になったんだとか。
試行錯誤の結果に生まれたのが、今ここに用意された3種類のパルミアらしい。
まずはエビや貝などの魚介を中心としたシーフード系、お肉と野菜たっぷりのスタミナ系、たっぷりチーズの上に小さく刻まれた色鮮やかな野菜とお肉で花を描いたような女性や子供向けと言った、以前に比べて見るからに美味しそうなパエリアばかりだった。
他にも、城の料理人さん達が腕を振るった魔鳥の丸焼きやサラダ、デザートのケーキやクッキーなどたくさんの料理が並んでいて、皆楽しそうに食事をし始めている。
「「ん~、おいちぃの~♪」」
「さすが双子、反応までまったく一緒だな。オレ様のパルミアはうめぇか?」
「モジャ、やればできゆの」
「モジャ、なかなかやるな、なの」
「おめぇら・・・そーゆートコロは相変わらずだなぁ、おい」
「へへ、うちの子達可愛いですよねぇ」
「そうじゃねぇっ!褒めてねぇよ!!・・・ったく、親子揃って仕方ねぇ奴らだな。ほら、おめぇもさっさとオレ様の進化したパルミアを食いやがれ!」
「ふふっ、ありがとうございます。じゃあ早速・・・―――――――っぐ、ぅぷっ」
(ガシャン、パリ――――ン)
モジャさんから受け取ったパルミアの匂いを嗅いだ瞬間、胃がぐるぐるして込み上げるモノがあり、思わずお皿をを落としてしまったため楽しい雰囲気が一転し周囲がザワザワし始める。
口を開きたくても、気持ち悪くて思うように喋れない。
あれ?この感じ、もしかして・・・―――――――――――?
「大丈夫だ、サーヤ。わかっている」
「・・・」
口を押えながらエルの方を見ると、何も言っていないのに状況を察してくれたらしくあたしにハンカチを渡してから再び抱き上げ、少しテーブルから離れて料理の匂いがあまりしないよう配慮してくれる。
やだもう!うちの旦那様、最高過ぎかよっ!!
貰ったハンカチで口元を抑えつつそんな事を考えながら、気持ち悪くて吐きそうだけど別の事を考える余裕はあるなと少しだけ安堵した。
「セイル、椅子を一つあの辺に置いてくれるか」
「おっけー☆」
「旦那、あの・・・」
「問題ない。恐らくつわりだ」
「は?」
「つわりって・・・えぇぇぇぇ?!」
ペチャさんの声が思いの外大きく響いてさらに周囲がざわざわし始める中、真っ先に動いたのはこの二人だった。
「もじゃ・・・まま、いじめた」
「もじゃ、せいばいなの・・・」
口やほっぺたいっぱいにソースを付けながら殺気ダダ洩れ状態のレオンとサクラは、今にもモジャさんに攻撃しようとしている。
どうしよう。声を出して止めたくても、あたしはまだ話せる状態じゃない。
待って待って!違うから!!
誰か双子を止めてぇぇぇぇぇ!!!
「は?!ちょっ、待て待て待てっ!オレ様じゃねぇ!!おめぇらの母ちゃんは妊娠してんだよっ!!」
「にん・・・?」
「もんど、むよーなのよ、もじゃ」
「だぁぁぁぁもうっ、ちげぇって言ってんだろうがっ!!おめぇらに弟か妹ができたってことだよっ!!!」
「「!!!」」
さすがに言葉を理解したのか、レオンとサクラの動きがピタッと止まり、視線は一気にあたしの方へと向いた。
「まま・・・ホントなの?」
「くーたち、また、おにーさん、おねーさんなの?」
「(コクリ)」
「あぁ。お前達に新しい家族がまた増えるぞ」
「「!!!!・・・――――――ままっ、ぱぱぁっ!!」」
レオンやサクラが涙を浮かべながら嬉しそうにあたしの元へ走って来る。
待って待って、せめて口の周りを拭かないとエルの服が悲惨な事に・・・と思ってたら、ミナトちゃんやカイトくんがレオンやサクラの口周りを綺麗に拭ってくれている。
もうすっかりお兄さんとお姉さんな天使達が我が家の天使達を・・・あぁもう皆マジ天使!超癒される!!
そして、ベルナートさんは双子と一緒になって泣いている・・・なぜに?
ちなみに、少し離れたカルステッドさん達とフランさん、ライムントさんのいるテーブルでは、「隊長!今日はお祝いですよね!お酒飲んでいいですか?」「いいね。今日は私も一緒に飲もうかな」「では、我も」などと宴会が始まり、近くにいた新国王や側近の人達が巻き込まれどんちゃん騒ぎが始まってしまった。
皆、自由だなぁ・・・
皆が食事をしている間、あたしは体調が落ち着くまで客室で休ませてもらうことにした。
わざわざ今のあたしでも飲食できそうな果実水や、一口サイズにカットされた果物が用意してくれている辺り、さすがはプロのメイドさんである。
「容体が落ち着いたら家に戻るぞ。セイルが先に戻ってティリアに準備させているはずだ」
「うん・・・ごめんね、全然食事楽しめなかったでしょ?」
「構わぬ。お前の懐妊の方が嬉しいし大事だ」
「へへ、ありがとう」
皆と食事ができなくて寂しいなと思っていたら、食事を終えたというミナトちゃんやカイトくん、ベルナートさん、フランさん、ライムントさんがレオンやサクラを連れてやってきて、いきなり、”誰があたしに祝福をあげるか”という争奪戦が始まって、一気に賑やかになった。
まともに勝負すると部屋を壊しかねないので、厳正なるじゃんけんという勝負方法を教えてみたら、結果はなんとフランさんの一人勝ち。
さすがに戦闘ではこの中で最強とあって、勘が鋭いらしい。
・・・そういうモノなのかな?
フランさんは、「男の子だったら、私がしっかり鍛えて立派な剣士にしてあげよう」と言って、あたしに”祝福”を与えてくれた。
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