【本編完結済】【R18】異世界でセカンドライフ~俺様エルフに拾われました~

暁月

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14章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お城はやっぱり危険なトコロ~

迷惑料という名のご褒美

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翌日、お城へと招待されていたあたし達は、指定された時間に直接お城の謁見の間へと転移魔法で移動した。

そして、転移先の謁見の間には国王となった第二王子やその側近の人達数名、そしてモジャさんとペチャさん、レヴィンさんとマデリーヌさんという少人数しかいなかった。
転移魔法が古の魔法と言われている今、あたし達が当然のように転移魔法で登場すると余計な騒ぎや面倒ごとが増えるため、レヴィンさんの計らいで最小限の人数に留めつつ徹底的な箝口令かんこうれいまで敷かれているらしい。

転移魔法って周りの皆は当たり前のように使ってるけど、よくよく考えたらすごい魔法だもんね。

「よく来てくれた・・・じゃなくて、よく来て下さいました皆様。今日はごゆるりとお過ごし下さい」
「・・・」

丁重にもてなそうとしてるのはわかるんだけど、その態度がどことなく無理をしてる感じの第二王子・・・ではなく新国王様。
・・・どうしよう、また名前忘れちゃった。

「あ、ぼんくあー」
「もじゃと、ぺちゃもいゆのー」
「おい、おめぇら!この方は・・・」
「モジアルド、良いのだ」
「陛下・・・」
「この国はこの方々に多大なる迷惑をかけてしまった上に、返しきれない大恩がある。身分など、あってないようなモノだ」
「魔王様・・・ご無事で何よりですわ・・・」

なんか、お城に到着して早々会話がおかしい。
いくら大恩があっても、曲がりなりにも国王様を“ボンクラ”なんて言っちゃいけない。
とりあえず、双子達には後で言い含めておきますね。

そして、ペチャさん・・・すっかりエルの事を魔王様扱いですか。
いや、ある意味間違ってはいないんだけどさ。


正直言うと、第二王子が新国王となって安全だとしても、悪い印象の方が強いこの王都や城にはもう来たくなかった。

だけど、アレク兄様はまだ動ける状態じゃないし、当のエルが「こっちは多大な迷惑をこうむったのだ。迷惑料くらい貰っておかないと損だろう」と言うので、少しだけなら・・・と了承したのだ。

確かにモジャさんとペチャさんのことも気になってたしね。
でも、家を出る前に双子達が「てきなの?おーぞく、またやっつけゆの??」と張り切っていたので、それを止めるのがちょっと大変だった。

ん?ちょっと待って、“また”ってなんだ?
・・・いやいや、もう気にするのはやめよう。火傷しかしない気がする。

今回一緒に来たのは、眠っていたリリアを除いたあたし達家族と、セイル、ミナトちゃん、ベルナートさん、カイトくん、フランさん、ライムントさん。ノルンさんはまだ先代様の家で療養中だし、アレク兄様もまだ出歩けるほどではないので、アレク兄様の家族とリリアは森の家でお留守番をしている。

「無事に回復したようで何よりだよ、エリュシオン。そしてサーヤも、お疲れ様」
「はぁ~い♡二人とも、すっかり回復したみたいで良かったわん♡♡」
「レヴィンさん、マデリーヌさん、お疲れ様です」
「レヴィン、今回は随分と裏で動いてくれたようだな。恩に着る」
「ははっ、これから先のために必要だと思った事をしたまでだよ♪」
「だが、元国王はお前のかつての友人だったのだろう?」
「あー・・・まぁ、“友人”としてはからかい甲斐のある奴だけど、勝手にライバル視して何かと突っかかってくるハジメが国王のままだといろいろ面倒だからね☆側近の貴族達も叩けば埃だらけの奴ばかりだったから意外と楽だったよ♪」
「ふふ♡レヴィンの意外な一面が間近で見れて、私は楽しかったわよん♡♡」
「「・・・」」

レヴィンさんとマデリーヌさんがとてもイイ笑顔ですごい会話してるけど、あたしとエルはあえて触れないことにした。
知らない方が良い事ってのは、世の中にたくさんあるからね、うん。

「此度は本当に申し訳なかった。先王に代わり改めて謝罪させていただく」
「・・・」

再会の挨拶を一通り終えた後、改めて今回の騒動について新国王となった第二王子から謝罪をされた。

謁見の間ここに来ると、どうしても以前先代の国王に言われた嫌な言葉や聖獣に襲撃された時の酷い惨状を思い出してしまい、目の前の新国王となった第二王子が悪くないのは頭でわかってるけど、どうしても行き場のない怒りがこみ上げてくる。


王族の私利私欲に巻き込まれただけじゃなく、大切な仲間が危険な目に遭った上、危うく最愛の人エルを失うトコロだったのだ。
・・・自分もやらかしたトコロはあるけど、そもそも王族そっちが手を出してこなければこんな事にもならなかった。


言いたい事はあるのにうまく言葉が出てこなくて、涙が溢れてくる。
皆の前で泣きたくなくてエルの服をぎゅうっとしがみ付いたのに、あたしの気持ちを察したエルが優しく頭を撫でてくれるものだから、さらに涙が溢れてきた。

許すつもりでここに来たのに感情がぐちゃぐちゃになってしまったあたしは、エルにしがみ付いたまま溢れた涙を見えないように拭う。

「ん~、サーヤとしてはやっぱり許せないみたいだし、ここはやっぱり潰しちゃおっか⭐︎」
「サーヤままのためなら、いくらでもぷっちんするのよ」
「ボクも、ミーたんといっしょ、ぷっちんすゆ!」
「くーも、ベルといっしょ、ぷっちんすゆの!」
「ぷっちんだけで足りなかったら、カイトと一緒に作ったとっておきのアイテムがあるよ」
「そうだね、この城と王都くらいなら一瞬で消せるんじゃない?」
「「「?????!!!!!」」」

あたしがモヤモヤしてる間になんだかとんでもない展開になり、涙が一気に引っ込んだ。

「ちょっ、待って待って!さすがにそこまでは望んでないからやめて!!」
「それは残念だ。せっかくだから新技を試そうかと思っていたのに・・・」
「お前達、暴れるのは構わぬが森の家だけは壊すなよ」
「だぁぁぁぁぁっ!フランさんやライムントさんまで便乗しないでぇぇぇ!!」

このやり取りも何度かしたことあるけど、冗談なんかじゃなく毎回皆が本気だから、止める方のあたしも必死だ。
あたしの涙一つで国がなくなるとかホントにやめて!そこまで望んでないから!!

「ふふっ、相変わらずサーヤは精霊王様達に愛されてるみたいだね♪」
「・・・レヴィンもこいつらの反応には随分と慣れたようだな」
「まぁね。こうなるだろうと思って王城ここに残っていたわけだし」

精霊王様達みんなの殺気に顔面蒼白していた新国王達に、レヴィンさんが声をかける。

「ね?脅しじゃないって事は充分にわかったでしょ?・・・サーヤに許してもらいたかったら、サーヤが望むモノをあげれば良いんだよ♪」
「・・・あたしが、望むモノ?」
「わ、わかった。・・・我が国の誠意としてサーヤに用意した物を受け取って欲しい」

第二王子・・・いや、新国王が手をパンパンッと叩くといきなりドアが開いて、荷馬車に積んだある物が大量に運び込まれてきた。

「これは・・・?」
「これは、国や貴族が備蓄していたリーズだ。今あるありったけを集めた。品質はモジアルドが確認済みだ」

運び込まれたリーズ入りの大きな麻袋は、40~50位ほどあるだろうか。1袋が10kgくらいらしい。
え?これ本当に全部もらえるの??

「このようなモノで詫びになるとは・・・――――――」
「ホントにいただいちゃって良いんですか?わぁ・・・これでしばらくは毎日炊き立てご飯が食べれるっ!!やったぁぁ」
「・・・え?」
「ね?言ったでしょ?サーヤはこっちの方が喜ぶって。あ、そうそうサーヤ。それ以外にもモジアルド殿がサーヤ達用のリーズ畑を用意して、収穫出来たら優先的に卸してくれるらしいよ」
「嘘、そこまで??ホントですか?モジャさん!!」
「あ、あぁ・・・おめぇはホントにそれで良いのか?もっと他の報酬だって・・・」
「他はいりません!あ、でもゾーヤとかこの国の調味料も欲しいので一緒に買わせて下さい!・・・あ!ごめん、エル。あたしまた勝手に・・・」
「かまわぬ。お前の好きにしろ」
「ホント?!エル、大好き♡」
「・・・魔王様、サーヤに甘すぎませんこと?」
「ペチアリア、いい加減人の旦那を“魔王様”呼ばわりするのはやめねぇか?」

さっきまでの涙は精霊王様達みんなを止めた時に一緒に止まった上、目の前に用意された大量のお米ちゃんにテンション爆上がりしたあたしは、完全に嫌な気分がどこかへすっ飛んでしまった。
我ながら単純だとは思うけど、以前モジャさんから購入したリーズはすでに全部食べ切ってしまったので、今一番欲しいものがまさにお米ちゃん、もといリーズだったのだ。


あたしがすっかり復活した事でようやく場が和み、エルが魔法袋マジックバックにお米をすべて収納した後、モジャさんや城の料理人さん達が昼食を用意してくれているということで、広めのダイニングルームへと移動することになった。

そのダイニングルームにはすでにカルステッドさん達がいて、あたし達の到着を待ちわびているらしい。
リーズをたくさん貰えた事と、カルステッドさん達に会える事が嬉しかったあたしはスキップしたい気分で歩き出した瞬間に足がもつれ、何もないところで躓いて転びそうになった。

「まったくお前は・・・」
「いやぁ、外歩くの久しぶりだからかな・・・運動不足なのかも」
「運動?そんなの毎晩しっかりと・・・―――――」
「だぁぁぁぁっ!あーゆーコトは”運動”って言いませんっ!!バカぁっ!!」

ここ最近は加護を得るために寝込んでいたり、エルが帰って来てからも治療と称してベッドで過ごすことが多く、いろんな意味で動けなくなったあたしはエルに運んでもらうことが多かったから、最近まともに外を歩いていない気がする。
森の家に帰ったら、散歩とかストレッチとか始めようかなぁ・・・

「む?サーヤ、風邪でも引いたのか?少し熱っぽいぞ」
「え?そう??確かに言われてみたらちょっと怠さはあるけど、全然平気だよ?」
「・・・」

あたしの言葉が信用できないのか、エルはそのまま無言であたしを抱き上げてダイニングルームへと歩き始めた。
周りはもう見慣れ過ぎた光景なので、誰も何も言わない。



魔王様、優しく気づかって欲しいのは今じゃない、ベッドの上なんだよ・・・



相変わらずどこかズレてるけど、今となっては不思議と愛おしさすら感じるなと思いながら、あたしは黙ってエルに身をゆだねる事にした。



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お待たせしました。
久しぶり過ぎる更新でスミマセン(>_<)
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