【本編完結済】【R18】異世界でセカンドライフ~俺様エルフに拾われました~

暁月

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14章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お城はやっぱり危険なトコロ~

二人を救出するために2 inノルンside

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ライムントとの加護付与の儀式を終えたサーヤは、現在発熱し寝室で寝込んでいる。
私の時も3日程寝込んでいたから、今回も2~3日はこの状態になるでしょうね。

レオンやサクラは一緒に寝室に籠り、ぬるくなったタオルを交換したり、時折苦しそうにしているサーヤの手を握り魔力を分け与えている。まだ小さい子供ながら、一度教えたことはしっかりとこなすとても利口な子達だ。

「・・・さて、私達も今できる事を探しましょう」
「そうねん♡レヴィン、私達は何をしたら良いのかしらん?」
「そうだね・・・聖獣イディナロクを、なるべくエリュシオン達に近づけさせないようにしたい・・・かな」
「エリュシオン達に近づけさせないって・・・捕らわれている以上それは難しいわよ?」
「そうですね。正確にはエリュシオン達以外の事に目を向けさせる、と言った方が良いかもしれません。例えば城でちょっとした騒ぎを起こして国王共々そっちに目を向けさせるとか、イディナロク殿が好きそうな餌を撒くとか・・・エリュシオンもされるがままではないと思うので、少しでも接触させないようにできれば・・・」
「ん~、城で騒ぎがあったとしても、人間が対処するでしょうからおびき出すのは難しそうねん」
イディナロククソ女が好きそうな餌・・・・・・」

イディナロククソ女の餌”と聞いて、真っ先に思い浮かんだのは先代様だ。
一時期は足しげく先代様の元へ通い、私に厭味ったらしく睦言の内容を吹聴していたのは今でもはっきりと憶えている。
あの女クソ女はとにかく面食いで、先代様の顔を特に気に入っていた。

けれど、そうなると先代様はまたイディナロククソ女と身体を重ねる事になる・・・―――――?

作戦としてこれ以上の提案はないから発言しなければ・・・けれど、チクリと胸が痛み思うように言葉が出てこない。

こんな感情は初めて・・・――――いえ、初めてではないわね。

以前も同じ感情を抱いていた。
抱いていたからこそ、耐えられなくて以前私はこの方から離れる決心をした。

先代様は、今でこそ私を特別視して下さっているけれど、基本的に何にも囚われず奔放な御方。
私の我がままで縛りつける事などできない。
いつも何かと理由を付けて私の願いを聞いて下さっているけれど、こればっかりはお願いしたくない・・・
だけど・・・―――――

“言わなければ、言わなければ”と膝の上に置いた拳を強く握りしめていた時、上からそっと温かい温もりに包まれた。
先代様だ。

「ディーの気を引くのは我に任せよ」
「え?」
「あらん?」
「・・・っ、先代様?!」
「大丈夫だ。あくまで奴の“気を引く”のみ。我はノルン以外をこの腕に抱きたいとは思わぬ」
「先代、様・・・」
「だが、多少触れられるくらいはあるだろう。それは目を瞑ってくれ」

先代様が私の意思を尊重してくれる・・・それだけですごく嬉しくて、だけどそこまで気を遣わせてしまった事が申し訳なくなる。

私は深呼吸し、改めて”二人の救出”を最優先事項として考える。
そうだ。あの女がどう動こうと、先代様は興味のかけらも持っていない。
不安になる必要など何もないのだ。

「かしこまりました。あの女の残り香など、私がすぐに上書きさせていただきますわ」
「くくっ、それは楽しみだ」

それから順調に作戦会議が進む中、今回の騒動の原因でもある国王を退位させ、第二王子を国王に・・・という話が出てきた。確かに国のトップが変われば、確かに今後はこのようなトラブルは起こらない。
妙案だけれど私達に手助けできることではないと思っていたら、レヴィンが「じゃあオレは、ハジメを引きずり下ろす手助けをします」とにこやかに協力を宣言した。
彼には何か策があるらしい。さすがはマデリーヌが選んだ男というトコロかしら。

私は情報収集をメインとした裏方をし、必要に応じて皆に情報提供を。
マデリーヌはレヴィンに協力しつつ、国王に呼ばれた場合の対応をするという事で、話はだいぶまとまってきた。


雑談を交えながら、そろそろ作戦会議を終了しようかと思っていた頃、今まで黙っていたミナトがライムントに声をかける。

「ライたん・・・あの魔法、使える?」
「あの魔法?」
「ずっと前に見せてくれた、位置を入れ替える魔法なのよ・・・」
「あぁ。対象物の位置を交換する魔法だな。使えるが・・・それがどうかしたか?」
「少しの間・・・一晩だけでもいいの。その魔法で、エルぱぱに変化したベーたんと、エルぱぱの位置、入れ替えることできる?」
「?!」

ミナトの発言に、ライムントもマデリーヌ達も驚いていた。
でも、ベルナートやカイトは驚いてない・・・という事は、ベルナートも承知済みという事?

「・・・いや、だが無機物にしか使ったことはない。生きた人間や精霊は試したことが・・・」
「ライたんなら、きっとできると思うの!」
「うん、ライならできると思う。見た目と中身はアレだけど、力は凄いよね」
「そうだよ!俺なら恥ずかしくて絶対できないこと、ライムントいっぱいできてるもん!」

ミナト以外の発言はちょっとズレているけれど、ライムントにはミナトの言葉しか聞こえていないのか気にする様子はない。
ミナトはカイトとベルナートに目配せしてからライムントの手を優しく握り、天使のような可愛い微笑みでたたみかけるように続けた。

「ライたん、すごい力もってるの、あたし知ってるのよ。きっと、ライたんならできると思うの」
「・・・ミナ、ト」
「エルぱぱと少しだけでも会えたら、サーヤまま、きっといっぱい頑張れるの。こんなこと、ライたんにしかできないのよ」
「我だけ・・・?」
「そうなの。あたし、まだ精霊王になったばかりで、ライたんみたいなすごいこと、できないのよ・・・」
「・・・」

目の前には、瞳をウルウルさせながらライムントの手を握ってお願いするミナトの姿が映る。
なぜかしら・・・こういう光景、私、どこかで見たことがある気がするわ・・・

「あたしの、だいきら・・・じゃなくて、大好きなライたんなら、きっとできるの。信じてるの!」
「・・・っ、大、好き・・・?ミナトが、我を・・・・・・?」
「うん。ライたん、すっごくすっごく、カッコいいのよ。ずっと一緒・・・―――じゃなくて、あたしの・・・―――でもなくて、えっと、んと・・・とにかくっ、こんなすごい事、ライたんにしかできないの!!」
「・・・っ、ミナト・・・そこまで我の事を・・・・・・」

え?今、絶対ミナトは”大嫌い”って言いかけたわよね?
それなのに、その後の”大好き”しか耳に入ってないのかしら??

まったく感動する要素がないのに、ライムントは変に腕を交差して不思議なポーズで額に手を当てている。そのポーズに意味があるのか聞きたいような聞きたくないような複雑な気持ちになった。

「・・・―――――良いだろう!我が天使、ミナトのためにやってみせようではないかっ!!」
「!!!・・・っ、ホントなの?!」
「あぁ。そうと決まれば・・・ベルナート、お前の身体の一部を我に寄こせ」
「えぇぇ??!!何それ、身体の一部って・・・―――――」
「うるさいっ!つべこべ言うでないっ!!良いからお前は我と共に研究室へ来いっ!!!」
「やっ、だから、身体の一部って何なのさ~~~~~~~~??!!」

双方発言もポーズもいろいろおかしかったはずなのに、交渉は成立したようだ。
そして、俄然やる気を出したライムントは、潜入準備のためベルナートを研究室へと強制連行して行った。

嵐が過ぎ去ったような現状にぽかんとしていると、何かを成し遂げたようなスッキリ顔のミナトとカイトが私に近づいてきた。

「ノンたん!ありがとうなの♪」
「さすがはノルンだよね」
「え?私、何かしたかしら?」

お礼を言われる意味がわからない。
今のライムントとのやり取りに、私は一切関与していないのになぜ感謝されるのかしら?

「ノンたんのまね、してみたのよ」
「・・・え?」
「ノルンって、先代様にお願いするの上手だからね」
「そうなの。サーヤままも言ってたの、手のひらでコロコロすごいって!」
「!!!」
「ほほぅ、なかなか面白い事を言う・・・のぅ、ノルン」
「え、えぇ・・・そうですわね」

無邪気な二人の発言を止める間もなく、事もあろうか先代様にも聞かれてしまい、冷や汗が出てくる。
“手のひらでコロコロ”って、ミナトに何てこと教えてるのよっ、サーヤ!!!!

「ノルン、エリュシオン達の救出を終えたらたっぷりと仕置きだ。・・・・・・わかったな」
「~~~~~~っ!!!!」



その日私は、先代様は”手のひらで転がされてる”のではなく、”手のひらで転がされるように見せてるだけ”なのだという事を、いやという程理解させられる結果となった。
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