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14章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お城はやっぱり危険なトコロ~
いつもの朝に、貴方がいない
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◇
とりあえず野営をするために王都の外へと出たあたし達は、街道から少し離れた場所で野営の準備をした。
「野営と言っても、もちろん“見せかけ”だ」
「“見せかけ”?」
「後でカルステッド達を連れて来て、アレク達には交代で見張りをしてもらうが、俺達は家に帰るぞ」
「え?」
「かしこまりました。俺とアルマ、隊長とリンダで見張りを致します。何かあれば伝達魔法ですぐにお知らせします」
「あぁ。テントの中には寝具を用意しておくから、交代で休憩すると良い」
「了解です!」
「あ、ボクは面白そうだからココに残るね☆」
「私はレヴィンの所へ帰るわん♡何かあったら呼んでちょうだいねん♡♡」
皆で話をどんどん進んでいくけど、当然の如くあたしに出る幕はない。
・・・なんか、あたしってこういう時は役立たずと言うかなんというか・・・
「あ、サーヤ。夜食用に食べ物分けてもらえると嬉しいんだけど。この前もらった分、もうアルマが食べきっちゃったんだよね」
「え?もちろん良いけど、結構な量渡したのにもうアルマさん食べちゃったの??」
「だって、アルマってば「サーヤの飯があるから、店で食べる気になんてならない」って、貰った分すぐに食べちゃうんだもの。あたしが預かってなかったらもっと早くになくなっちゃうよ」
「ふふっ、そんなに喜んでもらえるなんて嬉しい。でも、今はそんなにストックがないから必要な時はちゃんとお店で買うなり食べるなりしてねって伝えておいてね。・・・とりあえずあるのはこれくらいかな」
自分の魔法袋から、非常食用に作り置きしているサンドイッチやキッシュ、サラダやお鍋に入ったスープなどを出す。
思ってた以上の量に「え?こんなに良いの?でも、さすがにこの量はあたしの魔法袋には入らないわ」とリンダが苦笑していたので、この非常食はアレク兄様が管理してくれる事になった。
アレク兄様なら適量を皆で分けてくれる事だろう。
セイルと共に、野営地の周囲に厳重な結界とバリアや罠を張り終えたエルは、「家に帰るぞ」と言ってあたしを抱えて子供達の待つ家へと転移した。
到着したのは家の前。
すでに夕食を終えた子供達は、きっと今頃寝る準備をしている頃だろう。
外はもちろん真っ暗なんだけど、家から漏れたわずかな灯りはどことなく温かくて、あの家で待っている家族と共に迎えてくれているようにも感じた。
「お前は、お前のできる事をしているのだから胸を張っていろ。お前を“役立たず”など思う者は誰一人いない」
「エル・・・」
エルなら家の中に転移できるはずなのに、どうして外だったのかと少し疑問に思ってたけど、どうやらあたしがしょげているのに気付いていたらしい。
「むしろ、お前がいるから周囲の者も自分の成すべきことしようと思えるし、集中できる。・・・お前は仲間や家族にとって、なくてはならない存在なのだ・・・もちろん、俺にとってもな」
「エル・・・んっ」
出逢った頃は刺々しくて、“どうしてこんな意地悪で鬼畜な俺様な人なんて好きになったんだろう”と何度思ったことか。
だけど、根っこの部分はすごく優しくて面倒見が良くて、懐に入った人を決して裏切らない。
特にあたしの事なんて、あたし以上に理解してくれる事もある。今みたいにね。
エルの言葉や優しく重ねられた口唇は、魔法のようにあたしを元気付け、さっきまで少しへにょんとしてた気持ちを見事に払拭してくれた。
そうだよ。
あたしはパーティでいうトコロの前衛よりも後衛、しかも完全な支援特化型だ。
さっきみたいに、頑張る皆の夜食や非常食を常に用意しておいて、いつでも出せるようにしておくのが主な仕事だよね。
そう割り切ってしまうと俄然やる気も出るモノで、子供達に少し癒しをもらってから明日の朝ごはんを仕込む傍ら、非常食におにぎりも追加しておこうかなとかいろいろやりたいことが湯水のように湧いてきた。
「よしっ!子供達を寝かしつけたらあたしも仕込みや非常食を・・・んんっ」
「明日はまた国王が何か仕掛けてくるやもしれぬ。今のうちにたっぷりお前を堪能しておかなければな」
「は?!ちょっと待って、そんな、エルってば毎日・・・ひゃぅっ、ぁ、やっ、何でシャツのボタン外して・・・ふぁっ」
「とりあえずこのまま寝室へ行くか。・・・このまま着替えを手伝ってやる」
「???!!!」
絶対着替えだけで済むわけないっ!!
バカバカっ!エルのアホ~~~~~~~~~~~~~~っ!!!
さっきまでの感動はどこへやら。
結局あたしは、着替えだけで済まず寝室で美味しくいただかれてしまい、そのまま意識を失った。
「ん、あれ?・・・エル?」
翌朝目が覚めると、隣にエルはいなかった。
先に起きて、カルステッドさん達の所か、朝食を作ってるのか、研究室に閉じこもってるかのどれかだろうと気にせず簡単に身支度を整え、台所へと向かう。
結構早い時間らしく、台所は無人だったので気にせずご飯支度を始める。
タモツさんが作って使っていた炊飯器を使うと、ご飯がとても美味しく炊けるから、最近あたしが作るのはもっぱら和食が増えてきた。
今日のおかずは、ベーコンみたいな魔獣のお肉を使ったベーコンエッグに、サラダとお味噌汁。
ジュワ~っと漂うお肉の良い匂いに釣られたのか、レオンとサクラが台所へとやって来た。
「あ、ままだー」
「まま、おはよーなのー、ぎゅぅ~」
「あら、レオン、サクラ、おはよう」
お揃いの寝癖を付けたままの双子は、今日も一段と可愛くてあたしもぎゅうっとハグをする。
間もなくリリアを連れたティリアさんが現れて、“早くミルクを飲ませろ”と言わんばかりにリリアが暴れだしたので、盛り付けやダイニングへ運ぶのをティリアさんにお願いし、あたしはリリアの授乳タイムに入った。
昨日授乳できなくて不機嫌かと思われたリリアは、誰かさんがたっぷりとマッサージしてくれたおかげで、魔力たっぷりの母乳をぐびぐびと飲んでとても満足そうにしている。
「エリュシオン様?さぁ・・・今朝はお見かけしてませんけれど・・・」
「離れの方にも人がいそうな気配がなかったから、アレク達の所に行ってるんじゃないかな?」
「ん~、そうですよね。たぶんご飯を作り終える頃には戻ってくるでしょう、きっと」
いつも通りの朝、いつも通りの家族や仲間との時間なのに、エルがいない。
それだけで、どこか不安になるあたしはエルに依存し過ぎなんだろうか?
それとも、この不安は本当に何かが起こってるから感じるのか・・・――――――
結局、朝食の時間になってもエルが帰ってくる事はなく、昨夜アレク兄様達と一緒に野営地で過ごすと言っていたセイルに念話で声をかけてみたけど、返事が来ることはなかった。
とりあえず野営をするために王都の外へと出たあたし達は、街道から少し離れた場所で野営の準備をした。
「野営と言っても、もちろん“見せかけ”だ」
「“見せかけ”?」
「後でカルステッド達を連れて来て、アレク達には交代で見張りをしてもらうが、俺達は家に帰るぞ」
「え?」
「かしこまりました。俺とアルマ、隊長とリンダで見張りを致します。何かあれば伝達魔法ですぐにお知らせします」
「あぁ。テントの中には寝具を用意しておくから、交代で休憩すると良い」
「了解です!」
「あ、ボクは面白そうだからココに残るね☆」
「私はレヴィンの所へ帰るわん♡何かあったら呼んでちょうだいねん♡♡」
皆で話をどんどん進んでいくけど、当然の如くあたしに出る幕はない。
・・・なんか、あたしってこういう時は役立たずと言うかなんというか・・・
「あ、サーヤ。夜食用に食べ物分けてもらえると嬉しいんだけど。この前もらった分、もうアルマが食べきっちゃったんだよね」
「え?もちろん良いけど、結構な量渡したのにもうアルマさん食べちゃったの??」
「だって、アルマってば「サーヤの飯があるから、店で食べる気になんてならない」って、貰った分すぐに食べちゃうんだもの。あたしが預かってなかったらもっと早くになくなっちゃうよ」
「ふふっ、そんなに喜んでもらえるなんて嬉しい。でも、今はそんなにストックがないから必要な時はちゃんとお店で買うなり食べるなりしてねって伝えておいてね。・・・とりあえずあるのはこれくらいかな」
自分の魔法袋から、非常食用に作り置きしているサンドイッチやキッシュ、サラダやお鍋に入ったスープなどを出す。
思ってた以上の量に「え?こんなに良いの?でも、さすがにこの量はあたしの魔法袋には入らないわ」とリンダが苦笑していたので、この非常食はアレク兄様が管理してくれる事になった。
アレク兄様なら適量を皆で分けてくれる事だろう。
セイルと共に、野営地の周囲に厳重な結界とバリアや罠を張り終えたエルは、「家に帰るぞ」と言ってあたしを抱えて子供達の待つ家へと転移した。
到着したのは家の前。
すでに夕食を終えた子供達は、きっと今頃寝る準備をしている頃だろう。
外はもちろん真っ暗なんだけど、家から漏れたわずかな灯りはどことなく温かくて、あの家で待っている家族と共に迎えてくれているようにも感じた。
「お前は、お前のできる事をしているのだから胸を張っていろ。お前を“役立たず”など思う者は誰一人いない」
「エル・・・」
エルなら家の中に転移できるはずなのに、どうして外だったのかと少し疑問に思ってたけど、どうやらあたしがしょげているのに気付いていたらしい。
「むしろ、お前がいるから周囲の者も自分の成すべきことしようと思えるし、集中できる。・・・お前は仲間や家族にとって、なくてはならない存在なのだ・・・もちろん、俺にとってもな」
「エル・・・んっ」
出逢った頃は刺々しくて、“どうしてこんな意地悪で鬼畜な俺様な人なんて好きになったんだろう”と何度思ったことか。
だけど、根っこの部分はすごく優しくて面倒見が良くて、懐に入った人を決して裏切らない。
特にあたしの事なんて、あたし以上に理解してくれる事もある。今みたいにね。
エルの言葉や優しく重ねられた口唇は、魔法のようにあたしを元気付け、さっきまで少しへにょんとしてた気持ちを見事に払拭してくれた。
そうだよ。
あたしはパーティでいうトコロの前衛よりも後衛、しかも完全な支援特化型だ。
さっきみたいに、頑張る皆の夜食や非常食を常に用意しておいて、いつでも出せるようにしておくのが主な仕事だよね。
そう割り切ってしまうと俄然やる気も出るモノで、子供達に少し癒しをもらってから明日の朝ごはんを仕込む傍ら、非常食におにぎりも追加しておこうかなとかいろいろやりたいことが湯水のように湧いてきた。
「よしっ!子供達を寝かしつけたらあたしも仕込みや非常食を・・・んんっ」
「明日はまた国王が何か仕掛けてくるやもしれぬ。今のうちにたっぷりお前を堪能しておかなければな」
「は?!ちょっと待って、そんな、エルってば毎日・・・ひゃぅっ、ぁ、やっ、何でシャツのボタン外して・・・ふぁっ」
「とりあえずこのまま寝室へ行くか。・・・このまま着替えを手伝ってやる」
「???!!!」
絶対着替えだけで済むわけないっ!!
バカバカっ!エルのアホ~~~~~~~~~~~~~~っ!!!
さっきまでの感動はどこへやら。
結局あたしは、着替えだけで済まず寝室で美味しくいただかれてしまい、そのまま意識を失った。
「ん、あれ?・・・エル?」
翌朝目が覚めると、隣にエルはいなかった。
先に起きて、カルステッドさん達の所か、朝食を作ってるのか、研究室に閉じこもってるかのどれかだろうと気にせず簡単に身支度を整え、台所へと向かう。
結構早い時間らしく、台所は無人だったので気にせずご飯支度を始める。
タモツさんが作って使っていた炊飯器を使うと、ご飯がとても美味しく炊けるから、最近あたしが作るのはもっぱら和食が増えてきた。
今日のおかずは、ベーコンみたいな魔獣のお肉を使ったベーコンエッグに、サラダとお味噌汁。
ジュワ~っと漂うお肉の良い匂いに釣られたのか、レオンとサクラが台所へとやって来た。
「あ、ままだー」
「まま、おはよーなのー、ぎゅぅ~」
「あら、レオン、サクラ、おはよう」
お揃いの寝癖を付けたままの双子は、今日も一段と可愛くてあたしもぎゅうっとハグをする。
間もなくリリアを連れたティリアさんが現れて、“早くミルクを飲ませろ”と言わんばかりにリリアが暴れだしたので、盛り付けやダイニングへ運ぶのをティリアさんにお願いし、あたしはリリアの授乳タイムに入った。
昨日授乳できなくて不機嫌かと思われたリリアは、誰かさんがたっぷりとマッサージしてくれたおかげで、魔力たっぷりの母乳をぐびぐびと飲んでとても満足そうにしている。
「エリュシオン様?さぁ・・・今朝はお見かけしてませんけれど・・・」
「離れの方にも人がいそうな気配がなかったから、アレク達の所に行ってるんじゃないかな?」
「ん~、そうですよね。たぶんご飯を作り終える頃には戻ってくるでしょう、きっと」
いつも通りの朝、いつも通りの家族や仲間との時間なのに、エルがいない。
それだけで、どこか不安になるあたしはエルに依存し過ぎなんだろうか?
それとも、この不安は本当に何かが起こってるから感じるのか・・・――――――
結局、朝食の時間になってもエルが帰ってくる事はなく、昨夜アレク兄様達と一緒に野営地で過ごすと言っていたセイルに念話で声をかけてみたけど、返事が来ることはなかった。
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