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13章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お米をGetするために~

いつも通りの平和な道中2 inセイルside

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ボク達がモジャや第二王子ボンクラ達と、王都へ向かうために村を出発してから早数日。
馬車移動なんてつまらないだろうなと思っていたけど、ボクにとっては意外と楽し移動だった。

「おいっ、押すなって!これ以上近づいたら気づかれちまうぞ!」
「うるせぇ!オレは少しでもあの女神様を拝見したいんだ!見終わった奴はさっさと交代しやがれ!!」
「あの騎士の女の子、良い匂いがするんだよなぁ・・・」
「くぅっ、人妻で子持ちでも良いっ!!むしろ人妻と言う響きがなお厭らしくて堪らないっ!!」

今は馬を休ませるため、川のほとりで休憩している。
ボクがいるのは、第二王子ボンクラ一行が休憩してる場所が静観できる木の上だ。

ボクには、”エリュシオン達の知らないトコロで危険が迫っていないかチェックする”という大事な役目があるからね☆
決して楽しいからやってるわけじゃないよ♪

会話の内容から察するに、女神様ってのはマデリーヌで、騎士の女の子は護衛として付いてきたリンダ、人妻で子持ちはもちろんサーヤのことだろう。
ふふっ、三人共モテモテだね☆

最初は遠くから眺めてるだけだった彼らも、移動を重ねていくと少しずつ会話の内容や態度が変わっていった。
たぶん、原因は野営初日の“アレ”のせいだろう。



野営初日の夕食の時間、ボクはご飯を食べ終えてから早々に野営地に戻り、残っている奴らの監視を兼ねて木の上から観察をしていた。
すると、少しだけ酒も入っているのか第二王子ボンクラが部下達に愚痴っている姿が目に入った。

『あいつら・・・王族であるオレ自らが夕食に誘ったというのに、何が「最愛の家族との時間は邪魔されたくないのでな」だっ!!あのエロエルフめ、きっと「食後のデザートはお前だ」とか言って、きっとサーヤを・・・』
『えぇ?!殿下、さすがにそれは羨ま・・・じゃなくて、まだ時間的に早すぎじゃありませんか?』
『いやいや、あいつらならあり得る!あいつらときたら、以前船上のプ、プールでも・・・』
『プールで?・・・あぁ、人前で口付けでもしてたんですか?それくらいなら恋人同士でも・・・』
『違うっ!!あっ、あいつら・・・プールの中でヤっておったのだっ!!』
『『『『????!!!!』』』』

あらら☆
そういえば、船上プールでの一件を第二王子ボンクラに見られたってサーヤ怒ってたっけ。
でも、それでエリュシオンと別々の部屋で寝たから、ライムントの侵入に気付くの遅くなって攫われる羽目になったんだよね・・・

第二王子ボンクラの話を聞きながら以前の出来事をぼんやり思い返してたら、ガシャンッという食器を落とす音がして我に返る。
食器を落とした犯人は、モジャと一緒にいた・・・えっと、なんだっけ?あ、ペチャパイのペチャだ!!

『お、おいっ、ペチャ・・・申し訳ありません、殿下。すぐに食器を・・・』
『・・・ですわ』
『は?』
『ふっ、ふしだらっ!!破廉恥ですわ~~~~~~~~~~~っ!!!!』

ペチャパイは、顔を真っ赤にして叫びながら自分のテントへと走り去っていった。
残されたモジャは、第二王子ボンクラに謝罪しながら食器を片付け、慌ててペチャパイの元へと戻っていったようだ。
モジャと婚約してるみたいだけど、見るからにペチャパイは処女っぽいし、刺激が強すぎたんだろう。
残された警備兵たちも、第二王子ボンクラ達の言葉を半信半疑にしながら複雑な顔をしていた。

エリュシオンとサーヤがヤってたのは事実だし、今出て行っても騒ぎを大きくするだけだから、その後もひたすらボクは静観を決め込む事にした。



・・・――――そしてその後、彼らにはさらなる悲劇が訪れた。



晩ご飯の片づけを終え、野営地のテントに戻ってきたサーヤとエリュシオン。
当然の事ながら、戻ってきても二人はテントに籠っていて外に出てくる事はない。
恐らく、さっきリアに授乳してる時に「ミルクの出が悪くて噛まれた」と言っていたから、今頃サーヤはエリュシオンにマッサージでもしてもらってるんだろう。

そんな時、第二王子ボンクラから偵察を命令されたらしいがエリュシオン達のテントへと近づいていた。
エリュシオンの命令でアレクやリンダは見張りをしていないが、テントにはエリュシオンが結界や罠を張っている。
確か、サーヤの案でテントに触れたらけたたましい音が鳴る上に不審者を触手で拘束する・・・とか言ってたっけ?

発動したら面白いのになと思ってみてたけど、影は結構慎重な人間らしくなかなかテントに触れようとしなかった。
ひとしきり周囲を確認した後、影がようやくテントに触れようとした瞬間、同時に中から声が聞こえてきた。

『〈・・・っ、あっ〉』
『!!!』

サーヤの若干艶めいた声。
影はもちろん驚いて、ビクっと身構えた。
そして、テントに触れずまた中の様子を伺い始める。

ここで、“立ち去る”という選択をしなかった事を、影はきっと後悔しただろう。

『〈んっ、エル・・・それ、やぁっ〉』
『〈ダメだ。しっかり解しておかないと、後で辛いのはお前だぞ〉』
『〈うぅ、わかってるよ・・・でも、お願い。もう少しだけ、優しくして?〉』
『〈はぁ・・・仕方ない。少しだけだぞ・・・〉』
『〈ぅあっ、や、バカっ、全然優しくなっ・・・~~~~~っ〉』
『????!!!!』

事情を知ってるボクから見れば、ただマッサージを痛がってる会話にしか聞こえないけど、事情を知らない影から見れば、完全に情事の真っ最中だと思うだろう。
サーヤ達がホントに真っ最中だったら、ほとんど会話なんてできないのにね☆


その後、何度かサーヤの痛がる声を聞いた後影は立ち去って行った。
・・・若干前屈みになりながら。

完全に影が立ち去った後、ボクは気配を殺さず声をかけてから普通にテントの中へと入る。

『サーヤ、エリュシオン、入るよ~☆』
『セイルか、どうした?外にでもいたか?』
『ん~、まぁ大したことないネズミはいたかな☆』
『くくっ、そうか』

やっぱりエリュシオンは、影の気配に気づいていたらしい。
ってことは、サーヤの声をわざと聞かせたって事だよね☆ホント、イイ性格してるよ♪

『あ、セイル。ねぇ聞いてよっ、エルってば酷いんだよ!マッサージは優しくしてねって言ったのに、全然優しくしてくれないのっ!!』
『仕方なかろう。ちゃんと解さないとリリアも満足しないし、痛い思いするのはお前だぞ、サーヤ』
『むぅ~、そうなんだけどさ・・・でも、ホントに胸が張ってる時ってぎゅうってされるのすっごく痛いんだからね!それこそこんな感じに!!』

サーヤはエリュシオンの腕を思いっきりつねりながら、どれだけ痛かったのかを理解してもらおうと必死にして、エリュシオンはそんなサーヤを優しく見守りながら好きなようにさせていた。


こんな感じで、ボク達はいつもと変わらず道中も平和に過ごしていた。



・・・だけど、第二王子ボンクラ達は少し違っていた。





「ね、セイル。あたし、どこか変なトコロある?」
「ん?特にないけど・・・なんかあったの?」
「ん~・・・なんか、御者の人とか警備兵の人達の対応が、なんか不自然に感じるんだよね・・・気のせいかもしれないけど」

サーヤが気付くなんて珍しいなって思ったけど、首元に見える赤い華を見てすぐに察した。
“あいつら、赤い華コレを見てまたイロイロ想像したんだな”と。

妖精の粉を渡してあるのにあまり使いたがらないサーヤは、野営二日目の朝はほとんど顔を出さず、エリュシオンに抱きかかえられて馬車に乗っていた。
だけどそれを気にしてなのか、最初に着いた村の宿では珍しく二人は朝ご飯に顔を出し、ご飯を食べていた。

ボクにとってはいつもの光景。
だけど、他の人達にとってコレが当たり前の光景とは限らない。

『エルのキッシュ、トマトソースなんだね。美味しい?』
『気になるなら食えば良いだろうが。・・・ほら』
『あむっ、んんっ!ふぉいひいっ!!(美味しいっ!!)んふ~、エルにも、んぐんぐ、あたしのあげる♪』
『ん・・・このホワイトソースもなかなかコクがある。バターの風味が良いな』
『ふふっ、でっしょ~?今度家でも作ってみようか』
『『『『『『・・・・・・』』』』』』

口を開けたまま絶句する、第二王子ボンクラ一行とモジャやペチャパイ。
もちろん二人はそんな周囲に気付かない。

『サーヤ、我にも食わせろ』
『『『『『『???!!!』』』』』』
『えっと、まぁ・・・機会があれば?』
『機会などいくらでもあるだろう。なんなら今夜・・・―――――』
『わぁぁぁぁぁぁっ、ライムントさんっ!このキッシュ美味しいからぜひ食べてみてくださいっ!!』
『むぐっ』
『『『『『『・・・・・・』』』』』』

信じられない光景に、なぜか第二王子ボンクラの側近と思われているライムントまで参加する始末。
見てるボクは、笑いを堪えるのに必死だったね☆


こんな感じで、サーヤとエリュシオンは一緒にいればいるほど常にいちゃいちゃしてるから、警備兵や御者もかなりあてられてしまったんだろう。

御者は「くそ~~~~っ、オレだって嫁といちゃいちゃしてぇよっ!!新婚舐めんなぁぁぁ!!!」と叫びながら猛スピードで馬車を走らせるようになったし、たまに遭遇する魔獣に「強くてカッコいいトコロを見せて、騎士の女の子あの子に告白するんだぁぁぁっ!」と叫びながら斬りかかる警備兵。
他の奴らも例に漏れず、同じように奇行に走っていた。

しかも、エリュシオンとサーヤだけではなく、モジャとペチャパイも以前と違った空気を纏っていたから、ナニかあったに違いなく、それがさらに御者や警備兵達の奇行に拍車をかけた。
だからボクは、一番被害を被って可哀そうな馬車の馬達に、ミナトからもらった“超癒しの水”を夜中こっそり飲ませてあげることにした。
妖精の粉も使ってるから、毎朝ものすごく元気で体力も有り余ってる感じだったね☆

その甲斐あって予定をかなり前倒しできたらしく、当初5日の夕方に到着予定だった町に4日目の夜到着することができた。

人間の欲に対する行動って、時々精霊こっちがドン引きするくらいすごいなぁ☆



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※船上プールでの一件→『皆で楽しく船内プール2*』参照
 
 途中で分割できる場所がなくて長くなっちゃいました…|ω・`)
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