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13章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お米をGetするために~

いつも通りの平和な道中

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お城までの道中は、最初と最後の2日間は野営で、後は早朝に出発すれば夕方に次の町や村に到着するらしい。
野営は何度も経験してるので必需品も揃ってるし、足りないものはアレク兄様がすでに補充しているので問題はない。



それに・・・――――――



「あ!まま、ぱぱ、おかーりなの」
「くー、“おかーり”ちがうの。“おかえり”だよ」
「ふふっ、ただいま。レオン、サクラ」
「んまっ!まんま~!」
「サーヤ、リリアは腹が減ってるようだ。俺は先に飯の準備を始めるからまずは授乳してやれ」
「はーい」

こんな感じで、夜ご飯の時間になると新居に戻って皆とご飯を食べてるので、双子もリリアもさほど寂しがることはない。
まぁ、リリアは夜しか授乳できないから時々癇癪起こすみたいだけどね。

「サーヤ、今日の飯は何だ?」
「あ、ライムントさん。今夜はサバの味噌煮・・・じゃなくて、ゾーヤのマクレ煮です。ライムントさん、今日も炊いたご飯を“複製”してもらえますか?」
「うむ」

晩ご飯の時間になると、ライムントさんも家に戻ってくる。
第二王子の側には、ちゃんとした警備兵の方達や同行してる料理人さんもいるらしいけど、食事は共にしないようだ。

「お前は、第二王子ボンクラのそばにいなくても良いのか?一応側近なのであろう?」
「側近になった覚えはない。奴らが勝手にそう言っているだけだ。まぁ、我も面倒だから否定していないが」
「え?そうなんですか??」

なんと・・・今まで第二王子の側近だと思ってたけど、実はライムントさんって側近ではないらしい。
他に侍従の方を連れてないから、側近なのだとばかり思ってたのに・・・

まぁ、ライムントさんと一緒に行動する側近の方がいたとしたら、かなり大変だろうね。
・・・主に精神的に。

ライムントさんは、ただこの国でタモツさんとの思い出を大事に過ごしているだけで、それがこの家だったり、お城に今でも残っているタモツさんの部屋だったり、面影のある第二王子の側なのだとか。
それってちょっと寂しい生き方だなぁと思ってしまった。

「おいっ、まだ全員分は出来上がっていないのだ。勝手に食うな!」
「・・・我は早く食べたい」
「お前は“待て”もできない駄犬以下かっ」

なんだかんだ言いながら、面倒見の良いエルはライムントさんと打ち解けてきいるようで、今も仲睦まじく・・・―――――

「・・・貴様、それ以上食ったらただではおかないぞ」
「ふっ、我に挑むというのか?エルフ風情が・・・」

待って待って、前言撤回。
まだまだ打ち解けてなかった―――――――!!!

エプロンを付けたエルとライムントさんという見た目は緊張感のない二人が、台所でバチバチと本気の殺気をぶつけあっている。
このままじゃ、せっかく作った晩ご飯が台無しになっちゃうよ!!

「ちょっとエルっ、ライムントさん!こんなトコロで・・・」
「ぱぱー、くーね、おなかしゅいたの」
「ししょー、つまみぐいは、めっだよ!ルールいはんなの!」

あたしが止めるのと同時に、レオンとサクラがエルとライムントさんにそれぞれ話しかけた。
すると、二人はレオンとサクラの声に我に返り殺気を解いたのか、場の空気が元に戻った。

「む?ルール、いはん・・・?」
「“つまみ食い”をする者はそのおかず、もしくは飯自体抜きになるという我が家の決まりだ」
「なっ?!世の中にはそのような決まりがあるのか・・・??」
「世の中は知らぬが、少なくとも俺達の家には存在する。共に生活するのなら、お前も決まりを守れ。サクラ、もう少しで準備が終わるから、他の奴らを呼んできてくれるか?」
「あいなの!」
「共に生活する上で、そのような決まりがあり、我が子にも強いるとは・・・お前達は幼き子にも容赦ないのだな」
「え、普通でしょ?あたしが子供の頃もそうでしたよ??」
「普通・・・だと??!!」

実は我が家には、“つまみ食い禁止”というルールが定められている。
でもそれは、あたしが子供の頃にも母親から言われていたルールだし、黙っていると双子達はあたしが作ったモノを横からどんどん食べてしまう子達だったから、食べたらなくなっちゃうよという意味と、お手伝いしたらデザートをオマケしてあげた事から始まった。

今では、レオンもサクラもすっかりつまみ食いがなくなり、食事の際は自分からお手伝いをしてくれている。

リリアの授乳を終え、サクラが呼んできたセイルにリリアを預けダイニングに出来上がったご飯を並べていくと、ミナトちゃんやカイトくん、ベルナートさん達も何も言わずに食器を並べたり運んだりを手伝ってくれる。
あたし達の間では、ルール以外にもこういう役割分担のようなモノが自然とでき始めていた。

「ライたん、ご飯支度の邪魔はめっよ。一緒に暮らすなら、お手伝いしなきゃだめなの」
「??・・・お手伝い?ならば、我は何をするのだ?」
「ご飯を作ってるおねーさんやおにーさんに必要だと思った事を、空いてる人が自分で考えて行動するんだよ」
「自分で・・・?」
「そうだよ。その方が早く皆でご飯を食べられるからね!」

以前セイルから、ミナトちゃんとカイトくんが、カルステッドさんやアレク兄様達のような素晴らしい連係プレーがしたいのに・・・と悩んでいた話を聞いたことがある。
気持ちだけでも嬉しかったのに、特に双子が産まれた後、二人は”双子の見本になるから”と率先してお手伝いをしてくれるようになったのだ。

もちろん最初は何をして良いかわからず、あたしに”何をしたら良い?”と聞いてきたけど、今ではそこにベルナートさんも加わり、食事のお手伝いやリリアがぐずっているとソファのクッションを整えたりブランケットを用意したりと、言われなくてもこれからしようと思った事を先回りしてくれている。

身体的な成長もあるけど、天使達二人は本当に中身も少しずつ成長している。
もうこの天使達、最高に可愛い・・・というか、尊い存在ですっ!


そんなこんなで、あたし達は野営中と言いながらも晩ご飯だけは新居で家族や仲間と一緒に食べている。
朝と昼は次の目的地によって出発時間がまちまちなので、皆と合わせるのが難しいのだ。
というか、朝はあたしがまったく起きれない・・・ってか、動けない。
事情は・・・まぁ、察して下さい。


ちなみに皆と晩ご飯を食べてる間は、アレク兄様とリンダが野営のテントの前で見張りをしていて、「我が主は食事中です。用があるのなら後ほどまたお越しください」とアレク兄様が笑顔で門前払いし、もしアレク兄様でも対応できない場合は、伝達魔法で知らせが来てあたしとエルは転移魔法でテントに戻るという事になっている。

初日は第二王子が食事の時点でテントに引き籠るあたし達に文句を言ってきたけど、エルが「最愛の家族との時間は邪魔されたくないのでな」と宣言したことで誰も何も言わなくなった。


当初あたしは”エルは家族想いだなぁ”なんて普通に思ってたけど、後日ペチャさんに「毎日夕食の時間から朝まで夫婦時間を邪魔をするなだなんて、ふしだら・・・いえ、ホントに仲がよろしいんですのね」と多大な誤解をされてると知った時、恥ずかし過ぎて思わず叫んでしまったのは言うまでもない。
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