上 下
446 / 512
13章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お米をGetするために~

理想の家(+α)をGetだぜ!

しおりを挟む


あたしの作った味噌汁・・・もとい、豚汁を食したライムントさんは、箸を持って固まったまま無言で涙を流していた。

「え・・・あの、ライムントさん?」


返事がない、ただの屍のようだ・・・


・・・って、そうじゃない。
食事を終えたエルがリリアを預かってくれたので、ダイニングテーブルにつく前にライムントさんに近づき、目の前で手を振ったりしながら声をかけてみた。

「おーい、ライムントさ~ん。起きてますか?」
「!!」
「あ、やっと目が合った。どうしたんですか、ライムントさん。いきなり黙って・・・」

ようやくあたしと目が合ったライムントさんは、いきなりあたしの手をガシっと掴んでとんでもないことを言って来た。

「サーヤの・・・が、飲みたい」
「え?」
「サーヤのみそしるが、毎日飲みたい」
「・・・へ?!」
「なっ?!サーヤにプロポーズ・・・だと??!!アイツ何を考えて・・・」
「「ぷおぽーず?」」
「うみゅ?セイたん、“プロポーズ”ってなぁに?」
「プロポーズってのは結婚を申し込む事だよ☆ライムントって求婚するくらいサーヤの事好きだったの?」
「え?!サーヤっ、ライムントと結婚するの??もちろん俺の時みたいに断るよね??!!」
「え?ベルって、おねーさんに結婚申し込んで、しかも断られてたの?」
「あ・・・いや、その・・・」
「けっこん・・・ままと、ぱぱみたい?」
「ししょー、ぱぱ?」

ライムントさんのとんでも発言で、あれよあれよと皆も変な誤解や発言の繰り返しで、この場がとてもカオスな状態となってしまった。
ちなみにノルンさんと先代様は、微笑ましいものを見ているかのように静観を決め込んでいる。

「あぁぁぁぁっ!違うっ、違うから!!あたしの旦那様は後にも先にもエルただ一人です!!だからパパも一人!!ライムントさんも誤解を招くようなこと言わないで下さいっ!!」
「誤解・・・?我はお前のみそしるが毎日飲みたいだけだが?」
「だから、それが・・・」
「とりあえず落ち着け、サーヤ。元は俺が“プロポーズの言葉”と誤解したのが原因だ。ライムントはただお前の作るみそしるが気に入って、毎日でも飲みたいと言っただけで他意はない・・・はずだ」
「あ・・・なるほど」

エルの言葉であたしも落ち着き、それを見た周囲も少し冷静になった。
・・・ように見えた。

「じゃあ、ししょーは、ししょーのまま?」
「そうね。あなた達のパパはエリュシオン一人だけみたいよ」
「ライたん・・・まぎらわしいの。また“お仕置き”すゆ?」
「ミナト、顔がすごいことになってるよ☆ほらほら、レオンに見られちゃうよ♪」
「みゅ?ミーたん?」
「!!・・・ふふっ、何でもないのよ、レオたん☆」

向かい側に座っているミナトちゃんの顔が、一瞬般若に見えたなんてきっと気のせいだ。
絶対気のせいに決まってる・・・

「ベル、ままに“ぷおぽーず”、ちたの?」
「いや、えっと・・・」
「くー、ベルがぱぱなの、やぁ・・・」
「サクラ・・・」
「大丈夫だよ、サクラ。ベルナートは断られてるから、パパになる事はないよ」
「カイトっ、それはもう言わないで!・・・サクラ、おいで」
「うぅ・・・ベル、くーの、だもぉ・・・ッグズ」
「心配しなくても大丈夫だよ、サクラ。だから、泣かないで」
「ふふっ、サクラはホントにベルナートが大好きなんだね」

こっちはこっちで、半泣きのサクラがベルナートさんにぎゅうっと抱きついている。
あたしはエルが今にも攻撃しそうなのを必死に抑えながら、皆が忘れかけているライムントさんに声をかけた。

「ライムントさん、あたしの味噌汁・・・というか、豚汁は美味しかったって事で良いですよね?」
「・・・」

早々にこの場をどうにかしたくて結論を急いだのに、ライムントさんは座ったまま机に両肘を立てて寄りかかり、両手を口元に持ってくる・・・そう、あのゲ〇ドウのようなポーズを取ったまま無言の状態だ。
・・・このポーズもタモツさんに教わったんだろうか・・・

そして、しばらくしてから静かに語り始めた。
ゲン〇ウポーズのままで・・・

「あぁ・・・完全に我の負けだ・・・」
「・・・えっと、そもそも勝ち負けってあったんでしょうか?」
「ふっ、タモツの料理とは少々違うが、さすがは我が眷属。食材の使い方を心得ておる」
「いや、だから眷属になった記憶もこれからなるつもりもありませんって!」

相変わらずこちらの話を聞かないライムントさんは、その後も聞いてないのに、”タモツが作ったみそしるはこうだった”とか”こんな料理を作ってくれた”とか、タモツさんの話を得意気に且つ一方的に話し、あたしの反応には一切耳を傾けなる様子はない。
お願いだから会話をしてもらえませんかね?

ひとしきり話を得たライムントさんは、中二病的ポーズを取りながらビシッとキメ台詞のようにこう告げた。

「勝ったお前には、褒美としてこの家をくれてやる。喜べ、我の加護付きだ!」
「え?!この家、くれるんですか??嬉しいっ!!!・・・あ、でもお願いしたモノを魔法で“複製”してくれるなら加護はなくてもいいです」
「????!!!!」

ライムントさんの”家をくれる”という言葉が嬉しくて、エルに「やったぁ♪家貰えることになっちゃったね」と嬉しそう抱きついたら、額に手を当てたエルがため息をつきながらあたしの後ろを指さした。

振り向くと、後ろには小さくしゃがみ込んで地面に丸のようなモノをひたすら書いているライムントさんがいた。
・・・えっと、もしかしなくてもいじけてらっしゃる??

「あーあ、サーヤってば酷いなぁ☆せっかく加護をあげるって言うんだから、もらっておけばいいのに」
「え・・・でも、ライムントさんってかなりめんどくさ・・・」
「!!!・・・――――・・、―――・・・・」
「サーヤまま、ライたんが“自分はもうこの世にいなくてもいい存在なんだ、もう消えよう”って言ってゆ・・・」
「?!」

は?!さっきの言葉だけでなんでそんなことに??!!
精霊の王様なんだよね?メンタル弱すぎじゃないですか??

とりあえず、あたしが傷つけてしまったことに変わりはないので、励ましになりそうな言葉を思いつくまま言ってみた。

「わ、わぁ~い!ライムントさんの加護が貰えるなんて、すっごく嬉しい!嬉しすぎて、えっと・・・そうだ!毎日お味噌汁作れちゃうかもなぁ~、誰か食べてくれないかなぁ~(棒読み)」
「・・・いくらなんでもこれは棒読み過ぎではないか?」
「サーヤってば、元々貴族令嬢のはずなのに腹芸とか演技ってホントにできない子だよね☆」
「そこっ、うるさいよっ!!」
「サーヤまま、ライたんね、きっと便利だからいっぱい使ってあげてね♡」
「ミ、ミナトちゃん・・・」



こうしてあたしは、無事にこのフェイフォンの拠点となる理想的な家と便利な道具・・・違う違う、“複製”の魔法を使える頼りがいのある仲間を一緒にGetしたのでした。
・・・精霊王様の加護って、こんな風に増えていいものなの??
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

R18、アブナイ異世界ライフ

くるくる
恋愛
 気が付けば異世界。しかもそこはハードな18禁乙女ゲームソックリなのだ。獣人と魔人ばかりの異世界にハーフとして転生した主人公。覚悟を決め、ここで幸せになってやる!と意気込む。そんな彼女の異世界ライフ。  主人公ご都合主義。主人公は誰にでも優しいイイ子ちゃんではありません。前向きだが少々気が強く、ドライな所もある女です。  もう1つの作品にちょいと行き詰まり、気の向くまま書いているのでおかしな箇所があるかと思いますがご容赦ください。  ※複数プレイ、過激な性描写あり、注意されたし。

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる

一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。 そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。 ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

悪役令嬢なのに王子の慰み者になってしまい、断罪が行われません

青の雀
恋愛
公爵令嬢エリーゼは、王立学園の3年生、あるとき不注意からか階段から転落してしまい、前世やりこんでいた乙女ゲームの中に転生してしまったことに気づく でも、実際はヒロインから突き落とされてしまったのだ。その現場をたまたま見ていた婚約者の王子から溺愛されるようになり、ついにはカラダの関係にまで発展してしまう この乙女ゲームは、悪役令嬢はバッドエンドの道しかなく、最後は必ずギロチンで絶命するのだが、王子様の慰み者になってから、どんどんストーリーが変わっていくのは、いいことなはずなのに、エリーゼは、いつか処刑される運命だと諦めて……、その表情が王子の心を煽り、王子はますますエリーゼに執着して、溺愛していく そしてなぜかヒロインも姿を消していく ほとんどエッチシーンばかりになるかも?

【R18】悪役令嬢は元お兄様に溺愛され甘い檻に閉じこめられる

夕日(夕日凪)
恋愛
※連載中の『悪役令嬢は南国で自給自足したい』のお兄様IFルートになります。 侯爵令嬢ビアンカ・シュラットは五歳の春。前世の記憶を思い出し、自分がとある乙女ゲームの悪役令嬢である事に気付いた。思い出したのは自分にべた甘な兄のお膝の上。ビアンカは躊躇なく兄に助けを求めた。そして月日は経ち。乙女ゲームは始まらず、兄に押し倒されているわけですが。実の兄じゃない?なんですかそれ!聞いてない!そんな義兄からの溺愛ストーリーです。 ※このお話単体で読めるようになっています。 ※ひたすら溺愛、基本的には甘口な内容です。

処理中です...