上 下
438 / 512
13章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お米をGetするために~

波乱の料理教室

しおりを挟む


「「たのもー!」」
「ぁきゃっ、だぷー!」
「・・・今日はオレ様がパルミアの作り方を教わる日だよなぁ?お前んちのガキ共はいったい何と戦う気だ?」
「あはは・・・」
「もじゃ、かくごなの!」
「ボクが、せーばいするの!」
「はぁ?オレ様かよっ?!・・・おめぇは一度、子供の教育やり直した方が良いんじゃねぇか?」
「・・・うぅ、あたしが教えたんじゃないのに・・・」


今朝皆より少し遅めに起きると、スイートルームの応接間にはレオンやサクラとミナトちゃん達がすでに勢揃いしていて、レオンやサクラが意気揚々とあたしにこう言ってきた。

『まま、わるいやつは、くーがぷっちんすゆの!』
『ボクとくーで、ままを、まもるの!!』

皆がナニを教えたのか容易に想像できるけど、どうしてお城でもないこの場所ですでにやる気・・・いや、殺る気満々なんだろう?

『レオン、サクラ、今日は危険がいっぱいのお城じゃなくて、モジャさんに料理を教えに・・・』
『『モジャ!ままのてきなの?!』』
『いや、敵じゃな・・・』
『まま、くーたちも、いくの!』
『ままを、まもゆの!』
『・・・』
『ごめんね☆昨日サーヤにあげたアイテムの話をしてあげたら、二人とも殺る気になっちゃった♪』


―――――・・・とまぁ、こんな感じで双子なりにあたしを守ろうとしてくれてるらしい。
何から守るのかまでは理解してないみたいだけどね。

「レオン、サクラ。こいつは敵ではない。今日の昼飯を作ってくれる奴だ」
「「おひる、ごはん?」」
「あぁ。俺とサーヤが教えるのだ。お前達も手伝うか?」
「「あぃっ!てつだうの!!」」
「よし、良い子だ。褒美にこのクッキーをやろう」
「「わぁい♪ぱぱ、だいしゅきー♡」」

エルが、臨戦態勢だった双子を見事な手腕でお手伝いモードへと切り替えさせる。
良かった、これで一安心だね。

「子供のしつけには餌付けが有効ですのね。勉強になりましたわ」
「・・・絶対ぇ違うと思うぞ、ペチアリア。こいつらを参考にしようとするな。おいおめぇら、手伝う気があるならさっさと手を洗ってきやがれ!広いからって迷子になるんじゃねぇぞ!!」

本気で感心している婚約者、ペチャさんに冷静にツッコみつつ、的確な指示を出すモジャさん。
確かにエルのやり方は、子供というよりはペットの躾に近いものがあるかもしれない。

本当はモジャさんの自宅にお邪魔する予定だったけど、宿の部屋から階下に降りるとフロントに領主の館から使者の方が来ていて、「本日は当家の厨房にお越しくださいませ」とお迎えの馬車に乗るよう促された。
立派な馬車の登場に、テンション爆上がりな双子達やリリアが目をキラキラさせていたので、連れて来ざるを得なかったのだ。

ミナトちゃん達は「来たるべき日に備えて、準備する物があるの」と言ってついてこなかった。
・・・“来たるべき日”については、聞きたいような聞きたくないような・・・とりあえずあたしは“今は聞かない”という選択肢を取ることにした。


パルミア作りに入る前に、エルがモジャさん達にリーズのみの炊き方や、パルミアを作る際の炊き時間について説明する。
昨日あたしが教えたことだけど、第二王子がいないこの場でも念のため“エルから教えた”という形をとるようだ。

一通り説明した後、モジャさんは自分なりに仕込んできた食材や、あらかじめ考えて計量していた調味料を出して「今日は別の味付けも試してぇ」と言ってきた。
やっぱりこの人は、リーズに対しても料理に対しても真剣で、とても向上心があり好感が持てる人だ。

「おめぇらにはとっておきの仕事をやる。いいか?この調味料を順番に混ぜていくんだ。これはパルミアの味を左右する大事なソースで、うまいかどうかはお前達の手にかかってる。できるか?」
「くーたち、だいじなの?」
「ボクたちが、おいちくすゆの?」
「あぁ!お前達の手で、美味いパルミアを食べさせてくれ」
「「・・・っ、あいなの!!」

用意されたものを混ぜるという簡単な作業を、上手に子供達を鼓舞しつつお手伝いさせるなんて・・・
モジャさん、子供の扱いがとてもうまい。これは良いパパになるね。

「ふふっ♪」
「何をにやけてますの?気持ち悪い。こちらもさっさと作業を始めるわよ」
「酷いなぁ・・・モジャさんは良いパパになるねって思っただけなのに」
「なっ!!」
「ふふっ、、きっとモジャさんなら、子沢山で賑やかな楽しい家庭になるんでしょうね☆ペチャさん、頑張ってください♪」
「おっ、大きなお世話ですわよ!!」

顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうに作業を進めるペチャさん。
ちらちらと、自分の作業をしながら双子に指示してるモジャさんを横目で見てる姿は、遠くない未来を想像してるに違いない。

「サーヤ。次の子を望むなら、お前の身体の周期上5日後辺りが適しているがどうする?」
「だぁぁぁぁぁっ、お願いだからエルはいい加減TPOをわきまえてぇぇぇ!!!!」
「む?てぃー、ぴーおーとはなんだ??」
「ふふっ☆リリア、遠くない未来にキミに弟か妹ができるかもしれないね♪」
「あぷ?」


こんな感じで、ペチャさんの家の厨房では皆で仲良く(?)賑やかにパルミア作りをしていたら、予想外・・・というか、よく考えるといてもおかしくない人達が厨房へとやって来た。

「何やらうまそうな匂いがすると思って来てみれば・・・お前らだったのか」
「この匂い・・・我の中に封印されし邪龍が目を覚ます日も近いやもしれぬ・・・」
「ライは空腹で匂いに釣られただけだろうが・・・」
「あ、へんなむしー」
「へんじんもいるのー」
「お前達っ!もうその呼び方直す気ないな?!」

厨房の入り口には、第二王子とライムントさんがいた。
この国の王族と側近なんだから、この村一番の宿で過ごすか一番偉い人の家にいるのは、当然といえば当然かもしれない。

「・・・うるさい奴らが来たな」
「え~、あんなの別にいてもいなくても関係なくない?」
「~~~~~っ、くそっ!オレはこの国の王族だぞ?揃いも揃ってなんでこんな・・・」
「案ずるな、カケル。お前は所詮その程度の人間なのだ。仕方あるまい」
「ライっ、てめぇフォローするようにトドメ刺してんじゃねぇよ!!バカ野郎っ!!!」

あまりのぞんざいな扱いに、第二王子は口調が乱れている。
きっとコレが素なんだろうね。

「えっと・・・殿下?」
「申し訳、ございません・・・こ、この者達には私達から・・・」
「あ・・・こほん。いや、構わぬ。こちらこそ取り乱して悪かったな・・・ここで見たことは他言無用だ」
「「かしこまりました」」

さりげなく、でもしっかりと口止めしている第二王子。
気を取り直して料理しているところを大人しく見学することにしたようだ。

「ところでサーヤ。今は何をしている?」
「えっと・・・パルミアに使うお肉を焼いてます」
「肉は具材と一緒に煮込むものかと思っていたが、そうではないのか?」
「お肉は焼き目がつくまで焼いた方が、味がしみ込んで美味しいんですよ」
「ほぅ・・・まるで作り慣れているかのような言い方だな」
「!!!」

待って待って。これってさりげなく誘導尋問されてる?!
いや、これくらいは料理をする上で常識だと思うから、まだセーフかな??

心なしかジリジリとにじり寄ってくる第二王子に逃げ腰になっていたら、ヒュンッという音と共に何かが飛んできて、ライムントさんがとっさにバリアを張って第二王子を庇う。

「・・・どういうつもりだ?小童ども」

ライムントさんがそう言いながら、レオンとサクラを睨みつけている。
え?今のってレオンとサクラがやったことなの??

「ままからはなれろ、“おーぞく”」
「“おーぞく”、ままのてきなの」
「は?!王族が敵?・・・どういうことだ??」

レオンとサクラは、あたしでもわかるくらいに殺気を放ち第二王子を睨みつけ、すでに臨戦態勢の状態だ。

「ふふっ☆レオンとサクラってば、ホント飲み込み速いよね♪」
「え?セイル、それってどーゆーこと??」
「・・・おおかた、双子達に“王族は敵だ”とでも教えたんだろう。あながち間違っていないが、今こちらから仕掛けるのは少々まずいな」
「へ?!」

セイルってば何てこと教えてるの??
ってか、エルも“今は”って、今じゃなくてもそんな教えは良くないに決まってるじゃないかっ!!

「・・・おめぇの家の教育方針はホントにどうなってんだよ」
「もうどこからどうツッコんで良いかわかりませんわ・・・」
「・・・」


そんなのあたしが聞きたいよっ!!!

さっきまでは平和な楽しい料理教室のようだったのに・・・あたしはやるせない気持ちを抱えながらも、この騒動を沈めるのに全力を尽くすことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

R18、アブナイ異世界ライフ

くるくる
恋愛
 気が付けば異世界。しかもそこはハードな18禁乙女ゲームソックリなのだ。獣人と魔人ばかりの異世界にハーフとして転生した主人公。覚悟を決め、ここで幸せになってやる!と意気込む。そんな彼女の異世界ライフ。  主人公ご都合主義。主人公は誰にでも優しいイイ子ちゃんではありません。前向きだが少々気が強く、ドライな所もある女です。  もう1つの作品にちょいと行き詰まり、気の向くまま書いているのでおかしな箇所があるかと思いますがご容赦ください。  ※複数プレイ、過激な性描写あり、注意されたし。

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる

一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。 そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。 ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

悪役令嬢なのに王子の慰み者になってしまい、断罪が行われません

青の雀
恋愛
公爵令嬢エリーゼは、王立学園の3年生、あるとき不注意からか階段から転落してしまい、前世やりこんでいた乙女ゲームの中に転生してしまったことに気づく でも、実際はヒロインから突き落とされてしまったのだ。その現場をたまたま見ていた婚約者の王子から溺愛されるようになり、ついにはカラダの関係にまで発展してしまう この乙女ゲームは、悪役令嬢はバッドエンドの道しかなく、最後は必ずギロチンで絶命するのだが、王子様の慰み者になってから、どんどんストーリーが変わっていくのは、いいことなはずなのに、エリーゼは、いつか処刑される運命だと諦めて……、その表情が王子の心を煽り、王子はますますエリーゼに執着して、溺愛していく そしてなぜかヒロインも姿を消していく ほとんどエッチシーンばかりになるかも?

【R18】悪役令嬢は元お兄様に溺愛され甘い檻に閉じこめられる

夕日(夕日凪)
恋愛
※連載中の『悪役令嬢は南国で自給自足したい』のお兄様IFルートになります。 侯爵令嬢ビアンカ・シュラットは五歳の春。前世の記憶を思い出し、自分がとある乙女ゲームの悪役令嬢である事に気付いた。思い出したのは自分にべた甘な兄のお膝の上。ビアンカは躊躇なく兄に助けを求めた。そして月日は経ち。乙女ゲームは始まらず、兄に押し倒されているわけですが。実の兄じゃない?なんですかそれ!聞いてない!そんな義兄からの溺愛ストーリーです。 ※このお話単体で読めるようになっています。 ※ひたすら溺愛、基本的には甘口な内容です。

処理中です...