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12章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お米の国へ出発編~
第二王子もある意味被害者・・・?
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◇
「どういうことだ?オレは王族だぞ!王族であるオレに平民と同じ部屋で過ごせと言うのか??!!」
どこかで聞き覚えのある、そしてできれば聞きたくなかった声が少し離れた場所から聞こえてきた時、思わずあたしとエルは顔を見合わせて苦笑いしてしまった。
問題の人物は、どうやら船長さんと揉めているらしい。
「申し訳ございません・・・あいにく1室しかないスイートルームは別の方がご予約されておりまして・・・」
「なんだと?!そいつらが王族であるオレよりも偉いと言うのか?!だったらそいつらを連れて来い!直接話してやる!!」
「いえ、大変恐縮ながらそのようなことはできません・・・如何なることがあろうとも、別のお客様の情報をお伝えしてはならないという我が国の法が・・・――――」
「うるさいうるさいっ!!法がなんだ??!!オレはこれから向かうフェイフォンの第二王子だぞ!!」
この船はガルドニアの船であって、フェイフォンの船じゃないのに“王族だから”ってのはあまりにも横暴過ぎる。船長さんは何も悪くないのに、クレームを言ってくる王族の相手を直接しなきゃいけないなんて、見てるだけで可哀そうだ。
「エル・・・」
「はぁ・・・まったく、やはり面倒ごとが寄って来おったか。仕方がない・・・」
エルはため息をつきながら、船長と第二王子のいる方へと向かっていった。
頼もしい旦那様ってちょっときゅんとしたのに、その一言で台無しだよ!!
まったく・・・あたしは面倒な人を引き寄せてるつもりは一切ないのに・・・
あれ?なんでノルンさんも“ほらね”って顔してたり、先代様については「ほうほう、これが噂に聞くサーヤが引き寄せる面倒ごとか」とか言って感心しちゃってるわけ??噂って何ですか???
しかも、カルステッドさん達やアレク兄様達も、気を利かせたのか巻き込まれるのを避けたのか、レオンやサクラ、ミナトちゃん達を連れてあたし達の荷物と共に先に部屋へと向かったらしく、すでにこの場にいなかった。
ここにあたしの味方はいないの??!!
「サーヤ、イヤな予感がするから絶対に一人で行動しないでね☆」
なんかトドメを刺された??!!
セイルの“イヤな予感”ってめっちゃ当たるのにっ!!!
フェイフォンまでの5日間という船旅は、船に乗ったと同時に面倒ごとが始まるという、とてもイヤな始まり方をしたのでした。
◇
エルが第二王子を完膚なきまでに言い負かせた後、涙ぐんだ船長さんからものすごく感謝された。
『国のトップの候補ともあろう奴が、国の法よりも自分の地位を優先させようとするとは・・・国の未来も危ういだろうな』というエルの言葉にぐうの音も出なかった第二王子に、次回以降でスイートルームが空いている便を予約するか、この便が良いのなら別の部屋で我慢するかを選ばせたらしい。
第二王子は渋々後者を選んだみたいだけど、どうせなら別の便にしてくれたら良かったのにね。
「あら、サーヤ達ライムントに会ったの?」
「はい。さっき船長さんと揉めていた方の従者みたいなので。えっと、なんていうか・・・とても個性的な方ですね」
「ふふっ、言葉を選ぶ必要なんてないわ。彼は、“ちゅうにびょう”という病気らしいから」
「やっぱりそうなんですか?!ってか、この世界に中二病って存在したんですか??」
「私も過去にライムントから聞いただけだからよくわからないけれど、“落ち人”に加護を与えていた時にいろいろ教わったみたいよ。とても変わった方だったようね」
ちょっと!過去この世界に来た落ち人さんっ!!
精霊の王様に中二病教えてるんですかっ!!!
精霊の王様なだけあってとても美形だから、無駄に決まってて残念さが半端ないんですけどっ!!!
これ以上、第二王子と関わり合いになりませんように・・・そう思っていたあたしの願いは、残念だが届くことはなかった。
「おい、お前・・・!!」
「ねぇ、まま。あのおじちゃ、なぁに?」
「お、おじちゃ?!オレはっ・・・」
「レオン。その人は、さっき教えた“変な虫”と“変人”の“変な虫”の方だよ☆」
「あ、ままによってきた、むしだ!へんなむし!!」
「へんなむし、へんじん、いっしょいないの?」
「おいこら精霊っ!ガキに何てこと場を教えてるのだ!!・・・ってか、お前この前の赤子以外にも子供がいたのか?!」
セイルが、いつの間にかレオンとサクラに第二王子と雷の精霊王様の事を教えてたけど、その内容があまりにも雑で酷い。でも、レオンやサクラに“変な虫”呼ばわりされてるのが面白くて思わず吹き出してしまった。
「ほらほら、レオンもサクラも。この人一応王子様なんだから”変な虫”とか言ったら虫さんも可哀そうだよ」
「「あ・・・むしさん、ごめちゃい」」
「お前フォローどころか、ガキ共よりも酷い事言ってるからな?!いい加減気付け!!!」
すみません、わざとです。ささやかな仕返しです。
「ここは様々な客が利用する食堂でございます。例え王族といえど、これ以上我が主を始め、ご家族や仲間に無礼を働くつもりでしたら、我々もフェイフォンに入ってから正式に国に抗議をさせていただきますが?」
「私達は、きちんとした手続きでフェイフォンへの旅行を楽しむ一般客です。国を統治される一族の方が、国や正式な使いを挟まず直接国民・・・しかも他国の民に干渉するなど、本来あってはならないことですからね」
「そもそも、貴方様は従者がお一人いらっしゃるはずですよね?その方はいかがされたのでしょう?」
「うぐっ、そ、それは・・・」
カルステッドさんとアレク兄様が、盾になり第二王子に正論を伝えてくれる。
二人とも貴族でちゃんと礼節を理解してるから、ものすごく説得力があるよね。
そもそも、なんでこの第二王子は従者を一人(しかもよくはぐれる雷の精霊王様)だけでハーフェンにいて、今もこの船に乗ってるんだろう?
「あいつは、今はまだ、棺桶の中に・・・」
「「は?棺桶の中??!!」」
第二王子の予想外の回答に、カルステッドさんもアレク兄様が同時に同じ驚き方をしてしまう。
もちろんあたしやエルも声にこそ出していないが同じ反応だ。
え・・・雷の精霊王様ってホントに何なの??
「どういうことだ?オレは王族だぞ!王族であるオレに平民と同じ部屋で過ごせと言うのか??!!」
どこかで聞き覚えのある、そしてできれば聞きたくなかった声が少し離れた場所から聞こえてきた時、思わずあたしとエルは顔を見合わせて苦笑いしてしまった。
問題の人物は、どうやら船長さんと揉めているらしい。
「申し訳ございません・・・あいにく1室しかないスイートルームは別の方がご予約されておりまして・・・」
「なんだと?!そいつらが王族であるオレよりも偉いと言うのか?!だったらそいつらを連れて来い!直接話してやる!!」
「いえ、大変恐縮ながらそのようなことはできません・・・如何なることがあろうとも、別のお客様の情報をお伝えしてはならないという我が国の法が・・・――――」
「うるさいうるさいっ!!法がなんだ??!!オレはこれから向かうフェイフォンの第二王子だぞ!!」
この船はガルドニアの船であって、フェイフォンの船じゃないのに“王族だから”ってのはあまりにも横暴過ぎる。船長さんは何も悪くないのに、クレームを言ってくる王族の相手を直接しなきゃいけないなんて、見てるだけで可哀そうだ。
「エル・・・」
「はぁ・・・まったく、やはり面倒ごとが寄って来おったか。仕方がない・・・」
エルはため息をつきながら、船長と第二王子のいる方へと向かっていった。
頼もしい旦那様ってちょっときゅんとしたのに、その一言で台無しだよ!!
まったく・・・あたしは面倒な人を引き寄せてるつもりは一切ないのに・・・
あれ?なんでノルンさんも“ほらね”って顔してたり、先代様については「ほうほう、これが噂に聞くサーヤが引き寄せる面倒ごとか」とか言って感心しちゃってるわけ??噂って何ですか???
しかも、カルステッドさん達やアレク兄様達も、気を利かせたのか巻き込まれるのを避けたのか、レオンやサクラ、ミナトちゃん達を連れてあたし達の荷物と共に先に部屋へと向かったらしく、すでにこの場にいなかった。
ここにあたしの味方はいないの??!!
「サーヤ、イヤな予感がするから絶対に一人で行動しないでね☆」
なんかトドメを刺された??!!
セイルの“イヤな予感”ってめっちゃ当たるのにっ!!!
フェイフォンまでの5日間という船旅は、船に乗ったと同時に面倒ごとが始まるという、とてもイヤな始まり方をしたのでした。
◇
エルが第二王子を完膚なきまでに言い負かせた後、涙ぐんだ船長さんからものすごく感謝された。
『国のトップの候補ともあろう奴が、国の法よりも自分の地位を優先させようとするとは・・・国の未来も危ういだろうな』というエルの言葉にぐうの音も出なかった第二王子に、次回以降でスイートルームが空いている便を予約するか、この便が良いのなら別の部屋で我慢するかを選ばせたらしい。
第二王子は渋々後者を選んだみたいだけど、どうせなら別の便にしてくれたら良かったのにね。
「あら、サーヤ達ライムントに会ったの?」
「はい。さっき船長さんと揉めていた方の従者みたいなので。えっと、なんていうか・・・とても個性的な方ですね」
「ふふっ、言葉を選ぶ必要なんてないわ。彼は、“ちゅうにびょう”という病気らしいから」
「やっぱりそうなんですか?!ってか、この世界に中二病って存在したんですか??」
「私も過去にライムントから聞いただけだからよくわからないけれど、“落ち人”に加護を与えていた時にいろいろ教わったみたいよ。とても変わった方だったようね」
ちょっと!過去この世界に来た落ち人さんっ!!
精霊の王様に中二病教えてるんですかっ!!!
精霊の王様なだけあってとても美形だから、無駄に決まってて残念さが半端ないんですけどっ!!!
これ以上、第二王子と関わり合いになりませんように・・・そう思っていたあたしの願いは、残念だが届くことはなかった。
「おい、お前・・・!!」
「ねぇ、まま。あのおじちゃ、なぁに?」
「お、おじちゃ?!オレはっ・・・」
「レオン。その人は、さっき教えた“変な虫”と“変人”の“変な虫”の方だよ☆」
「あ、ままによってきた、むしだ!へんなむし!!」
「へんなむし、へんじん、いっしょいないの?」
「おいこら精霊っ!ガキに何てこと場を教えてるのだ!!・・・ってか、お前この前の赤子以外にも子供がいたのか?!」
セイルが、いつの間にかレオンとサクラに第二王子と雷の精霊王様の事を教えてたけど、その内容があまりにも雑で酷い。でも、レオンやサクラに“変な虫”呼ばわりされてるのが面白くて思わず吹き出してしまった。
「ほらほら、レオンもサクラも。この人一応王子様なんだから”変な虫”とか言ったら虫さんも可哀そうだよ」
「「あ・・・むしさん、ごめちゃい」」
「お前フォローどころか、ガキ共よりも酷い事言ってるからな?!いい加減気付け!!!」
すみません、わざとです。ささやかな仕返しです。
「ここは様々な客が利用する食堂でございます。例え王族といえど、これ以上我が主を始め、ご家族や仲間に無礼を働くつもりでしたら、我々もフェイフォンに入ってから正式に国に抗議をさせていただきますが?」
「私達は、きちんとした手続きでフェイフォンへの旅行を楽しむ一般客です。国を統治される一族の方が、国や正式な使いを挟まず直接国民・・・しかも他国の民に干渉するなど、本来あってはならないことですからね」
「そもそも、貴方様は従者がお一人いらっしゃるはずですよね?その方はいかがされたのでしょう?」
「うぐっ、そ、それは・・・」
カルステッドさんとアレク兄様が、盾になり第二王子に正論を伝えてくれる。
二人とも貴族でちゃんと礼節を理解してるから、ものすごく説得力があるよね。
そもそも、なんでこの第二王子は従者を一人(しかもよくはぐれる雷の精霊王様)だけでハーフェンにいて、今もこの船に乗ってるんだろう?
「あいつは、今はまだ、棺桶の中に・・・」
「「は?棺桶の中??!!」」
第二王子の予想外の回答に、カルステッドさんもアレク兄様が同時に同じ驚き方をしてしまう。
もちろんあたしやエルも声にこそ出していないが同じ反応だ。
え・・・雷の精霊王様ってホントに何なの??
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