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12章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お米の国へ出発編~

ノルンさん、救出作戦

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翌日、レオンやサクラと買い物の約束をしたはずのノルンさんは、朝食を終えてそろそろ出かけようかという時間帯になっても連絡がつかず、宿にも現れなかった。

昨日のノルンさんの表情が頭から離れず、先代様も顔を出していないことから、間違いなく二人の間で何かあったんじゃないかと思うけど、嫌な予感がするというかなんというか・・・

とりあえず、レオンやサクラとの買い物はミナトちゃんやカイトくん、ベルナートさんが行ってくれる事になり、一応アレク兄様も保護者として同行して行った。
レオンやサクラはもちろん、ミナトちゃんやカイトくんも少年少女で、ベルナートさんはぱっと見大人だけど実質子供と同じようにはしゃぐだろうから、アレク兄様一人で大丈夫なのかちょっとだけ心配である。


「・・・―――――ヤ、サ―ヤ、聞こえてますの?」
「へぁ?!あ、ごめんなさい、クラリスさん。聞いてなかったです・・・」
「もうっ、まだ準備が終わってませんの?いい加減エリュシオン様が待ちくたびれてますわよ??久しぶりに二人きりでお出かけなのでしょう?早く準備をして楽しんでいらっしゃいな」
「クラリスさん・・・」

昨日、エルとアレク兄様は風邪っぽいリリアの診察をするためにティリアさんを呼びに行ったんだけど、毎回すぐに呼びに行けるかわからないから、何かあってもすぐ対処できるようティリアさんだけじゃなくクラリスさんやレミリオくん、シャルロットちゃんも一緒に来るようエルが提案し、子守や看護要員として旅行に同行することになった。

現在ティリアさんは寝室でリリアの看病をしており、もう一つの寝室でクラリスさんがベビーベッドで眠るレミリオくんやシャルロットちゃんの子守をしながら、あたしが出かける準備をしている状態だ。
ティリアさんとクラリスさんがお留守番してくれることになったので、あたしとエルは久しぶりに二人で旅先デートをしようという事になったのだ。
だけど、あたしはノルンさんの事が気になってしまい、まだ着替え終えていなかった。


(ガチャ)


「サーヤ、準備はまだか・・・って、まだ着替えていないのか?
 服はどうせ後で脱がせるから何でも・・・――――――――」
「だぁぁぁぁぁぁっ!せっかく久々のデートなのに、台無しにするような事言わないでよっ、ばかぁぁぁぁっ!!!!」
「・・・まったく、この2人は相変わらずですのね」


エルは家でも旅行先でも、昔と相変わらずTPOってモノを理解してくれない。
どうして仲間がこんなに増えたのに誰も教えてくれないの?そして、周囲はどうしてそれを普通に受け入れちゃってるの??!!

お出かけだっていうのにどうせ脱がせるって・・・果たしてお出かけの意味はあるんだろうか?





「・・・えっと、エル。一応聞くけどここって・・・」
「茶屋だ」
「デスヨネー」

とりあえず出かける準備を終えて二人で手を繋いで宿屋を出発すると、エルは無言であたしの手を引いて歩き始めた。
あたしも周囲のお店をなんとなく見てたけど買い物をする気持ちになれなかったから、とりあえず手を引かれるままついて行った。
そして、気が付けば宿とはちょっと違った天蓋付きのベッドがある部屋にいたというわけだ。

「あのね、エル。あたし・・・んんっ」

言葉を紡ぐことなくすぐそばの壁際に追い詰められ、上から覆いかぶさるようにエルがあたしにキスをする。
確かに旅行中にデートできたら良いなと思ってたし、今日だって久しぶりに二人でお出かけしてるけど、今はノルンさんが心配でそういう気分じゃないのに・・・

「ん、ハァッ、エル・・・ぁふ、んぅっ」

くちゅくちゅと舌で口内を弄ばれ、背中や太ももを優しく撫でる指に身体が熱くなる。
悲しいことに、あたしの身体はすっかりエルに触れられるだけでこの後の行為を待ち望むようなえっちな身体になってしまい、だんだん目の前のエルの事しか見えなくなってきてしまう。

「・・・ん、エル・・・」
「ん・・・一度頭は空っぽになったようだな」
「ふぇ?」

エルは意味不明な事を言ってからあたしを抱き上げ、あたしを抱えたままソファへと座る。
それと同時に、この部屋に転移魔法でマデリーヌさんとセイルがやって来た。

(シュンッ)

「はぁい♡サーヤちゃん♡♡」
「へぇ、茶屋って初めて来たけど、宿の部屋とあまり変わらないんだね☆あ、でもなんか面白そうなモノ売ってる♪」
「え・・・マデリーヌさんと、セイル??」
「ノルンの事は、お前だけじゃなく他の奴らも心配しているという事だ。一人で解決できない事に悩むなど意味ないだろうが」
「エル・・・」

そうだ。あたし一人で悩んで気にしてたって、解決できる問題じゃなかった。
ホントにエルは、あたしの事を一番理解してくれる頼れる旦那様だな・・・

「まったく、せっかく双子が帰って来て楽しい旅行が始まると思ったらまた面倒ごとを・・・俺達の邪魔をする奴は誰であろうと許さぬ」

違ったっ!単に楽しい旅行を邪魔するなって怒ってるだけだった!!
もうもうっ、あたしの感動を返せぇぇぇ!!!!

「ふふっ、エリュシオンってばホントに素直じゃないよね☆“俺達”の中にはノルンも入ってるんでしょ?」
「え?」
「うふふ♡そうじゃなかったら、先代様が旅行についてくるって言った辺りから私に「先代様の居場所を探っておけ」だなんて言わないわよねん?」
「えぇぇ??!!」

嘘・・・エルってば、最初から先代様とノルンさんのこと懸念して・・・?

「・・・先代様のノルンへの執着は、俺と少し似ているところがあったからな・・・」
「え?そうなの??」
「あ!なるほど、サーヤが他の男を見ないようにって常に自分のそばに置こうとしてるトコとか?」
「あらん♡それよりも、身体にイヤという程エリュシオンを刻み付けてるコトじゃないのん?エリュシオンってば意外と独占欲が強いしそれに・・・――――――」
「お前らっ!!俺の事はどうでも良いだろうがっ、今はノルンの心配をしろ!!」

えっと・・・怒ってるけど否定しないって事は、周りから見るとエルのあたしに対する執着ってそんなにすごいんだ・・・。それに対して嬉しいって感じるあたしはちょっとおかしいのかな?

「・・・マデリーヌ、先代様の居場所はわかったのか?」
「ふふっ、場所はノルンから聞いておいたから大丈夫よん♡早速今から乗り込むのかしらん?」
「あ、ちょっと待って。一応ベルナートに念話で伝えておくよ☆」

相変わらず言ってることがとんでもなかったり緊張感がなかったりするけど、こういう時の連携は本当に素晴らしくて頼りになるなぁ。

・・・待っててね、ノルンさん。すぐに助けに行くからね!


ノルンさん救出に気合を入れてたら、念話でベルナートさんに伝言をしているセイルが少し慌て始めた。
一体どうしたんだろう?

「え?ちょっ、ベルっ・・・」
「・・・セイル、ベルナートさん達に何かあったの?」
「う~ん・・・よくわかんないんだけど「ミナト、ぷっちんはダメだって!」みたいなこと叫んでたから、間違いなく変なことに巻き込まれてるっぽいんだよね・・・」
「えぇぇぇぇ?!」

待って待って!ぷっちんって、ミナトちゃん達にいったい何があったの??!!

「気になるから、ボクちょっと行ってくるね☆」
「う、うん・・・皆のこと、よろしくね。セイル」
「うん☆サーヤ達はノルンのことよろしく♪助けが欲しいときは念話で教えてね☆」
「ん、ありがと」

ミナトちゃん達に何が起こったのかもすごく気になるけど、セイルがいれば大丈夫だろう・・・たぶん。


「じゃあ私達も、先代様の居場所へ行くわよん♡」


こうして若干の不安を抱えつつも、あたし達はマデリーヌさん先導で、ノルンさんがいるであろう先代様の居場所へと転移魔法で移動したのだった。
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