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12章 初めての家族旅行兼新婚旅行 ~お米の国へ出発編~

旅行はすでに始まっている

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「レオン、サクラ、ぎゅ~~~~~~~~~~~っ」
「「きゃぁ~~~~~~~~っ♪」」

翌朝、目が覚めてから寝室を出ると、応接用のソファにちょこんっと座っているレオンとサクラを発見し、思わず飛びついてしまった。
昨夜はすでに眠ってたし、そういう空気じゃなかったから抱きしめられなかったのだ。

「レオン、サクラ、お帰りなさい。心配したんだからねっ!!」
「・・・っ、まま、ごめ、ちゃ、・・・おそと、こわ、かったのぉ・・・」
「・・・ック、ごめなしゃ・・・も、かってに、おそといかない・・・」

やっぱり初めて見た外の世界は、二人にとって良い思い出はなさそうだ。
だけど、このまま外の世界を嫌いになって欲しくないから、エルが提案してくれた事を二人に早速話す事にした。

「そうだね。初めて見た外の世界は知らないことだらけで大変だったし、怖いこともあったよね?」
「「(コクリ)」」
「でもね、外の世界は怖いだけじゃないの。だから、このまま皆で旅行しようと思います!」
「「りょこー?」」
「そう!初めての家族旅行でもあり、あたしとエルの新婚旅行も兼ねてね☆パパやママ、レオンとサクラとリリア、そしてカルステッドさん達やミナトちゃん達皆と一緒に美味しいモノをたくさん食べたり、知らない町や村に行ってその場所にしかないモノを楽しむの!皆が一緒だったら怖いことなんてないし、きっと楽しいと思うんだ♪」
「みんなで、おでかけなの・・・?」
「うわぁ、たのしそうなのっ!」
「あぅー、だぁー」
「リリアも楽しみみたいだぞ」
「「あ!パパ、リリたんっ!!」」

すっかり元気になったレオンとサクラは、数日ぶりにリリアやエルにも会えてさらに元気になったみたい。
そして、「きょうは、ボクたちがやるの!」と言って、リリアの世話を買って出てくれる二人の姿に、あたしは朝から泣きそうになった。

「うぅ・・・良かっ、良かったよぅ」
「サーヤまま、子供はこうして成長してゆくのよ」
「・・・ミナトが年上なのは理解しているが、いつ見ても見慣れない構図だな」
「うん☆普通は逆だからね♪」
「うぅ、なんか俺まで感動して泣けてきた・・・」
「ベル、僕のハンカチ貸してあげるね」

エルにセイルまで・・・そこっ、うるさいよ!!
ってか、ベルナートさんまで何で泣いてるの?!

確かに見た目は天使のような美少女が、母のようにあたしの背中をぽんぽんしながら慰めている図は、確かに違和感ありまくりかもしれないけどさ!
でも実際年上であるミナトちゃんは、ちゃんと人生の先輩としての一面を持ってるんだからね!


そんなやり取りと準備を終えてから、カルステッドさん達が待つ朝食が用意されたレストランへと皆で向かう。
あたし達家族とミナトちゃん、カイトくん、セイルにベルナートさんもいるから、朝から結構な人数だ。

「うわぁ・・・なんか朝からすごい豪勢なご飯だね」
「あぁ。本来の朝食メニューではないのだが・・・」
「昨日、この町の領主と話をしたら、滞在している間いろいろ便宜をはかってくれる事になってね。朝食も少し豪勢にしてくれたらしいよ」

苦笑いのカルステッドさんと、とてもにこやかな笑みを浮かべるアレク兄様。
リンダやアルマさんは相変わらず食べ物に目がなく、無言でひたすらもぐもぐと食べている。

「今回の最終目的は、フェイフォンに行ってリーズを買い、売買契約も交わす。そして、ついでに良い家が見つかれば買う事だ。期間は特に決めてないから急ぐ必要はないぞ」
「「はい」」
「「(もぐもぐ、コクリ)」」

いや、確かにお米・・・もといリーズが目的なんだけど、もはや“家はついで”という事には誰もツッコまないの?!
おかしいと思ってるのは本当にあたしだけなんだろうか??

「サクラ、外の世界は“黒”というだけで悪く思う奴らが未だに多い。だから、不本意かもしれないが、宿の部屋を出る時は今みたいに変装用のペンダントを必ず着用しろ。良いな?」
「あいっ!」
「二人とも、この町はスルト村以上に人がいっぱいいるから、必ず誰かと手を繋いで離さないでね」
「万が一見失ったとしても、先程渡したブレスレットを身に付けていれば俺が必ず見つけてやる。だから無意味に怖がらず好きなように行動して良いからな」
「「あいっ!」」
「だぁー」
「うん、リリアはママと一緒にいようね~」
「あうー」


朝食後、用意されていた馬車に乗り、カルステッドさん達は先にフェイフォン行きの船が出入りする港町ハーフェンへと向かう。
ハーフェンからフェイフォンの港町までは、船で5日程の距離らしい。
長すぎず、短すぎず、レオンやサクラもギリギリ飽きないちょうど良い期間だね。

船がすぐ予約できるとは限らないので、先行するカルステッドさん達とは別に、あたし達は子供達やミナトちゃん達との観光をめいっぱい楽しむつもりなのだ。

朝食を食べて少し休憩したら、早速ルーエンの町を散策です!



ルーエンの町は周囲の村や農家からたくさんの新鮮な果物を仕入れて販売したり、お菓子やジャムなどを販売したりしている果物で有名という珍しい町だった。

予想外に朝から人多く賑わっていたため、「今日は家族の日、明日は好きな人達と町を散策しましょう」と決めて、ミナトちゃん、カイトくん、ベルナートさんとは別行動し、互いにお土産を買って後ほど渡し合う約束をした。

ちなみにセイルは、姿を隠してカルステッドさん達について行ったり、気が向いたらルーエンに戻ってきて気ままに過ごすと言っていた。うん、いつもと変わらず自由気ままである。

ノルンさんとマデリーヌさんは「そのうち合流するわん♡」とさらに自由な感じで、フランさんに至っては、「先にフェイフォンで待ってるよ。こっちに面白いダンジョンがあってね」と一番自由過ぎる返事だった。
・・・時々忘れそうになるけど、よく考えたら精霊の王様だもの。そりゃ行動も自由度も高いはずだ。ツッコむのはもうやめよう。


「あ、見てみて。いろんな果物のジャムが売ってるよ。シフォンケーキや紅茶にも合うんじゃないかな?」
「「ほぁぁ~~・・・おいしそうなの~~」」
「ならば全種類買っておけ。・・・アレク仕入れは可能か?」
「はい。この店と取引している行商人はスルト村にも出入りしてますので、いつでも話を進められます」

目をキラキラさせながら喜ぶ双子と、それを見て全種類を当然のように大人買いしつつ仕入れまでしようとする親バカなエルに、すでにいつでも仕入れできる準備までしているアレク兄様・・・
どうしよう、もうどこをどうツッコんで良いかわからなくなってきた。

購入したモノは魔法袋に入れてしまえば手荷物は増えないので、いくら買っても身軽と言うのは嬉しいけど、行く先々で値段も見ずに「全種類くれ」とか「ここからここまで」と買い物をするエルを見てたら、「どこのセレブだよっ!!」とさすがにツッコみたくなった。
だけど、森にある家の他にメラルダにも家を持ってたり、旅行中に泊まる部屋はすべてスイートルームの時点で、貴族じゃなくても間違いなくあたし達はセレブだなと納得してしまった。

「はぁ~・・・異世界でこんなセレブな生活ができるとは思わなかった・・・」
「ん?サーヤ、“せれぶ”とはなんだ?」
「えっと、セレブって言うのは貴族みたいなお金持ちで、優雅な生活をしてる人・・・っていうのかな。エルは貴族じゃなくてもビックリするくらいお金を持ってるし、宿もいつもスイートルームでしょ?」
「ふっ、なるほど・・・“せれぶ”か。今まで金など興味はなかったが、このようにお前達の喜ぶ顔が見れるのだから残しておいて正解だったな」
「ふふっ、エルってば・・・んっ・・・もう、外ではダメです」
「・・・外じゃなければ良いのか?」
「!!」

相変わらずニヤニヤしながらわかっていて聞いてくる、ドSで俺様な旦那様である。
返事に少し困っていたら、我が家の小さな天使がくいっくいっと服を引っぱって助け舟を出してくれた。

「まぁー、あぷっ、だぁ!」
「ふふっ、リリアもちゅってして欲しいみたいだよ?」

(くいっくいっ)

「パパ、くーも!くーも、ちゅー」
「ボクも!リリたんだけ、ずるいの」
「あらあら・・・パパ人気者だね」
「・・・」

以前も子供達にキスしてるところ見られておねだりされたのに・・・子供達が外で真似しないよう改めて教えないとだね。

しばし無言で困った顔をしながらも、エルがレオンやサクラ、リリアにほっぺにちゅってすると、子供達は嬉しそうに大はしゃぎしている。
やだもうエルも子供達も超可愛いっ!!



この光景は、後に黒曜石とあたしの記憶にしっかりと永久保存しておきました。
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