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11章 双子、失踪事件
双子、ホームシックになる
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◇
「くー、もうだいじょぶ?」
「ん、だいじょぶなの。ごめんね、レオたん」
「ううん。ボクは、くーのかみ、きれいですきだよ。パパと、ベルと、いっしょなの」
「うん、くーも、すき。・・・でも、おそとのひと、ちがうのね。パパがいってたの、こえなんだ・・・」
助けた行商人の親子から罵倒された二人は、近くにあった森へ駆け込み、安全そうな場所を見つけては気配を遮断する布にくるまって休憩したり、夜を明かして過ごしていた。
元々森の中の家に住んでいる二人には、何もない平地や村よりも木々に囲まれた森の方が落ち着く場所だったのだ。
ご飯やお菓子はあたしが魔法袋に入れていたし、二人とも洗浄などの生活魔法も使えるから、森の中なのに不衛生になることなく綺麗な姿を保っている。
休憩や睡眠で身体の疲れは取れるけど、精神面はやはり子供なのでどうにもならない。
そして、魔法袋の食事やお菓子から愛情を感じるよりも、会えない寂しさの方がだんだん強くなってしまい、自然と二人の会話が減り歩みも少しずつ遅くなっていった。
◇
「・・・あ。くー、みてみて!きょうのおかし、くーのすきな、しろいのいっぱいの、ぷりんだよ!!」
「!!・・・しろいの、いっぱい??」
「うん!いっぱいだよ!!きっとままが、くーのために、つくったんだね」
「あ!レオたんのすきな、あかいのいっぱいの、ケーキもあるの!こえは、レオたんのなのよ!!」
二人が森で過ごしてさらにしばらく経った頃、いつものようにお菓子を食べるため魔法袋を覗くと、今日は二人の大好物を入れておいたので、少し元気を取り戻してくれたようだ。
身軽な二人は丈夫そうな木に登り、魔法袋に入っているお菓子を今日も仲良く食べる。
もちろん食べている間は、レオンは当然のように隠密術を使っているし、サクラも常に気配探知を展開して周囲を警戒しているため抜かりはない。
・・・ホントにこれは5歳児の行動なんだろうか?
「んふ、しろいのいっぱい☆ままのおかしは、おいしーの♪」
「うんっ!ボクのケーキも、あかいの、あまくておいしーの♪」
「「まま、しんぱいしてるかな・・・?」」
時間が経てば経つほど思っていたけど口にしてこなかった・・・口に出しても、帰路がわからずどうすることもできないからして言わないようにしていた言葉が思わずぽろっと出てしまう。
とりあえず安全を確保できれば、あたしが魔法袋に用意した食事やお菓子が食べれるので、「とりあえずすすむの!きっとぱぱが、みつけてくれるの!」というサクラの前向きな案で二人は移動を続けていた。
だけど、気配を遮断して敵に遭遇せず安全を確保できても、味方までもが二人を見つけられない状況になるとは思わなかったようだ。
そんな二人だが、今日はいつもと違うモノが入っていることには気付いてくれた。
「あれ?なんか、おかしじゃないのもはいってゆ」
「ホントだ!レオたんのかみみたいに、きれいなおいろなの!」
お菓子と一緒に魔法袋に入れておいた銀色の四角い石は、魔力を持つ者が触れると反応して記憶した音声を流してくれるモノだ。
サクラが迷いなく手にしたことで、あたしが残した音声が自動的に流れ始めた。
『レオン、サクラ、これを聞いてるって事は元気だと思ってるけど、元気なのよね?怪我とかしてない?大丈夫??』
「あ!ままのこえだ!!」
「え?でも、ままいないよ?」
『今、エルとベルナートさんが作ってくれたこの石に、あたしの声だけを記憶させてるから話す事はできないの。ご飯やお菓子をちゃんと残さず食べてて偉いね。でも、元気な二人に会えなくて、ママはとても寂しいし悲しい。だから、帰ってきたらママとパパによる二人まとめてぎゅーの刑です、覚悟してて下さい』
「ホント?!ままとぱぱから、ぎゅーの刑なの??!!うれしいの♪」
「でも、リリたんがないてたら、きっとボクたちより、リリたんぎゅーってすゆんだよ・・・」
「あ・・・」
お店を飛び出した時の気持ちを思い出して、少ししんみりしてしまうレオンとサクラ。
あくまで会話はできないため、銀色の石からあたしの声は流れ続ける。
『レオン、サクラ。ママにとっては、あなた達もリリアも同じくらい大切な存在よ。順番なんて付けられない。でもね、リリアはレオンやサクラと違って、まだ自分の事が自分でできないから、周りの人がお手伝いしてあげなきゃいけないの。憶えてないかもしれないけど、昔のあなた達もそうだったのよ?』
「え?そうなの??」
「そういえば、くーね、このまえ、リボンひとりでむすべたの!すっごくうれしかったのよ!!」
「あ、ボクも、くつひもむすべたよ!ままも、「すごい!!」ってほめてくれたの!」
『しかも、あなた達がリリアと同じくらいの時は、泣くのも一緒、ミルクを飲むのも一緒、駄々をこねるのも魔力を暴走させるのも一緒で、ホントに大変だったの。家の中が何度水浸しになった事か・・・』
「「・・・」」
二人は朧げに記憶があるのか、少し気まずそうに苦笑いしたけど、今のリリアが昔の自分達と同じだったという事が嬉しいようだ。
『ふふっ、でもね、ママにとって二人は初めての子供だったから、すごく大変だったけどすごく楽しかったの。レオンやサクラのおかげで、リリアが何を求めてるか、気を付けなきゃいけないこともわかって、今はお世話がだいぶ楽になったのよ』
「ボクたちの、おかげなの・・・」
「くーたち、いらないこじゃない?」
『レオン、サクラ・・・大好きよ。ママの子供に生まれて来てくれてありがとう。・・・パパもママも、皆もすごく心配してるから、早く帰って来てくれると嬉しいです』
「・・・ままぁ、ック、おそと、こわいの、いっぱい・・・ッグズ、も、やなの・・・ふぇぇ」
「ボク、も・・・おうち、かえりたい・・・ッグズ、」
レオンやサクラは、その後も流れるあたしの言葉に泣きながら返事をする事に集中していたため、レオンは隠密術を解いている事に気づかなかった。
そしてサクラも、気配探知し続けることをすっかり忘れて周囲の警戒を怠ってしまい、二人は夜も更けた森の中で完全に無防備な状態となっていた。
そのため・・・
(ヴゥゥ・・・グルルルルルル・・・――――――――)
「「??!!」」
背後から忍び寄る魔獣たちの存在に二人が気付いたのは、周囲を数十匹の狼の魔獣で囲まれた後だった。
「くー、もうだいじょぶ?」
「ん、だいじょぶなの。ごめんね、レオたん」
「ううん。ボクは、くーのかみ、きれいですきだよ。パパと、ベルと、いっしょなの」
「うん、くーも、すき。・・・でも、おそとのひと、ちがうのね。パパがいってたの、こえなんだ・・・」
助けた行商人の親子から罵倒された二人は、近くにあった森へ駆け込み、安全そうな場所を見つけては気配を遮断する布にくるまって休憩したり、夜を明かして過ごしていた。
元々森の中の家に住んでいる二人には、何もない平地や村よりも木々に囲まれた森の方が落ち着く場所だったのだ。
ご飯やお菓子はあたしが魔法袋に入れていたし、二人とも洗浄などの生活魔法も使えるから、森の中なのに不衛生になることなく綺麗な姿を保っている。
休憩や睡眠で身体の疲れは取れるけど、精神面はやはり子供なのでどうにもならない。
そして、魔法袋の食事やお菓子から愛情を感じるよりも、会えない寂しさの方がだんだん強くなってしまい、自然と二人の会話が減り歩みも少しずつ遅くなっていった。
◇
「・・・あ。くー、みてみて!きょうのおかし、くーのすきな、しろいのいっぱいの、ぷりんだよ!!」
「!!・・・しろいの、いっぱい??」
「うん!いっぱいだよ!!きっとままが、くーのために、つくったんだね」
「あ!レオたんのすきな、あかいのいっぱいの、ケーキもあるの!こえは、レオたんのなのよ!!」
二人が森で過ごしてさらにしばらく経った頃、いつものようにお菓子を食べるため魔法袋を覗くと、今日は二人の大好物を入れておいたので、少し元気を取り戻してくれたようだ。
身軽な二人は丈夫そうな木に登り、魔法袋に入っているお菓子を今日も仲良く食べる。
もちろん食べている間は、レオンは当然のように隠密術を使っているし、サクラも常に気配探知を展開して周囲を警戒しているため抜かりはない。
・・・ホントにこれは5歳児の行動なんだろうか?
「んふ、しろいのいっぱい☆ままのおかしは、おいしーの♪」
「うんっ!ボクのケーキも、あかいの、あまくておいしーの♪」
「「まま、しんぱいしてるかな・・・?」」
時間が経てば経つほど思っていたけど口にしてこなかった・・・口に出しても、帰路がわからずどうすることもできないからして言わないようにしていた言葉が思わずぽろっと出てしまう。
とりあえず安全を確保できれば、あたしが魔法袋に用意した食事やお菓子が食べれるので、「とりあえずすすむの!きっとぱぱが、みつけてくれるの!」というサクラの前向きな案で二人は移動を続けていた。
だけど、気配を遮断して敵に遭遇せず安全を確保できても、味方までもが二人を見つけられない状況になるとは思わなかったようだ。
そんな二人だが、今日はいつもと違うモノが入っていることには気付いてくれた。
「あれ?なんか、おかしじゃないのもはいってゆ」
「ホントだ!レオたんのかみみたいに、きれいなおいろなの!」
お菓子と一緒に魔法袋に入れておいた銀色の四角い石は、魔力を持つ者が触れると反応して記憶した音声を流してくれるモノだ。
サクラが迷いなく手にしたことで、あたしが残した音声が自動的に流れ始めた。
『レオン、サクラ、これを聞いてるって事は元気だと思ってるけど、元気なのよね?怪我とかしてない?大丈夫??』
「あ!ままのこえだ!!」
「え?でも、ままいないよ?」
『今、エルとベルナートさんが作ってくれたこの石に、あたしの声だけを記憶させてるから話す事はできないの。ご飯やお菓子をちゃんと残さず食べてて偉いね。でも、元気な二人に会えなくて、ママはとても寂しいし悲しい。だから、帰ってきたらママとパパによる二人まとめてぎゅーの刑です、覚悟してて下さい』
「ホント?!ままとぱぱから、ぎゅーの刑なの??!!うれしいの♪」
「でも、リリたんがないてたら、きっとボクたちより、リリたんぎゅーってすゆんだよ・・・」
「あ・・・」
お店を飛び出した時の気持ちを思い出して、少ししんみりしてしまうレオンとサクラ。
あくまで会話はできないため、銀色の石からあたしの声は流れ続ける。
『レオン、サクラ。ママにとっては、あなた達もリリアも同じくらい大切な存在よ。順番なんて付けられない。でもね、リリアはレオンやサクラと違って、まだ自分の事が自分でできないから、周りの人がお手伝いしてあげなきゃいけないの。憶えてないかもしれないけど、昔のあなた達もそうだったのよ?』
「え?そうなの??」
「そういえば、くーね、このまえ、リボンひとりでむすべたの!すっごくうれしかったのよ!!」
「あ、ボクも、くつひもむすべたよ!ままも、「すごい!!」ってほめてくれたの!」
『しかも、あなた達がリリアと同じくらいの時は、泣くのも一緒、ミルクを飲むのも一緒、駄々をこねるのも魔力を暴走させるのも一緒で、ホントに大変だったの。家の中が何度水浸しになった事か・・・』
「「・・・」」
二人は朧げに記憶があるのか、少し気まずそうに苦笑いしたけど、今のリリアが昔の自分達と同じだったという事が嬉しいようだ。
『ふふっ、でもね、ママにとって二人は初めての子供だったから、すごく大変だったけどすごく楽しかったの。レオンやサクラのおかげで、リリアが何を求めてるか、気を付けなきゃいけないこともわかって、今はお世話がだいぶ楽になったのよ』
「ボクたちの、おかげなの・・・」
「くーたち、いらないこじゃない?」
『レオン、サクラ・・・大好きよ。ママの子供に生まれて来てくれてありがとう。・・・パパもママも、皆もすごく心配してるから、早く帰って来てくれると嬉しいです』
「・・・ままぁ、ック、おそと、こわいの、いっぱい・・・ッグズ、も、やなの・・・ふぇぇ」
「ボク、も・・・おうち、かえりたい・・・ッグズ、」
レオンやサクラは、その後も流れるあたしの言葉に泣きながら返事をする事に集中していたため、レオンは隠密術を解いている事に気づかなかった。
そしてサクラも、気配探知し続けることをすっかり忘れて周囲の警戒を怠ってしまい、二人は夜も更けた森の中で完全に無防備な状態となっていた。
そのため・・・
(ヴゥゥ・・・グルルルルルル・・・――――――――)
「「??!!」」
背後から忍び寄る魔獣たちの存在に二人が気付いたのは、周囲を数十匹の狼の魔獣で囲まれた後だった。
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