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10章 延引された結婚式

※番外編※ 風邪を早く治す方法

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※話が少し遡って転移門が完成する前(「お昼寝とお菓子作り」辺り)のお話です。

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ある日、エルが珍しく熱を出して寝込んでしまった。

「エル、大丈夫?・・・胃に優しいモノ作ってみたけど食べれる?」
「ケホッ・・・あぁ、少しならな・・・」

エルが転移門を完成させようと頑張ってるのは知ってたけど、こんなに無理するまで頑張ってるとは知らなかった。


あの日、ご飯の時間になってもエルが来ないから、おかしいなと思って恐る恐る研究室を覗きに行くと、白衣を着たエルが中で倒れていたので、あたしは思わず悲鳴をあげてしまった。

あたしの悲鳴で、セイルを始め双子を連れたベルナートさんやミナトちゃんにカイトくん、ノルンさんやフランさん、マデリーヌさんといった家族や仲間の精霊王様が一瞬にして全員集合してしまい、ちょっとした騒ぎになってしまった。

とりあえずエルを寝室へ運んでもらうと、疲労や寝不足が原因の風邪だろうということで、エルはしばらく絶対安静を余儀なくされた。
風邪がうつるといけないので、双子達はしばらくアレク兄様に預かってもらい、現在あたしが看病しているという状態だ。


身体を起こすときに触れたエルの身体は、まだ熱が高いようでとても熱かった。

「・・・まだ熱が高そうだね。今まで体調崩したことなかったのに・・・そんなに無理な生活してるように見えなかったけど、どうしてこんなことに?夜はあたしと・・・その、一緒に眠ってたよね?」

双子達も朝までぐっすり眠るようになったので、だいたい夜は二人で甘い時間を過ごしてそのまま一緒に眠っていたはずなのだ。
そして、エルの方が早く起きて、双子達に朝ご飯を作って食べさせてくれていた。

・・・もしかして、朝早く起きてたからそれで寝不足になったんだろうか?
だったら今度からあたしが早起きしてご飯作る日も作れば、エルの負担が少しは減るのではないだろうか。

そう思って少し反省しかけていたら、予想外の返答が返ってきた。

「・・・あぁ。サーヤを抱いた後は妙に頭が冴えてな、ケホッ、お前が眠った後に研究室で作業の続きをしていたのだ」
「・・・へ?」
「眠くなったら眠ろうと思ってはいたのだが、そのまま朝になることが多くてな・・・双子達が起きる時間には台所へ移動し、朝飯を作っていた」
「・・・え、じゃあ、エル・・・いつ眠って・・・?」
「・・・たまに双子達と昼寝をしていたが、ほとんど寝ていなかったな」
「・・・」

確かにたまにエルは双子達と一緒にお昼寝をしていた。
でもそれはほんの数時間に過ぎないし、毎日という訳でもない。

じゃあナニ?エルってば何日も徹夜状態で過ごしてたわけ??
そんなの寝不足や疲労が溜まりまくって体調崩すの当たり前じゃないかっ!!!!!

「・・・エル」
「ん?」
「今度からあたしが寝た後研究室行くの行くの禁止ね」
「は?」
「禁止はやり過ぎか・・・えっと、行くのは良いけど事前か事後に必ず報告すること!そして、深夜に研究室に行った日は、必ずお昼寝をすること!!これを約束してください」
「いや、だが・・・」
「言い訳なんて聞きたくありません!・・・もし守ってくれないなら、あたし、双子を連れてしばらく実家・・・はないから、メラルダの家で過ごさせていただきます!!」
「なっ??!!・・・ゲホッ、ケホッ」

あたしの言葉に驚き、反論しようとして咳き込むエルの背中を優しくさすってあげるが、あたしはこの言葉を撤回する気はない。

「エル、あたしは本気だよ。・・・またエルが無理して倒れる姿なんて見たくない。倒れてる姿見た時、ホントに、怖かったんだからぁ・・・ッグズ」
「サーヤ・・・」

今まで一度も体調を崩す姿を見たことがなかった分、初めてエルが倒れてる姿を見た時は本当に怖かった。
よく考えれば風邪くらい引くだろうと思うけど、何かの病気なんじゃないかとか、変な薬作っちゃったのかとか、とにかく命の危険があって、このままエルを失ったらどうしようってパニック状態だったのだ。

あの時、幸いにもマデリーヌさんも来てくれたから、気やすめ程度にしかならないけどと言って、自己治癒力を高める魔法をかけてくれただけでもすごく安心した。

「好きなコトして欲しいし、頑張ってくれるのも嬉しいけど、お願いだから無理はしないで欲しい。あたしは転移門の完成を急いで欲しいと思ってない。エルや双子達と元気に生活している今が幸せなの。皆が元気じゃなきゃいやなの・・・」
「・・・あぁ、わかった。約束しよう・・・心配させて悪かったな」
「うん。ありがとう、エル。風邪なんて早く治しちゃおうね!」

結局エルは、すりおろしたリンゴを少し口にするのが限界だったので、とりあえず薬を飲ませておでこのタオルを交換して少し休ませる事にした。

「じゃあエル、あたしお水取り換えてくるね。ゆっくり休んでて」
「・・・」

水の入った桶に手を伸ばしながら立ち上がろうとした瞬間だった。

(ぐいっ)

「へ・・・んんっ?!」

(バシャ―――ン・・・カランカラン)

「んっ、ぁ、エルっ、ちょ・・・んん~~~~~~~っ」
「ん、はぁ・・・やりすぎると、お前に風邪がうつってしまうな・・・ケホッ」

腕を引っ張られて、そのまま不意打ちのキス。
エルに引っぱられた時に桶に手が当たってしまい、あたしの服を濡らしつつ床が水浸しになってしまった。

「もうっ、熱があるのに何してんのよっ!桶の水ぶちまけちゃったじゃない!!ばかぁっ!!」

不意打ちのキスにドキドキしすぎて、変な捨て台詞をはいてからあたしは寝室を出て、ドアをパタンと閉めてから思わずその場に座り込んでしまった。

熱があるからそんな元気がないと思ってたし、熱でちょっと火照ってるエルが色っぽいなと思う気持ちもほんの少しだけあった。
結婚して、子供も生まれて、数えきれないくらいキスもえっちもしてきたのに、エルはいつもあたしをドキドキさせる。

「もぉ~・・・不意打ちのキスなんて卑怯だ・・・あたしをどこまでドキドキさせれば気がすむのよ・・・ばかぁ・・・」

赤くなった顔を両手で覆い、小声でエルへの苦言を呟く。



キスだけじゃ足りない。


もっとぎゅってして欲しい。


でも、まずは早く元気になってもらわなきゃ!



「・・・―――――よしっ!」

早く元気になってもらうために、あたしも看病を頑張ろう。
回復したら双子達を家に呼び戻して、前みたいに一緒におやつを食べたりお昼寝したりしよう。
・・・そして、夜はまた二人の甘い時間を過ごすんだ。

「エルが早く回復できるよう、看病頑張るぞっ!えいっ、えいっ、お―――――!!」




あたしは気持ちを切り替えて、エルが早く回復するように看病を頑張る事にした。
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