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10章 延引された結婚式
※番外編※ 会わせたくなかった二人6
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◇
「うちの愚息が本当に迷惑をかけてすまなんだ」
「えっと・・・あたしはこのとおり大丈夫なので、とりあえず頭を上げてください。・・・そして、できれば息子さんの頭から足をどけてあげてください」
「お主はとても優しい女子・・・む、子がいるから婦人であるな。失礼した」
「いえ、おかまいなく・・・」
双子に魔力を分けてもらって意識も回復したあたしは、ベルナートさんの特殊空間の中でミナトちゃん達と一緒にお菓子を食べていた。
レオンやサクラはあたしにべったりくっついたまま眠ってしまったので、ベッド周辺にミナトちゃんやカイトくん、ベルナートさんがいる状態だ。
そんな和やかな空間に突如現れたのは、エルやセイル達と一緒にこの空間にやって来た先代の聖獣レオヴィアス様だった。
冒頭にもあるとおり、あたしやエルに酷い事をした現在の聖獣は傷だらけのボロボロ状態で、先代様がさらにそれを踏みつけているという容赦ない状態だ。
「エリュシオン殿やノルン達から事情は聞いた。今までもどうしようもない放蕩息子だと思っていたが、ここまでとは正直思わなんだ。誠に嘆かわしいことよ・・・」
「~~~~んぐっ、~~~~~~~~~~~~~~っ」
あ、今さりげなくお腹を蹴った。
お願いです、聖獣様・・・いえ、先代様。
さすがに猿ぐつわをかませた息子さんを、ボールのように角度を変えながら蹴るのはやめてあげて下さい。
・・・と言いたいんだけど、さすが親子、人間体の姿がそっくりなので、さっきの恐怖とあいまって直接言いたくても言えなかった。
代わりに昔の知り合いだというノルンさんに助けを求めてみると、聖母の様な慈愛に満ちた優しい笑顔で頷いてくれた。
よかった、わかってくれたらしい。
「大丈夫よ、サーヤ。辛い思いをしたあなたの痛みは、しっかりキッチリと落とし前つけてもらうから・・・という訳で先代様、もっとやっちゃってくださいませ」
「あいわかった」
「??!!」
待って待って!!逆っ、逆だから!!
あぁぁ・・・なんか鈍い音とか嫌な音と悲鳴がどんどん増えてるぅぅぅぅ~~~~~~
こんな光景、レオンやサクラの教育的にもよろしくないし、レオンは自分の名前の元になった方がこんな仕打ち受けてたら絶対ショックで泣いちゃうよっ!!!
もうどうしていいかわからないまま、お昼寝中のレオンとサクラが起きないようひたすら祈ってたら、エルが助け舟を出してくれた。
「先代殿、申し訳ないがここには今眠っている小さな我が子達がいる。心遣いは嬉しいが、さすがにこのような光景をなるべく見せたくないのだが・・・」
「おぉ、確かに奥方のそばに可愛い幼子が2人もいるな。双子であるか?」
「あぁ。・・・双子の内1人、この母譲りの髪色をした兄のレオンは”聖獣レオヴィアスのように強く気高くあって欲しい”と名付けた。親の身勝手だとは承知しているが、この光景を目にしてしまうと名を嫌ってしまう可能性もあるから見せたくはないのだが・・・」
「我らの引き継ぐ名でそのように子に名前をつけるとは、なんとも嬉しきこと・・・承知した。コレはしばらく我の元で反省させる故、安心すると良い」
先代様はそう言って、痛めつけていた息子さんの首根っこを掴み、突然現れた異空間へぽいっと放り込んだ。
・・・うん。扱いが雑過ぎて、だんだん可哀そうになってきたかも。
「ユキ、そばにいたいのなら一緒に行くが良い。彼奴と積もる話もあるのだろう?」
「・・・はい。ありがとうございます、先代様」
「だが、回復魔法は禁ずる」
「・・・わかりました。消毒や手当くらいは良いでしょうか?」
「ふっ、それくらいはかわまぬ」
そう言って、ユキさんは一度おじぎをしてから放り込まれた聖獣を追いかけて異空間へと消えていった。
「・・・んにゅ、まぁま?」
「あら、レオン起きちゃった?眠かったらまだ眠っててもいいよ」
「だいじょぶ・・・おきゆ」
さっきのバイオレンスな状態の時に起きなくて良かったと心底安心してたら、目が覚めたレオンが起き上って、クッションを背中にしたあたしと並ぶように座った。
エルの渡した癒しの水を受け取りこくこくと飲み終えると、レオンは初めて会う先代聖獣様を無言でじぃ~っと見つめている。
「・・・レオン、この方は・・・」
「きえ~ね~、ボクといっちょ!」
「!!」
「ふふっ、そうだね。レオンと同じ綺麗な銀髪だね」
レオンの言葉に少し驚いていた先代様は、レオンに近づき目線が合う高さまで屈んでから優しくレオンに話しかけた。
「起こしてしまってすまなんだ。・・・我のこの色は綺麗か?」
「うんっ!いっちょだけど、きあきあなの♡ボクも、きあきあなれゆ?」
「ふふっ、そうか。お主には我の聖気がキラキラ光って視えるのだな・・・面白い子よ。
そうだな。なれるやもしれぬし、なれないやもしれぬ」
「?・・・あいっ」
聖気が光って・・・?
あたしには全体的に神々しく見えるけど、レオンには違って見えるのかな?
よくわからないまま返事をしているレオンと先代様のやり取りを、微笑ましい気持ちと失礼なこと言わないと良いけどという半々の気持ちで見守っていたら、案の定やらかしてしまった。
「おじちゃ、だえ?」
「ちょっ、レオン?!」
「くくっ、”おじちゃん”か・・・かまわぬよ。
我は聖獣レオヴィアス。お主の名は我のように気高く強くあれと両親が付けたようだ」
「!!」
レオンがぱぁぁっと嬉しそうな顔をして、あたしと先代様を交互に見てる。
嬉しくて興奮してるみたいだけど、我が子ながら超可愛いっ!!
「おじちゃ、ちゅおいの?」
「あぁ、もちろんだ。・・・強くなりたいのか?」
「!!ちゅおいの!がんばゆのっ!!」
「おぉ、そうかそうか。まだ幼いというのに威勢が良いではないか。・・・ならば、強くなったら何をしたい?」
先代様が優しく問いかけながらも、最後の言葉だけちょっと含みのある言い方をしてる気がして間に入ろうとしたら、エルによって制止されてしまった。
”大丈夫だ”って顔してるけど、ホントに大丈夫なんだろうか?
当の本人であるレオンは、少し考えてから何か思いついたようで聖獣様に向かって元気に答えた。
「ん~・・・ぱぱと、くーとみんなで、ままをまもゆの!!」
「え・・・?」
「護りたいのは母だけか?」
「ん~ん、ミーたんも、カイたんも!」
「レオン・・・」
思わぬレオンの言葉に思わず泣きそうになる。
「ふっ、護るために強さを求めるか・・・その心持ち、気に入ったぞ」
「う?」
一瞬眩しいくらいに光ったかと思ったら、あたし達の目の前には先ほどの人型ではなく、大きな白銀の獅子の姿になった先代様がいた。
「!!!・・・おじちゃ、わんわなの?!」
「あぁぁっ、レオン!聖獣様にわんわって・・・」
「【ふっ、これが我の真の姿だ。恐れるどころか犬と勘違いするとは・・・くくっ、本当に面白い子よ】」
先程と違い、身体全体に響くくらいの声なのに、どこか優し気な安心する声だった。
先代様はそのまま、レオンの鼻先と自分の鼻先をこつんとくっつけて何か唱え始めた。
・・・これって、犬が信頼してる飼い主とかにする行動??
「【今お主に、仮だが我の加護を授けた】」
「う?」
「「???!!!」」
「【大きくなり、今以上の強さを求む時、そのブレスレットに願いまた我を呼ぶと良い。だが、正式な加護を与えるかはその時次第だ】」
「・・・おっきくなったら、おじちゃ、よぶの?」
「【あぁ。強さを欲する時に呼ぶと良い】」
「あいっ!」
「「・・・」」
なんか、あっという間に先代様とレオンの会話が進んでしまい、気が付けばレオンは先代様から仮だけど加護を与えられた。
あたしもエルもそれについては予想外過ぎて、思わず言葉を失ってしまった。
「【サーヤ、と言ったな】」
「あ、はい!!」
今度は急に自分が呼ばれ、声が裏返りそうになってしまった。
「【愚息の詫び・・・みたいなモノだが、これを授けよう】」
「・・・あの、これは・・・?」
「【我の祝福が込められている指輪だ。お主はエリュシオン殿と命を繋いでいると聞いた。”寄るな”と思えば、自身の魔力を消費せず指輪がバリアを作り、敵を阻むであろう】」
「・・・そんなすごいモノをいただいても良いのでしょうか?」
「【かまわぬ。聞けばお主の魔力が枯渇するのは、危機的状況でバリアを発動する時、魔力を消費しすぎるからなのだろう?だったら、元より魔力を消費しないバリアがあれば良いのではと思ってな】」
・・・なんか、その通り過ぎて恥ずかしいやら申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「【愚息の行動がきっかけとは言え、お主らやノルンに逢えて有意義な時間を過ごせた。またいつか逢おうぞ】」
「はい!あの、本当にいろいろとありがとうございました!!」
「先代殿、俺も世話になった。いつか改めて礼をさせてくれ」
帰る様子の先代様に各々挨拶をし始める中、レオンは寂しそうに涙ぐみながら声をかけた。
「おじちゃ、またあえゆ?」
「【ふっ、また逢えるさ】」
「じゃあ、こんどあしょぼ!ままのおかし、しゅ―――――――っごくおいちいの!おじちゃもたべゆの!!」
「え、ちょっと、レオン??!!」
「【くくくっ、ホントにお前は・・・あいわかった。近々お主の家に遊びに行くとしよう。良いか?サーヤ】」
「あっ、はい!もちろんです!!・・・でもお菓子の準備もあるので、可能であれば事前にお知らせいただけると嬉しいです・・・」
「【あぁ。ノルンに伝える事にしよう。・・・良いな?ノルン】」
「えぇ、もちろんです。サーヤの作るお菓子も美味しいですが、ご飯もとても美味しいですよ。私も他の精霊王達もお気に入りなのです」
「【そうか。お主がそこまで言うのなら本当にそうなのだろう。楽しみになってきた。・・・では、また近いうちに相まみえようぞ。さらばだ】」
そう言って、光と共に先代様は帰っていった。
そして、先代様が帰ったのでとりあえずあたし達も家に帰ろうという事になった。
念のため、あたしはティリアさんの診察を受け、母子共に問題ないことを確認してからアレク兄様が用意してくれた夕食を皆でいただき、長い長い1日は終わったのでした。
お昼寝をしていて先代様に会えなかったサクラは大暴れしたけど、近々遊びに来るらしいという事を伝えたら
「おねむでもおこちて!じぇったい、やくちょくなの!!わんわにあうの!!!」
と、約束させられた。
・・・お願いだから二人とも、聖獣様をわんこ扱いしないで・・・
―――――そして後日、あたしの願いは虚しく、白銀の獅子様の姿で遊びに来た先代様は、見事にレオンとサクラの遊び相手となり、お菓子を共に食べたり一緒にお昼寝したりとすっかり仲良くなってしまった。
それからも、先代様が頻繁に遊びに来てはお菓子やご飯を一緒に食べるようになったのは、また別のお話・・・
「うちの愚息が本当に迷惑をかけてすまなんだ」
「えっと・・・あたしはこのとおり大丈夫なので、とりあえず頭を上げてください。・・・そして、できれば息子さんの頭から足をどけてあげてください」
「お主はとても優しい女子・・・む、子がいるから婦人であるな。失礼した」
「いえ、おかまいなく・・・」
双子に魔力を分けてもらって意識も回復したあたしは、ベルナートさんの特殊空間の中でミナトちゃん達と一緒にお菓子を食べていた。
レオンやサクラはあたしにべったりくっついたまま眠ってしまったので、ベッド周辺にミナトちゃんやカイトくん、ベルナートさんがいる状態だ。
そんな和やかな空間に突如現れたのは、エルやセイル達と一緒にこの空間にやって来た先代の聖獣レオヴィアス様だった。
冒頭にもあるとおり、あたしやエルに酷い事をした現在の聖獣は傷だらけのボロボロ状態で、先代様がさらにそれを踏みつけているという容赦ない状態だ。
「エリュシオン殿やノルン達から事情は聞いた。今までもどうしようもない放蕩息子だと思っていたが、ここまでとは正直思わなんだ。誠に嘆かわしいことよ・・・」
「~~~~んぐっ、~~~~~~~~~~~~~~っ」
あ、今さりげなくお腹を蹴った。
お願いです、聖獣様・・・いえ、先代様。
さすがに猿ぐつわをかませた息子さんを、ボールのように角度を変えながら蹴るのはやめてあげて下さい。
・・・と言いたいんだけど、さすが親子、人間体の姿がそっくりなので、さっきの恐怖とあいまって直接言いたくても言えなかった。
代わりに昔の知り合いだというノルンさんに助けを求めてみると、聖母の様な慈愛に満ちた優しい笑顔で頷いてくれた。
よかった、わかってくれたらしい。
「大丈夫よ、サーヤ。辛い思いをしたあなたの痛みは、しっかりキッチリと落とし前つけてもらうから・・・という訳で先代様、もっとやっちゃってくださいませ」
「あいわかった」
「??!!」
待って待って!!逆っ、逆だから!!
あぁぁ・・・なんか鈍い音とか嫌な音と悲鳴がどんどん増えてるぅぅぅぅ~~~~~~
こんな光景、レオンやサクラの教育的にもよろしくないし、レオンは自分の名前の元になった方がこんな仕打ち受けてたら絶対ショックで泣いちゃうよっ!!!
もうどうしていいかわからないまま、お昼寝中のレオンとサクラが起きないようひたすら祈ってたら、エルが助け舟を出してくれた。
「先代殿、申し訳ないがここには今眠っている小さな我が子達がいる。心遣いは嬉しいが、さすがにこのような光景をなるべく見せたくないのだが・・・」
「おぉ、確かに奥方のそばに可愛い幼子が2人もいるな。双子であるか?」
「あぁ。・・・双子の内1人、この母譲りの髪色をした兄のレオンは”聖獣レオヴィアスのように強く気高くあって欲しい”と名付けた。親の身勝手だとは承知しているが、この光景を目にしてしまうと名を嫌ってしまう可能性もあるから見せたくはないのだが・・・」
「我らの引き継ぐ名でそのように子に名前をつけるとは、なんとも嬉しきこと・・・承知した。コレはしばらく我の元で反省させる故、安心すると良い」
先代様はそう言って、痛めつけていた息子さんの首根っこを掴み、突然現れた異空間へぽいっと放り込んだ。
・・・うん。扱いが雑過ぎて、だんだん可哀そうになってきたかも。
「ユキ、そばにいたいのなら一緒に行くが良い。彼奴と積もる話もあるのだろう?」
「・・・はい。ありがとうございます、先代様」
「だが、回復魔法は禁ずる」
「・・・わかりました。消毒や手当くらいは良いでしょうか?」
「ふっ、それくらいはかわまぬ」
そう言って、ユキさんは一度おじぎをしてから放り込まれた聖獣を追いかけて異空間へと消えていった。
「・・・んにゅ、まぁま?」
「あら、レオン起きちゃった?眠かったらまだ眠っててもいいよ」
「だいじょぶ・・・おきゆ」
さっきのバイオレンスな状態の時に起きなくて良かったと心底安心してたら、目が覚めたレオンが起き上って、クッションを背中にしたあたしと並ぶように座った。
エルの渡した癒しの水を受け取りこくこくと飲み終えると、レオンは初めて会う先代聖獣様を無言でじぃ~っと見つめている。
「・・・レオン、この方は・・・」
「きえ~ね~、ボクといっちょ!」
「!!」
「ふふっ、そうだね。レオンと同じ綺麗な銀髪だね」
レオンの言葉に少し驚いていた先代様は、レオンに近づき目線が合う高さまで屈んでから優しくレオンに話しかけた。
「起こしてしまってすまなんだ。・・・我のこの色は綺麗か?」
「うんっ!いっちょだけど、きあきあなの♡ボクも、きあきあなれゆ?」
「ふふっ、そうか。お主には我の聖気がキラキラ光って視えるのだな・・・面白い子よ。
そうだな。なれるやもしれぬし、なれないやもしれぬ」
「?・・・あいっ」
聖気が光って・・・?
あたしには全体的に神々しく見えるけど、レオンには違って見えるのかな?
よくわからないまま返事をしているレオンと先代様のやり取りを、微笑ましい気持ちと失礼なこと言わないと良いけどという半々の気持ちで見守っていたら、案の定やらかしてしまった。
「おじちゃ、だえ?」
「ちょっ、レオン?!」
「くくっ、”おじちゃん”か・・・かまわぬよ。
我は聖獣レオヴィアス。お主の名は我のように気高く強くあれと両親が付けたようだ」
「!!」
レオンがぱぁぁっと嬉しそうな顔をして、あたしと先代様を交互に見てる。
嬉しくて興奮してるみたいだけど、我が子ながら超可愛いっ!!
「おじちゃ、ちゅおいの?」
「あぁ、もちろんだ。・・・強くなりたいのか?」
「!!ちゅおいの!がんばゆのっ!!」
「おぉ、そうかそうか。まだ幼いというのに威勢が良いではないか。・・・ならば、強くなったら何をしたい?」
先代様が優しく問いかけながらも、最後の言葉だけちょっと含みのある言い方をしてる気がして間に入ろうとしたら、エルによって制止されてしまった。
”大丈夫だ”って顔してるけど、ホントに大丈夫なんだろうか?
当の本人であるレオンは、少し考えてから何か思いついたようで聖獣様に向かって元気に答えた。
「ん~・・・ぱぱと、くーとみんなで、ままをまもゆの!!」
「え・・・?」
「護りたいのは母だけか?」
「ん~ん、ミーたんも、カイたんも!」
「レオン・・・」
思わぬレオンの言葉に思わず泣きそうになる。
「ふっ、護るために強さを求めるか・・・その心持ち、気に入ったぞ」
「う?」
一瞬眩しいくらいに光ったかと思ったら、あたし達の目の前には先ほどの人型ではなく、大きな白銀の獅子の姿になった先代様がいた。
「!!!・・・おじちゃ、わんわなの?!」
「あぁぁっ、レオン!聖獣様にわんわって・・・」
「【ふっ、これが我の真の姿だ。恐れるどころか犬と勘違いするとは・・・くくっ、本当に面白い子よ】」
先程と違い、身体全体に響くくらいの声なのに、どこか優し気な安心する声だった。
先代様はそのまま、レオンの鼻先と自分の鼻先をこつんとくっつけて何か唱え始めた。
・・・これって、犬が信頼してる飼い主とかにする行動??
「【今お主に、仮だが我の加護を授けた】」
「う?」
「「???!!!」」
「【大きくなり、今以上の強さを求む時、そのブレスレットに願いまた我を呼ぶと良い。だが、正式な加護を与えるかはその時次第だ】」
「・・・おっきくなったら、おじちゃ、よぶの?」
「【あぁ。強さを欲する時に呼ぶと良い】」
「あいっ!」
「「・・・」」
なんか、あっという間に先代様とレオンの会話が進んでしまい、気が付けばレオンは先代様から仮だけど加護を与えられた。
あたしもエルもそれについては予想外過ぎて、思わず言葉を失ってしまった。
「【サーヤ、と言ったな】」
「あ、はい!!」
今度は急に自分が呼ばれ、声が裏返りそうになってしまった。
「【愚息の詫び・・・みたいなモノだが、これを授けよう】」
「・・・あの、これは・・・?」
「【我の祝福が込められている指輪だ。お主はエリュシオン殿と命を繋いでいると聞いた。”寄るな”と思えば、自身の魔力を消費せず指輪がバリアを作り、敵を阻むであろう】」
「・・・そんなすごいモノをいただいても良いのでしょうか?」
「【かまわぬ。聞けばお主の魔力が枯渇するのは、危機的状況でバリアを発動する時、魔力を消費しすぎるからなのだろう?だったら、元より魔力を消費しないバリアがあれば良いのではと思ってな】」
・・・なんか、その通り過ぎて恥ずかしいやら申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「【愚息の行動がきっかけとは言え、お主らやノルンに逢えて有意義な時間を過ごせた。またいつか逢おうぞ】」
「はい!あの、本当にいろいろとありがとうございました!!」
「先代殿、俺も世話になった。いつか改めて礼をさせてくれ」
帰る様子の先代様に各々挨拶をし始める中、レオンは寂しそうに涙ぐみながら声をかけた。
「おじちゃ、またあえゆ?」
「【ふっ、また逢えるさ】」
「じゃあ、こんどあしょぼ!ままのおかし、しゅ―――――――っごくおいちいの!おじちゃもたべゆの!!」
「え、ちょっと、レオン??!!」
「【くくくっ、ホントにお前は・・・あいわかった。近々お主の家に遊びに行くとしよう。良いか?サーヤ】」
「あっ、はい!もちろんです!!・・・でもお菓子の準備もあるので、可能であれば事前にお知らせいただけると嬉しいです・・・」
「【あぁ。ノルンに伝える事にしよう。・・・良いな?ノルン】」
「えぇ、もちろんです。サーヤの作るお菓子も美味しいですが、ご飯もとても美味しいですよ。私も他の精霊王達もお気に入りなのです」
「【そうか。お主がそこまで言うのなら本当にそうなのだろう。楽しみになってきた。・・・では、また近いうちに相まみえようぞ。さらばだ】」
そう言って、光と共に先代様は帰っていった。
そして、先代様が帰ったのでとりあえずあたし達も家に帰ろうという事になった。
念のため、あたしはティリアさんの診察を受け、母子共に問題ないことを確認してからアレク兄様が用意してくれた夕食を皆でいただき、長い長い1日は終わったのでした。
お昼寝をしていて先代様に会えなかったサクラは大暴れしたけど、近々遊びに来るらしいという事を伝えたら
「おねむでもおこちて!じぇったい、やくちょくなの!!わんわにあうの!!!」
と、約束させられた。
・・・お願いだから二人とも、聖獣様をわんこ扱いしないで・・・
―――――そして後日、あたしの願いは虚しく、白銀の獅子様の姿で遊びに来た先代様は、見事にレオンとサクラの遊び相手となり、お菓子を共に食べたり一緒にお昼寝したりとすっかり仲良くなってしまった。
それからも、先代様が頻繁に遊びに来てはお菓子やご飯を一緒に食べるようになったのは、また別のお話・・・
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