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10章 延引された結婚式

※番外編※ 会わせたくなかった二人5 inエリュシオンside

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※すみません、こんなに長くなるとは思わなかった・・・
 もう少し続きます。

----------------------


「なっ、なんだ今の魔法は・・・風?いや、水・・・?」
「今のは水と風の混合魔法だ。・・・これでも大分加減したんだがな」
「混合魔法?しかも、これで加減しただと?!・・・ふんっ、どうせ偶然の産物であろう?エルフごときがこんな魔法を・・・」
「≪重力束縛グラストリツィオーネ≫」
「・・・っぐぁぁっ、がはっ」

威嚇で放った魔法の余波でできた隙に、聖獣の背後へと転移し首を掴んで頭ごと床へ叩きつけながら束縛魔法で動きを封じる。

卑怯だと言われようが、相手は曲がりなりにも聖獣。
完全に舐めきっているうちに、事実とハッタリを混ぜながら重力をどんどん加算する。
この魔法は維持するだけでも結構な魔力を消費するが、聖獣に跨っている分限られた範囲で済むからしばらくは維持できるだろう。

「偶然の産物・・・ね。俺はその偶然の産物とやらで他にも数種類の混合魔法を開発したのだが、威力があり過ぎて以前は山を消してしまってな・・・ちょうど良い、お前で試すのも良いかもしれぬな。マデリーヌがいるから死なない限りは回復可能だし、聖獣ならば簡単には死なぬだろう?」
「???!!!」
「まさか、エルフごときの魔法を受けるのが怖い・・・なんてことはないであろう?高位種族である聖獣なのだから・・・」
「・・・っぐ、貴様ぁ・・・」

聖獣の瞳がわずかな恐怖と怒りで染まっている。
湯水のように魔力が減り続けるが、気にせず重力をどんどん加算し続けた。

まだだ、もっと肉体的にも精神的にも追い詰めて、抵抗する力も気力も喪失させねば・・・


「あぁ、その前にそのうるさい口を塞いでおかねばな。駄犬2号に躾をしなければいけないのをすっかり忘れるところであった」
「????!!!!~~~~~~~~~~~~~~っ」

押さえつけていた首を少し緩め、念のためと駄犬の躾用に作った回復しない味だけさらに改良した新薬が入った小瓶を聖獣の口に突っ込んだ。
普通の人間なら即死するようなモノも少し入れてみたが、聖獣なのだから大丈夫だろう。

「ちょっと、なんなのなんなの?!この黒髪エルフさんヤバいって!!さすがにこのままじゃレオが死んじゃうっ、お願いノン姉、レオを助けて!!」
「大丈夫よ。曲がりなりにも聖獣なんだから簡単に死にはしないでしょう。それに、マデリーヌがいるから死なない限りはなんとかなるわ」
「そんなっ・・・」
「ユキ。私・・・いえ私達はこれでも怒っているの。エリュシオンを止める気なんて微塵もないわ。レオがサーヤとエリュシオンに何をしたか・・・レオと命の盟約を交わしているあなたなら共有できるのだから知っているわよね?」
「・・・っ、そ、れは・・・」
「サーヤは安定期に入ったとはいえ妊娠中よ。そして、私やフラン、そこにいる風の精霊王のセイルや、他にも水、闇、無属性の精霊王達が加護を与えている大切な存在なの」
「なっ、そんなに・・・?ノン姉や、フラ姉まで・・・??」
「サーヤの周りは居心地が良いからね。精霊とか人間とか関係なく大切な仲間だと言ってくれる不思議な子なんだ。何より作ってくれるご飯もお菓子もとても美味しい」
「サーヤとエリュシオンには、すでに双子の可愛い子供もいるのよん♡・・・そんな幸せな家族に、聖獣とはいえあなたの番は何をしたのか・・・いくら聖獣だからって、私の可愛い加護者とその家族に害を与える奴なんかに、正直回復魔法なんて使いたくないわん」
「秘薬のことで恩があるし、父親からお願いされたからって理由でエリュシオンは渋々ココにサーヤを連れて来ただけなのに・・・ボクが駆け付けた時にサーヤは魔力が枯渇してる上に服が破けてて、エリュシオンも傷だらけ・・・誰がナニをしたかはこの状況だけである程度は想像できるよね?・・・でもさぁ、そもそも聖獣がこんなコトした原因って、番であるキミが長期間離れてたからなんじゃない?ホント迷惑極まりないよ」
「!!!」

セイル達やユキの会話がなんとなく聞こえる。
ユキの声から察するに、聖獣の身を案じているようだ。

「なんだかんだとユキはお前の身を案じているようだな。良かったではないか」
「・・・ユキは、”聖獣”ではなく我自身をちゃんと見てくれる最高の番だ・・・愚弄する事は許さぬ」
「別に俺はユキに興味など一切ないからどうでも良い」
「・・・なっ」
「それよりも貴様・・・命の盟約は感情や記憶など様々なものを共有できるはずだ。知ろうと思えば居場所を知ることもできたはずなのになぜ自分から迎えに行かなかった?」
「そ、れは・・・」
「自分から帰ってくるまで待ってるつもりだったか・・・ふっ、くらだんな」
「・・・っ、くだらんだと?!貴様っ・・・」

(ドゴォッ、メキメキッミシッ)

「コレがくだらぬ事以外なんだというのだ?貴様は待つだけで連れ戻しにもいかなかったのに、結局ユキを信じきれずに力づくで人のモノを手に入れようとした情けないただのクズではないか!」
「!!!」
「俺は相手が聖獣だろうが何であろうが、サーヤを奪おうとするヤツは容赦しない。いなくなったらどこまでも探しに行く。何があっても何を使っても、俺のすべてをかけてあいつを、家族を護る!!」
「!!!!」
「これ以上サーヤや俺の家族に何かしてみろ。・・・次は殺す」
「・・・・・・」

(バキィィィッ)

「・・・がはっ」

揺さぶりをかけるつもりが、思いの外自分も感情的になってしまいただの挑発になってしまった。
だが、抵抗するように反発していた魔力をほとんど感じなくなり、だいぶ身体へのダメージも与えたので、最後に1発だけ殴った後、俺は馬乗りになっていた聖獣の上から移動し束縛魔法を解いた。

さすが聖獣というべきなのか、鋼でも殴ったかのように手がしびれている。
・・・拳が潰れたか。またマデリーヌにどやされるな。

俺と入れ違いでユキが聖獣へ駆け寄り泣きじゃくっている。
なんだ、今でもちゃんと愛されているではないか。
まったく・・・今回はとんだ茶番に巻き込まれたものだな。

さすがに重力を加算して魔力を使いすぎたのかダメージが蓄積されていたのか、少し身体ふらつく。
まだだ、サーヤの元へ帰るまで意識を失うわけには・・・―――――

「・・・ホントに、ここまで愚弄されたのは初めてだ・・・」
「・・・レオ?」
「ふざけるなっ!このまま無事で帰れると思うな!!貴様など我がこの手で消してくれるっ!!!」
「「「「???!!!」」」」
「・・・やっ、やめて!!レオっ!!!!」

だいぶダメージを与えたと思っていた聖獣は、束縛魔法を解いた時点である程度動ける状態だったらしく、ユキの制止を振り切って俺を殴ろうと一瞬で間合いを詰めてきた。

聖獣の動きをスローモーションのように捉えられるが、残念ながら俺には避けたり受け止める力が残っていないし、セイル達の助けも間に合いそうもない。


まずい、このままでは攻撃が当たる・・・





――――――そう思った瞬間だった





「【愚息よ、そこまでだ】」




この場に雷が落ちたかのような衝撃と、金縛りにあったように身動きが取れないほどの重圧。


「ち、父上・・・」
「先代、様・・・?」



目の前に現れたのは、聖獣の父親・・・先代の聖獣レオヴィアスだった・・・―――――――
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