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10章 延引された結婚式
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◇
延び延びになっていた結婚式をようやく挙げる事ができ、当日もいろいろあったけどいつもの平穏な毎日が戻ってきた。
そして、今日もいつものように庭でミナトちゃん達と双子が遊んでいる。
そろそろおやつの時間なので、ウッドデッキにお菓子とお茶の用意をしてそろそろ声をかけようかなと思った時、出入口の段差に躓き転びそうになってしまった。
「ひゃっ」
(ガシッ)
「大丈夫か?」
「エル、ありがと」
「まだ安定期に入っていないのだ。あまり動き回るな」
「ふふっ、でも今日は調子が良いんだよ。つわりも前より軽いしね」
結婚式後の初夜を含めた数日頑張った結果、見事に妊娠したあたしは現在妊娠4ヶ月を迎えようとしていた。
「ふふっ、サーヤとエリュシオン様は変わらず仲良しですのね」
「モニカとユーリだって、今ではおしどり夫婦って言われてるじゃない」
「そう思われた方が変な輩は近づきませんわ」
「え、ちょっと待って。じゃあモニカはおしどり夫婦に見せかけてるだけって事??」
「ふふっ、さぁ、どうでしょう?」
目の前にいるユーリとモニカ・・・ガルドニアの現国王と王妃はお忍びで今日も森の家に遊びに来ている。
現在モニカもあたしと同じ妊娠4ヶ月だ。
結婚式後に双子の弟妹を作るという話を聞いたモニカは、あたしと同時期に妊娠、出産をするためすぐに国に帰り仕事を調整し、ユーリと子作りに励んだらしい。
モニカの態度を見る限り、ちゃんとユーリを好きだと思うんだけど、あたしへの好意を包み隠さず前面に出しているため、見ているとユーリが少しだけ可哀そうになる事がある。
「ふふっ、モニカちゃんってば意外と恥ずかしがり屋で素直じゃないのよねん♡」
「え?」
「マ、マデリーヌ様っ」
「“サーヤちゃんと同時期に子供が作りたい”とかサーヤちゃんを理由にしてるけど、そこには素直に“好き”とか“抱いて”とか言えない気持ちも含まれてるのよん♡・・・ほら、ユーリちゃんって自分からぐいぐいいくタイプじゃないでしょ?」
「あー・・・なるほど」
「・・・」
アネモネさんとも清い付き合いをしていたユーリは、もちろんモニカが初めての人だし、モニカは日頃から公私ともにユーリを引っぱってる感じだから、夫婦生活もモニカに主導権があるのかもしれない。
当のモニカは図星なのか背けた顔がほんのり赤い気がする。
ふふっ、ちょっと可愛い。
「まったく、どいつもこいつも俺に面倒ごとを相談してきおって・・・こっちはいい迷惑だ」
「え?エル、以前のベルナートさん以外にも相談受けてたの?誰に??」
「・・・ユーリだ」
「えぇ??!!」
「??!!」
「エ、エリュシオン殿っ!それは内密にと・・・」
「うるさい。マデリーヌ!そもそもお前が安易に引き受けて念話で相談してきたからではないか!しかも俺がサーヤを抱いている最中にな」
「??!!」
「!!!」
え?!何それ、あの間にいつそんなやり取りがあったの??
全然気づかなかったんだけど・・・
「え~、だってぇ、いつシテていつシテないかなんて連絡しないとわからないじゃないのん♡」
「ったく、“子ができやすい体位はなんだ”だの、“今どんな体位でサーヤを抱いてるのか”だの聞いてきおって・・・気が散って仕方がなかったぞ」
「「「・・・」」」
えっちの最中になんて事を聞いてくるんですかっ!!マデリーヌさんっ!!!!
・・・あ、そう言えばエルに妊娠しやすい体位があるかって聞かれたけど、もしかしてあの時にそのやり取りしてたって事??!!
なんとなく相談されていたタイミングがわかってしまい、当事者のあたしも話を聞いていたモニカ達も居たたまれない気持ちになってしまった時、ちょうど子供達がお菓子の匂いに釣られてウッドデッキへやってきた。
「サーヤまま、エルぱぱ、きょうのおやつはなあに?」
「「おやちゅ、なぁに??」」
ミナトちゃんの左右それぞれ手を繋いでいるレオンとサクラ、その後ろにカイトくんとセレスくん、そしてわんこ状態のベルナートさんが来た事で話は強制的に終了し、皆でティータイムをする事にした。
「ボク、ここにすゆ」
「んふ~、レオたん、いっしょにたべようね♪」
「うんっ!」
「セレスは僕の膝の上でも良い?まだ一人は無理でしょ?」
「あい、カイにーとたべまちゅ」
ミナトちゃんの隣に座ったレオンと、カイトくんと一緒に座ったセレスくん。
「べう、おっきくなって。ここなの」
「ん、わかったよ」
サクラも自分の席を決めた後、人間状態のベルナートさんを隣に座らせてニコニコお菓子を食べ始めた。
結婚式後、ベルナートさんとはお互い少しぎこちない感じだったけど、今は大分自然に話せるようになってきた。
今はとにかくサクラがベルナートさんにべったりで、2人になる事がまったくないからというのもあるかもしれない。
レオンとサクラは、あたしの妊娠を知った時とても喜んだ。
そして、つわりで体調が優れずエルがあたしに付きっきりになっても、決してわがままを言わずあたしやお腹の赤ちゃんを気遣っていて、すでに立派なお兄ちゃんとお姉ちゃんとなっている。
もちろん基本的に甘えん坊なので、大丈夫な日はあたしやエルにべったりだけどね。
「サーヤ、お前やモニカの菓子は初めて見るが、何という菓子なのだ?」
「あ、これはねオレンジのクラフティって言うの。甘さ控えめで作ったんだ。食べてみる?」
「あぁ」
皆のお菓子はフルーツたっぷりでアイスも乗せたプリンアラモードなんだけど、あたしとモニカは妊娠中でカロリー控えめにしないといけないから、焼くのだけエルにお願いして別のお菓子を作ったのだ。
材料を混ぜて、バターを塗ってオレンジを乗せたグラタン皿に生地を流し込み焼くだけだからとっても簡単だし、フルーツを変えたらいろんな味が楽しめるので、お城のコックさんに作ってもらえるようレシピをモニカに渡してある。
「はい、エル。あーん」
「んむ・・・!!もっちりとして柔らかい食感とほんのりした甘さに、オレンジの酸味が絶妙に合うな・・・もっと甘くしたければ蜂蜜をかけても良いかもしれないな」
相変わらず素晴らしい食レポである。
どうやらお気に召したようで、まだ食べたいという顔のエルに自分のお菓子をそのまま食べさせていたら、それを見ていたサクラがあたしの真似をし始めた。
「べう、あーん」
「え、サクラ?・・・それ、サクラの」
「あーん!」
「ふふっ、わかったよ。あー・・・んむ。ん、美味しいね、ありがとう。サクラ」
「くーたんも、あーんちて!」
「はいはい」
ふふっ、サクラってば同じお菓子なのにベルナートさんと食べさせ合ってて可愛い・・・――――
(バキッ)
「??!!」
「・・・駄犬・・・」
「エルっ!アレはサクラがあたし達の真似をしただけで、ベルナートさんが悪いわけじゃないからね??!!」
持っていた木製のスプーンが見事に折れてる。
これで何本目だっけ・・・?
あたしとしては、サクラが大きくなってもベルナートさんの事を好きで、ベルナートさんも同じ意味で好きなら反対なんてしないんだけどなぁ・・・
ベルナートさんもサクラのおかげで元気になってるみたいだし、ここはあたしが一肌脱ぎますか。
「エル。あんまりサクラのやる事に口を挟むと、サクラに嫌われちゃうよ?」
「??!!」
「そうだよ、エリュシオン☆ねぇ、サーヤ、ボクにもオレンジなんとかってお菓子一口ちょうだい♪」
「あ、うん。はい、あーん」
「ん、コレ美味しいね☆もっと食べたい♪」
「!!・・・サーヤ、セイルにまでする必要あるまい!セイル、まだ皿にあるんだからそっちを食えば良かろうが!!」
双子にもエルにも普段からよく食べさせてるから、つい癖でセイルにもあげてしまったらエルに怒られた。
「ふふっ、一口食べて美味しかったらもらおうと思ってたんだよ☆エリュシオンって変な所で器が小さいよね♪」
「なっ!!」
「お、初めて見るお菓子だね。何て言うお菓子なんだい?」
「フランさん。オレンジのクラフティって言うんです。食べてみます?」
「あぁ、一口もらおうかな?」
「あら、サーヤ。私も欲しいわ」
「ノルンさん!わかりました。じゃぁ・・・」
「~~~っ、お前らはちゃんと自分の分を取り分けて食えっ!!!」
エルの声に一瞬シーンとなってから、セレスくんは怒られたと思って泣き始めてしまい、レオンはミナトちゃんにしがみ付いて半泣き状態、サクラだけは気にせずベルナートさんとお菓子を食べさせ合っていた。
泣いてる子供をあやしたり、さらにエルをからかおうとする人がいたりと、恒例となっている庭でのティータイムは今日も楽しく賑やかな時間のようです。
・・・――――かつてはこの森の家に一人で住んでいた、人間不信で孤独だったエル。
そして、前世で殺されてサーシャさんの身体に生まれ変わったあたしは、第二の人生をスタートさせてからいろんな事があった。
「ふふっ、エリュシオンってばすっかりセイル達に遊ばれてるわねん♡」
「そうですわね、あんなエリュシオン様初めて見ましたわ」
「そう?エリュシオンって、大人に見えて意外と可愛い子供みたいな所もあるのよん♡♡」
今ではこの森の家で一緒に暮らす家族が増え、仲間が増え、過去の悲しい経験を引きずっていた孤独なエルはもういない。
男運が悪すぎて結婚できなかったあたしも、今では素敵な旦那様と双子達、そしてお腹にいる赤ちゃんという大切な家族と、家族と呼べるくらい大切な仲間がこんなにもできた。
「べう・・・おねむ、なの」
「ん?眠くなっちゃった?」
「ん、おはなのとこ、いきたい」
「ふふっ、じゃあ今日もあそこで一緒にお昼寝しようか」
「(コクリ)」
前世とは比べ物にならないくらい、あたしの第二の人生は幸せでいっぱいだ・・・――――
「?!・・・サクラと駄犬がいない。どこに行った?」
「エル、ベルナートさんが一緒なら安全なんだから大丈夫だよ」
「だが・・・」
「ねぇ、エル」
「ん?」
あたしはエルの耳元で、エルにだけ聞こえるように声をかけた。
「エルは、今幸せ?」
「・・・あぁ。お前や双子、そしてお腹にいる子もいて・・・これ以上ない位にな」
「ふふっ、あたしもだよ。この幸せ、護っていこうね」
「あぁ。お前も家族も、俺が・・・俺達が護ってやる」
「うん!」
あの日、あの時、森であたしを見つけてくれて本当にありがとう
これからも、あなたの隣でこの幸せを護り続けます
だから、ずっとずっと、一緒にいようね・・・―――――
*********************************
とりあえずここで一区切りです。
長くなった上に、後半はスローペースでの更新になりましたが、ここまで読んで下さった方、本当に、本当にありがとうございます!
続編か別のお話をまとめたらまた少しずつアップしていく予定です。
挿絵描いてるけどまだ線画途中で色塗りできていないので、仕上がったら何かしらでアップできたらなと思います。
暁月
延び延びになっていた結婚式をようやく挙げる事ができ、当日もいろいろあったけどいつもの平穏な毎日が戻ってきた。
そして、今日もいつものように庭でミナトちゃん達と双子が遊んでいる。
そろそろおやつの時間なので、ウッドデッキにお菓子とお茶の用意をしてそろそろ声をかけようかなと思った時、出入口の段差に躓き転びそうになってしまった。
「ひゃっ」
(ガシッ)
「大丈夫か?」
「エル、ありがと」
「まだ安定期に入っていないのだ。あまり動き回るな」
「ふふっ、でも今日は調子が良いんだよ。つわりも前より軽いしね」
結婚式後の初夜を含めた数日頑張った結果、見事に妊娠したあたしは現在妊娠4ヶ月を迎えようとしていた。
「ふふっ、サーヤとエリュシオン様は変わらず仲良しですのね」
「モニカとユーリだって、今ではおしどり夫婦って言われてるじゃない」
「そう思われた方が変な輩は近づきませんわ」
「え、ちょっと待って。じゃあモニカはおしどり夫婦に見せかけてるだけって事??」
「ふふっ、さぁ、どうでしょう?」
目の前にいるユーリとモニカ・・・ガルドニアの現国王と王妃はお忍びで今日も森の家に遊びに来ている。
現在モニカもあたしと同じ妊娠4ヶ月だ。
結婚式後に双子の弟妹を作るという話を聞いたモニカは、あたしと同時期に妊娠、出産をするためすぐに国に帰り仕事を調整し、ユーリと子作りに励んだらしい。
モニカの態度を見る限り、ちゃんとユーリを好きだと思うんだけど、あたしへの好意を包み隠さず前面に出しているため、見ているとユーリが少しだけ可哀そうになる事がある。
「ふふっ、モニカちゃんってば意外と恥ずかしがり屋で素直じゃないのよねん♡」
「え?」
「マ、マデリーヌ様っ」
「“サーヤちゃんと同時期に子供が作りたい”とかサーヤちゃんを理由にしてるけど、そこには素直に“好き”とか“抱いて”とか言えない気持ちも含まれてるのよん♡・・・ほら、ユーリちゃんって自分からぐいぐいいくタイプじゃないでしょ?」
「あー・・・なるほど」
「・・・」
アネモネさんとも清い付き合いをしていたユーリは、もちろんモニカが初めての人だし、モニカは日頃から公私ともにユーリを引っぱってる感じだから、夫婦生活もモニカに主導権があるのかもしれない。
当のモニカは図星なのか背けた顔がほんのり赤い気がする。
ふふっ、ちょっと可愛い。
「まったく、どいつもこいつも俺に面倒ごとを相談してきおって・・・こっちはいい迷惑だ」
「え?エル、以前のベルナートさん以外にも相談受けてたの?誰に??」
「・・・ユーリだ」
「えぇ??!!」
「??!!」
「エ、エリュシオン殿っ!それは内密にと・・・」
「うるさい。マデリーヌ!そもそもお前が安易に引き受けて念話で相談してきたからではないか!しかも俺がサーヤを抱いている最中にな」
「??!!」
「!!!」
え?!何それ、あの間にいつそんなやり取りがあったの??
全然気づかなかったんだけど・・・
「え~、だってぇ、いつシテていつシテないかなんて連絡しないとわからないじゃないのん♡」
「ったく、“子ができやすい体位はなんだ”だの、“今どんな体位でサーヤを抱いてるのか”だの聞いてきおって・・・気が散って仕方がなかったぞ」
「「「・・・」」」
えっちの最中になんて事を聞いてくるんですかっ!!マデリーヌさんっ!!!!
・・・あ、そう言えばエルに妊娠しやすい体位があるかって聞かれたけど、もしかしてあの時にそのやり取りしてたって事??!!
なんとなく相談されていたタイミングがわかってしまい、当事者のあたしも話を聞いていたモニカ達も居たたまれない気持ちになってしまった時、ちょうど子供達がお菓子の匂いに釣られてウッドデッキへやってきた。
「サーヤまま、エルぱぱ、きょうのおやつはなあに?」
「「おやちゅ、なぁに??」」
ミナトちゃんの左右それぞれ手を繋いでいるレオンとサクラ、その後ろにカイトくんとセレスくん、そしてわんこ状態のベルナートさんが来た事で話は強制的に終了し、皆でティータイムをする事にした。
「ボク、ここにすゆ」
「んふ~、レオたん、いっしょにたべようね♪」
「うんっ!」
「セレスは僕の膝の上でも良い?まだ一人は無理でしょ?」
「あい、カイにーとたべまちゅ」
ミナトちゃんの隣に座ったレオンと、カイトくんと一緒に座ったセレスくん。
「べう、おっきくなって。ここなの」
「ん、わかったよ」
サクラも自分の席を決めた後、人間状態のベルナートさんを隣に座らせてニコニコお菓子を食べ始めた。
結婚式後、ベルナートさんとはお互い少しぎこちない感じだったけど、今は大分自然に話せるようになってきた。
今はとにかくサクラがベルナートさんにべったりで、2人になる事がまったくないからというのもあるかもしれない。
レオンとサクラは、あたしの妊娠を知った時とても喜んだ。
そして、つわりで体調が優れずエルがあたしに付きっきりになっても、決してわがままを言わずあたしやお腹の赤ちゃんを気遣っていて、すでに立派なお兄ちゃんとお姉ちゃんとなっている。
もちろん基本的に甘えん坊なので、大丈夫な日はあたしやエルにべったりだけどね。
「サーヤ、お前やモニカの菓子は初めて見るが、何という菓子なのだ?」
「あ、これはねオレンジのクラフティって言うの。甘さ控えめで作ったんだ。食べてみる?」
「あぁ」
皆のお菓子はフルーツたっぷりでアイスも乗せたプリンアラモードなんだけど、あたしとモニカは妊娠中でカロリー控えめにしないといけないから、焼くのだけエルにお願いして別のお菓子を作ったのだ。
材料を混ぜて、バターを塗ってオレンジを乗せたグラタン皿に生地を流し込み焼くだけだからとっても簡単だし、フルーツを変えたらいろんな味が楽しめるので、お城のコックさんに作ってもらえるようレシピをモニカに渡してある。
「はい、エル。あーん」
「んむ・・・!!もっちりとして柔らかい食感とほんのりした甘さに、オレンジの酸味が絶妙に合うな・・・もっと甘くしたければ蜂蜜をかけても良いかもしれないな」
相変わらず素晴らしい食レポである。
どうやらお気に召したようで、まだ食べたいという顔のエルに自分のお菓子をそのまま食べさせていたら、それを見ていたサクラがあたしの真似をし始めた。
「べう、あーん」
「え、サクラ?・・・それ、サクラの」
「あーん!」
「ふふっ、わかったよ。あー・・・んむ。ん、美味しいね、ありがとう。サクラ」
「くーたんも、あーんちて!」
「はいはい」
ふふっ、サクラってば同じお菓子なのにベルナートさんと食べさせ合ってて可愛い・・・――――
(バキッ)
「??!!」
「・・・駄犬・・・」
「エルっ!アレはサクラがあたし達の真似をしただけで、ベルナートさんが悪いわけじゃないからね??!!」
持っていた木製のスプーンが見事に折れてる。
これで何本目だっけ・・・?
あたしとしては、サクラが大きくなってもベルナートさんの事を好きで、ベルナートさんも同じ意味で好きなら反対なんてしないんだけどなぁ・・・
ベルナートさんもサクラのおかげで元気になってるみたいだし、ここはあたしが一肌脱ぎますか。
「エル。あんまりサクラのやる事に口を挟むと、サクラに嫌われちゃうよ?」
「??!!」
「そうだよ、エリュシオン☆ねぇ、サーヤ、ボクにもオレンジなんとかってお菓子一口ちょうだい♪」
「あ、うん。はい、あーん」
「ん、コレ美味しいね☆もっと食べたい♪」
「!!・・・サーヤ、セイルにまでする必要あるまい!セイル、まだ皿にあるんだからそっちを食えば良かろうが!!」
双子にもエルにも普段からよく食べさせてるから、つい癖でセイルにもあげてしまったらエルに怒られた。
「ふふっ、一口食べて美味しかったらもらおうと思ってたんだよ☆エリュシオンって変な所で器が小さいよね♪」
「なっ!!」
「お、初めて見るお菓子だね。何て言うお菓子なんだい?」
「フランさん。オレンジのクラフティって言うんです。食べてみます?」
「あぁ、一口もらおうかな?」
「あら、サーヤ。私も欲しいわ」
「ノルンさん!わかりました。じゃぁ・・・」
「~~~っ、お前らはちゃんと自分の分を取り分けて食えっ!!!」
エルの声に一瞬シーンとなってから、セレスくんは怒られたと思って泣き始めてしまい、レオンはミナトちゃんにしがみ付いて半泣き状態、サクラだけは気にせずベルナートさんとお菓子を食べさせ合っていた。
泣いてる子供をあやしたり、さらにエルをからかおうとする人がいたりと、恒例となっている庭でのティータイムは今日も楽しく賑やかな時間のようです。
・・・――――かつてはこの森の家に一人で住んでいた、人間不信で孤独だったエル。
そして、前世で殺されてサーシャさんの身体に生まれ変わったあたしは、第二の人生をスタートさせてからいろんな事があった。
「ふふっ、エリュシオンってばすっかりセイル達に遊ばれてるわねん♡」
「そうですわね、あんなエリュシオン様初めて見ましたわ」
「そう?エリュシオンって、大人に見えて意外と可愛い子供みたいな所もあるのよん♡♡」
今ではこの森の家で一緒に暮らす家族が増え、仲間が増え、過去の悲しい経験を引きずっていた孤独なエルはもういない。
男運が悪すぎて結婚できなかったあたしも、今では素敵な旦那様と双子達、そしてお腹にいる赤ちゃんという大切な家族と、家族と呼べるくらい大切な仲間がこんなにもできた。
「べう・・・おねむ、なの」
「ん?眠くなっちゃった?」
「ん、おはなのとこ、いきたい」
「ふふっ、じゃあ今日もあそこで一緒にお昼寝しようか」
「(コクリ)」
前世とは比べ物にならないくらい、あたしの第二の人生は幸せでいっぱいだ・・・――――
「?!・・・サクラと駄犬がいない。どこに行った?」
「エル、ベルナートさんが一緒なら安全なんだから大丈夫だよ」
「だが・・・」
「ねぇ、エル」
「ん?」
あたしはエルの耳元で、エルにだけ聞こえるように声をかけた。
「エルは、今幸せ?」
「・・・あぁ。お前や双子、そしてお腹にいる子もいて・・・これ以上ない位にな」
「ふふっ、あたしもだよ。この幸せ、護っていこうね」
「あぁ。お前も家族も、俺が・・・俺達が護ってやる」
「うん!」
あの日、あの時、森であたしを見つけてくれて本当にありがとう
これからも、あなたの隣でこの幸せを護り続けます
だから、ずっとずっと、一緒にいようね・・・―――――
*********************************
とりあえずここで一区切りです。
長くなった上に、後半はスローペースでの更新になりましたが、ここまで読んで下さった方、本当に、本当にありがとうございます!
続編か別のお話をまとめたらまた少しずつアップしていく予定です。
挿絵描いてるけどまだ線画途中で色塗りできていないので、仕上がったら何かしらでアップできたらなと思います。
暁月
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