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10章 延引された結婚式

カルステッドの受難その3~予想外の再会~

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俺の名はカルステッド。
ガルドニアの貴族として、かつては王直轄の騎士団長を務めていた時代もあり、様々な戦場の赴いては幾多の死線や苦難を乗り越えてきたし、冒険者としても難易度の高いダンジョンをソロもしくは即席パーティで攻略してきた自負がある。

そして現在の主であるエリュシオン様にお仕えしてから、今まで経験した事がない出来事に日々奮闘しているが、ここ最近はようやく我が主の周辺もだいぶ平和になってきた。


平和になってきたはずなんだけど・・・




俺は今、久々にピンチを迎えていた・・・―――――――




(カラン、コロ~ン)

「いらっしゃ~い♡ココットのお店へようこ、そ・・・」
「!!!・・・お、お前・・・その恰好・・・」
「????!!!!」

メラルダの家をアレクに任せ、我が主と共にガルドニアに戻ってからは、いつものようにスルト村での生活が始まった。
スルト村で生活するという事は、もちろん俺は“ココット”という仮の姿オカマとなるわけで・・・

「なっ、フィ、フィリー殿?!どうしてココに・・・??!!」
「やはり、カルステッド殿なのか?!・・・なぜ、そのような・・・」
「やっ、やめてっ!見ないで!!言わないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

本来カルステッドの姿でお会いしていた我が主の母君にこのココット姿で会って錯乱した俺は、とっさに顔と身体を隠しながらココットの状態で悲鳴をあげていた。

・・・身に沁みついた癖と言うのは恐ろしいモノである。



「本当に、本当にうちの愚息が申し訳ない!!」
「あ、いえ・・・そろそろ頭を上げてください、フィリー殿」

俺の悲鳴を聞きつけたリンダに店番をお願いし、俺はフィリー殿を店の2階でもてなす事にした。
もちろんココットの姿のままである。
そして、先程からフィリー殿は俺に頭を下げて謝罪していた。

・・・気のせいかな?なんか、ものすごくお怒りでいらっしゃる??

「それにしても、急にいらっしゃったので驚きましたよ。この店まではお一人で?」
「あ、ボクが連れてきたんだ☆」
「ぅおっ、セイル殿!!いらしてたんですか?!」
「ふふっ、期待通りの反応で楽しかったよ☆やっぱりカルステッドはいじりがいがあるよね♪」

ちょっ!!セイル殿??!!いじりがいがあるってどういう事ですか???!!!

セイル殿にもお茶を出しながら話を聞くと、現在エリュシオン様とルーシェント殿は素材採集に出かけていて、留守にしている間フィリー殿がサーヤや双子達、そして遊びに来る精霊王様達と森の家で過ごしているそうだ。
今回は双子やミナト殿達にお絵描き用の道具が欲しいとのこと。
しかも、素材採集に出かけているエリュシオン様に見せるために描いているとは・・・くぅっ、可愛らしい上になんとも素晴らしいっ!!

「お絵描き道具ですね。・・・あいにく現在この店に用意がないので、ちょっと近所の馴染みのある店に行ってきます。フィリー殿はここでお待ちください」
「いや、それはさすがに悪いから私も一緒に・・・」
「いえっ!我が主の母君にそんな事はさせられません!!すぐ戻りますので、どうか、どうかここでお待ちください!!!」
「あ、あぁ・・・貴殿がそこまで言うのなら・・・」

俺の必死な態度にフィリー殿がなんとか納得してくれた。
近所の馴染みの店に行く=ココットとして行く事になるので、どうしてもフィリー殿と一緒に行くのはご遠慮願いたかったのだ。

・・・セイル殿、身体震わせてめちゃくちゃ笑ってますけど、そもそもあなたがここにフィリー殿を連れてきた事が原因ですからねっ!!ホントに俺の扱いって酷くない??!!
さすがに俺もそろそろ泣いちゃうよ???!!!

待っている間は店の物は自由に見て良いですよとフィリー殿に伝え、接客をリンダに任せてから俺は画材を取り扱ってる近所の店に行った。
フィリー殿の買い物リストには食材もあったから、後でリンダに案内させようかなと思いつつ、目的の物を手に入れ、今後の取引についてはアレクから後日連絡する旨を伝えてから店に戻った。
恐らく出かけていたのはほんの数分だったと思う。


「ただいま戻りました。フィリー殿、目的の物は無事手に入り・・・―――――え?」


店に戻って一番最初に目に入ったのは、紫の髪をした巨体に向かって深々と頭を下げているフィリー殿と、その近くで身体を震わせ声を押し殺して笑っているセイル殿の姿だった。
もちろんリンダと紫の巨体ことキャロは、状況が飲み込めず困惑している。

「ちょっ、フィリー殿!何をされてるんですか!とりあえず頭をお上げくださいっ!!」
「いやダメだ。一人だけならまだしも二人もの人間にこんなおぞましい恰好を強いるなんて・・・もはや許されぬ」
「いやいやいや、こいつは元々この格好ですからっ!おぞましいのは今に始まった事じゃないですからぁぁぁ!!」
「おいコラ誰がおぞましいモンスターだぁぁ??!!オレはなぁ・・・」
「ちょ、キャロさん!素が出てる!!この方、エリュシオン様のお母様ですからね!!」
「!!!」

フィリー殿をなだめる為とはいえ、思わず自分までもキャロの禁句を口走ってしまい、案の定ブチ切れるキャロ。
元々ランクSの冒険者である事を最近暴露したキャロは、正直俺でも抑えるのは至難の業だが、リンダの一言で振り上げた拳がフィリー殿を庇った俺に当たる直前にピタッと止まった。

「・・・やっだぁ~ん♡エリュシオン様のお母様でしたの??それは大変失礼しましたわん♡♡」
「????!!!!」
「ぶっ、ぁはははははっ、も、もうダメっ・・・面白すぎでしょ☆は~、笑いすぎてお腹痛い・・・くくっ」

キャロがコロっと態度を改めた事で先ほどまでの殺気が霧散されたものの、今度はフィリー殿が困惑し、笑いを堪え切れなかったセイル殿が大爆笑している・・・

・・・なんかもう状況がカオスすぎて、さすがにツッコめない。
ちょっと前に休暇をもらったけど、また休み貰えないかな。今とてもおうちが恋しいです・・・


とりあえず、フィリー殿にお絵描き道具やサーヤから頼まれていた日用品を持っていた魔法袋に入れ、食材についてはリンダがこれから市場やおすすめの店を案内するため、俺はキャロと共に店の入り口でフィリー殿を見送る事にした。

「フィリー殿、魔法袋にお絵描き道具や日用品を入れておきました。お絵描き道具は今後この店にも置く予定なので、入り用でしたら教えてください」
「あぁ、感謝する、カルステッド殿。・・・後、キャロ殿と言ったか?先ほどは無礼な物言いをしてしまい申し訳ない」
「やっだぁ~ん♡もう気にしないでちょうだい♡♡言われ慣れてるから全然気にしてないわよん♡」

嘘をつけ!言われるたびにブチ切れて、言った事を後悔するような目に遭わせるくせにっ!!

「カルステッド殿。愚息の貴殿に対する処遇についてはきっちり話しておくので安心して欲しい」
「え、処遇・・・ですか?」
「フフフ・・・エリュシオンは、すこ~しばかり自由にさせ過ぎたようだ。それに、サーヤの事に関しても言いたい事があるし、親として少々せねばな・・・」


目の前のフィリー殿は、にこやかで凄く穏やかな物言いなんだけど・・・なぜだろう、なんかぞわぞわする・・・



今エリュシオン様が行っている“世界樹ユグドラシル”があるエルフの森は、ダンジョンで言ったら超難易度が高くて危険な場所なんだろうけど、なぜか帰ってきた後の方が危険な気がした・・・


エリュシオン様、素材採集に行っている間も帰ってからも色んな意味で頑張ってくださいね!


とりあえず俺は、心の中でそう応援せずにはいられなかった・・・―――――――




**********************
久々にキャロさん登場(✿´ ꒳ ` )

そして、真面目なフィリーさん、激おこです
(´・ω・`)
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