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9章 帰郷!エルフの里へ ~悪戦苦闘の子育て編~

お家で過ごそう ~襲撃は忘れた頃にやって来る~

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※途中からエリュシオン視点です。
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突然響いた爆発音と衝撃に双子達は泣き出してしまい、ミナトちゃんやカイトくん、ベルナートさんを始めとした精霊王様達、そしてエルとフィリーさん、カルステッドさん達も一気に警戒態勢を強める。
あたしとルーシェントさんは泣いているレオンとサクラを抱っこし、モニカと一緒にリビングのソファに固まった。

「・・・セイル、これは前に話していた奴らだと思うか?」
「恐らくね☆アレク、警備隊長から何か聞いてる?」
「いえ、ただ最近冒険者ギルドが強い冒険者達に召集をかけている話は耳にしています」
「俺はギルドで冒険者に召集かけている理由を、現在閉鎖しているダンジョンの調査隊としてだと聞いているが・・・」

エルやセイル、カルステッドさん達は以前から何かを知っていたらしい。

「最近バイト先にも屈強な冒険者の客が増えましたけど、長期滞在を考えてこの辺りの家を借りたって人もいましたね」
「前よりもこの近辺をうろつく人数は減ったけど、遭遇する奴は前よりも断然強い奴らばかりになった」
「ふむ、ではこの周辺を根城にしてる奴が散策した時に、たまたま多重結界やバリアで守られたこの家に気付いて攻撃でも仕掛けてきたということか」

エルの結界やバリアの強固さは信頼してるけど、いざこうして襲撃を目の当たりにするとどうしても少し不安になってしまい、抱っこしているレオンを思わずぎゅっと抱きしめる。

そんなあたしの不安を払拭するため、小さなナイト達はあたしの服をくいっとひっぱり、にっこりと無邪気に笑ってからセイルに話しかけた。

「セイたん、そいつら、ぼこぼこにしてきていい?」
「この家に害をなす奴らなら、消さずに血祭りにあげるくらいなら良いよね?」

んん?!ちょっと待って!!
なんか天使達が頼もしいけど、すごく物騒な事言ってるっ!!
どうしてこんな好戦的になった?!誰が天使達にこんな事教えたの??!!

「ミナト、カイト、今回はどんな相手かわからないから、とりあえずボクとエリュシオンで見て来るよ☆ミナトとカイトはこの家やサーヤ達を護ってね♪」
「あぃっ」
「うん、わかった」

セイル、犯人はあんたかっ!!

「サーヤ達は俺のそばにいれば安全だから、絶対に離れないでね」
「ベルナートさん・・・」
「大丈夫。俺達が皆強いの知ってるでしょ?でも、もしもの時は俺の特殊空間に避難してもらうからね」

ベルナートさんの言葉に、非戦闘要員のあたし達は頷いた。

「エリュシオン、私もついて行って良いか?高ランクの冒険者ならば、一度相まみえた事があるかもしれない」
「わかった。フランも一緒に来てくれ」
「エリュシオン、私も行こう。たまに実力自慢を兼ねて里の結界を壊そうとする不貞な輩と同一人物か確認したいのでな」
「・・・わかった。サーヤは一応ノルンに念話で状況を説明しておけ。何かあれば駆け付けてくれるはずだ」
「わかった。・・・気を付けてね」
「ふっ、少し確認して、二度とこの家に手出ししないよう約束させるだけだ。問題あるまい」

今の一言で、エル達の心配から手を出してきた冒険者(?)の人達が心配になってきた。
冒険者(?)の皆様、逃げるなら今ですよっ!!!


突然の襲撃(?)に怯えていたのも束の間、エル達が頼もしすぎて“過剰防衛になりませんように”と願いながら、あたしはエル達を見送った・・・――――



家の門から外に出ると、目の前にいたのは冒険者パーティと思われる男女4人組だった。

「お前ら、人の家に何の用だ?」
「は?!ここって人の家があるんスか??何重にも結界張ってる新しいダンジョンかと思ってたのに!!」
「ふんっ、こんなところに隠れるように住んでるなんて、何かやましい事でもあるんじゃない?この辺で人が倒れてるって噂もあるわけだし」
「お前らのような失礼な訪問者を対処してるだけだ。ここは国から不可侵を約束された地のはずだが?」
「はっ、俺達は国に属さない冒険者だ。それに、今回は冒険者ギルドからの依頼でわざわざ来てやっただけのこと。俺達は国などに縛られなどしない」
「国に縛られなくても、その国にいるなら決まり位バカでも守るのにね☆キミってバカ以下なんだ♪」
「貴様っ!剣聖の称号を持つこのオレ様をバカするとはっ!!この剣の錆にしてくれるわっ!!」

セイルの安い挑発にまんまと乗ってきたリーダーと思われるライオンの獣人男。
剣聖の称号持ちということは、冒険者ランクは高いだろうが頭はてんで弱いようだな。

剣を抜いて勢いよく飛び掛かってきた獣人男の剣を、フランが軽く受け止める。

「貴殿は以前手合わせを願い出てきたハーバル殿ではないか。久しぶりだね」
「なっ、フランちゃん??!!」
「・・・フラン、知り合いか?」
「あぁ、以前から何度も手合いを申し込まれていてね。確か冒険者ランクSで、この剣は聖剣デュランダルだよ」
「「ほぅ、聖剣を持っているとは・・・中々やるようだが、頭が残念な奴だな」」
「!!」
「「「ぷっ」」」

俺と母さんが同時に同じ事を言ったので、セイルとフラン、敵側のエルフっぽい奴も思わず吹き出している。

「あんた達いったい何なのよ?!確かにハーバルはちょっと頭がアレかもしれないけど、あたし達はランクSとAの高ランクパーティよ?!そんなこと言ってただで済むと思ってるわけ??」
「あのっ、謝るなら今の内っスよ!!」
「ふんっ、謝る必要がどこにある?フランに軽々止められるような剣など、剣聖とは大したことないようだな」
「!!・・・貴様っ、さっきから生意気なっ!冒険者ランクはなんだ!!」
「俺は、確かDだな」
「はっ、Dランクごときがフランちゃんに助けられてるだけで強気発言とは、お前こそ大した男ではないようだな」

こいつらの情報を得ようと会話をしていたが、何かと発言がムカついてきてそろそろ潰したくなってきた。

「ねぇ、フラン☆さっきからあいつ“フランちゃん”って呼んでるけど仲が良いの?」
「いや。ただ、手合いに勝ったら“抱かせろ”と毎回言ってくるから、ウザくてすぐにカタを付けているだけだよ」
「うわぁ・・・最悪の男だね☆」
「「クズだな」」
「!!!!」
「「ぷぷっ」」

再び俺と母さんの言葉が同調して、場違いな笑いが起きる。
めんどくさい。もうさっさと再起不能にしてしまおう。

「フラン、奴の相手は俺がするからもう良いぞ」
「あぁ、任せたよ」
「ふんっ、たかだかランクDの雑魚に何が・・・」
「ふむ、アレを試すか・・・」
「おぃっ!たかがエルフの分際でオレ様を無視するんじゃねぇっ!!」
「!!」

俺が水と風の混合魔法を試そうと術式を組んでいたら、発言にキレた母さんが飛び出して一瞬で獣人男を数百メートル先まで吹っ飛ばした

「・・・峰打ちだ。殺してはいないから安心しろ。たかが獣人風情のクソガキが・・・ランクが高いからと言っていい気になり過ぎだ。アイツと同じ目に遭いたいのならいくらでも私が相手になってやろう」

母さんの殺気に怯えた他の奴らが一目散に逃げていく。
・・・この途中まで組んだ術式をどうしてくれようか・・・

「エリュシオン、せっかく作ったのだ。ソレも吹っ飛んだ奴にプレゼントしてやると良い」
「・・・それもそうだな。ランクSだし、威力は半減してるから死にはしないだろう」

母さんの指示通り、さっき吹っ飛んだ奴の方向に魔法を放ってから、俺達は家の門をくぐり帰ってきた。
余程心配していたのか、サーヤとミナトとカイトが家の外で俺達の帰りを待っていたようだ。

ふっ、心配せずともあんな奴らなど敵でもないのにな・・・

「お帰り!エル、皆さん!!」
「おかえりなのー」
「お帰りなさい」
「あぁ、ただいま。サーヤ、そんな心配せずとも俺達は問題な・・・」
「エルっ!相手の人達殺したり再起不能にしたりしてないよね??!!」
「・・・」

そっちの心配か。
俺達の強さを信じていて嬉しい気持ちと、相手の心配なのかとイラつく気持ちが混ざって複雑だ。

「あぁ。死んではいない・・・たぶんな」
「!!・・・多分って何?!いくらこの家のためでも、エルも皆さんも簡単に山とか国とか破壊できちゃうし、後々面倒な事になりかねませんからやり過ぎはダメですよ!!」
「「「「ぷっ」」」」

心配のベクトルが違うサーヤの発言に、俺もセイルもフランも母さんも思わず吹き出してしまう。

「もうっ、笑い事じゃありませ―――んっ!!!」
「せ―――ん!」



さっきまでイラつく奴らと対峙していた気持ちが、サーヤとミナトのおかげですっかりなくなってしまった。
過剰だろうが何であろうが、向かってくる奴らは今後も消すのみだ。

こいつらを護るためなら、誰であろうと容赦はしない・・・―――――――
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