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8章 帰郷!エルフの里へ ~出産騒動編~

病院で過ごそう~結婚指輪を作ろう~

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「ほぅ、“結婚指輪”ね・・・」

レミールさんからの聞いた噂話と結婚指輪の話を、夜病院に戻ってきたエルに早速話した。

「うん、あたしはエルからもらったこの指輪があるけど、エルがあたしの夫だって目で見てわかるモノがないなと思って、前の世界にあった結婚指輪の話をしちゃったの・・・なんか変な事になってごめんなさい」
「いや、構わぬ。いい加減声をかけられるのも説明するのもめんどくさいと思っていたからな」
「そんなに、女の人に声かけられてたんだ・・・むぅ、エルはあたしのだもん」

やっぱり特別室に関する噂も本当のようで、ちょっと部屋を出たり一人で動くだけでエルは何人もの看護婦さんに声をかけられ、とても迷惑しているらしい。
セイルからエルは女の人を相手にしてない話は聞いてたけど、やっぱりちょっとだけモヤモヤする・・・
あたしって結構ヤキモチ焼きかも・・・と思いながらエルに抱きついた。

「ふっ、俺がお前以外興味ないのは知っているだろうが」
「それとこれとは別なの・・・んっ」
「ん、舌をもっと出せ、サーヤ・・・本当ならこのまま朝まで可愛がりたい所だが、双子達が産まれるまで我慢だな・・・くくっ、産まれたら覚悟しておけ」
「・・・なるべくお手柔らかにお願いシマス」

エルの言葉だけでキュンっと身体が反応してしまう・・・
魔力を含んだ甘いキスだけでも蕩けてしまうのに、双子達が産まれて激しいえっちが解禁になったらどうなってしまうのか・・・ちょっと怖いけど、それ以上にエルを全身で感じる事ができる楽しみでいっぱいになり、さっきまでのモヤモヤはすっかりなくなっていた。

「結婚指輪の件は、俺がレミールとやらと話をする。次はいつ会う事になっている?」
「特に決めてないけど、あたし達が行動するとすぐに噂になってレミールさんの耳に入るみたいだから、明日体調良ければまた中庭に行くだけで会えると思う」
「・・・人間とは本当に噂が好きな生き物なのだな」
「世の奥様方の情報網とネットワークってどの世界でも凄いってことだよ。・・・ね、エル。もし“結婚指輪”を作る事ができたら、エルは付けてくれる?」

この世界に“結婚指輪”の風習がないのは、それを必要としていないかつける事がイヤなんじゃないかという可能性もある。エルは元々魔道具以外のアクセサリーを付けない人だから、もし付けたくないんだったら・・・

「お前と婚姻している“証”なのだろう?だったらこの世に一つしかない物を作って、外れないよう細工もせねばな」
「え・・・付けて、くれるの?」
「当たり前だ。言葉にしなくとも見て“既婚者”とわかるなど画期的ではないか。レミールとやらは“売ってくれ”と言っている以上、これは外部から受ける俺達の初めての仕事だ。どんな指輪が良いかしっかりと考えて、お前はアイデア料しっかり貰っておけ」

エルは当然のように結婚指輪を受け入れて、もう頭の中はお仕事モードみたいだ。
エルも魔道具のように“売れる”と判断したんだろう。ホントに研究とか新しいモノが大好きなんだから・・・
でも、あたしはそんなエルも大好きだ。

「ふふっ、エル大好き♡」
「!!・・・どうした?急に」
「たまには言葉に出して言おうかと思っただけ」
「・・・ホントに可愛い奴め」

どんな結婚指輪にしようか、そして前から話そうとしていた子供の名前を相談しながら、その日はエルとキス以上に甘い時間を過ごして過ごした。



翌日、体調が良好だったあたしは、エルと2人で昨日と同じ中庭に行った。
今日はレミールさんとお仕事の話をするため、ミナトちゃん達は町にお菓子を買いに行っている。
人がいないわけではないけど、日差しが強いためかそんなに多くない。あたし達は木陰にシートを敷いて大きめのクッションを置き、楽な体勢でのんびりとしていた。

「ふふっ、今日も天気が良いねぇ」
「そうだな。・・・お前達にもうすぐ会えるのだな、楽しみだ」
「そうだねぇ」

双子達の名前については2人でもう決めたけど、産まれてから呼ぶことに決めている。
今は名前を呼ばずに声をかけたり、双子達がお腹を蹴って反応してくれたり、普通にのんびりと幸せな時間を過ごしていた。

「サーヤ・・・」
「ん?なぁに、エ・・・んんっ」

急に優しく名前を呼ばれたかと思ったらいきなりエルにキスされた。
しかも舌をどんどん深く絡めてくる。

こんなキス魔力含んでなくても気持ち良くてダメになっちゃうヤツだからぁぁぁぁぁっ!!!

「んっ、エル、さっきいっぱいもらったから今は・・・んんっ」
「ん、はぁっ・・・俺は口付けしたい時にしてるだけだ。見たい奴には見せておけ」

いやいやいやっ、あたしは本来キスしてる所を人様に見られたくないんですけどっ!!!

あたしが苦しくないように気遣ってくれるけど、人に見られたくないという事は気遣ってくれない・・・優しいのか優しくないのかわからないキスをされながら、もうこのまま身を委ねようかなと思い始めたら、目的の人がちょうど現れて声をかけてきた。

「あら、今日は旦那様とご一緒ですのね?ふふっ、お熱いですこと♡」
「??!!・・・レ、レミールさんっ!!すっ、すみません、変なところをお見せしました」
「ふふっ、こちらこそお邪魔してしまい申し訳ございませんわ。・・・初めまして、私、昨日奥様とお話させていただいたレミール=クロイツと申します」
「エリュシオンだ。妻から話は聞いている。“結婚指輪”の件だな」
「さようですわ」

何事もなかったかのように、普通に話し始めるエルとレミールさん。
その後もレミールさんとエルで「平民から貴族まで幅広く売るなら、素材により料金を変えた方が良い」とか「我が家で持っている鉱山なら素材は格安で入手できる」とか利益や売値の話など、トントン拍子で仕事の話が進んでいった。・・・これ、あたし要らなくない?

「さて、サーヤ。手始めに俺達の結婚指輪を作るから、考えていたデザイン画を出してくれ」
「あ、うん。・・・これです」

ようやく話を振られたので、昨日考えて紙に書き起こしたデザインを2人に見せた。
エルには昨日すでに見せており、デザインも気に入ってくれている。

「これは・・・」
「女性はアクセサリーとして使えるように・・・あたしはこの指輪とセットでつけたいのでそんな凝ったデザインではありません。でも、内側に互いの名前の頭文字を彫ることで、パートナーをより近くに感じられるようにしたいなと」
「まぁ、素敵!」
「男性は、装飾のついた指輪を好まないと思うのでシンプルに、でも内側にお揃いのストーンや宝石を埋め込んで、名前を彫るように・・・そして、互いに左手の薬指に同じ素材で作られた指輪をつける事でペアリングでありパートナーである=結婚していると周りに見せる事ができると思います」
「まぁっ!まぁまぁっ!!素晴らしいですわ!!!」
「・・・本当は、教会で婚姻の手続きをする時に指輪交換ができればなお素敵なんですが・・・」
「指輪、交換ですの・・・?」
「はい。婚姻の手続き書類を書いてから、愛を誓う意味で互いの指輪をつけ合うんです」
「まぁ・・・なんて素敵なのでしょう・・・ロマンス小説を読んでいるようですわ・・・」
「サーヤ・・・」

指輪のデザインと交換方法について、レミールさんはいたく感激し、エルと話し合った内容を元にすぐさま旦那様に話してみると言っていた。
お互い出産間近だから無理だけはしないよう約束をし、何かあれば伝達魔法でやり取りしようという事でその日は解散した。


ただ、翌日からあたしが貧血や腰痛で寝込む日々が続いてしまい、話し合いができたのは最初の内だけだった。




そして、”結婚指輪”の話をエルに任せきりのまま、ついに陣痛がやってきたのでした・・・―――
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