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8章 帰郷!エルフの里へ ~出産騒動編~

メラルダで暮らそう ~攫われた二人の行方2 inエリュシオンide~

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『兄貴!ヒューストンの旦那の家はここから馬車で10分位です!!』
『兄貴!ここちょっと段差があるので気を付けてください!!』
『うるさい。彼女が起きるだろう。もっと静かに話せ』
『『『『『すいやせん、兄貴・・・』』』』』


・・・



・・・・・・



「・・・俺達が観てるのは、“さらわれた2人”が残したモノだよな・・・?」
「うん。家の中で見つけた時、すぐに持ち帰って対策を練らなきゃって思って急いで帰ってきたんだけど・・・」
「コレって、どう考えてもアレクの独壇場だよね☆ふふっ、ホントに彼って面白い人間だね♪」
「この人達、アレクおにーさんのこと“兄貴”って・・・兄弟だったの?」
「「「いや、違う。そういう事じゃない」」」

アレクの残した黒曜石のピアスの映像を、俺、ベルナート、カイト、ちょうど家に戻ってきたセイルと見ていた。
最初こそ心配しながら見ていたが、途中から何を見せられているのかよくわからなくなってきた。
・・・こいつらがバカすぎるのか、アレクの手腕か・・・うむ、両方か。
ちなみに、アルマとカルステッドはソファで現在仮眠している。

アルマがくれた貴族居住区の地図とアレクが残してくれた黒曜石のピアスの映像で、黒幕の居場所やアレク達の居場所はおろか安全まで確認できてしまった。
この後アレクは、ティリアの守りに徹しながら俺達や救助の到着を待っているだろう。
変に暴れるよりも捕まったままの方が安全だからな。
・・・しかもあいつらが“兄貴”と慕っているアレク達に害をなすとはとても思えぬ。

「さて、この後はどう行動しようか☆」
「アレク達をすぐに助けに行く?」
「ふむ・・・そうだな」

この黒曜石の映像はレヴィンにも渡したいが、そうなると明日になる。
アレクが付いていれば恐らくティリアは安全だろうが、できれば早く助けたいところだな・・・

「エリュシオン様、俺から提案があります。よろしいですかな?」

いつの間にか起きていたカルステッドは、アレクの残した映像も一緒に見ていたらしく「ホントにアイツは腹芸が得意な奴ですねぇ」とアレク達の無事を安心しつつ、意見を出してきた。

「エリュシオン様、俺達は今回“被害者”に徹するのが今後のために良いと思っています」
「“被害者”か・・・」
「もちろんエリュシオン様達の”力”ならば、アレク達はすぐにでも救出できるでしょう。ですが、目立つ上に余計な恨みを買いますし、相手は曲がりなりにもこの国の王族と貴族。関わるだけ面倒です」
「・・・うむ、そうだな」
「なので、俺が以前世話になった警備隊の元へこれから行き、夜勤の者にヘンリー隊長へのお目通りを願い出てきます。話し合いと説得次第ですが、一度この家で事情聴取かそのまま警備隊が貴族の家へ行きアレク達の救出かどちらかになるかと」
「なるほどな。ならば俺も同行しよう。この家に不用意に他人を入れるつもりはないし、寝ているサーヤとミナトを起こしたくはないからな」
「あ、じゃあボクも行こうかな☆ちょっと遊びたい♪」
「おにーさん、僕も行きたい」
「俺は・・・」

カルステッドの案を採用して、俺とカルステッド、セイルとカイトは姿を消した状態で同行することになった。
駄犬は恐らくサーヤのそばにいたいのだろうが、俺の動向を気にして躊躇しているようだ。

俺はアルマに家の警備を指示し、何かを言いたそうな駄犬にも同様に指示内容を伝える。

「・・・駄犬。お前は寝室でサーヤとミナトを護れ」
「!!」
「今夜は精霊除けの結界を解除しているから、お前も寝室に入れる。犬の姿ならば一緒に仮眠を取っても良いが、サーヤ達は決して起こすな・・・今日いろいろ頑張った“褒美”だ」
「わかった!エリュシオン、ありがとう!!サーヤ達は俺が護る!!!」

そう言って、駄犬は犬の姿になってから尻尾をぶんぶん振りながら寝室へと向かった。

・・・駄犬の奴、最近犬の姿に順応しすぎではないか・・・?


駄犬とアルマに家の事を任せて、俺達は早速警備隊のいる詰所へ向かう事にした。



警備隊の詰所に行くと、運よくちょうど夜勤で勤務していたアレクの顔見知りの警備隊の隊長が出迎えてくれた。
隊長であるヘンリーは、カルステッドと何度か顔を合わせているようで、スムーズに俺達は隊長室へと案内される。

話を聞かせるよりも見せた方が早いと思い、レヴィンにも見せた屑王子の一部始終とアレクの残した黒曜石を両方をヘンリーに見せた。
・・・もちろんアレクの黒曜石は、“被害者”に見えるよう少々手を加えている。

「・・・このような代物は初めて見ました。内容は本物なのでしょうか?」
「あぁ。疑うのならそれを作った闇の精霊王を呼んでも良いぞ」
「やっ、闇の精霊・・・しかも、王ですか?!」
「詳細を話すつもりはないが、闇の精霊王は俺の妻に加護を与えている」
「さ、左様で・・・」

本当は俺の後ろに風の精霊王セイル無属性の精霊王カイトもいるが、場が混乱するだけなのでもちろん姿を現していない。

警備隊長との会話は、顔見知りであるカルステッドに任せて俺は隣に座り、都度必要に応じで話す事にした。

「ガルドニアの王からメラニウムの王へすでに抗議しているこの状況で、主の奥方の担当医と私の部下が攫われる・・・王位継承権剥奪を知った第三王子と無関係とは思えません」
「確かに・・・王家で王位継承権争いが勃発し、第三王子が手柄を立てようと躍起になっているのは存じていました。現にこの詰め所に何度も来ましたから・・・」

隊長であるヘンリーが言うには、屑王子は自分が王になるために最近メラルダで噂になっている”郊外で倒れる人々”の謎を解決しようと躍起になっていたらしい。
だが、証拠となるモノを一切残していない俺達に行きつくわけもなく、ただ近所に住んでいるから、家に結界を張っているから怪しいという理由で家に来たようだ。
・・・まったく、考えなしも良いところだな。今までも「オレは第三王子だ」の一言で周りに無茶を強いていたに違いない。

アレクの残した黒曜石を指しながら、カルステッドは訴えを続けた。

「このならず者達は、自分達を雇ったのはヒューストン伯爵と言っています。我々は第三王子を捕まえろと言っているわけではない。攫われた部下と女医を助けて欲しいだけなのです」
「ちなみに、この女医はティリア先生ですか?」
「はい。この町の産院で働いているティリア女医です。アレクの学友なんですよ」
「なるほど、アレク殿の。・・・私の妻が子を身ごもった時もティリア先生に診てもらったんですよ。所帯を持っている者はたいてい世話になっているはずです」

ティリアは予約待ちになるほどの産科医だ。
この町に住む者なら世話になっている家族もおのずと多いだろう。

「私も自国で警備の仕事もしていますが、ティリア女医は此度の件に無関係な善良な一市民・・・しかも町に貢献している有能なお医者様で、か弱い女性です。今頃どのようなお気持ちでいるか・・・」
「えぇ・・・」
「それに・・・考えたくはありませんが、先程のようなならず者に女性が攫われるとなると、我々は最悪の自体になるのでは・・・と心配でなりません。そのような事態にならぬよう未然に防ぐために、早急に彼女を救出していただきたい。もちろん我々も助力致します」
「・・・わかりました。今は夜勤で人が少ないですが、皆、腕に自信のある仲間ばかりです。早急に部隊を編成し救出に向かいましょう。ティリア先生を救いたい者は多いはずです!」
「ありがとうございます!ヘンリー隊長殿!!」

これでアレク達の救出は、表向き警備隊に依頼できたな。

では、俺達も同行して邪魔な奴らに少しばかりお仕置きでもしてやるとするか。




こうしてアレク達の救出の手筈が整い、このまま警備隊と共にヒューストン伯爵の家へ向かう事になった。
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