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8章 帰郷!エルフの里へ ~出産騒動編~
メラルダで暮らそう ~攫われた二人の行方 inアレクside~
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◇
「・・・ん」
「・・・気が付いたか?ティリア」
「あ、れ・・・アレク?・・・私、どうし・・・―――ぁっ!」
「静かに。あまり大きい声を出さないで。大丈夫、ティリアには指一本触れさせないから」
「・・・わかった。大丈夫。アレクが一緒にいるなら、こ、怖く、ない・・・」
ティリアは口では“怖くない”と言いながらも、うさ耳を垂らし身体が強張らせて強がっているのは明白だ。
俺達で対処しなければいけない事に巻き込んでしまったのは本当に申し訳ない。
だが、やるだけの事はやった。
それに俺が残してきた情報と意図に、きっとエリュシオン様は気づいてくれるはずだ。
さて、奴らが自滅するのと、こちらの反撃・・・どちらが先になるか・・・―――
◆
俺はエリュシオン様からの命で、ティリアを勤務先の病院まで迎えに行った。
昨日の事があったから、安全が確認できるまでしばらくティリアにも郊外のあの家で一緒に生活して欲しいと伝え、快諾してくれたティリアと必要最低限の荷物を取りに一度家に行くことになった。
だが、家に着き荷物を用意して少し時間が経った頃、ドカドカと大きな足音や大声と共に数名の男が5~6人入ってきた。しかも、丁寧に窓の外にも4~5人いて、どう考えても女一人捕まえるのには過剰な人数だった。
怯えて固まるティリアを抱えて脱出するのは不可能だったし、庇いながら戦うことも難しい。伝達魔法で助けを呼ぶ隙も、この人数ならば難しいだろう。
だったら、俺ができることは一つだけだ・・・―――
『ティリア、抵抗せずに今は大人しく捕まろう』
『!!・・・でも、それじゃ私達・・・』
『大丈夫だ。ティリア、左手を出して』
『え?・・・こう』
俺はティリアの左腕に、エリュシオン様から貰った自動的に防御用のバリアを展開する腕輪を付ける。
『これで、奴らはティリアに指一本触れられない』
『え?』
『一度魔力を込めると、その後自動的に防御用のバリアを展開する。気を失ってる間も効果は続くから安心して欲しい』
『そんなっ、じゃあアレクは?』
『俺は自分の身くらい自分で守れるから大丈夫。・・・奴らは間違いなく第三王子かその関係者が雇った者達だ。巻き込んでしまって申し訳ない。俺が奴らと話をするからティリアは俺のそばから決して離れないで』
『う、うんっ』
泣きそうなティリアを慰める間もなく、家に乱入したならず者たちは俺達の前に現れた。
(バタンッ)
『おぉ、こんな所に居やがったか』
『あれ~?ココに住んでるのって、ウサギ女一人って言ってなかったか?』
『へぇ、じゃあアイツは彼氏ってわけか?ははっ、運の悪い奴だなぁ、おぃ』
『あのウサギ女、ちょっとくらいつまみ食いしても良いよな?』
『はっ、お前彼氏の前で寝取るつもりかよ。最悪じゃねぇか』
好き勝手に下品な会話を浴びせてくるならず者達。後ろにいるティリアは会話の悍ましさによる恐怖で俺にしがみ付きながら震えている。
・・・無理もない。彼女は戦いとは無縁の生活で、人の生を助ける仕事をしているんだから・・・
『お前達、誰の差し金で来た?』
『あぁ?俺達がそんなこと話すわけ・・・』
『黒幕はわかっている。この国の第三王子だろう?・・・いや、違うな。今日付けで王位継承権を剥奪された、元王子と言ったところか・・・』
『はぁ?!お前何言ってやがる』
『お前達こそ何も知らないようだな。お前達の黒幕は、俺の主・・・ガルドニア国王の友人夫婦に不敬を働いた罪人だ。今朝メラニウム王国の王へ抗議し、その際しっかりと第三王子の王位継承権剥奪を明言された・・・それを知らないとは、第三王子は雇ったお前らを余程信用していないみたいだな』
『さっきから王子って何の事だ!オレらはヒューストンの旦那に・・・』
『あっ、バカっ!お前何を・・・』
ヒューストン・・・恐らくこの国の貴族だな。聞いた事があるような名前だが、恐らく第三王子が滞在してるのもその貴族の館だろう。・・・もう少し情報を吐き出させるか・・・
『ヒューストン?・・・ふんっ、知らないな。そうか、お前らは俺が知らないような下級貴族ごときに雇われた下っ端も下っ端ということか、なるほどな・・・』
『なっ!ふざけるな!!ヒューストンの旦那は伯爵だぞ!!』
『伯爵ねぇ・・・他愛もない』
ヒューストン伯爵・・・そういえば以前少しだけ奴隷商と繋がっているとか、あまり良い噂は聞かないな・・・所詮、類は友を呼ぶという事か。
『・・・お、お前も貴族だって言うのか?』
『・・・侯爵だ(俺の上司がな)』
『なっ!侯爵だと??!!』
”俺が”とは言っていないのに・・・面白いくらいに信じる腹芸のできない奴らだな。
そして、ざわざわと思った事すべて声に出している頭の弱いバカ共だ。
これ以上聞ける情報はなさそうだし、そろそろ反撃でもするか。
俺は眼鏡をくいっとあげてから、多少大げさに目の前のならず者を哀れみながらこう切り出した。
『しかし、お前らも可哀そうな奴らだな』
『あぁ?お前、まだ自分の立場をわかってないようだな?』
『そっくりそのままお返ししようか。俺の主はガルドニア国王の友人で、その妻は俺の身内だ。本来なら国賓扱いでもおかしくない客人への不敬、そしてその仲間への暴挙、こちらが訴えればお前達は国を跨いだ犯罪者で死罪もあり得るだろう』
『『『『『?????!!!!!』』』』』
一気に動揺し始めたな。だが、まだ脅しが足りないだろう。
『お前達はたかが伯爵の命令で、国王と同等に偉い方を敵に回しているのがまだわからないのか?』
『・・・国王と同等って。お前の主って何者なんだよ』
『そうだっ!お前の話の方が信じられねぇよっ!!』
『助かりたいからって嘘ついてんじゃねぇ!!』
『俺の主は、光の精霊王様の加護を受けている魔法省のトップだ(”元”だが)』
『『『『『?????!!!!!』』』』』
『今日は抗議の際、光の精霊王様も立ち会ったそうだ。・・・嘘だと思うなら雇い主を通して国王に確認するんだな』
信じられない顔をしているが、もし本当なら・・・と想像して恐怖しているんだろう。
“本当だったらとんでもないことに片足を突っ込んでしまった”と・・・
『・・・いやだ、死罪なんてオレはイヤだ』
『オレだってイヤだっ!こんな事だって知ってたらオレは・・・』
『オレだってっ!!女を攫ってくるだけで良いって言われてたのに、こんなの話が違うじゃねぇか・・・くそっ』
『・・・お前らはその攫おうとした“女”にナニをしようとした?俺の目の前で話していたよな?』
『や、その・・・』
『明らかに“攫うだけ”ではないだろう。それに、外にいる奴ら・・・お前らの仲間だろう?女性一人攫うだけでこの人数とはお前らの話こそ疑わしい』
『ちっ、違う!こいつらとは今日一緒に仕事するからって・・・』
『そうだ!ほとんど初対面の奴らばっかりだ!』
『ホントだ!信じてくれ!!』
口々に“そんなつもりはなかった”、“こんなに人数がいるなんておかしいと思ってたんだ”とか、“頼むっ、見逃してくれ!”と俺に懇願する者まで出てきた。
・・・黒幕とその一味を完全に叩き潰すために、ティリアには悪いがもう少し付き合ってもらうか・・・
『お前らの言い分はわかった。そして、まだ俺の話も本当かどうか疑問に思ってる奴らも多いだろう。・・・その上で、俺から一つ提案があるのだが・・・』
『提案?』
『なんだそりゃ』
『何のために?!』
『俺が言っていることは本当だ。だが信用できないお前らは、今の時点で俺達を釈放するという選択肢もないだろう。雇い主から報酬が貰えないからな』
『・・・あぁ、もちろんだ』
『俺が嘘を言っていない事を証明するため、お前達には事実確認するための時間と、”俺達を攫った”という事実をやろう』
『は?』
『どうした?女を攫えば任務完了で雇い主から金が貰えるのだろう?一緒にいた男も一緒に攫ったと報告すれば良いだけの話だ。俺は彼女を一人にするつもりはない』
『お前・・・』
『・・・オレ、貴族ってオレ達の話なんて聞かない横暴な奴だとばっかり思ってた・・・』
『オレもだ。攫いに来たオレ達の報酬の事を考えてくれる敵なんて聞いた事ねぇよ・・・』
・・・別にこいつらの報酬を考えて言ったのではなく、単なる時間稼ぎと安全確保と敵の所在地を知るための建前だったが・・・やけに感動されてしまったな。
気が付けば俺はこいつらから“兄貴”と呼ばれ、攫う時も丁重に扱われた。
ティリアは緊張と仕事の疲れから、途中でオレにしがみ付いたまま眠ってしまったようで、そのまま抱き上げて俺が移動用の馬車へ運ぶことにし、奴らには指一本触れさせなかった。
その行動も、“兄貴っ、カッコイイです!”とか“漢ですね!!”と称賛され、何かすればするほどならず者達に慕われた。
外へゆっくりと移動しながら、ヒューストン伯爵の家がどの辺で近くに何があるのか、攫われた俺達がその家のどこに閉じ込められるのかを聞いてみると、素直に答えるならず者達。
そして俺は、最後の仕上げと言わんばかりに、家を出る直前、ベルナート様から今朝頂いた黒曜石のピアスを片方テーブルの上の籠に忍ばせてから、奴らと共に家を出た。
後は、この黒曜石の情報からエリュシオン様達が動くのを待つだけ、俺の仕事はここまでだ・・・
俺は眠るティリアを抱きかかえながら、これ以上彼女に害が及ばないよう守ることのみ考えることにした。
「・・・ん」
「・・・気が付いたか?ティリア」
「あ、れ・・・アレク?・・・私、どうし・・・―――ぁっ!」
「静かに。あまり大きい声を出さないで。大丈夫、ティリアには指一本触れさせないから」
「・・・わかった。大丈夫。アレクが一緒にいるなら、こ、怖く、ない・・・」
ティリアは口では“怖くない”と言いながらも、うさ耳を垂らし身体が強張らせて強がっているのは明白だ。
俺達で対処しなければいけない事に巻き込んでしまったのは本当に申し訳ない。
だが、やるだけの事はやった。
それに俺が残してきた情報と意図に、きっとエリュシオン様は気づいてくれるはずだ。
さて、奴らが自滅するのと、こちらの反撃・・・どちらが先になるか・・・―――
◆
俺はエリュシオン様からの命で、ティリアを勤務先の病院まで迎えに行った。
昨日の事があったから、安全が確認できるまでしばらくティリアにも郊外のあの家で一緒に生活して欲しいと伝え、快諾してくれたティリアと必要最低限の荷物を取りに一度家に行くことになった。
だが、家に着き荷物を用意して少し時間が経った頃、ドカドカと大きな足音や大声と共に数名の男が5~6人入ってきた。しかも、丁寧に窓の外にも4~5人いて、どう考えても女一人捕まえるのには過剰な人数だった。
怯えて固まるティリアを抱えて脱出するのは不可能だったし、庇いながら戦うことも難しい。伝達魔法で助けを呼ぶ隙も、この人数ならば難しいだろう。
だったら、俺ができることは一つだけだ・・・―――
『ティリア、抵抗せずに今は大人しく捕まろう』
『!!・・・でも、それじゃ私達・・・』
『大丈夫だ。ティリア、左手を出して』
『え?・・・こう』
俺はティリアの左腕に、エリュシオン様から貰った自動的に防御用のバリアを展開する腕輪を付ける。
『これで、奴らはティリアに指一本触れられない』
『え?』
『一度魔力を込めると、その後自動的に防御用のバリアを展開する。気を失ってる間も効果は続くから安心して欲しい』
『そんなっ、じゃあアレクは?』
『俺は自分の身くらい自分で守れるから大丈夫。・・・奴らは間違いなく第三王子かその関係者が雇った者達だ。巻き込んでしまって申し訳ない。俺が奴らと話をするからティリアは俺のそばから決して離れないで』
『う、うんっ』
泣きそうなティリアを慰める間もなく、家に乱入したならず者たちは俺達の前に現れた。
(バタンッ)
『おぉ、こんな所に居やがったか』
『あれ~?ココに住んでるのって、ウサギ女一人って言ってなかったか?』
『へぇ、じゃあアイツは彼氏ってわけか?ははっ、運の悪い奴だなぁ、おぃ』
『あのウサギ女、ちょっとくらいつまみ食いしても良いよな?』
『はっ、お前彼氏の前で寝取るつもりかよ。最悪じゃねぇか』
好き勝手に下品な会話を浴びせてくるならず者達。後ろにいるティリアは会話の悍ましさによる恐怖で俺にしがみ付きながら震えている。
・・・無理もない。彼女は戦いとは無縁の生活で、人の生を助ける仕事をしているんだから・・・
『お前達、誰の差し金で来た?』
『あぁ?俺達がそんなこと話すわけ・・・』
『黒幕はわかっている。この国の第三王子だろう?・・・いや、違うな。今日付けで王位継承権を剥奪された、元王子と言ったところか・・・』
『はぁ?!お前何言ってやがる』
『お前達こそ何も知らないようだな。お前達の黒幕は、俺の主・・・ガルドニア国王の友人夫婦に不敬を働いた罪人だ。今朝メラニウム王国の王へ抗議し、その際しっかりと第三王子の王位継承権剥奪を明言された・・・それを知らないとは、第三王子は雇ったお前らを余程信用していないみたいだな』
『さっきから王子って何の事だ!オレらはヒューストンの旦那に・・・』
『あっ、バカっ!お前何を・・・』
ヒューストン・・・恐らくこの国の貴族だな。聞いた事があるような名前だが、恐らく第三王子が滞在してるのもその貴族の館だろう。・・・もう少し情報を吐き出させるか・・・
『ヒューストン?・・・ふんっ、知らないな。そうか、お前らは俺が知らないような下級貴族ごときに雇われた下っ端も下っ端ということか、なるほどな・・・』
『なっ!ふざけるな!!ヒューストンの旦那は伯爵だぞ!!』
『伯爵ねぇ・・・他愛もない』
ヒューストン伯爵・・・そういえば以前少しだけ奴隷商と繋がっているとか、あまり良い噂は聞かないな・・・所詮、類は友を呼ぶという事か。
『・・・お、お前も貴族だって言うのか?』
『・・・侯爵だ(俺の上司がな)』
『なっ!侯爵だと??!!』
”俺が”とは言っていないのに・・・面白いくらいに信じる腹芸のできない奴らだな。
そして、ざわざわと思った事すべて声に出している頭の弱いバカ共だ。
これ以上聞ける情報はなさそうだし、そろそろ反撃でもするか。
俺は眼鏡をくいっとあげてから、多少大げさに目の前のならず者を哀れみながらこう切り出した。
『しかし、お前らも可哀そうな奴らだな』
『あぁ?お前、まだ自分の立場をわかってないようだな?』
『そっくりそのままお返ししようか。俺の主はガルドニア国王の友人で、その妻は俺の身内だ。本来なら国賓扱いでもおかしくない客人への不敬、そしてその仲間への暴挙、こちらが訴えればお前達は国を跨いだ犯罪者で死罪もあり得るだろう』
『『『『『?????!!!!!』』』』』
一気に動揺し始めたな。だが、まだ脅しが足りないだろう。
『お前達はたかが伯爵の命令で、国王と同等に偉い方を敵に回しているのがまだわからないのか?』
『・・・国王と同等って。お前の主って何者なんだよ』
『そうだっ!お前の話の方が信じられねぇよっ!!』
『助かりたいからって嘘ついてんじゃねぇ!!』
『俺の主は、光の精霊王様の加護を受けている魔法省のトップだ(”元”だが)』
『『『『『?????!!!!!』』』』』
『今日は抗議の際、光の精霊王様も立ち会ったそうだ。・・・嘘だと思うなら雇い主を通して国王に確認するんだな』
信じられない顔をしているが、もし本当なら・・・と想像して恐怖しているんだろう。
“本当だったらとんでもないことに片足を突っ込んでしまった”と・・・
『・・・いやだ、死罪なんてオレはイヤだ』
『オレだってイヤだっ!こんな事だって知ってたらオレは・・・』
『オレだってっ!!女を攫ってくるだけで良いって言われてたのに、こんなの話が違うじゃねぇか・・・くそっ』
『・・・お前らはその攫おうとした“女”にナニをしようとした?俺の目の前で話していたよな?』
『や、その・・・』
『明らかに“攫うだけ”ではないだろう。それに、外にいる奴ら・・・お前らの仲間だろう?女性一人攫うだけでこの人数とはお前らの話こそ疑わしい』
『ちっ、違う!こいつらとは今日一緒に仕事するからって・・・』
『そうだ!ほとんど初対面の奴らばっかりだ!』
『ホントだ!信じてくれ!!』
口々に“そんなつもりはなかった”、“こんなに人数がいるなんておかしいと思ってたんだ”とか、“頼むっ、見逃してくれ!”と俺に懇願する者まで出てきた。
・・・黒幕とその一味を完全に叩き潰すために、ティリアには悪いがもう少し付き合ってもらうか・・・
『お前らの言い分はわかった。そして、まだ俺の話も本当かどうか疑問に思ってる奴らも多いだろう。・・・その上で、俺から一つ提案があるのだが・・・』
『提案?』
『なんだそりゃ』
『何のために?!』
『俺が言っていることは本当だ。だが信用できないお前らは、今の時点で俺達を釈放するという選択肢もないだろう。雇い主から報酬が貰えないからな』
『・・・あぁ、もちろんだ』
『俺が嘘を言っていない事を証明するため、お前達には事実確認するための時間と、”俺達を攫った”という事実をやろう』
『は?』
『どうした?女を攫えば任務完了で雇い主から金が貰えるのだろう?一緒にいた男も一緒に攫ったと報告すれば良いだけの話だ。俺は彼女を一人にするつもりはない』
『お前・・・』
『・・・オレ、貴族ってオレ達の話なんて聞かない横暴な奴だとばっかり思ってた・・・』
『オレもだ。攫いに来たオレ達の報酬の事を考えてくれる敵なんて聞いた事ねぇよ・・・』
・・・別にこいつらの報酬を考えて言ったのではなく、単なる時間稼ぎと安全確保と敵の所在地を知るための建前だったが・・・やけに感動されてしまったな。
気が付けば俺はこいつらから“兄貴”と呼ばれ、攫う時も丁重に扱われた。
ティリアは緊張と仕事の疲れから、途中でオレにしがみ付いたまま眠ってしまったようで、そのまま抱き上げて俺が移動用の馬車へ運ぶことにし、奴らには指一本触れさせなかった。
その行動も、“兄貴っ、カッコイイです!”とか“漢ですね!!”と称賛され、何かすればするほどならず者達に慕われた。
外へゆっくりと移動しながら、ヒューストン伯爵の家がどの辺で近くに何があるのか、攫われた俺達がその家のどこに閉じ込められるのかを聞いてみると、素直に答えるならず者達。
そして俺は、最後の仕上げと言わんばかりに、家を出る直前、ベルナート様から今朝頂いた黒曜石のピアスを片方テーブルの上の籠に忍ばせてから、奴らと共に家を出た。
後は、この黒曜石の情報からエリュシオン様達が動くのを待つだけ、俺の仕事はここまでだ・・・
俺は眠るティリアを抱きかかえながら、これ以上彼女に害が及ばないよう守ることのみ考えることにした。
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