【本編完結済】【R18】異世界でセカンドライフ~俺様エルフに拾われました~

暁月

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7章 帰郷!エルフの里へ ~祝福された小さな命~

メラルダで暮らそう ~双子の性別~

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入籍を終えた日の夜、リビングで皆と寛いでたらアレク兄様がティリアさんを家に連れてきた。

「こんばんわ。素敵な家にお引越しされたんですね」
「ティリアさん、こんばんわ。こんな体勢ですみません・・・」
「ふふ、そのままで良いですよ」

リビングの一番大きいソファで、座ったエルに後ろからぎゅってされているあたしと、あたしに抱きついているミナトちゃん、エルの脇にきゅっとしがみ付いているカイトくんは、帰って来てからずっとこんな感じであたし達にくっついている。

教会での出来事はもちろんミナトちゃん達も見ていて、ミナトちゃんは狐神父をぷっちんしようとしたり、カイトくんが狐神父を消そうとしたり、セイルとベルナートさんは止めるのが大変だったらしい。
もちろん手続き後はお菓子を買いに行く空気になるわけもなく、すぐに家に帰ったが未だにご機嫌斜めの状態だ。

「ミナトちゃん、カイトくん、あたし達のためにすごく怒ってくれたんだよね。ありがとう」
「・・・あいつ、きらい」
「ホントに消さなくて良かったの?」

うわぁ・・・あたし達以上にまだまだご立腹である。
確かに腹は立ったし個人的にも好きじゃないけど、それを伝えるとホントに教会からあの狐神父が消えかねないのでうかつなことは言えない。

「あの神父の態度は想定内だ」
「そうなの?」
「あぁ、ギルドカードを見せる時点である程度予測はしていた。親父達もそれを考えて同席すると言っていた・・・予想外だったのはマデリーヌだな」
「あぁ・・・確かに」

今回”黒”に対する差別を初めて目の当たりにしたけど、あからさますぎる態度は本当に腹立たしかった。あたしも言い返そうとしたけど、ルーシェントさん達の行動の方が早く、さらにマデリーヌさんが出てきてエルを助けてくれるなんて、驚いたけどすごく嬉しかった。
いつもドM発言が多いマデリーヌさんだけど、ちゃんとエルを大事に想ってくれてるんだ・・・

教会の神父様が普段神事や手続きを行う際は、光属性の魔法を使うらしい。
光属性・・・すなわち光の精霊さんの力を借りてるので、もちろん光の精霊王様の存在も知っている。
そのため、マデリーヌさんの存在や言動は教会の存続につながるくらい影響力が強い。
・・・あんな脅すようなことして後々問題になったりしないかな?

あたしの考えてることが相変わらず丸わかりなのか、”もう気にするな”と言わんばかりに頭をぽんぽんとされ、エルはまだご機嫌斜めのミナトちゃんやカイトくんにも声をかけた。

「お前達、サーヤの医者が来たということは、これからお腹の子供を診て性別がわかるかもしれないんだぞ。あんなクソ神父は覚えてるだけ損だ。もう関わることもないから忘れろ」
「くそ、しんぷ・・・」
「ミナト、その言葉も忘れろ。ほら、サーヤの胎内にいる双子の様子は見たくないのか?」
「!!・・・あかちゃん!」
「うん、そうだね。あんな奴よりおねーさんの赤ちゃん見たい」
「ふふっ、じゃあまずは私がママのお腹を診るからちょっと準備をさせてね」

なんとか気持ちを赤ちゃんの方に向けさせて、そのままリビングで診察の準備をする。
と言っても、すでにタオルケットを用意しているので、エルを背もたれにしたままお腹を出してタオルケットをかけただけだ。
リビングにはルーシェントさん達やセイル達、カルステッドさん達も集合しており、今日は皆に見守られながらの診察です。

「では、お腹に触れますね。深呼吸して、落ち着いて・・・」

ティリアさんの手がまた少し大きくなったお腹に触れる。相変わらず温かくて気持ち良い。

「・・・ん、また大きくなりましたね。性別も・・・ほぼ間違いないと思います」
「あの、赤ちゃんの性別は・・・?」
「・・・良ければ、まずはご自身で見てみますか?」
「はいっ!」

前と同じようにティリアさんがお腹とあたしの目を覆うように触れる。
お腹の赤ちゃんは大分大きくなっていて、性別を分ける場所については・・・―――

「・・・あれ、なんか違う?同じ形じゃない??」
「ふふっ、そうです。胎内の赤ちゃんは、男女の双子みたいですね」
「「!!!」」

なんと!お腹の赤ちゃんは男女の双子!!
双子ってだけでもビックリなのにそれが男女なんてなおビックリだ。

「あかちゃん、みたいの!」
「はい、今お見せしますね」
「・・・わぁ、まえより、おっきいの」
「ふふっ、育ち盛りですからね。産まれる頃はもっと大きいですよ」
「僕も見たい!おねーさんの赤ちゃん、見せて」

さっきの機嫌の悪さが赤ちゃんを見たことで完全に払拭されたらしいミナトちゃんとカイトくん。
その後も順番に皆赤ちゃんを見せてもらって成長を喜んでくれた。

「男女の双子か・・・一気に娘と息子ができちゃったね」
「あぁ、それぞれの部屋を作ってやらねばな」
「ふふっ、さすがにそれはまだ早いよ」


エルと無事正式な夫婦となり、胎内の双子達の性別も判明したことで、後はしっかり栄養を取りつつ体調管理して出産に備えるのみになった。
時々出血したりお腹が痛いくらい張る日があると、アレク兄様経由でティリアさんに相談したり、診察してもらったりしていたけど、胎児は順調に成長しているようだ。

エルと相談した結果、何かあった時すぐに相談したり病院に行ける環境の方が良いし、ティリアさんの病院の入院設備がセキュリティ面も含めてしっかりしていることから、あたし達は出産までこのままメラルダに滞在することにした。

さすがにルーシェントさん達は一度エルフの里に帰ることになったけど、こちらからも行き来しやすくなるよう家の中に転移門ゲートを作って、ルーシェントさんの家とこの家を繋ぐ予定らしい。
・・・さすがに転移門ゲートはルーシェントさんと協力し合って作るみたいだけど、何でも作ろうとしてしまうエルはホントに凄いです。

とりあえずルーシェントさん達は「産まれる前にまた来るね」と言って、エルフの里に帰っていった。


「エリュシオン様、俺達は交代でこの家の警備をしつつ、メラルダの冒険者ギルドでクエストをこなして生活費を稼いできます」
「む?別に金には困っていないぞ」
「いえいえ、これから子が産まれたら出費は増えますし、我々も身体が鈍ってしまいますから」
「そうですよ~。フラン様におすすめのダンジョンも聞きましたし、運動しながら稼いできます!」
「そうですね、内外の情報は冒険者同士の方が集まりやすいですから」
「(こくり)」

そんなわけで、カルステッドさん達は周囲の警備を交代制でしてくれつつ、付近のダンジョンに行ったり、冒険者ギルドでクエストを受注して生活費を稼ぐようになった。
もちろん無理はしない、明らかに危険なクエストは受注しないという条件付きだ。

いろんな素材を持ち帰って来たり、遭遇したモンスターの話や他の冒険者から聞いた話は、まさに前の世界で読んでいたファンタジー小説そのもので、聞いてるだけでハラハラドキドキしてとても楽しかった。
あたしも少しでも役に立ちたくて、火を使うときだけエルやアレク兄様にお願いし、お弁当や非常食をなるべく作って持たせてあげるようにした。少しは動かないと身体にも良くないからね。

エルはクエストにはいかないけど、たまに身体を動かしてくると行ってフランさんやセイルと時々手合わせをしているようだ。
一度服がボロボロの状態で帰って来て心配したけど、「火山にちょっと落ちかけただけで怪我はない」って言われてなんて言っていいかわからなくなった。
どう考えても手合わせってレベルじゃない気がする・・・

ちなみにエルは、その手合わせ以外はだいたいあたしのそばでのんびりしているか、研究室に籠っている。
エルがそばにいない間は、マデリーヌさんやセイル達の誰かがあたしのそばにいて、魔力を補給したりエルを呼んでくれたりしているので、あたしも気兼ねなく家や庭で過ごすことができた。

買い物に行きたいなと思ったけど、またエルの追っかけがいても怖いので、家に商人を呼んで買い物をしたり町に買い物に行く人にお願いしたりして子供用品や消耗品を買い揃えていた。




・・・―――そんな穏やかな日がしばらく続いたある日のこと、メラルダで買い物をしていたアレク兄様がとある噂を聞いて帰ってきた。
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